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米国 REIT の仕組み

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第 4 章 米国 REIT

第 2 節 米国 REIT の仕組み

②収入要件

・  総収入の95%以上は、配当、金利、賃料、不動産売却収入から得ていなければならない。

・  総収入の75%以上は賃料、モーゲージ金利、不動産売却収入、他REITからの配当とい った不動産関連の収入から得ていなければならない。

・  任意ではない転換や担保権行使によるものを除き、保有期間 6 ヶ月未満の株式や証券、

もしくは保有期間4年未満の不動産を売却あるいは処分して得た収入が、総収入の30%

を超えてはならない。

③配当要件

・  課税所得の90%以上を株主に配当しなければならない。

④組織要件

・  課税対象法人でなければならない。

・  取締役会または受託者によって管理されていなければならない。

・  譲渡可能な株式を保有しなければならない。

・  発行する株式は譲渡可能なものでなければならず、株主は100人以上いなくてはならな い。

・  課税年度下半期において、発行済株式の50%以上が5人以下の株主によって保有されて はならない。

また、米国REIT は当初、現在のJ-REIT のように物件の運営・管理を外部に委託する外 部運営を義務付けられていたが、前節第2項でみたとおり1986年の税法改正によりこの規 制が廃止され、現在ほぼ全てのREITが内部運営を行っている。

第2項  米国 REIT のタイプ 

米国REITは投資対象によってモーゲージREIT、エクイティREIT、ハイブリッドREIT の3種類に分類できる。各REITは投資対象を分別し、特色を出していくのが一般的である。

①モーゲージREIT:ノンリコース・ローンなどの不動産担保ローンを通じて不動産証券化 商品に投資をするREIT。主にMBS(Mortgage Backed Securities)やCMBS(Commercial Mortgage Backed Securities)商品に投資し、不動産には直接投資を行わない。

②エクイティREIT:不動産のエクイティ(所有権もしくは所有権の共有持分)に直接投資

をするREIT。

③ハイブリッドREIT:エクイティ型とモーゲージ型の双方を組み合わせた混合型REIT。

2007年3月末現在、上場REITは172社存在する中で、種類別の銘柄数、時価総額は図表 29のとおりとなっており、エクイティREITが件数ベースで市場の76%、時価総額ベース

では92%を占めている。

図表 29  3タイプ別銘柄数・時価総額

モーゲージREIT エクイティREIT ハイブリッドREIT

銘柄数 35社 131社 6社

時価総額 261億ドル 3,890億ドル 72.8億ドル

※  銘柄数、時価総額は2007年3月末時点の数字である。

(出所)NAREIT webサイトより筆者作成

前節第2項で述べたとおり、モーゲージREITは1960年代末からヒットし、1970年代ま ではREIT業界の中心であった。1980年代初頭にはエクイティREITが優勢を占めることと なったが、中頃には再びモーゲージ REIT が巻き返し、1990 年代に入ると再びエクイティ REIT取って代わられ、そのままエクイティREITが大半を占めるようになった。

モーゲージREITは、かつては稼動物件への貸付と同様に、開発・建設物件への貸付にも 投資を行っていたが、現在大部分は稼動物件のオーナーに対してのみ資金を貸し付けてい る。モーゲージREITのポートフォリオは、1次モーゲージローン(1次抵当権の付された 不動産担保ローン)かモーゲージプール32、またはその双方で構成されている。

モーゲージREITは、通常エクイティREITに比べてより高い配当利回りが生じる。これ はモーゲージREITにはエクイティREITと異なり資産価値増加のポテンシャルが限定的な ことと、金利リスクが存在し、収入の変動が比較的激しいためである。モーゲージREITは 短期金利で資金調達を行い長期の資産に投資をしているので、株価が上昇する局面は、金 利が下落する場合のみに限られる。反対に金利が上昇すれば、モーゲージREITの株価は下 落するのである。この金利上昇リスクの低減を図るため、通常モーゲージREITはその資金 の多くを変動金利型モーゲージに投資している。

一方、エクイティREITは通常モーゲージREIT、ハイブリッドREITに比べて低い配当で あるが、不動産に直接投資を行っているので保有資産には成長可能性があり、株価は高い 上昇可能性を持っている。また、モーゲージREITと株価も金利の変化によって変動をする が、エクイティREITは物件の賃料を増額するなどの方法をとることによってキャッシュフ ローを増加させることが可能であり、モーゲージREITに比べて金利リスクは少ない。

エクイティREITの基本的な仕組みは図表30のとおりである。

32 モーゲージプールとは、政府抵当金庫(Government National Mortgage Association、Ginnie Maeと呼ばれ る)、連邦抵当金庫(Federal National Mortgage AssociationFannie Maeと呼ばれる)、投資銀行によりパッ ケージされた不動産担保ローンの集合のことを指す。

図表 30  エクイティREITの仕組み

(出所)井出保夫「不動産金融ビジネスのしくみ」を基に作成  

  ハイブリッドREITは大半がヘルスケア分野に存在している。ヘルスケア会社にモーゲー ジローンを提供するとともに、ヘルスケア会社に賃貸する物件の所有権をも保有している。

この投資戦略の結果、ハイブリッドREITはエクイティREITより高くモーゲージREITよ りも低い配当を生み出し、またエクイティREITほどの成長可能性を持たないが、モーゲー ジREITよりも高い価格上昇の可能性を持っている。

また米国REITは、資金調達手段によってパブリック型(公募型)とプライベート型(私 募型)に分けることができる。REITはあくまで税制上の要件であるため証券市場で取引さ れなければならないといった規定はなく、市場または店頭で取引されないREITはプライベ ートREITと呼ばれ、米国では1,000社以上存在していると言われている。

  なお、全米不動産投資信託協会(the National Association of Real Estate Investment Trust 以

下NAREIT)ではプライベートREITを以下の3つのタイプに分類している。

①多額の資金を有する機関投資家向けREIT。

②ファイナンシャル・コンサルタントによって推奨されるパッケージの一部として投資家 に提供されるシンジケートREIT。

③将来上場することを期待し、ベンチャー・キャピタルによって設定されたインキュベー ターREIT。

借入

投資

株式

配当

賃料・売却益 取得・管理・運営・売却

株式購入

引受業務

議決権

収益不動産

長期:年金・保険 中短期:商業銀行       投資銀行       S&L

ノンバンク 借入

社債 株式

REIT 金融機関

投資家

株主総会

収益不動産

投資銀行  

︵引受業者︶  

SEC(証券取引委員会)

第3項  UPREIT と DOWNREIT 

現在米国REITの多くがUPREITというスキームを用いており、且つDOWNREITという

仕組みも存在している。UPREITは物件を現物出資して組成する仕組みであり、これに対し て物件の購入によって組成される従来型のREITはStraight REITと呼ばれている。

UPREITは1992年、リージョナルモールREITのTaubman Centers(TCO)の上場の際に

考案され、その後のREIT市場を大きく拡大させるきっかけとなった33。このスキームによ りREITに不動産を譲渡(現物出資)する場合に、オリジネーターが負担するキャピタルゲ イン税を繰り延べることを認めることで、REITへの所有不動産の拠出をしやすくしたため である。1992年以降に組成して上場したREITの約8割が、UPREITの仕組みを活用してい るといわれている。

  UPREITでは、まずオリジネーターはREITとともにオペレーティング・パートナーシッ

プ(OP)と呼ばれるリミテッド・パートナーシップを設立し、所有不動産をこの OP に現 物出資する(図表31)。オリジネーターは現物出資の対価として、将来REIT普通株に1:1 で転換可能なこのOPのパートナーシップ持分(OPユニット)を受け取るが、この時点で は課税されない。その後、REITは上場により資金調達し、この資金をOPに出資してこの OPのジェネラル・パートナーになる。そしてこの資金は物件の債務の返済や他不動産の取 得に使用されることとなる。オリジネーターの取得したOPは、REIT 株と同額の配当を受 けるとともに、売却の際に等価でREIT株に転換可能であり、基本的にREIT株と同等の価 値を持つ。

  REITが不動産を取得する際は、基本的にOPが不動産を取得・所有することとなり、REIT が所有するのはOPの持分のみとなる。

  オリジネーターは、所有するOPユニットをREIT株へ転換する際、またはREITが当該 不動産を売却する際にキャピタルゲイン税が課税されることとなる。このようにオリジネ ーターは自らの判断でキャピタルゲイン課税の時期を調整することができ、また株式をIPO することで所有するOPユニットの株式との交換価値を高めることができるため、単純に不 動産を譲渡する場合よりも有利な取引ができるのである。

  一方、UPREIT は本質的に利益相反の問題を内包している制度である。通常、REIT 経営 陣はオリジネーターもしくはその関係者であることが多い。課税の面で、オリジネーター とREIT株主は異なる税務ポジションを持つため、当該物件の売却などに関して双方の利益 相反が生じる可能性があるのである。この問題から投資家を保護することを目的として、

ほとんどのREITでは、受託者または取締役の過半数がREITの出資者となってはならない ことを約款で規定している。

33 1988年から1992年の5年間での米国REITIPO50件であったが、19931年間で50件、1994 45件であった。

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