第 2 章 自由エネルギー変化の線形表現解析: Linear Expression by Representative
3.3 結果および考察
3.3.3 LERE-QSAR 解析および古典 QSAR 解析に基づくシアル酸誘導体の活性発現メカニ
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3.3.3 LERE-QSAR 解析および古典 QSAR 解析に基づくシアル酸誘導体
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部位とN1-NAとの間の疎水性相互作用が, シアル酸誘導体の輸送過程よりも重要であると
考えられる. しかしながら, π1のみを用いる古典QSAR式の統計的質は乏しく (r = 0.658), またπ1と MR との間には強い共線性が存在することから, その詳細については必ずしも明ら かとはならない.
一方で, LERE-QSAR 解析に基づくシアル酸誘導体の活性発現メカニズムの解釈は, 上
記の古典QSAR解析の結果に対するより強固な物理化学的な意味づけにつながると考える.
LERE-QSAR解析では, 一つの相関式 (3.10)を用いて一連のシアル酸誘導体とN1-NAの
複合体形成に伴う実測のΔGobs の変動を統一的に説明可能であった. 式 (3.10)における右 辺の第二項ΔGdissは, fragment C部位 (amino, guanidino基)の解離自由エネルギー変化を 表し, これは二つの化合物系列を区別するエネルギー差として寄与することから, 式 (3.21) におけるItypeに対応すると考えられる. このことは, amino基よりも塩基性が強いguanidino基 の導入が阻害活性値の増大に有効であることを裏付けている. また, 式 (3.10)の右辺の第 一項における Ecorrは, ΔGobsの変動に対して支配的に働くが, これは式 (3.22)におけるMR と良好に対応している (r = 0.993). すなわち, 両QSAR解析の結果はともに分散相互作用 エネルギーがΔGobs の変動に対して支配的に働くことを示唆している. 一方で, 式 (3.10)の 右辺の第一項におけるΔGsolpolar (CPCM-Bondi/PB)の大部分は溶媒和enthalpy変化に対応し, 式
(3.21)におけるπ1 と関連していると考えられるが, 両者の間の相関は良好ではないことから,
考慮していない溶媒和 entropy 変化の寄与も大きいと思われる [225–227]. 加えてΔGsolpolar
(CPCM-Bondi/PB)とΔEbindFMO/HF との間にはきわめて良好な逆相関関係が存在しており, これらの
ことが古典QSAR解析におけるπ1の解釈を見かけ上不明瞭にしていると考えられる.
図3.27 ΔGobsとΔGcalcのプロット (N1-NA−Set I化合物)
(a) LERE-QSAR式 (3.10)によるΔGcalc, (b) 古典QSAR式 (3.22)によるΔGcalc. (a) (b)
−14
ΔGcalc(kcal/mol) ΔGobs(kcal/mol)
−13 −12 −11−10 −9 −8
−7
−8
−9
−10
−11
−12
−13
−14 −7
Compounds 1–4(type I) Compounds 5–8(type II)
1
2
3
4
5
6 7 8
Classical QSAR (eq. (3.22)) r=0.969
ΔGcalc(kcal/mol)
−13 −12 −11 −10 −9 −8 −7
−14 ΔGobs(kcal/mol)
−7
−8
−9
−10
−11
−12
−13
−14
Compounds 1–4(type I) Compounds 5–8(type II)
1
2
3
4
5
6 7
8
LERE-QSAR (eq. (3.10)) r=0.988
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一連のSet II化合物とN1-NAの複合体形成に伴うΔGobsの変動は, entropic変化を陽に 考慮した統計的に有意な拡張LERE-QSAR相関式 (3.19)を用いて定量的に説明可能であ った (図3.28 (a)). 一方で, 表3.1 (b)に示すπ2およびMRを用いた古典QSAR解析では, 統計的質の乏しい相関式 (3.23)および(3.24)しか得ることができなかった (図3.28 (b)).
ΔGobs= 0.411 (ΔELJ6L+ ELJ6P/L− TΔSschlL− TSschlP/L) + 3.69 (3.19) n = 9, r = 0.961, s = 0.490 kcal/mol, F = 83.6
ΔGobs=−1.16 π2−7.88 (3.23)
n = 9, r = 0.614, s = 1.39 kcal/mol, F = 4.23
ΔGobs=−1.28 MR −0.671 (3.24)
n = 9, r = 0.701, s = 1.26 kcal/mol, F = 6.77
このことは, 図3.28 (b)からも確認可能なように, π2 (MR)では直鎖・分岐鎖alkoxy基の違いを 明確にすることができず, 特異な分岐鎖alkoxy基を有するoseltamivirが, 一連のSet II化 合物のなかで最大の阻害活性を示すことは必ずしも明白とはならないことを示唆している.
一方で, LERE-QSAR 相関式 (3.19)から, ΔGobs の変動は分散相互作用などの結合
enthalpic変化と適応entropic変化の両変化項のバランスによって支配されていること, また,
oseltamivirが一連のSet II化合物のなかで最大の阻害活性を示すのは, 複合体形成の前
後におけるリガンド部分の凍結 entropyがほとんどないことに起因することを定量的に明らか にした.
図3.28 ΔGobsとΔGcalcのプロット (N1-NA−Set II化合物)
(a) LERE-QSAR式 (3.19)によるΔGcalc, (b) 古典QSAR式 (3.24)によるΔGcalc. (a) (b)
2 1
34 5
6 7
8
9
−14
ΔGcalc(kcal/mol)
−13 −12 −11−10 −9 −8
−7
−8
−9
−10
−11
−12
−13
−14 −7
Compounds 1–6(normal) Compounds 7–9(branched)
2 1
3 5 4
6 7
8
9 Classical QSAR (eq. (3.24))
r=0.701
Compounds 1–6(normal) LERE-QSAR (eq. (3.19))
r=0.961
ΔGcalc(kcal/mol)
−13 −12 −11 −10 −9 −8 −7
−14 ΔGobs(kcal/mol)
−7
−8
−9
−10
−11
−12
−13
−14
ΔGobs(kcal/mol) Compounds 7–9(branched)
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以上の議論は, LERE-QSAR解析と古典QSAR解析の両者に対する優位性の議論では なく, 両アプローチに基づく統合解析が, 阻害剤の活性発現メカニズムの定量的な理解に おいて, より強固な物理化学的な意味づけを与えたことになる.