第 9 章 2 次曲線と 2 次曲面 136
11.2 Jordan 標準形
ゑに,c1 =· · ·=crν = 0. 以上から rν ≤ rν−1 もわかる. 従つてrν−1−rν 個の vectors arν+1,
· · ·, arν−1 が存在して, W(ν−2) の基にNa1, · · ·, Narν, arν+1, · · ·, arν−1 を付け加へたものが W(ν−1) の基になる. すなはち
(11.2.8) W(ν−1) =hNa1,· · · , Narν,arν+1,· · ·,arν−1i ⊕W(ν−2). 従つて, 上と同様にして
N2a1, · · · , N2aν, N2arν+1, · · · , Narν−1 ∈W(ν−2) は 1 次独立であり, かつ,
hN2a1,· · · , N2arν, Narν+1,· · · , Narµ−1i ∩W(ν−3) ={0}
であることがわかる. よつて rν−1 ≤ rν−2. 以下同様にして rν ≤ rν−1 ≤ · · · ≤ r1 で, vectors a1, · · ·, ar1 を適当に選べば
(11.2.9) W(i) =hNν−iari+1+1,· · · , Nν−iarν,· · · ,ari+1+1,· · ·,arii ⊕W(i−1) となることが証明される. これらのvectors の全体
[
1≤i≤ν
{Nj(ak)|0≤j ≤ν−i, rν + 1≤k ≤rν−1} は, 10.1.4 と 11.1.5(2) により,V の基を与へる.
W(ν)の基
W(ν−1)の基
W(2)の基
W(1)の基 Nν−1a1,· · ·, Nν−1arν Nν−2arν+1,· · ·, Nν−2arν−1 · · · Nar3+1,· · ·, Nar2 ar2+1,· · ·,ar1
Nν−2a1,· · ·, Nν−2arν Nν−3arν+1,· · ·, Nν−3arν−1 · · · ar3+1,· · ·,ar2
· · · · · ·
Na1,· · ·, Narν arν+1,· · ·,arν−1
a1,· · ·,arν
さてri+1+ 1≤j ≤ri に対し haj, Naj, · · · , Ni−1aji は明らかに N で安定な部分空間であ る. この基の順序を逆にしたものに関して N を行列で表現してみると
N(Ni−1aj, Ni−2aj, · · · , aj) = (Ni−1aj, Ni−2aj, · · · , aj)
0 1 0 0 1
. .. ...
0 1 0
となる. 従つて上の図に並んだ vectors のうち最左列にあるもの(ν 個)を下から上の順に並 べ, その次に, 第 2 列にあるものを下から上の順で並べ, これを最右列まで行なつて得られた
vectorsの組を基とすれば,対応する表現行列Aは所望の形になる. このとき,得られたJordan
行列は, 定理の主張の中の条件n1 ≥ · · · ≥nr を満たしてゐる.
(一意性)いま, N が V のある基に関して別の Jordan 行列を表現行列に持つとせよ.(記号を
節約して)それを (11.2.6)の右辺の形であるとせよ. ここで n1 ≥ · · · ≥nr であるとする. この とき, その基をなすvectorsのそれぞれが N により写る様子を見れば,これまでに現れたν,ri, mi 等がすべて, (11.2.6)の右辺,特に n1,· · ·, nr のみから定まることがわかる. 例へばν =n1
補題11.2.10 線形変換 T の相異なる固有値のすべてからなる集合を {λ1, · · · , λr} と する. 各 i について T を Wf(λi, T) の線形変換と見做したものを Ti とする. また Ii を Wf(λi, T) の単位変換 (恒等写像)とする. このとき T =T1⊕ · · · ⊕Tr であつて
T −(λ1I1 ⊕ · · · ⊕λrIr) は羃零変換である.
証明 前半は 11.1.5に他ならない. 準固有空間の定義から Ti−λiIi は fW(λi, T)の羃零変換で, T −(λ1I1 ⊕ · · · ⊕λrIr) = (T1⊕ · · · ⊕Tr)−(λ1I1⊕ · · · ⊕λrIr)
= (T1−λ1I1)⊕ · · · ⊕(Tr−λrIr) となつてゐるから, 結論を得る.
定理11.2.11 V の線形変換T の相異なる固有値のすべてを{λ1, · · · , λr} とする. T は 適当な基に関して次の形の行列により, 直和の順序を無視すれば一意的に, 表現される
A=J(λ1, n11)⊕ · · · ⊕J(λ1, n1m1)
| {z }
固有値がλ1
⊕ · · · ⊕J(λr, nr1)⊕ · · · ⊕J(λr, nrmr)
| {z }
固有値がλr
. またT の最小多項式は Ni = max{nij|1≤j ≤r}として, 次式で与へられる :
µT(t) = Yr i=1
(t−λi)Ni.
証明 11.2.10 の証明により, V の直和分解 V =
Mr i=1
Wf(λi, T)に応じて, T −(λ1I1⊕ · · · ⊕λrIr) =
Mr i=1
(Ti−λiIi) (ここに Ii は Wf(λi, T) の単位変換) であり, この直和因子のそれぞれが羃零変換であるから, 11.2.5 により, 適当な基に関して T −(λ1I1⊕ · · · ⊕λrIr) の表現行列は J(0, ni1)⊕ · · · ⊕J(0, nimi) の形で表される. ゆゑに Ti =λiIi+ (Ti−λiIi) の表現行列は, Ik を k 次単位行列として,
λiI+ J(0, ni1)⊕ · · · ⊕J(0, nimi)
= λiIni1+J(0, ni1)
⊕ · · · ⊕ λiInimi+J(0, nimi)
=J(λi, ni1)⊕ · · · ⊕J(λi, nimi)
と相似になる. これから所望の主張が従ふ. 一意性は 11.2.5 の一意性からの帰結である. 定義11.2.12 11.2.11 の一意性に鑑み, 線形変換T の表現行列 が Jordan 行列 B に相似 であれば, B を T のJordan 標準形と称する. また正方行列 A について TA の Jordan 標
準形が B のとき,B を A のJordan 標準形と称する.
最後に 11.2.11を行列の言葉で述べておく.
定理11.2.13 (1) 任意の正方行列AはあるJordan行列 B と相似である. しかも, Jordan 細胞の順序を無視すれば B は一意的に定まる.
(2) µA(t) = µTA(t) ( 10.2.10を見よ) であり, それは Jordan 標準形を構成する Jordan 細胞 の様子から 11.2.11 の様に与へられる.
定義11.2.14 正方行列 A が対角化可能であるとき A は半単純行列であるといはれる.
補題11.2.15 任意の行列 A は次の様な和に一意的に表される.
(11.2.16) A=S+N, S は半単純行列, N は羃零行列, SN =N S.
このとき, S,N は A の K 係数多項式として表される. 証明 いま A の異る固有値の全体をα1, · · ·, αr とし,
φA(t) = Yr
i=1
(t−αi)ni, fi(t) =Y
j̸=i
(t−αj)nj
とおく. このとき 11.1.5 の証明と同様に
1 = Xr
i
gi(t)fi(t) となる gi(t)∈K[t] が存在する. いま,
S =X
i
αigi(A)fi(A) (これは A の K 係数多項式である )
とおき, fW(α1, A), · · ·, fW(αr, A) のそれぞれの基 (列 vectors) を取り, それらを順に並べてで きる正方行列を P とすれば Aj ∈Mat(nj,K) が存在して
AP =P
A1
. ..
As
と書け, また(11.1.12) から SP =P
α1In1
. ..
αsIns
となることがわかる. つまり B =P−1SP が対角行列となる. よつてS は半単純である. また N =A−S とおけば
P−1N P =P−1AP −B =
N1
N2
. ..
Ns
, Nj =Aj−αjInj.
各 Ni が羃零であるから,N も羃零である. 次に一意性を証明する. A=S+N =S′+N′ と 2 通りに分解されたとせよ. 仮定により S′N′ =N′S′ であるから, S′ と N′ は A と可換であり, さらに A の多項式であるS や N とも可換である. 10.3.6 より S と S′ は同時に対角化される から S−S′ は半単純であり, 10.5.7 によりN−N′ は羃零行列である. いま S−S′ =N′−N で あるから10.5.12により S−S′ =N′−N =O,即ち S′ =S, N′ =N でなければならない. 演 習 問 題 11.2
11.2.17 上の 11.2.15 において, A の Jordan 標準形を J とし, J =P−1AP なる正則行列 P を取り, さらにJ の対角成分の1 つ上の 1を(存在すれば)すべて 0 に置き換へてできる対 角行列を B とするとき,
S =P BP−1, N =P(J−B)P−1