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Vector 空間と部分空間

ドキュメント内 線 形 代 数 学 (ページ 87-93)

第 6 章 Vector 空間 80

6.2 Vector 空間と部分空間

まづvector 空間の定義から始める.

定義6.2.1 体 K と集合V に対し,

V0 和と呼ばれる写像 V ×V →V, (x,y)7→x+y および

scalar 倍と呼ばれる写像 K×V →V, (a,x)7→ax が与へられて,

これらの演算について以下のV1〜V7のすべてが成り立つときVK上のvector 空間

(あるいはK 上の線形空間, K 線形空間, Kvector空間など)といふ. 以下x, y, z ∈V は任意の元を表す.

V1 (結合律) (x+y) +z =x+ (y+z).

V2 (交換律) x+y =y+x.

V3 零 vector と呼ばれる元0 が存在して x+0=x.

V4 各 x に対して,逆 vectorと呼ばれる x が存在して, x+ (x) =0.

V5 a(bx) = (ab)x.

V6 a(x+y) =ax+ay.

V7 (a+b)x=ax+bx.

6.2.2 K上の vector空間 V において 0x=0 が成り立つことを示せ. 注意6.2.3 V を体K 上のvector 空間とせよ.

(1) 零vector 0 は唯1つだけ存在する. なぜなら,別に0 が存在すれば,V3により0+0 =0, 0+0 =0 がともに成り立つ. これと V2 により 0 =0 である.

(2) x に対し, V4にいふx は唯 1つだけ存在する. 実際,もう 1 つあつたとして, x とする とx=0x= (x +x) + (x)) =x+ (x) + (x)) =x+0=x となるからである. 6.2.4 (Vector 空間の例) ここでは, vector 空間や部分空間の例を挙げる. Vector 空間は至 るところに現れる. 読者にはこれらを確かめて欲しい.

(1) Mat(n,1,K) =KnK 上の 数 vector空間と呼ばれるK上の vector空間. (2) V =Rcosx+Rsinx. は R 上 vector 空間である.

(3) 体 K上の n 次以下の x の多項式全体を K[x]n と記す. これは普通の和と scalar 倍に関

して K上の vector空間である.

(4) 体 Q(i) = {a+bi|a∈Q, b∈Q} はQ 上のvector 空間である. (5) 体 Q(

2) ={a+b√

2|a Q, b Q}はQ 上 2 次元のvector 空間である.

(6) 5 元体 F5 上の多項式 x3 + 2x+ 1 は既約である. これの根 α の F5 上の有理式の全体

F5(α)はF5 上のvector 空間である. 定義6.2.5 Vector 空間V の部分集合 W

S1 0∈W,

S2 u, v ∈W ならば u+v ∈W, S3 c∈K, u∈W ならば cu∈W

6.2.6 K上の vector空間 V の部分空間 W は, K上の vector空間であることを示せ.

このことから,V の部分集合 W V における和とscalar 倍に関して, vector 空間をなすこととがW V 部分空間であることに他ならないことがわかる.

例題6.2.7 A∈Mat(m, n,K) のとき, 次の WKn の部分空間であることを示せ : W ={x|Ax=0}.

6.2.5 の 3 つの条件を確認すればよい.

(S1 について) A0=0であるから 0∈W である.

(S2 について) x,y∈W とするとAx=0, Ay =0. よつて

A(x+y) =Ax+Ay=0+0=0 となり, x+y∈W である.

(S3 について) x∈W, c∈K とすると Ax=0 であるから A(cx) =c(Ax) = c0=0 となり, cx∈W である.

例題6.2.8 次のW は R3 の部分空間であるか否か調べよ. (1) W =

xR3

3x1+ 2x2 x3 = 0 x14x2+ 5x3 = 0

. (2) W =

xR3

3x1+ 2x2 x3 = 2 x14x2+ 5x3 = 1

. (1) A=

3 2 1 1 4 5

とおけばW ={x|Ax=0} と書けるから, 6.2.7により, 部分空

間である. あるいは,直接に 6.2.5 の 3 条件を確認してもよい.

(2) A0=06= h 2

1

i であるから,部分空間ではない. ちなみに, 他の2 条件も成立しないから, それを示してもよい.

例題6.2.9 次のW は R[x]3 の部分空間になるか否かを調べよ. (1) W ={f(x)∈R[x]3|f(1) = 0, f(2) = 0}.

(2) W ={f(x)∈R[x]3|f(1) = 2}.

(3) W ={f(x)∈R[x]3|xf(1) + 3f(x) = 0}. (1) W は部分空間である.

(2) W は部分空間でない. (3) W は部分空間である.

定義6.2.10 V が体K 上のvector 空間で,Wi (1≤i≤r)V の部分空間のとき, 集合 {w1 +· · ·+wr|wi ∈Wi (1≤i≤r)} は部分空間である (確認せよ). これを W1,· · ·, Wr の和と呼び W1+· · ·+Wr または

Xr i=1

Wi で表す.

6.2.11 上の6.2.10 で述べた W1+· · ·+WrV の部分空間であることを示せ.

演 習 問 題 6.2

6.2.12 次のW は R 上の vector空間 R3 の部分空間になるか否かを調べよ. (1) W =

xR3

4x1−x23x3 = 0 x1+ 3x25x3 = 0

. (2) W =

xR3

4x1−x23x3 0 x1+ 3x25x3 1

. (3) W =

xR3

2x1−x2 = 2x3 x1+ 2x2 = 5x3

. (4) W =

xR3

x12−x22+x32 = 0 x1−x2+ 3x3 = 0

. (5) W =

xR3 x1 + 2x25x3 = 0 . (6) W =

xR3x1, x2, x3 はすべて整数 . (7) W =

xR3x1, x2, x3 はすべて有理数 .

6.2.13 次のW は R 上の vector空間 R[x]3 の部分空間になるか否かを調べよ.

(1) W ={f(x)∈R[x]3 |f(0) = 0, f(2) = 0}. (2) W ={f(x)∈R[x]3 |f(1)2}.

(3) W ={f(x)∈R[x]3 |(x1)f(x) +f(x) = 0}.

(4) W ={f(x)∈R[x]3 |(x1)2f′′(x)−xf(1) +f(x) = 0}. (5) W ={f(x)∈R[x]3 |f(x)の係数はすべて整数}.

(6) W ={f(x)∈R[x]3 |f(x)の係数はすべて有理数}.

6.2.14 6.2.5 の条件 S1 を次の条件で置き換へてもよいことを示せ: S1 W は空集合ではない.

6.2.15 VK上の vector 空間とせよ. W1W2V の部分空間であるとき, W1∩W2V の部分空間であることを示せ.

6.2.16 R3 の部分空間 W1,W2 で, W1∪W2 が R3 の部分空間でない例を挙げよ.

6.2.17 VK上の vector 空間とせよ. W1W2V の部分空間であるとき, W1∪W2V の部分空間であるならば, W1 ⊃W2 またはW1 ⊃W2 であることを示せ.

6.2.18 Wi (1≤i≤r)が vector空間 V の部分空間のとき,集合 W1+· · ·+Wr は集合(V1 とする)W1∪ · · · ∪Wr に属する vectorsの1 次結合の全体(V2 とする)に他ならないことを 示せ.

6.3 1 次独立と 1 次従属

ここでは 1 次独立と1 次従属について学ぶ.

定義6.3.1 V を体K 上のvector 空間とする. u1, u2, · · ·, un∈V について c1u1+· · ·+cnun (c1, · · ·, cnK)

なる式を u1, u2, · · ·, un の 1 次結合と呼ぶ.

6.3.2 6.3.1 の式がV の vector を表すことを(6.2.1 を使つて) 確認せよ.

定義6.3.3 体 K 上のvector 空間V において, u1, u2, · · ·, un∈V を考へる.

(1) これらの vectors に関する

c1u1+· · ·+cnun =0 (c, · · ·, cnK)

なる形の関係式を u1, u2, · · ·, un の 1 次関係と呼ぶ. とくに, 1次関係 0u1+· · ·+ 0un=0

を自明な 1 次関係といふ.

(2) vectors u1, u2,· · ·, un ∈V が自明な 1次関係しか持たないとき,これらの vectorsは K 上 1次独立であるといはれる. K がはつきりしてゐれば単に 1次独立といふ.

(3) 1 次独立でないvectors は 1 次従属であるといはれる.

例題6.3.4 次の Rn の vectors の組は 1 次独立であるか否か判定せよ. 1 次従属である場合 は, 自明でない 1 次関係を 1つ記せ.

u1 =

" 0 1 1

#

, u2 =

" 1 1 2

#

, u3 =

" 2

1

3

# .

x1u1+x2u2+x3u3 =0, 即ち



0 1 2 1 1 1 1 2 3



 x1 x2 x3

=

 0 0 0



となるx1, x2, x3 を求めてみる. 係数行列を簡約化 すると右の様になる. この計算結果から

(x1 + x3 = 0, x22x3 = 0.

よつて, 例へばx1 =1,x2 = 2, x3 = 1 として

u1+ 2u2+u3 =0 なる非自明な1 次関係式が存在する.

よつて u1, u2, u3 は 1 次従属である.

0 1 2 1 1 1 1 2 3

1 1 1 2 0 1 2 1 1 2 3

1 1 1 0 1 2

0 1 2 3 1 1 0 1 1 2 0 1 2

0 0 0 3 2

6.3.5 u1, u2, · · ·, un が 1 次従属であるためには, u1, u2, · · ·, un のうち少くとも 1 つの

vector が他のn−1個の vectorsの 1 次結合で書けることが必要十分である.

6.3.6 u1, u2,· · ·, un が 1次独立で,u, u1, u2,· · ·, un が 1次従属ならばuu1, u2, · · ·, un の 1次結合で書ける.

1 次結合の記法. 体 K 上の vector 空間 V の vectors u1, · · ·, um と行列 A = [aij] Mat(m, n,K) について,

(u1,u2, · · · ,um)A = (u1, u2, · · · , um)



a11 · · · a1n ... ... am1 · · · amn



= (a11u1+· · ·+am1um, · · · , a1nu1+· · ·+amnum) と記すことにする. 例へば

(u1, u2,u3)

 2 1

3 5

4 7

 = ( 2u13u2+ 4u3, u1+ 5u2+ 7u3).

6.3.7 体 K 上の vector 空間 Vu1, · · ·, um ∈V, A Mat(m, n,K), B Mat(n, ℓ,K) に対し,

(u1, u2, · · · , um)A

B = (u1, u2, · · · , um) (AB) であることを示せ.

補題6.3.8 V の vectors の 2 つの組{u1, u2, · · · , um}, {v1, v2, · · · , vn} について, (1) v1, v2, · · ·,vn のどれもがu1,u2,· · ·, um の 1 次結合で書けて,

(2) n > m である

ならば v1,v2, · · ·, vn は 1 次従属である. 証明 ある自明でない c1,c2, · · ·,cn が等式

c1v1+c2v2+· · ·+cnvn=0

を満たすことを示す. 条件(1) によりA∈Mat(m, n,K) が存在して, (v1, v2, · · · , vm) = (u1, u2, · · · , um)A となる. このとき条件 (2) から

Ax=0 は非自明な解を持つ. その1 つを

c=



c1 c2 ... cn



とおけば, これが求めるものである. 実際

c1v1+c2v2+· · ·+cnvn = (v1, v2, · · ·, vm)c= (u1, u2, · · · , um)Ac

= (u1, u2, · · · , um)0=0

6.3.9 V の vectorsの 2つの組{u1, u2, · · · , um}, {v1, v2, · · · , vn} について, (1) v1, v2, · · ·,vn のどれもがu1,u2,· · ·, um の 1 次結合で書けて,

(2) v1, v2, · · ·,vn が 1次独立 ならば n≤m である.

証明 もしも n > m であれば, 6.3.8により, v1,v2, · · ·,vn が 1 次従属となり (2) が否定され てしまふので,n ≤m でなければならない.

6.3.10 Vectorsu1,u2,· · ·, um が 1 次独立で, A∈Mat(m, n,K)のとき, (u1, u2, · · · , um)A= (0, 0, · · ·, 0)

ならば A=O である. これを示せ.

6.3.11 Vectorsu1,u2,· · ·, um が 1 次独立で, A, B Mat(m, n,K)のとき, (u1, u2,· · · , um)A= (u1, u2, · · · , um)B

ならば A=B である. これを示せ.

演 習 問 題 6.3

6.3.12 次のそれぞれの vectors の組について, それらが 1 次独立か 1 次従属かを判定せよ. 一次従属の場合は自明な 1次関係を 1 つ挙げよ.

(1) u1 =



 1 2 3 4



, u2 =



 2 7 8 4



, u3 =



 1 2

1

3



, u4 =



 2 1 0 5



.

(2) u1 =



 1 1

1 0



, u2 =



 1 2

1

3



, u3 =



 2 1 0 5



, u4 =





1 2 1 4



.

6.3.13 Vector 空間 V において 1 次関係v1 = 5u1 + 2u2, v2 = 2u1+ 3u2, v3 = u1 u2 があるとき, 6.3.8 によりv1, v2, v3 は 1 次従属である. これらの非自明な 1 次関係を 1 つ挙 げよ.

6.3.14 V を vector 空間とする. u1, · · ·, un V について, このうち, どの n−1 も 1 次 独立であつたとしても, これら n 個の vectors が 1 次独立とは限らない. 一般の n について

V =Rn 内のvectors を例に挙げて示せ.

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