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正規直交基と直交行列

ドキュメント内 線 形 代 数 学 (ページ 134-137)

第 8 章 内積空間 124

8.2 正規直交基と直交行列

この節でも V は内積 ( , ) を持つ R 上の有限次元 vector 空間を表すものとする. また Rn は標準内積を持つ内積空間を表すものとする.

定義8.2.1 dim(V) = n とする. {u1, · · ·, un}V の基で (8.2.2) (ui,uj) = δij ( 1≤i, j ≤n)

を満たすとする. この様な基を正規直交基と称する. 実際, 8.1.8, 6.5.17, および仮定 dim(V) = n により, (8.2.2) が成り立てば,{u1, · · · , un} は基となることに注意せよ.

命題8.2.3 ( Gram-Schmidtの直交化2)) {v1,· · · ,vn}V の基とする. このとき V の 正規直交基 {u1, · · · , un}

hv1, · · · , vriR =hu1, · · ·, uriR (1≤r≤n) となるものが存在する. (記号については6.5.1を見よ. )

証明 まづu1 = ||v1

1||v1 としてr = 1 の場合が成り立つ. 次に v2 =v2(v2,u1)u1, u2 = ||v1

2||v2

とおくと (u2,u1) = 0, ||u2|| = 1 となることがわかるから r = 2 のときも成り立つ. 一般に u1, · · ·, ur が所望の条件を満たすとき,

vr+1 =vr+1 Xr

i=1

(vr+1,ui)ui, ur+1 = ||v1

r+1||vr+1 とおけば (ur+1,ui) = 0 (i≤i≤r) であり,ur+1 の作り方から

hu1,· · · , ur, ur+1iR =hu1,· · · , ur, vr+1iR=hv1, · · · ,vr, vr+1iR

となる.

定義8.2.4 内積空間 V 上の線形変換T が, 任意の u,v ∈V に対して, 等式 (T(u), T(v)) = (u,v)

を満たすならば, T は直交変換と呼ばれる.

注意8.2.5 Vector空間V における2つのvectors u,v の距離をkuvkと見做せば, 8.2.4と 8.1.12(2)から分る様に,直交変換T : V →V とは,:::::::任意の

::2:::::::::::::::::::::::::::::::::::点間の距離を変へない写像のこと である. ( 8.2.17も見よ. )

注意8.2.6 {u1, · · · , un} を内積空間 V の正規直交基とする. u = a1u1+· · ·+anun, v = b1u1+· · ·+bnun と書くとき,

(u,v) = Xn

j=1

Xn i=1

aibj(ui,uj) =a1b1+· · ·+anbn.

2)Jørgen Pedersen Gram (1850-1916) Denmark生まれ. Erhard Schmidt (1876-1959) Estonia生まれ.

命題8.2.7 {u1, · · · , un}を内積空間 V の正規直交基とする. V の線形変換 T が直交変 換であるためには, {T(u1), · · · , T(un)} が内積空間 V の正規直交基であることが必要十 分である.

証明 (必要性) T は直交変換だから

(T(ui), T(uj)) =δij (1≤i, j ≤n)

である. dimV =n であるから, {T(u1),· · · , T(un)} は正規直交基である.

(十分性) u, v ∈V とし, u =a1u1+· · ·+anun, v =b1u1+· · ·+bnun とすれば, 8.2.6 によ つて

(u,v) =a1b1+· · ·+anbn.

しかるにT(u) =a1T(u1) +· · ·+anT(un),T(v) =b1T(u1) +· · ·+bnT(un)でもあるから,仮 定により

(T(u), T(v)) = a1b1+· · ·+anbn= (u,v) を得,T が直交変換であることがわかる.

注意8.2.8 高校までで学ぶ 3 次元以下 Euclid 空間において, 原点を中心とする回転移動や, 原点を通る1本の直線あるいは 1枚の平面に関する対称移動, さらにそれらの合成変換は任意 の 2 点間の距離を変へない. 直交変換はそれを内積空間 (Euclid 空間の自然な一般化) へ拡張 したものに他ならない. 余談であるが,距離は変更を受けるれども,角度は変はらない様な写像 (等角 写像と呼ぶ) も詳しく調べられてゐる. その例は複素函数論で学ぶであらう.

定義8.2.9 実正方行列 AtAA=I を満たすときA は直交行列であるといはれる.

8.2.10 次の行列は直交行列であることを確かめよ.

h cosθ sinθ sinθ cosθ

i ,

" 0 1 0 0 0 1

1 0 0

# ,

" cosϕ sinϕ 0 cosθsinϕ cosθcosϕ sinθ sinθsinϕ sinθcosϕ cosθ

# .

8.2.11 直交行列の行列式は 1 または1 であることを示せ.

命題8.2.12 A= [a1 · · · an]Mat(n,R) について, 次の4 つは同値. (1) A は直交行列.

(2) A は正則であり tA=A1.

(3) {a1, · · · ,an} が Rn の正規直交基. (4) TA は直交変換.

証明 (1) (2). tAA=I ならば3.5.2 によりAtA=ItA=A1 である. 逆は明らか. (1)

(3). AtA = [(ai,aj)] であることからわかる.

(3) (4). 8.2.7 を V =Rn, {u1, · · · , un}={e1, · · · , en}, T =TA として適用せよ.

演 習 問 題 8.2

8.2.13 R4 における 3つの vectors





1 1 1 1





,





 1 3 3

1





,





 1

3 3 5





の生成する部分空間を W とする. この vectors を, この順序に関して Gram-Schmidt の直交 化により, 直交化し, W の直交基を求めよ.

8.2.14 R[x]2 を 8.1.4 の内積に関する内積空間とする. このとき, 基 {1, x, x2}

Gram-Schmidt の方法で正規直交化せよ.

8.2.15 P が直交行列であれば P1 も直交行列であることを示せ.

8.2.16 2 つの直交行列の積もまた直交行列であることを示せ.

8.2.17 TV の線形変換とする. T が直交変換であるためには kT(u)k= kuk が全ての u∈V について成り立つことが必要十分であることを示せ.

8.2.18 交代行列 H Mat(n,R)は 1 を固有値に持たないことを示せ.

( Hint : u Au との標準内積を利用して Au=uならば u=0 となることを示せ. )

8.2.19 直交行列 A∈ Mat(n,R) について |A|= 1 ならば 1 は A の固有値であることを 証明せよ.

( Hint : 行列式が1であるいくつかの直交行列の固有多項式を挙げておく:

t337t237t+ 1, t4+49t349t1, t535t425t325t235t+ 1. 7.5.13も使ふ. )

8.2.20 H が成分を有理数とする交代行列のときf(H) = (I−H)(I+H)1 は, 1を固有値 に持たず, しかも成分がすべて有理数である様な直交行列であることを示せ. さらに,f

{H Mat(n,Q)|H は交代行列} から

{T Mat(n,Q)|T|T|= 1 かつ 1を固有値に持たない直交行列}

への全単射であることを示し, これの逆の対応を求めよ. (f Cayley変換と呼ばれる. )

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