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3. 臨床薬理に関する概括評価

3.3 In vitro 活性

In vitroにおいて、SOFはジェノタイプ1a、1b、2a, 3a及び4aの安定した全長HCVレプリコン、

並びにジェノタイプ2b、5a又は6aのNS5Bをコードするジェノタイプ1bキメラレプリコンに対 して活性を示した(EC50 = 0.014~0.11 µmol/L)。レプリコンアッセイでは、使用した遺伝子型及 び試験方法に応じて、広い範囲で強力な活性が認められた(14~241 nmol/L)。さらに、SOFはジ ェノタイプ 1a及び 2aの HCV 感染培養細胞のウイルスに対しても活性を示した(ジェノタイプ 1a及び2aのHCVウイルス系でそれぞれEC50 = 0.03及び0.02 µmol/L)。ヒト血清又はヒト血清ア ルブミンの有無により、SOFのEC50値又はEC95値に有意差はなかった。SOFは、HIV-1、B型肝 炎ウイルス(HBV)、ヒトライノウイルス(HRV)10及び14型、RSウイルス(RSV)、A型及び B 型インフルエンザ及び各種フラビウイルスに対して試験したとき、活性を示さなかった。全体 として、SOFはin vitroで、広範なジェノタイプのHCVの複製に対して有意な阻害を示した。

ジェノタイプ1b、2a、3a及び4aの全長HCVレプリコン及び、ジェノタイプ2b、5a又は6aの NS5Bをコードするジェノタイプ1bキメラレプリコンに対する評価を行ったin vitro耐性選択試験 では、in vitroでSOFに対する感受性が低下する最も重要な変異として、NS5B S282T変異が選択

された。NS5B S282T変異を有するレプリコンでは、SOFに対する感受性が2.4~18.1分の1に低 下していた。S282T 変異をコードする組換え NS5B タンパク質を用いた生化学試験において、

GS-461203 についても活性低下が認められた。なお、S282T をコードするジェノタイプ 1~6 の

HCVレプリコンでは、RBVに対する感受性が上昇していた。さらに、ジェノタイプを通じてこの NS5B変異では複製能の低下がみられた。全体として、上記データから、NS5B S282T変異がin vitro における主なSOF耐性変異であり、複製能が低下していることが示された。

SOFと主な非ヌクレオシド阻害剤(NNI)、PI及びNS5A阻害剤に対する変異体の交差耐性の分 析から、SOF の活性は、他のクラスの直接作用型抗ウイルス剤に対する感受性が低下した HCV 変異においても維持されることが示された。さらに、SOFでは、RBVを用いた治療法が無効であ った被験者で確認された 2 種類の変異(T390I 及びF415Y)に対する活性が維持されていた。報 告されているヌクレオシド阻害剤(NI)に関連した変異(L159F 及び L320F)に対しても、SOF の活性は維持されていた{23664}。薬剤併用試験では、SOFとLDV(NS5A阻害剤)、DCV(NS5A 阻害剤)、boceprevir(BOCPI)、TVR(PI)、SMV(PI)又はIFNとの間に相加的相互作用が認め られた。SOF と RBV を併用したところ、わずかな相乗的相互作用がみられた。SOF を上記のい ずれの薬剤と併用した場合も、拮抗作用は認められなかった。さらに、HIV 治療で一般に用いら れる抗レトロウイルス剤の存在下で、SOF の活性は変化しなかった。これらのデータから、SOF と他の抗HCV薬との併用並びにHCV/HIV重複感染患者におけるSOFの使用が裏付けられる。

全体として、SOF は、NS5B ポリメラーゼを直接阻害することにより、幅広いジェノタイプの HCVに対して活性を示す。In vitroで、NS5B S282T変異体では、SOFに対する感受性が低下する 一方、RBVに対する感受性は上昇し、ウイルス複製能は低下している。交差耐性の検討及び薬剤 併用試験では、HCV感染の治療において、SOFを他の抗ウイルス剤と併用で使用することが裏付 けられている。

3.3.2 LDV

LDVは、ジェノタイプ1a及び1bのHCVに対してピコモルレベルで効力を発揮することが示 されており、平均50%有効濃度(EC50)はそれぞれ0.031及び0.004 nmol/Lである。さらに、LDV はジェノタイプ 2~6 に対しても様々な水準の抗ウイルス活性を示し、その EC50 値は 0.15~

530 nmol/Lであった。LDVは、NS5AにL31を有する遺伝子型2a JFH-1レプリコンに対するEC50

値は21 nmol/Lであったが、NS5AにM31を有する遺伝子型2a J6株に対しては活性が低下した

(EC50 = 249 nmol/L)。同様に、NS5AにL31又はM31を有するジェノタイプ2bレプリコンに対 するLDVの活性には差があり、EC50値はそれぞれ16及び530 nmol/Lであった。ジェノタイプ4a、

5a及び6aに対するLDVの活性はジェノタイプ1に対する活性と比較すると低いものの、比較的 強力であり、EC50値はそれぞれ0.39、0.15及び1.1 nmol/Lであった。一方、ジェノタイプ3a及び 6eに対するLDVの活性はおおむね低かった(それぞれEC50 = 168及び264 nmol/L)。ジェノタイ プ2aのHCV細胞培養による感染モデル(J6/JFH-1)では、LDVのEC50値は3.2~8.5 nmol/Lであ った。

LDV は、BVDV、RSV、HBV、HIV-1、HRV、インフルエンザA 及びB、様々なフラビウイル

スなど、検討した他のウイルスに対して顕著な活性を示さなかった。多くの主要な細胞株におい て、細胞毒性は低かった[50%細胞毒性濃度(CC50):4029~50000 nmol/L超]。

In vitro選択試験では、NS5AにおけるY93H置換は、ジェノタイプ1a及び1bのLDVに対する

主要な耐性置換であり、3000 倍を超える耐性をもたらすことが確認された。ジェノタイプ 1a 耐 性選択試験により、Q30E NS5Aの置換が確認された。さらに、3日間単独療法第1b相臨床試験で は、NS5Aアミノ酸位28、30、31、93における置換が多数選択された。LDVの抗ウイルス活性は、

NS5A阻害剤に対する耐性変異(ジェノタイプ1a:K24G/N、M28T/A/G、Q30E/G/H/K/R、L31M/V/I、

P32L、S38F、H58D、A92T及びY93C/H/N/S、ジェノタイプ1b:L31V/I、P58D、A92K及びY93H)

をコードする一連のHCVレプリコンに対して、有意に低下(野生型と比べて、EC50値が10倍超)

した。対照的に、NS5A変異に対するSOF又はRBVのEC50値に顕著な変化はなかった。SOFを 含むNIや様々なクラスのNNIに対する耐性変異を含め、検討した全てのNS3/4AのPI耐性変異 及びNS5B阻害剤耐性変異に対して、LDVは十分な活性を有していた。

In vitro併用試験では、LDVをSOF、並びにBOC(PI)、SMV(PI)、TVR(PI)、DCV(NS5A

阻害剤)など、その他多くの主なHCV阻害剤と併用した際に、相加的抗ウイルス作用が認められ た。LDVをIFNα及びRBVなど他の薬剤クラスと併用したとき、軽度~中程度の相乗的抗ウイル ス作用が認められた。さらに、HIV 治療で用いられる一般的な抗レトロウイルス剤の存在下で、

LDV の活性は変化しなかった。これらのデータから、LDV と他の抗 HCV 薬との併用並びに

HCV/HIV重複感染患者におけるLDVの使用が裏付けられる。

試験で得られたいくつかの知見から、NS5AがLDVの標的であることが裏付けられている(本

項、第3.2.2章)。さらに、臨床試験では、LDVの単剤投与中にNS5Aの変異の選択が認められた

(第4.2.1.1.5項、PC-256-2029)。

LDVの副次的薬理試験では、細胞毒性、イオンチャネル/受容体阻害作用又はヒトキナーゼの 阻害について、注目すべき問題点は認められなかった。

3.3.3 LDV/SOF

SOFとLDVはいずれも単剤でHCVに対して高い効力と特異性を示し、それぞれHCV NS5B及 び NS5Aタンパク質を標的とする。両化合物ともに、多数の異なる細胞株における細胞毒性は低 く、検討した他のウイルスに対しては顕著な抗ウイルス活性を示さない。さらに、in vitroの併用 試験で検討したところ、SOFとLDVのいずれも、単剤として、広範の一般的な各種HIV阻害薬 の影響を受けず、また影響を及ぼすこともなかった。SOF及びLDV と抗HIV薬との間に拮抗作 用は生じないことから、LDV/SOFと抗HIV薬との併用試験は実施しなかった。

SOFとLDVの両者を用いたin vitro併用試験では、in vitroでの細胞を用いたジェノタイプ1a 及び 1bの HCV レプリコンアッセイにより、相加的作用が示された。個別成分としての SOF と LDV は、検討した全ての他の抗 HCV剤と相加的~相乗的な作用を示した。これらの試験では細 胞毒性の増加又は拮抗作用は観察されず、さらに、SOFとLDVが単剤で他の抗HCV薬と拮抗作 用を示さないことから、LDV/SOFと抗HCV薬との追加の併用試験は実施しなかった。

SOFとLDVはいずれも広範な既知の耐性変異に対して検討されている。これには、HCVプロ

テアーゼ阻害剤に耐性を示すNS3耐性変異、並びにNI、NNI及びRBVへの影響が知られている NS5A 耐性変異及びNS5B 耐性変異が含まれる。これらの試験で交差耐性は認められず、SOF と LDV はそれぞれ自身とは異なる他のクラスの阻害剤に耐性を有する RAV に対しても、強い効力 を維持していた。

以上より、SOFとLDVの間に相加的相互作用が認められ、交差耐性が認められないことから、

両薬剤を配合錠として投与すれば、強力な抗ウイルス活性と良好な耐性プロファイルが得られる ことが示唆される。この所見はジェノタイプ1の日本人慢性HCV感染患者を対象とした国内臨床 試験(GS-US-337-0113試験)を含めた第3相試験で臨床的に確認された(第2.7.2.1.11.1項及び第 2.7.2.1.11.3項)。