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6. ベネフィットとリスクに関する結論

6.1 HCV 感染症の治療における LDV/SOF のベネフィット

国内のガイドラインで推奨されているジェノタイプ1の慢性HCV感染症に対する標準治療は、

Peg-IFNαの週1回皮下投与とRBV経口投与の併用をベースとする治療である。Peg-IFNα+RBVを

ベースとする治療にHCV NS3/4A PIを上乗せすることにより、ジェノタイプ1の慢性HCV感染 患者でのSVR率は向上したものの、Peg-IFNα+RBV+TVR及びPeg-IFNα+RBV+SMVの治療アルゴ リズムは複雑で、肝線維化の程度及び前治療への反応性に応じて最長48週間の投与期間が必要で

ある。さらに、これらのレジメンは投与期間中のウイルス学的反応に応じて調整を行う必要があ る。SMVの忍容性は一般にTVRより良好とされるが、これらいずれのレジメンもPeg-IFNα及び RBVの2剤併用にさらに上乗せした副作用が発現するのみならず、服用する錠剤数は多く、多数 の薬物相互作用を伴う。日本では患者が高齢で合併症も多いことから、これらの点を考慮するこ とは特に重要である。

最近まで、Peg-IFNα+RBV±PIレジメンに不適格、不耐容又は当該レジメンを受ける意思のない 患者に対する治療選択肢は存在しなかった。24週間のDCV+ASVレジメンの承認により、これら の患者にもIFN及びRBVを使用しない治療を受けることができるようになったが、当該レジメン の有効性はSVR24率84.7%(188/222例)と十分とは言えない。また、全体で15%(34/222例)

の被験者がウイルス学的治療不成功を示し、DCV 及びASV の両方に対する耐性変異(大部分は

NS5A-L31M/V-Y93H及びNS3-D168Eであった)の出現と関連していた。ベースライン時にNS5A

耐性変異を有する患者では治療不成功率が高く、NS5A耐性変異を有する患者でのSVR率は40.5%

(15/37例)であり、このうちベースライン時にY93H変異及びL31M/V変異を有していた被験者 でのSVR率はそれぞれ、43.3%(13/30例)及び25.0%(2/8例)であった{29482}。Y93H及びL31M/V 変異は、ジェノタイプ1の慢性HCV感染日本人患者のそれぞれ8.2%及び2.7%が有していること から{30692}、これら所見は特に重要である。さらに、当該レジメンはIFNをベースとする治療に 適格な未治療患者に対する適応はなく、また、ジェノタイプ 1aの患者ではSVR率が低いことが 報告されている{J 010}。

IFN及びRBVを使用しないDCV+ACVによる24週間の治療レジメンは、DCV 60 mg 1日1回

投与及びASV 200 mg 1日2回投与から構成されている。DCV+ASV療法はIFN及びRBVをベー

スとする治療法に伴う副作用の問題がなく、良好な安全性プロファイルを有すると予想されるが、

DCV+ASVの第3相試験では、重篤な有害事象は5.9%(13/222例)の被験者に発現し、有害事象

により治療を中止した被験者は5.0%(11/222例)であった。投与中止に至った有害事象で最も多 かったものはALT又はASTの増加であり、有害事象により治療を中止した11 例のうち10例が これらの事象によるものであった{29482}。両剤の国内の添付文書には肝機能の定期的検査を行う ことと記載されており、肝機能の悪化が見られた場合は DCV+ASV 療法を中止する必要がある {J1001}, {J1002}。

現在国内で利用可能な治療選択肢に基づくと、高齢の患者や進行した肝疾患を有する患者にも 使用できる、簡便で、治療期間が短く、安全かつ高い有効性(SVR率が95%超)を示すIFN及び RBVを必要としない治療レジメンに対する差し迫ったニーズが依然存在する。新規のレジメンは 治療前に NS5A 耐性変異を有する患者にも有効性を示し、良好な耐性プロファイルを示す必要が ある。このような治療法は、日本国内のHCV感染関連疾患の罹患率、有病率、それらに伴う現在 及び将来的負担に対し大きな影響を与える可能性がある。

1日1回1錠による投与レジメンはHCV感染症治療に大きな進歩をもたらし、代償性肝硬変を 有する患者集団、Peg-IFNα+RBV+PIレジメンが無効であった患者集団及びNS5A耐性変異を有す る患者集団を含む、ジェノタイプ 1(1a及び1b)のHCV感染患者に対して、安全かつ高い有効 性(SVR率100%)を示し、治療期間は12週間と短く、IFN及びRBVの併用を必要としない治 療法を提供する。

LDV/SOFによる治療のベネフィットは以下のとおりである。

• LDV/SOFは好ましい臨床薬理学的プロファイルを有している。

− LDV/SOFは1日1回1錠を投与する、LDV 90 mg及びSOF 400 mgを含有する配合 錠であり、食前又は食後を問わず投与可能で、多くの薬剤と併用することができ、

用量調整は不要である。

− LDV/SOFの薬物相互作用プロファイルは良好で、SOF、その主要代謝物GS-331007

及びLDVは一般的な薬物代謝酵素系の基質ではなく、CYP又はUGT1A1を介する 薬物相互作用に関与する可能性は低い。

− 曝露とウイルス学的応答性の間に一定の傾向は見られていない:ウイルス学的応答 は、本剤の開発プログラムで評価された治療レジメン及び対象患者集団を通じて、

一貫して高かった。

− 曝露と有害事象の間に関連は見られていない:LDV、SOF及び主要代謝物GS-331007 の薬物動態は、疲労、頭痛、悪心、不眠症又はリパーゼの異常変動を問わず同様で あった。

• ジェノタイプ1(1a及び1b)の慢性HCV感染被験者において、LDV/SOFは高いウイルス 学的応答率を示した。未治療及び前治療のある被験者、また人口統計学的特性、疾患特性 及び合併症の状況も様々な被験者を問わず、高い有効性を示した。

− LDV/SOFによる12週間投与は、未治療及び前治療のあるジェノタイプ1の慢性HCV

感染被験者において、肝硬変の有無に関わらず高いSVR12率[国内第3相試験:100%、

海外第3相試験(ION-1、ION-2及びION-3試験):93.6%~97.7%]を示した。

− LDV/SOFによる12週間投与は、肝硬変を有する未治療又は前治療のある被験者に

おいて、高いSVR12率を示した。

【肝硬変あり-未治療】国内第3相試験:100%(13/13例)、海外第3相試験(ION-1 試験):94.1%(32/34例)

【肝硬変あり-前治療あり】国内第3相試験:100%(27/27例)、海外第3相試験(ION-2 試験):86.4%(19/22例)

− LDV/SOFによる12週間投与は、PI+Peg-IFNα+RBV療法による前治療が無効であっ た、国内では他の確立した治療選択肢がない被験者に対しても高いSVR12率[国内 第3相試験:100%(14/14例)、海外第3相試験(ION-2試験):93.9%(62/66例)]

を示した。

− LDV/SOFによる12週間投与は、NS5A耐性変異を有する患者においても高いSVR12

率[国内第3相試験:100%(41/41例)]を示した。

− 従来から再燃と関連するとされている要因(65歳以上、高BMI、ジェノタイプ1a、

高ウイルス量及びIL28B遺伝子型「non-CC」)は、SVR12率に大きな影響を及ぼさ なかった。

• 本剤は好ましい耐性プロファイルを有する。

− LDV及びSOFともに広範な既知の耐性変異について検討された。これらには、非 ヌクレオシド阻害剤(NNI)及びRBVに影響するNS5B耐性変異や、HCVプロテ アーゼ阻害剤に影響するNS3耐性変異が含まれている。

− 本剤とRBVによる再治療により、NS5A耐性変異やNS5B NI耐性変異S282Tの存 在下でも奏効することが確認されている。

• LDV/SOFによる治療期間は短く、IFN及びRBVを併用しない一剤型の治療レジメンであ

る。

− LDV/SOFは投与上の制限がほとんどない。LDV/SOFは食前又は食後を問わず投与

することができ、多くの薬剤と併用可能である。RBVやPeg-IFNとは異なり、用量 調整は不要である。

− LDV/SOFは配合錠1錠を1日1回、12週間投与する。治療期間は短縮され、特定

のレスポンスガイドアルゴリズムを要さず簡便であるほか、多くの錠剤を服用した り、複雑な薬物相互作用の管理を必要としないことから、治療に対するアドヒアラ ンスは向上すると考えられ、その結果、全体のSVR率も高くなると考えられる。

• LDV/SOFは安全かつ忍容性に優れており、既存の標準療法を上回る安全性プロファイル

を有する。

− LDV/SOFの安全性プロファイルは、臨床開発プログラムにおいて十分に特徴づけら

れており、臨床的に意味のある安全性シグナルは認められていない。有害事象によ る投与中止、重篤な有害事象、Grade 3又は4の有害事象、又はGrade 3又は4の臨 床検査値はまれであった。GS-US-337-0113試験で死亡例が1例認められたが、併存 疾患(感染症)が心停止に至った最も考えられる死因であった。

− LDV/SOFの治療レジメンからRBVが除かれたことにより、有害事象の発現頻度及

び臨床的に問題となるような臨床検査値の異常変動は著しく減少する。さらに、RBV が併用された群とは対照的に、併用されなかった群では、治療に関連したQoLの低 下が見られなかった。

− 現行のIFNをベースとした標準療法とは対照的にLDV/SOFを投与した被験者は RBV併用の有無に関わらず、IFNに伴う毒性として知られている好中球減少(国内 第3相試験での発現頻度:0%)、インフルエンザ様症状(1.9%)、うつ病(0%)の 発現が見られない、又は発現は非常にまれであった。