OCIその金融負債には公正価値
IFRS 7.A, IFRS 9.B5.7.14–15
公正価値オプションに指定された負債に係る利得及び損失を区分表示する目的で、最終基準書は信用リスクと 資産固有の履行リスクとを区別している。資産固有の履行リスクは発行企業が債務を履行できなくなるリスクに 関するものではなく、単一の資産または資産グループの稼働が悪い(または全く稼働しない)リスクに関するもの である。
IFRS 9.B5.7.14–15 IFRS第9号は、資産固有の履行リスクについて、2つの例を挙げている。1つ目の例は、ユニット・リンク特性の付
いた負債で、投資者に支払われる金額が、特定の資産の運用成績に基づいて契約上決定されるものである。2 つ目の例は、次のような特定の性質を有するSPEが発行した負債である。
SPEは法的に隔離されていて、その資産は、たとえ破産の場合であっても、投資者の便宜のためだけに使途
が制限されている。
SPEは他の取引を行うことができず、その資産は担保に提供することができない。
SPEに対する投資者への支払いが行われるのは、使途が制限されている資産がキャッシュフローを生み出し
た場合だけである。
最終基準書は、当該資産が負債の公正価値に与える影響は資産固有の履行リスクであって、信用リスクではな いと述べている。したがって、この例においてSPEが発行した負債の信用リスクは考慮する必要はないと考えら れる。資産固有の履行リスクによる公正価値の変動は(OCIではなく)純損益に認識される。
10.2.2.2
信用リスクの変動による影響の測定IFRS 9.B5.7.16–17 IFRS第9号は信用リスクの変動による影響の算定に関してIFRS第7号の現行のガイダンスの大部分を引き継い
でいる。IFRS第9号に基づいて、企業はFVTPLで測定するものとして指定された金融負債の公正価値の変動の うち当該負債の信用リスクの変動に起因する金額を以下のいずれかにより算定する。
市場リスクを生じさせる市況の変動(ベンチマーク金利、他の企業の金融商品の価格、商品価格、外国為替 レート、価格またはレートの指数の変動を含む)に起因しない公正価値の変動の金額として
当該負債の信用リスクの変動に起因する金額をより忠実に表すと企業が考える代替的な方法を用いて10.2.2.3
信用リスクの変動による影響の測定のための原則法IFRS 9.B5.7.18
負債に係る市況の重要かつ関連性のある変動が、観察された(ベンチマーク)金利の変動のみである場合、信用リスクの変動に起因する公正価値の変動の金額は原則法(default method)を用いて見積ることができる。
まず初めに、内部収益率(IRR)の金融商品固有部分を計算する。以下がその手順である。
期首時点の金融負債のIRRを、期首時点の当該負債の公正価値と契約上のキャッシュフローを用いて計算 する。
このIRRから期首時点の観察された(ベンチマーク)金利を差し引く。次に、期末時点での、ベンチマーク金利の変動が負債の公正価値に与える影響を計算する。これは、当該負債 に関連する契約上のキャッシュフロー残高の現在価値を、以下から構成される割引率を用いて計算することに よって求められる。
ステップ1で計算した金融商品固有部分
期末時点のベンチマーク金利ステ ップ
1
IR Rの金融商品固有部分
内部収益率(IRR) 期首時点の観察された(ベンチマーク)金利
- =
ステ ップ
2
IR Rの金融商品固有部分
割引率(
ステップ1)
期末時点の観察された
(ベンチマーク)金利
+ =
期末時点での金融負債の キ ャ ッシュフローの現在価値
割引率を、 期末時点の契約上の
キ ャ ッシュフローに適用する
=
First Impressions: IFRS 9 Financial Instruments 10 Subsequent measurement 47
IFRS 9.B5.7.18, IE5
最後に、当該負債の公正価値の変動のうちベンチマーク金利の変動に起因しない部分を計算する。これは、期末時点の金融負債の公正価値をステップ2で算定した現在価値の金額と比較することによって求められる。これ がOCIに表示すべき金額である。
考察-「ベンチマーク」金利は定義されていない
IFRS第9号は、原則法におけるベンチマーク金利を定義していない。KPMGの経験上、ベンチマーク金利は米
ドルまたは英ポンド建て負債に対するLIBORやユーロ建て負債に対するEuriborのような銀行間金利を含んで いると一般的に理解されている。原則法はベンチマーク金利をリスクフリー金利と類似するものとしてとらえて おり、すべてのベンチマーク金利の変動を金融負債の信用リスクの変動と無関係なもの(一部ではないもの)として除外している。しかし、多くの市場関係者は、銀行間金利は通常、同一期間及び同一通貨の最高格付 けの国債のレートを上回るプレミアムを含んでおり、このプレミアムは銀行の信用リスクの変動を市場がどの ように解釈するかによって変わる可能性があると考えている。最終基準書は以下の方法をさまたげるもので はない。
ベンチマーク金利としてリスクフリー金利を用いること
その方がより忠実に表示することができると企業が考える場合には、銀行間金利の信用部分を切り離して 信用リスクの変動の計算に含めるという代替的な方法を用いることIFRS 9.5.7.19, BC5.64 IASBはIFRS第7号との比較では、IFRS第9号のガイダンスを修正しており、金融負債に係る市況の重要かつ関
連性のある変動が、観察された(ベンチマーク)金利の変動のみである場合に原則法を用いることが適切だとい うことを強調している。他の要因が重要である場合には、企業は、金融負債の信用リスクの変動による影響をよ り忠実に測定する代替的な方法を用いることになる。
IFRS 9.5.7.19
例えば、金融負債が組込デリバティブを含んでいる場合には、信用リスクの変動に起因しない組込デリバティブの公正価値の変動は、OCIに表示すべき金額を算定する際には除外される
考察-負債の信用リスクの変動による影響に関する現行の開示
IFRS 9.BC5.58 – 64, IFRS 7.26
現行のIFRS第7号は、金融負債を公正価値オプションにより指定した場合には、当該負債の信用リスクの変動に 起因する純損益に認識された公正価値の変動の金額を開示することを企業に求めている。
ただし、IFRS第9号の適用時に、企業はそのような負債の信用リスクの変動による影響の識別及び測定に用いた 方法を見直すことができる。それは、IFRS第9号が以下を示しているためである。
負債の信用リスクは発行企業の信用リスク、及び資産固有の履行リスクと異なることを明確化している。
原則法を適用できない場合について強調している。
このような計算が報告済み利益に影響を与えていることを意味する。ステ ップ
3
観察された(ベンチマーク)
金利の変動に起因しない 公正価値の変動 期末時点の金融負債の
公正価値
期末時点での金融負債の キ ャ ッシュフローの現在価値
(ステップ 2)
- =
IFRS 9.5.7.20
信用リスクの変動を測定する方法は、関連性のある観察可能なインプットを最大限に利用し、観察可能でないイ ンプットの使用を最小限にしなければならない。考察-原則法の適用による累積的影響
IFRS 9.BC4.153(b) IASBは、金融負債の信用リスクの変動をOCIに表示し、純損益に振り替えない主な理由の1つは、企業が契
約金額を返済する場合(そうするケースがほとんどである)、負債の公正価値が最終的には契約金額と等しく なるため、負債の信用リスクの変動の累積的影響は純額でゼロとなるからだと指摘した。
しかし、原則法に関するガイダンスが、複数期間をカバーするシナリオのすべての期間に対して文字通り適用 された場合、OCIに累積された公正価値の変動は通常、契約満期日に金融負債が返済される時に純額でゼ ロにならない。原則法のもとでは、公正価値の変動における信用リスク要素の計算は期間ごとに行い、契約 開始時からの累積ポジションを参照しない。これについては、以下の設例において説明している。
設例-原則法を用いた信用リスクの変動による影響の算定
企業Kは100の対価で金融負債を発行する。当初の公正価値及び契約上の返済額は100であり、満期は2年 である。各年度の末日に10%の利息が支払われる。ベンチマーク金利は2年間を通じて7%である。K社は原 則法を用いて信用リスクの変動に起因する公正価値の変動を見積っている。
ステップ1では、IRRの金融商品固有部分は3%と計算される。1年目末に、K社は将来キャッシュフローを
10%、すなわち、変化しない7%のベンチマーク金利に3%のリスク要素を加算した率で割り引く。
1年末:
原則法のステップ2に基づくと、利息支払い後の1年目末の現在価値は100となる。
ただし、ベンチマーク金利に対するK社の債務のマーケット・スプレッドが拡大し、1年目末の公正価値が98に 減少したと仮定する。ステップ3に基づいて、K社は2の利益をOCIに認識する。
2年目末:
2年目末に、ステップ2で計算したキャッシュフローの現在価値及び金融負債の公正価値の両方が返済の直
前に110となり、返済の直後にはゼロとなる。原則法に関するガイダンスを2年目に適用すると、2年目にOCIに計上する金額はゼロとして計算される。これ は、1年目にOCIに認識した2の利益を戻し入れないことを意味する。
この例に関して、以下の表でまとめている。