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信用リスクの著しい増加

ドキュメント内 IFRS最新基準書の初見分析 (ページ 68-79)

か?

12.3.4 信用リスクの著しい増加

12.3.4.1

一般的な規定

12.3.4.1.1

信用リスクの著しい増加の定義

IFRS 9.5.5.3, 5.5.5

報告日における金融商品の信用リスクが当初認識時よりも著しく増加した場合、予想信用損失は、残存期間に

わたる予想信用損失として測定される。

IFRS 9.B5.5.21 IFRS第9号は、企業が残存期間にわたる予想信用損失を認識する時期について、金融資産の信用が毀損した

日(12.6.1を参照)または企業の債務不履行の定義(12.3.2.3を参照)と一致させることはできないことを明確にし ている。

考察-「信用リスクの著しい増加」は定義されていない

信用リスクの「著しい増加」という用語は、IFRS第9号で定義されていない。信用リスクが著しく増加したか否か の決定は、モデルの中で最も重要で困難な判断を要する領域の1つである。企業は、保有する金融商品に応 じて、この重要な用語を定義する方法を決定しなければならない。

12.3.4.1.2

信用リスクが著しく増加したか否かの評価

IFRS 9.5.5.9

企業は、債務不履行の発生に伴う損失額の規模の変化ではなく、金融商品の残存期間にわたって不履行が発

生するリスクの変化を用いて、信用リスクが著しく増加したか否かを評価する。したがって、デフォルト時損失率

(Loss given default, LGD)の変化は、予想信用損失の測定結果には織り込まれる(12.4を参照)ものの、信用リ スクが著しく増加したか否かを評価する目的では考慮の対象とならない。

IFRS 9.5.5.9

当初認識時よりも金融商品の不履行のリスクが著しく増加したか否かを決定するために、企業は、報告日時点

における不履行リスクと当初認識時の不履行リスクを比較する。

IFRS 9.5.5.7

企業は、各報告日において、信用リスクが著しく増加したか否かの評価を行う。IFRS第9号の減損モデルは対称

的で、資産は、以下の図のとおり、12ヶ月の予想信用損失カテゴリーと残存期間にわたる予想信用損失カテゴ リーの間を移動する。

IFRS 9.B5.5.9, BC5.173 174

信用リスクの「著しい」増加となるために、当初認識時に不履行リスクが高い資産は、当初認識時に不履行リスク が低い資産よりも不履行リスクが絶対的に大きく増加して いることが求め られる。例えば、デフォルト率

(probability of default occurring, PD)2%の絶対的な変化は、当初認識時のPDが20%の資産よりも、当初認識 時のPDが5%の資産の方が著しいことになる。結論の根拠にはさらに、信用リスクの「著しい」増加となるため に、満期までの期間が長いの金融資産は、満期までの期間が短い金融資産よりも不履行リスクが絶対的に大き く増加している必要があるとも示されている。

元に戻る 上記の移動要件を 満たさなくなった場合 移動

金融資産の信用リスクが 当初認識時よりも著しく 増加した場合

12ヶ月の

予想信用損失

残存期間 にわたる 予想信用損失

First Impressions: IFRS 9 Financial Instruments 12 Impairment 67

考察-信用リスクの著しい増加-相対的な概念

IFRS 9.BC5.160 IFRS第9号は、信用リスクが著しく増加しているか否かを評価する際、企業は金融商品の当初認識時の不履

行リスクと報告日の不履行リスクを比較すると説明している。

したがって、信用リスクがより高い貸付金について12ヶ月の予想信用損失と同額の信用損失引当金が計上さ れ、その他の信用リスクがより低い貸付金について残存期間にわたる予想信用損失と同額の信用損失引当 金が計上されるケースが生じる場合がある。

IASBは審議において、残存期間にわたる予想信用損失が、以下のいずれかに基づいて認識されるべきか検

討した。

信用の質の絶対的評価(すなわち、評価対象の金融商品の信用リスクが、すべての金融資産に適用され る特定の基準より上であるか否か)

相対的評価(すなわち、評価対象の金融商品の信用リスクが、当初認識時の予測から相対的に悪化した か否か)

IASBは、絶対的評価によるアプローチは、リスク管理プロセスとより密接に整合していることから適用がより容

易であるものの、財務諸表利用者には意味が大きく異なる情報を提供することになると結論付けた。なぜなら ば、絶対的評価によるアプローチでは、当初の信用に関する予測及びその後の予測の変化による経済的な 影響を見積ることができないからである。また、すべての金融商品を対象にして残存期間にわたる損失の認 識が適切となるような絶対的な悪化の水準を定義することも困難である。

したがって、企業は著しい増加の概念を適用する際、単に絶対的なPDの基準を1つ選択して、PDがその基準 を上回る増加を示した金融商品であれば信用リスクの著しい増加があったと結論付けることはできないことに なる。ただし、当初認識時にポートフォリオのすべての資産が類似する信用リスクを有する特定のポートフォリ オについては、これに類似するアプローチが適切である場合がある(12.3.4.2.2)。

設例-信用リスクの著しい増加-相対的な概念

W銀行は、格付1が最も低い信用リスク、格付10が最も高い信用リスクを示す、格付1~格付10までの内部の

信用格付制度を有している。

W銀行は、格付が2つ上れば、信用リスクが著しく増加しているとみなしている。格付3以下は「低い信用リス

ク」(12.3.4.3を参照)であるとしている。

報告日において、W銀行は企業Xに対する2本の貸付金を有し、その残高は以下のとおりであった。

当初認識時の格付け 報告日の格付け

貸付金 A

2 5

貸付金 B

4 5

W銀行は、貸付金の信用リスクが著しく増加したか否かを評価し、以下の結論に至った。

信用リスクは著しく増加したか? 以下の予想信用損失と同額の 引当金を認識する

貸付金 A あり 残存期間にわたる予想信用損失

貸付金 B なし

12ヶ月の予想信用損失

貸付金は、それぞれ異なる測定ベースによる信用損失引当金を計上することになるが、これは、貸付金Aの 信用リスクのみが当初認識時より著しく増加したためである。両方の貸付金が報告日に同じ格付けであると いう事実に関係なく、信用損失引当金の測定ベースは異なることになる。

考察-実際の債務不履行事象と信用リスクの著しい増加の関係

企業は、信用リスクが著しく増加しているかの評価のために「債務不履行」を定義する際、その定義が契約上 の債務不履行の発生(すなわち、契約上の期日に支払いが行われない(「考察-『債務不履行』の定義及び モデルの適用における定義の影響」12.3.2.3を参照))とどのように関連しているかを検討する必要がある。信 用リスクが著しく増加していない場合でも、実際は契約上の債務不履行に陥っている(例:利息の支払いの延 滞)可能性がある。

例えば、以下の場合が該当する。

 30日期日超過に関する推定(12.3.4.4を参照)が反証された場合

 30日期日超過に関する推定は反証されないが、支払期日の超過日数が30日未満の場合

考察-信用格付けの変化に伴い信用スプレッドが改定される金融商品

IFRS 9.B5.5.7

特定の負債性金融商品には、信用格付の変化に伴い信用スプレッドが改定される特性が含まれている。

IFRS第9号は、信用リスクが著しく増加したか否かは、当初認識時後の信用リスクの増加を反映するために金

融商品がリプライシングされたか否かに関係なく、当初認識時の予測との相対的な評価によって行うと説明し ている。

12.3.4.1.3

ローン・コミットメント及び金融保証契約

IFRS 9.5.5.6, B5.5.47

信用リスクの著しい増加に関する評価では、当初認識日以降の信用リスクの増加が測定されるため、企業は、

金融商品について当初認識日を特定することが求められる。ローン・コミットメント及び金融保証契約の当初認 識日は、企業が取消不能なコミットメントの当事者となった日であると考えられる。この当初認識日は、実行及び 未実行残高の両方について適用される。なぜならば、減損規定の適用においては、ローン・コミットメントの実行 により認識された金融資産は、ローン・コミットメントの継続として取り扱われるからである。

考察-ローン・コミットメントに基づく貸付金の実行

IFRS 9.B5.5.47 IFRS第9号の規定では、ローン・コミットメントの当初認識日について企業が契約当事者となった日としている

が、それは、ローン・コミットメントに基づいて実行された貸付金(例:リボルビングの与信枠)であれば、貸付金 が実行されるそれぞれの時点における信用リスクではなく、契約がサインされた時点における信用リスクと比 べて評価を行うことを意味していると考えられる。

特定の貸付契約(例:クレジットカードまたは銀行の当座貸越)は何年もの長期間にわたる契約で、貸付は絶 えず実行され、(全額または一部の)返済も頻繁に(例:毎月)行われる。これらの金融商品の当初認識日が 顧客の契約書への当初のサイン日であると考えられる場合、当初認識日から信用リスクが著しく増加したか 否かを評価するために、企業は現在の信用リスクのレベルと何年も前の信用リスクのレベルを比較しなけれ ばならないことになる。これは、信用評価に関して、与信枠を設定した時点にまで遡った過去の情報を、追跡 し続けることを企業に対して求めることになる。

12.3.4.1.4

信用リスクが著しく増加したか否かを評価するために用いられるアプローチ

IFRS 9.B5.5.12 IFRS第9号は、信用リスクが著しく増加したか否かを評価する際に、企業が多様なアプローチ(金融商品ごとに

異なるアプローチを用いることも含む)を用いることが可能であると説明している。信用損失率によるアプローチ のような、インプットとして明示的なPDを含めていないアプローチについても、企業が不履行リスクの変化と予想 信用損失のその他の変化(例:担保による変化)を区別できるのであれば、用いることが可能である。いずれの アプローチを用いた場合でも、以下の事項を考慮する必要がある。

ドキュメント内 IFRS最新基準書の初見分析 (ページ 68-79)