( 12.4.6)キ ャ ッシュ不足額
IFRS 9.5.5.13, Appendix A, B5.4.7
POCI資産は、当初認識時に減損引当金を計上しない。その代わりに、残存期間にわたる予想信用損失が実効
金利の計算に組み込まれる。(11.2.2を参照)。設例-POCI資産の当初認識
企業Yは、残存期間4年の分割返済の貸付金のポートフォリオを800(取引日の公正価値)で購入する。購入時 の残りの契約上のキャッシュフローは1,000であり、予想キャッシュフローは以下のとおりである。すべての キャッシュフローは、期末に生じると仮定する。
年数
1年目 2年目 3年目 4年目
予想キャッシュフロー
220 220 220 220
当初の購入価格(すなわち、800)及び回収が予想されるキャッシュフローに基づいて、その内部収益率とし て、実効金利3.925%(年利)が計算される。当初認識時に以下の仕訳を行う。
借方 貸方
貸付資産
800
現金
800
12.6.3 当初認識後の測定
IFRS 9.5.5.13–14 POCI資産に係る予想信用損失は常に、残存期間にわたる予想信用損失と同額の金額で測定される。ただし、
それらのPOCI資産の信用損失引当金の金額は、残存期間にわたる予想信用損失の総額ではなく、資産の当初 認識日からの残存期間にわたる予想信用損失の変動額である。
IFRS 9.5.5.14
残存期間にわたる予想信用損失の有利な変動は、その変動額が過去に減損損失として純損益に認識した金額より多い場合は、減損に係る利得として認識される。これは、減損の戻入れを過去に減損損失として純損益に認 識した金額までとするIAS第39号の表示とは異なるものである。
設例-POCI資産の当初認識後の測定-予想の変更がない場合
12.6.2の設例を引き続き用いる。1年目の期末時点で、Y社の貸付金ポートフォリオから生じる将来キャッシュフ
ローの予想に、当初認識時から変更がないと仮定する。1年目の期末時点で、Y社は貸付金の償却原価である800に実効金利(すなわち、年利3.925%)を乗じることに
より、利息収益31を算定する。さらに、Y社は220の現金による返済を受け取る。Y社は、1年目に以下の仕訳 を行う。借方 貸方
貸付資産
31
利息収益
31
現金
220
貸付資産
220
この設例は、当初認識後の期間に、キャッシュフローの回収可能性に係る実績と予想が当初認識時の予想 から変更されない場合、減損に関連する費用または減損損失に係る引当金が認識されないことを示して いる。
設例-POCI資産の当初認識後の測定-予想が有利な方向に変動する場合
代わりに、ポートフォリオの複数の借手の信用度が改善したと仮定すると、1年目の期末時点で、Y社は、以下 のキャッシュフローの回収を予想する。
年数
1年目 2年目 3年目 4年目
予想キャッシュフロー
220 250 250 250 1年目の期末時点で、Y社は貸付金の償却原価である800に実効金利(すなわち、年利3.925%)を乗じることに
より利息収益31を算定し、以下の仕訳を行うことで、上述のとおり、利息収益と現金受取額を認識する。借方 貸方
貸付資産
31
利息収益
31
現金
220
貸付資産
220
さらに、修正後の予想キャッシュフローは当初の実効金利を用いて割り引かれ、その結果生じた残存期間に わたる予想信用損失の有利な変動83(a)は、以下のとおり、減損に係る利得として1年目の期末に認識される。
借方 貸方
信用損失引当金
83
減損に係る利得
83
First Impressions: IFRS 9 Financial Instruments 12 Impairment 97
1年目の期末時点で、貸付金ポートフォリオについて以下の金額が財政状態計算書に認識される。
帳簿価額総額611(800+利息31-現金受取額220)
信用損失引当金83(借方残高)注釈
(a) 以下の計算式によって算定されている。
(30/1.03925)+(30/1.039252)+(30/1.039253)
12.6.4 条件変更
IFRS 9.5.4.3, Appendix A
POCI資産の契約上のキャッシュフローが条件変更されて、条件変更が認識の中止をもたらさない場合、条件変
更に係る利得または損失(11.5.2を参照)は、以下の金額の差額として計算する。
条件変更前の帳簿価額総額
再計算後の帳簿価額総額再計算後の帳簿価額総額とは、条件変更前の信用リスクを調整した実効金利を用いて計算した条件変更後の 契約上のキャッシュフローの現在価値であり、信用リスクを調整した実効金利(11.2.2を参照)の算定において用 いた当初の予想信用損失を考慮したものでもある。
考察-POCI資産の条件変更
IFRS第9号は、条件変更に係る利得または損失の計算に、信用リスクを調整した実効金利を算定する際に用
いた当初の予想信用損失をどのように考慮すればよいのか説明していない。したがって、実務では、詳細な分析及び判断を要する適用上の問題が生じる可能性がある。
12.7 売掛債権、リース債権及び契約資産に関する簡素化
アプローチ
12.7.1 概要
IFRS 9.5.5.15–16
新たな基準書には、IFRS第15号の適用範囲に含まれる取引から生じた売掛債権及び契約資産、並びにIAS第17号の適用範囲に含まれる取引から生じたリース債権について、以下のような簡素化アプローチが含まれ ている。
金融資産の種類 信用損失引当金の測定 重大な財務要素を含まない売
掛債権及び契約資産
残存期間にわたる信用損失
重大な財務要素を含む売掛債 権及び契約資産、並びにリー ス債権
以下のいずれかの信用損失引当金を測定することを、会計方針として選択 する。
一般的アプローチ(12.3を参照)に従った引当金
残存期間にわたる予想信用損失としての引当金企業は以下の会計方針の選択について以下を行うことができる。
売掛債権、契約資産、及びリース債権について、それぞれ別の会計方 針を選択さらに、会計方針の選択は、ファイナンス・リース及びオペレーティング・
リースのリース債権についてそれぞれ適用することができる12。