( 12.4.6)キ ャ ッシュ不足額
IFRS 9.7.2.4, 7.2.5, IFRS 7.42R–S
企業は、金融資産の当初認識時に存在する事実及び状況に基づいてIFRS第9号のガイダンスを適用することに より、SPPI要件が満たされているか否かを評価する。
例外規定 内容
修正された貨幣の時間価値 の要素
金融資産の当初認識時に存在していた事実及び状況に基づいて修正され た 貨 幣 の時 間 価値 の要 素 を評 価 する こ とが 実 務上 不可能 であ る場 合
(5.2.2.1を参照)には、契約上のキャッシュフローの評価は、貨幣の時間価値 要素の修正に関連する規定を考慮に入れずに行う。
期限前償還特性の公正価値 の重要性
金融資産の当初認識時に存在していた事実及び状況に基づいて期限前償 還特性の公正価値が重要であったか否かを評価することが実務上不可能で ある場合(5.2.3.1を参照)には、契約上のキャッシュフローの評価は5.2.3.1に おける特定の期限前償還特性に関する例外規定を考慮に入れずに行う。
企業が上記の例外規定を適用する場合、認識の中止が行われるまで、関連する資産の帳簿価額を開示する
(15.3.1.2を参照)。
考察-当初認識時のSPPI要件の評価が実務上不可能な場合の例外規定
IFRS 9.BC7.55–56 IASBは、「一般的な債券」または「通常の貸付金」とみなされる一部の金融資産がSPPI要件を満たさないとす
るIFRS第9号(2009年版)に対して生じた懸念に対処するために、「修正された貨幣の時間価値」の概念を取り 入れた。またIASBは、例外規定がなければSPPI要件を満たすことのない特定の期限前償還が可能な金融資 産について、限定的な例外規定を設けることを決定した。
上記で説明したとおり、新たな基準書は実務上不可能な場合についての例外規定を含んでいる。この例外規 定は、当初認識時に、修正された貨幣の時間価値の要素及び期限前償還特性の公正価値の重要性に関し てSPPI要件を評価する場合に利用することができる。この例外規定を適用することによりSPPI要件はより限 定的に適用されることになり、以下の理由でSPPI要件を満たさなくなる可能性がある。
修正された貨幣の時間価値の要素について、修正された経済的関係の概念を考慮に入れずに評価する。IASBは、このことは、企業がIFRS第9号(2009年版)のガイダンスを適用することになることを意味すると指
摘している。IFRS第9号(2009年版)の第B4.1.13項におけるガイダンスは、金融資産の金利期間と金利更改 期間のミスマッチは通常、SPPI要件を満たさないことを示している。
期限前償還特性は、5.2.3.1に記載されている例外規定を考慮に入れずに評価する。この例外規定は、例 外規定がなければSPPI要件が満たされない場合に限り適用できる。ただし、IAS第39号に基づく組込デリバティブに関する規定が適用されていたため、多くのケースにおいて実務 上不可能な場合は当初認識時に期限前償還特性の公正価値の重要性を評価しなくてもよいという例外規定 には該当しない可能性がある。すなわち、5.2.3.1の例外規定の適用対象となる期限前償還特性は、IAS第39 号に基づいて組込デリバティブとしてFVTPLによる区分処理が要求されていた可能性が高く、当初認識時の 公正価値の重要性は以前に検討されていたと考えられる。
考察-契約上リンクしている商品
IFRS 9.B4.1.21(c)
契約上リンクしている商品(トランシェ)がSPPI要件を満たすためのひとつの条件は、当該トランシェの信用リスクに対するエクスポージャーが金融商品の原資産プールの信用リスクに対するエクスポージャーと同等ま たはそれ以下となることである(5.2.6を参照)。
この評価の遡及適用に、例外規定はない。したがって、評価は、適用開始日ではなく、当該金融商品への投 資の当初認識日に存在していた事実及び状況に基づいて行われなければならない。
15.2.2.3
資本性金融商品への投資IFRS 9.7.2.8
適用開始日に、企業はトレーディング目的で保有していない資本性金融商品への投資の公正価値の変動をOCIに表示することを選択する可能性がある。企業は適用開始日に存在する事実及び状況に基づいて、この選択を 行う。
考察-資本性金融商品への投資
IFRS 9.5.7.5, B7.2.1
移行時に資本性金融商品への投資に係る公正価値の変動をOCIに表示するオプションが適用できるかを評価するために、企業は、当該資産が適用開始日に取得されていたかのようにトレーディング目的で保有され ているか否かを判断する。したがって、適用開始日にトレーディング目的保有の定義を満たさない場合には、
取得日にトレーディング目的保有に区分されていた資本性金融商品への投資に係る公正価値の変動をOCI に表示するという選択が可能であると考えられる。
First Impressions: IFRS 9 Financial Instruments 15 Effective date and transition 121
15.2.2.4
自己使用契約の指定考察-自己使用契約の指定
IFRS 9.2.4–5 IFRS第9号のもとでは、自己使用の例外規定を満たす契約(3章を参照)は契約開始時にFVTPLで測定するも
のとして指定することができる。この指定は、会計上のミスマッチを解消または大幅に削減するために必要で ある場合に行われる。この公正価値オプションは、2013年に公表されたIFRS第9号(IFRS第9号(2013年版))
の一部として初めて公表された。その際、IAS第39号に第5A項を追加する方法が取られたが、これは、IFRS第
9号(2013年版)の適用範囲がIAS第39号を参照していたことによる。IFRS第9号(2013年版)はまた、IAS第39
号に第108E項を追加することによって、以下の移行に関する規定も含んでいた。「IFRS第9号(2013年11月改訂版)によって第5A項が追加された。第5A項が初めて適用される場合、企業は同 日にすでに存在する契約に関して、すべての類似する契約を同時に指定する場合にのみ、この指定を行うこ とが認められる。こうした移行時の指定によって生じる純資産の変動は、利益剰余金の調整として認識され る。したがって、この会計処理は遡及適用されない。」
IFRS第9号(2014年版)はIAS第39号の第5A項を削除し、新しい自己使用の公正価値オプションをIFRS第9号
第2.5項として追加している。IFRS第9号(2014年版)はまた、IAS第39号の第108E項も削除しているが、これに 代わる経過措置をIFRS第9項に追加していない。移行措置が追加されない場合、IAS第39号第108E項におい て認められていた移行時の既存の契約の指定は、IFRS第9号(2014年版)を適用する既存のIFRS財務諸表作 成者は利用できない可能性がある。この論点はIFRSの初度適用企業には該当しない。なぜなら、IFRS第9号(2014年版)はIFRS第1号第D33項に おける同様の移行に関する例外規定を維持しているためである(15.4を参照)。
15.2.2.5
公正価値オプションの指定IFRS 9.7.2.8–10
金融資産及び金融資産の公正価値オプションは、適用開始日における事実及び状況に基づいて再検討することができる。下表は、適用開始日の金融資産及び金融負債の公正価値オプションに関する移行措置を示し ている。
金融資産
IFRS第9号への移行時
会計上のミスマッチの削減に基づく公正価値オプションの適格要件
I A S
第39
号IAS第39号に基づく公正価値オプション
適用開始日に満たす
適用開始日に 満たさない 指定しない。 指定が認められる。 指定はできない。
会 計 上 のミスマッチの削 減 に基 づいて指 定 する。
以前の指定は取り消す ことができる。
以前の指定は取り消さ なければならない。
金融資産グループが公正価値ベースで管理さ れているという要件に基づいて指定する。
以前の指定は取り消さ なければならない。
新たな指定が認められ る。
以前の指定は取り消さ なければならない。
新たな指定は認められ ない。すなわち、IFRS第
9号の一般規定及び適
用開始日の事業モデル に基づいて分類する。金融資産に組込デリバティブが含まれていると いう要件に基づいて指定する。
金融負債
IFRS第9号への移行時
会計上のミスマッチの削減に基づく公正価値オプションの適格要件
公正価値ベースで 管理されている 負債、または組込 デリバティブを 含んでいる負債
I A S
第39
号IAS第39号に基づく
公正価値オプション適用開始日に 満たす
適用開始日に 満たさない
指定しない。 指定が認められる。 指定はできない。 指定はできない。
会計上のミスマッチの削減に基 づいて指定する。
以前の指定は取り 消すことができる。
以前の指定は取り 消さなければならな い。
指定はできない。
金融負債グループが公正価値 ベースで管理されているという 要件に基づいて指定する。
以前の指定を取り消すことは認められない。
金融負債に組込デリバティブが 含まれているという要件に基づ いて指定する。
15.2.2.6 FVTPLで測定するものとして指定された負債に係る自己の信用リスク
IFRS 9.7.2.14
移行時に、企業は、金融負債の信用リスクの変動による影響をOCIに表示することによって純損益における会計上のミスマッチが創出または拡大されるか否かについて評価する(6.2.1を参照)。この評価はIFRS第9号の適用 開始日に存在する事実及び状況に基づいて行う。この会計処理は、遡及適用される。
15.2.2.7
混合契約IFRS 9.7.2.6–7
混合商品が非デリバティブである主契約とIAS第39号に基づく組込デリバティブとに区分処理することを要求されていた場合、比較期間の当該混合商品の公正価値は測定されていなかった可能性がある。このような混合商品 がIFRS第9号のもとでFVTPLにより測定される場合、各比較期間の末日における混合商品全体の公正価値は 同日の混合商品の構成要素の公正価値の合計とみなされる(7.1を参照)。
適用開始日において、企業は混合商品全体の公正価値と混合商品の構成要素の公正価値の合計との差額を 当報告期間の期首利益剰余金(または、該当があれば、他の資本の構成要素)に認識する。
15.2.2.8
実効金利法IFRS 9.7.2.11, IAS 8.5
特定の金融商品に実効金利法を遡及適用することは実務上不可能である場合がある(11章を参照)。このような場合、適用開始日の金融商品の公正価値は、同日における新たな帳簿価額総額(資産の場合)または償却 原価(負債の場合)として会計処理される。企業がIFRS第9号に基づいて比較期間の修正再表示を行った場合、
各比較期間の末日における公正価値も同様に、同日における帳簿価額総額または償却原価として会計処理さ れる。