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CQ 1-3

IBS の有病率は性,年齢,居住地,職業により変化するか?

ステートメント

● IBS の有病率は性,年齢,居住地,職業により変化する.女性が 1.6 倍高く,加齢とともに低 下する傾向にある.東南アジアで 7%に比べ,南米で 21%,米国で 10%,フランスで 2%と 地域差がある.職業による違いが報告されている.

機能性消化管疾患診療ガイドライン2014―過敏性腸症候群(IBS),南江堂,2014

一部(4 編)の報告では,収入の高さが

IBS

の有病率を高めるとの報告があり,経済状態と

IBS

の有病率の関係を結論づけるには知見がいまだ不十分であると記載されている.わが国では,

三輪の報告9)によると,日本人男性一般生活者 2 万人を対象にしたインターネット調査では,

下痢系

IBS

患者は非

IBS

患者に比べ,役職が高く,年収も高いことが示された.男性で下痢を 主体とする限られた報告であるが興味深い.

文献

1)Kanazawa M, Endo Y, Whitehead WE, et al. Patients and nonconsulters with irritable bowel syndrome reporting a parental history of bowel problems have more impaired psychological distress. Dig Dis Sci 2004; 49: 1046-1053(ケースコントロール)

2)Kubo M, Fujiwara Y, Shiba M, et al. Differences between risk factors among irritable bowel syndrome sub-types in Japanese adults. Neurogastroenterol Motil2011; 23: 249-254(ケースコントロール)

3)Kumano H, Kaiya H, Yoshiuchi K, et al. Comorbidity of irritable bowel syndrome, panic disorder, and agoraphobia in a Japanese representative sample. Am J Gastroenterol2004; 99: 370-376(ケースコントロー ル)

4)Pan G, Lu S, Ke M, et al. Epidemilogic study of the IBS in Beijing: stratified randomized study by cluster sampling. Chinease Med J2000; 113: 35-39(ケースコントロール)

5)Sperber AD, Sperber AD, Friger M, et al. Rates of functional bowel disorders among Israeli Bedouins in rural areas compared with those who moved to permanent towns. Clin Gastroenterol Hepatol2005; 3: 342-348(ケースコントロール)

6) 三輪洋人.本邦における下痢症状を主訴とする過敏性腸症候群患者に関する実態調査 J-ROAD II JAPANEASE RESEARCH OF ABDOMINAL SYMPTOMS FOR IBS II.診断と治療 2009; 97: 1079-1086

(ケースコントロール)

7)Nojkov B, Rubenstein JH, Chey WD, et al. The impact of rotating shift work on the prevalence of irritable 図 1 世界各国の IBS 有病率

(文献 a より)

0〜4.9%

5.0〜9.9%

10.0〜14.9%

15.0〜19.9%

≧20.0%

8

bowel syndrome in nurses. Am J Gastroenterol2010; 105: 842-847(ケースコントロール)

8) Savas LS, White DL, Wieman M, et al. Irritable bowel syndrome and dyspepsia among women veterans:

prevalence and association with psychological distress. Aliment Pharmacol Ther2009; 29: 115-125(ケース コントロール)

9) 三輪洋人.日本人男性における下痢症状を主訴とする過敏性腸症候群患者の生活実態調査.新薬と臨牀 2010; 59: 32-36(ケースコントロール)

【検索期間外文献】

a)Lovell RM, Ford AC. Global prevalence of and risk factors for irritable bowel syndrome: a meta-analysis.

Clin Gastroenterol Hepatol2012; 10: 712-721(メタ)

機能性消化管疾患診療ガイドライン2014―過敏性腸症候群(IBS),南江堂,2014

解説

Kubo

1)によると本邦で健診を受けている一般人 2,717 人での成績では,IBS群がその他の コントロール群に比べて

BMI

が有意に低い(BMI21.6

vs. 22.5)ことが報告されている.IBS

群が より若く(37.3

vs. 41.1),女性の割合が多い(48.5% vs. 31.6%)という違いがあるが,多変量解析

でも,BMIは独立した有意な負の相関因子であることが報告されていた[オッズ比 0.95(0.92〜

0.99)].肥満者で有病率が高いという知見はない.

Ruigómez

2)の報告では,6,417 人の既往に急性胃腸炎のある群と,年齢性別をマッチさせ た 5 万人のコントロール群で

IBS

発症に関するコホート研究を行い,これまでも報告されてい るように,急性胃腸炎の既往,うつ,不安は有意な

IBS

発症関連因子として認められたが,BMI は関与しないことを報告した.

ニュージーランドの 1972 年 4 月から翌年 3 月に生まれた一般住民のコホート研究3)では,26 歳時点で様々な消化器症状と

BMI

の相関をみた研究があるが,IBSと

BMI

の間に相関は認めら れていない.しかし,この研究では,BMIと下痢症状に有意な正の相関が認められている.その 後 2011 年に報告された消化器症状と肥満に関するメタアナリシス(Obes Rev2012; 13: 469-479a)

[検索期間外文献])では,BMIの増加は,下腹部痛や便秘などとは相関が認められなかったが,

上腹部痛や下痢と正の相関があることが報告された.すなわち,BMIと

IBS

の間には相関がな いが,BMIと下痢症状の間には正の相関がある.

しかし,米国からの 43 人の病的肥満患者(女性 40 人,平均

BMI

47.8)を 36 人の正常者と比べ た研究4)で,腹痛,胃食道逆流症(GERD)とともに,病的肥満者で

IBS

の症状が有意に高いと 報告されている.BMIの値からみると,本邦では参考にするのは難しいが,肥満が高度になる と

IBS

の有病率が高いことが示唆される.