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第 2 章 収益認識の基礎概念 -概念フレームワークを中心

第 3 節 IASB の概念フレームワークについて

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4 工事契約に係る考え方

長期の請負工事については、完成時の成果の合理的見積りが可能であること、かつ進捗度 の信頼しうる測定値が入手できることを前提に、「収益は稼得に応じ―生産に応じ―工事進 行基準によって認識される」 (FASB, 1984, 訳書 251 頁) ことが概念フレームワーク第 5 号で述べられている。ここでは、長期の請負工事契約のようなケースでは、「しばしば、引 渡時点まで引延ばされた情報よりも、若干の検証可能性が犠牲にされるにせよ、きわめて目 的に適合しかつ表現の忠実性......

に富む情報もたらされてきた」(FASB, 1984, 訳書251頁) と して、「検証可能性」より「表現の忠実性」を重視して、工事進行基準適用の妥当性を論じ ていると考える。

この概念フレームワーク第5号の中では、概念フレームワーク第2号での規定と同じく、

「信頼性は、(目的適合性と対をなす)もう一方の基本的な質的特性である。ある項目につ いての情報が信頼しうるものでるためには、当該情報が表現の忠実性、検証可能性および中 立性という特性を有するものでなければならない」(FASB, 1984, 訳書 246 頁)とされ、検 証可能性と表現の忠実性は、信頼性という基本的な上位の質的特性を支える下位の特性で あった3)

概念フレームワークのレベルにおいて、工事契約に関して具体的に、生産に応じた用役の 提供に応じ、工事進行基準によって収益認識すべきことが述べられているだけでなく、しか も、成果の確実性...

という言葉ではなく、成果の合理的な見積り...

を条件に、検証可能性よりも 表現の忠実性を重視して、工事進行基準の適用を容認している。工事進行基準は実現主義か らの例外というような表現ではなく、表現の忠実性に基づいてその適応が認められている 見解が示されているのである。

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Preparation and Presentation of Financial Statement」は簡潔なものであり、IASBの原 則主義(principle- based approach)の考え方が反映されていると考える。

IASCの公表してきたIASの基準、更にIASBがそれを継承した国際財務報告基準(IFRS)

では、個別の会計基準を設定していく過程においてピースミール(piecemeal)アプローチを とっている。しかし、この会計基準相互間の論理的整合性を確保するため、演繹的アプロー チが不可欠であり概念フレームワークが必要となったのである。IASB概念フレームワーク の取り扱っていた事項は以下の通りである。

(1) 財務諸表の目的 (2) 基礎となる前提

(3) 財務諸表における情報の有用性を決定する質的特性 (4) 財務諸表を構成する要素の定義 、認識および測定 (5) 資本及び資本維持の概念

2010年9月にIASBとFASBの概念フレームワーク改訂の共同プロジェクト、フェイズ A が完了し、2010 年 IASB 概念フレームワークが公表されている。この改訂では従来の IASB概念フレームワークの「財務報告の目的5)」と「財務諸表の質的特性」がそれぞれ「一 般目的財務報告の目的」と「有用な情報の質的特性」に置き換えられた。また2013年には 上記の共同プロジェクトではなく、IASB独自の活動として討議資料「財務報告のための概 念フレームワークの見直し」が公表されているが、本論文では、IASB概念フレームワーク と2010年IASB概念フレームワークで示されている、収益認識に焦点をおき検討する。

2 2010 年 IASB 概念フレームワーク

改訂された箇所の「一般目的の財務報告の目的」と「有用な財務情報の質的特性」につい ての内容を、改訂前のIASB概念フレームワークとの相違を明らかにしながら検討する。

2010年IASB概念フレームワークでは、その「第4章「フレームワーク」(1989年):残 っている本文」には、「基礎となる前提」、「財務諸表の構成要素の認識」が含まれているが、

「基礎となる前提」では発生主義が削除され、「継続企業」のみが残されている。収益の認 識の規定は、改訂されておらず、依然として有効であると考えられる。また「有用な財務情

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報の質的特性」においては、「信頼性」が「忠実な表現(faithful representation)」に置き換 わっている。一般目的の財務報告の目的と、有用な財務情報の質的特性については、IASB と FASB の概念フレームワークの共同プロジェクト、フェイズ A の完了により 2010 年 IASB概念フレームワークが公表され、FASBの概念フレームワーク第8号との調整がなさ れた。

(1) 一般目的財務報告の目的

IASB概念フレームワークが、その「広範な情報利用者の範囲」を含むとしていたのに対 して、2010年IASB概念フレームワークは、現在の及び潜在的な投資者、融資者及び他の 債権者( IASB, 2013b, p. A21 ; IASB, 2013b, 訳書A21頁)などの資源を提供するものを、

その利用者として限定的になっていること、また財務諸表だけでなく、財務報告全体をその 対象としていることが特徴となっている。

この情報利用者の範囲を投資者などの資源を提供する側にあるものに限定した点は、

FASBの概念フレームワーク第8号が、その主たる情報の利用者を投資家、貸付者、および 他の債権者等の、企業に対して資金提供するものとした点と調整がなされている。

(2) 有用な財務情報の質的特性

質的特性は、主たる利用者が報告企業の財務情報に基づいて意思決定を行う際に、最も有 用6)となる可能性の高い、情報の種類を判別、識別するものである。2010年IASB概念フ レームワークでは、「情報は、有用であるためには、目的適合性があり、かつ忠実に表現さ れていなければならない」(IASB, 2013b, p.A29 ; IASB, 2013b, 訳書A29頁)として、「目的 適合性」と「忠実な表現」を基本的な質的特性としている。目的適合性とは、個々の企業の 財務報告において予測価値及び確認価値がなければならないことであり、その両方の価値 をもった財務情報が、意思決定に違いをもたらすとする。

一方、忠実な表現はこれまでのIASB概念フレームワークでの「信頼性」から置き換えら れたものである。情報が完全性をもち、中立性があり、誤謬がないことという特性をもつ必 要があるとされる。完全性とは、記述と説明を含む主たる利用者が必要とする全ての事象の 情報が主たる利用者に理解できるように描写されていること、中立性とは財務情報の選択 や表示に偏りがないこと、また事象の記述について誤りや省略がないこと、及び報告される 情報の選択や適用のプロセスに誤りがないことを指している。

42 (3) 財務諸表を構成する要素、認識および測定

財務諸表の構成要素とその認識及び測定は、2010年IASB概念フレームワークの「第4 章:「フレームワーク」(1989):残っている本文」、の中にあり、概要は以下の通りである。

財務諸表は、取引その他の事象をそれらの経済的特徴にしたがって大項目に分類表示する ものとされ、その大項目を財務諸表の構成要素と呼んでいる。貸借対照表の目的は財政状態 の表示であり、その財政状態の測定に直接に関連する構成要素としては、資産、負債、持分 が示され、一方損益計算書での経営成績の測定に直接関連する構成要素としては収益、費用 が示されている。しかし、収益の把握の問題は財務諸表の構成要素の定義を通じて行われて おり、基本的にFASB概念フレームワークと同様の手続きがなされていると考える。

構成要素のうち収益に係る定義をクローズアップすると、「収益とは、当該会計期間中の 資産の流入..

若しくは増価..

または負債の減少の形をとる経済的便益の増加」( IASB, 2013b,

p.A39 ; IASB, 2013b, 訳書A37頁 )とされる。ここでは流入・流出のフローと資産・負債

の増減というストックの概念が混合されていると考える。特徴的なのは「過去の事象」と「将 来の」経済的便益という概念を導入したことにより、資産および負債を特定の一定時点の概 念から解放していることである。

IASB 概念フレームワークにおける「認識」と「測定」、及び構成要素となっている資産、

負債、収益及び費用についての定義は以下の通りである。この中で、収益認識時点の考え方 が明らかにされていると考える。

はじめに「認識」そのものの定義では、認識とは構成要素の定義を満たし、認識基準を満 たす項目を、貸借対照表又は損益計算書に組み入れる過程を言うとされる( IASB, 2013b, p.

A40 ; IASB, 2013b,訳書A38頁)。「測定」は、財務諸表の構成要素が認識され、貸借対照表

及び損益計算書に計上される金額を決定するプロセスを言う( IASB, 2013b, p. A43 ; IASB,

2013b, 訳書A41 頁)。認識と測定に定義を与えた上で、ここでもその資産と負債の定義か

らその他の構成要素が導かれることになる。

本論文でのポイントである収益の認識は、資産の増減と負債の増減をベースにして認識 されることになる。「収益は、資産の増加又は負債の減少に関連する将来の経済的便益の増 加」( IASB, 2013b, p. A42 ; IASB, 2013b,訳書A40頁)である。IASB概念フレームワーク が2010年概念フレームワークに置き換えられ、信頼性から忠実な表現に変化し、IASB概 念フレームワークにあった、「信頼性を持って測定でき、かつ十分な程度の確実性を有する

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もの」という制限が削除されたという特徴がある。「信頼性」の財務諸表の基礎的な性質の 本来意図した意味は、忠実な表現よりも、会計測定値が表現していることに対して、保証を 与える可能を高めるものという意味での「検証可能性」を求めていたと考える。