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Harald Welte v. Fortinet

ドキュメント内 Microsoft Word - OSS_License_Survey_201102最終.doc (ページ 152-155)

2. OSS ライセンスを適⽤した注⽬すべきソフトウェアのライセンス戦略

3.2 欧州における係争

3.2.2 Harald Welte v. Fortinet

当事者: Harald Welte(原告)

Fortinet(被告)

訴訟内容: GPL 違反 結果: 和解が成⽴

ポイント: 原告の Welte ⽒が開発した OSS ではなく、信託ライセンス契約(fiduciary license agreement)によって、オリジナルの開発者が Welte ⽒に権利⾏使の 権限を認めた OSS が訴訟の対象となったこと。

 係争内容

<概要>

前項で Sitecom を提訴したドイツ在住の Linux ハッカーである Welte ⽒は 2005 年 4 ⽉、

セキュリティソフトウェアを提供する⽶国企業 Fortinet の英国現地法⼈(⼦会社)が GPL に 違反しているとして、GPL に基づく OSS を利⽤した Fortinet の製品の差⽌めを求める訴訟を 起こした。これに対し、ミュンヘン地裁は同年 4 ⽉ 13 ⽇、Welte ⽒の主張を認め、Fortinet が GPL に違反している限りは、同社による対象 OSS 利⽤製品の販売を禁⽌するという仮差⽌

め処分を下しているが、この判決が出た直後の同⽉ 25 ⽇、Welte ⽒と Fortinet の間には和解 が成⽴している。

<当事者>

訴訟に関与した企業・機関は以下の通りである。

原告

 Harald Welte ⽒: ドイツ在住の著名な Linux ハッカー。不適切な GPL 利⽤を撲滅す ることを⽬的に、gpl-violation.org と呼ばれる団体を設⽴・運営していることでも知ら

347 ミュンヘン地裁 “Judgment Harald Welte vs. S… Deutschland GmbH (判決の⾮公式英訳)”.

http://www.jbb.de/judgment_dc_munich_gpl.pdf (Retrieved on August 3, 2009); “The German GPL Order – Translated”. GrokLaw. July 25, 2004.

http://www.groklaw.net/article.php?story=20040725150736471 (Retrieved on August 3, 2009) ド イツ語の判決⽂は以下を参照。http://www.jbb.de/urteil_lg_muenchen_gpl.pdf

348 Jorge L. Contreras, Jr., Belinda M. Juran. “Second Injunction Enforcing GPL Issued in Germany”.

June 3, 2005. http://www.wilmerhale.com/publications/whPubsDetail.aspx?publication=346 (Retrieved on August 3, 2009)

349 Stephen Shankland. “Attorney: More disclosure will end GPL case” CNET News. April 23, 2004.

http://news.cnet.com/Attorney-More-disclosure-will-end-GPL-case/2100-7344_3-5198886.html (Retrieved on August 3, 2009)

れる。本件では、上記の Sitecom との訴訟の対象となった netfiilter/iptables ではなく、

initrd と呼ばれる OSS に関する GPL 違反を争点としている。Welte ⽒は initrd の開発 者ではないが、同 OSS の開発者である Werner Almesberger ⽒が 2004 年 9 ⽉ 28 ⽇、

信託ライセンス契約(fiduciary license agreement)350を通して initrd の著作者の代 わりに著作権が持つ権利を主張できる権限351を Welte ⽒に譲渡していたため352、同⽒

が原告となることができた353。 被告

 Fortinet: ファイアウォールなどのセキュリティソフトウェアを開発・提供するセキ ュリティベンダ。本拠地は⽶国 California であるが、本件では同社の英国現地法⼈が 提訴された354355

<経緯>

訴訟に関する⼀連の出来事の経緯は以下の通りとなる。

 2005 年 3 ⽉ 17 ⽇: Welte ⽒が Fortinet に対し、GPL 違反を警告356

 2005 年 4 ⽉ 13 ⽇: ミュンヘン地裁が、Fortinet に対して仮差⽌め処分を下す357

 2005 年 4 ⽉ 25 ⽇: Welte ⽒と Fortinet の間で和解が成⽴358

 争点・ポイント

Welte ⽒は、Fortinet がその FortiOS 製品で GPL に基づく Linux 及びその他多数の OSS を

350 OSS コミュニティで⽤いられている契約形態。OSS の著作権を FSF ヨーロッパなどの単⼀機関(被信 託者)に譲渡できる。

351 著作権が譲渡されたと報道している記事もあるが、⼀連の訴訟で Welte ⽒の代理⼈を務めた Jaeger ⽒ によると、ドイツ法では著作権における⼈格的性質が強く、著作者が別の⼈に移る、つまり「著作権が譲 渡」されることはあり得ないという。同⽒によると、本件の信託ライセンス契約では、著作者から訴訟を 起こす権利が Welte ⽒に譲渡されたというよりは、著作者の代わりに著作権が持つ権利を主張する権限を 認められたという意味合いとなる。

352 フランクフルト地裁 “Judgment Harald Welte vs. D… Deutschland GmbH (Harald Welte v. D-link 判決の⾮公式英訳)”. http://www.jbb.de/judgment_dc_frankfurt_gpl.pdf (Retrieved on August 14, 2009)

353 “Managed to obtain a preliminary injunction against Fortinet” Harald Welteʼs Blog. April 14, 2005. http://gnumonks.org/~laforge/weblog/2005/04/14/#20050414-fortinet-injunction (Retrieved on August 11, 2009); gpl-violations.org. “About the gpl-violations.org project”.

http://gpl-violations.org/about.html (Retrieved on August 11, 2009)

354 Peter Galli. “Fortinet Under Fire for Allegedly Violating GPL Terms” eWeek.com. April 14, 2005.

http://www.eweek.com/c/a/Linux-and-Open-Source/Fortinet-Under-Fire-for-Allegedly-Violating-GPL-Terms/ (Retrieved on August 11, 2009)

355 Welte ⽒の⽬的は、ドイツ国内で GPL に違反した Fortinet 製品のドイツ国内での差⽌めを求めること であったため、訴訟はドイツで起こっている。

356 Harald Welte. “An injunction against Fortinet for GPL violations” LWN.net. April 14, 2005.

http://lwn.net/Articles/132143/ (Retrieved on August 11, 2009)

357 “Managed to obtain a preliminary injunction against Fortinet” Harald Welteʼs Blog. April 14, 2005. http://gnumonks.org/~laforge/weblog/2005/04/14/#20050414-fortinet-injunction (Retrieved on August 11, 2009)

358 Fortinet. “Fortinet (UK) Ltd. Reaches Amicable Settlement Agreement with gpl-violations.org Project”. April 25, 2005. http://www.fortinet.com/press_releases/050425_gpl.html (Retrieved on August 11, 2009)

利⽤しているにもかかわらず、GPL に反して以下の⾏為を⾏ったと主張している359

 FortiOS 製品において GPL 本⽂を告知していない。

 FortiOS 製品のソースコードを開⽰していない。

 暗号化技術を⽤いて OSS の利⽤を隠蔽している。

当時、Fortinet はその FortiOS 製品において、少なくとも Linux(バージョン 2.4.18)、

UCL データ圧縮ライブラリ、Reiser ファイルシステム、I2tpd、GNU C ライブラリ、GNU zlib 圧縮ライブラリなどの OSS を GPL に遵守することなく利⽤していたとされていたが、本 件では、これらの OSS のうち、Welte ⽒が権利を⾏使する権限を保有する initrd のみが訴訟の 対象となった360

Fortinet はこれに対して、Welte ⽒から警告を受けてから、GPL に遵守するための取り組み を⾏ってきたとコメントしており361、同社が GPL に違反していたことは認めている。こうし た状況にも関わらず、交渉が訴訟にもつれ込んだ背景には、Sitecom のケースと同様に GPL 違 反⾏為停⽌についての宣⾔書がある。

Welte ⽒は Fortinet に対し、2005 年 3 ⽉ 17 ⽇以降、最初の警告から 4 週間以内に違反⾏

為停⽌の宣⾔書に署名しなければ、法廷に差⽌め処分を求めるとして、数回に渡る通達を⾏っ たという。しかし、Fortinet はこの警告を無視し、宣⾔書に署名しなかったため提訴に⾄った、

と Welte ⽒は説明している362

 OSS ライセンス契約、係争当事国の法制との関係

本件では GPL 違反がポイントとなったが、中でもソースコードの開⽰を定めた GPLv2 の第 3 条の違反が争点になったと考えられる363。しかし、本件では最終的に和解に達しており、法 廷が GPLv2 第 3 条を解釈することはなかった。

 決着内容

Welte ⽒と Fortinet は 2005 年 4 ⽉ 25 ⽇に和解合意に達した。和解内容は以下の通りとな る364

359 Harald Welte. “An injunction against Fortinet for GPL violations” LWN.net. April 14, 2005.

http://lwn.net/Articles/132143/ (Retrieved on August 11, 2009)

360 Peter Galli. “Fortinet Under Fire for Allegedly Violating GPL Terms” eWeek.com. April 14, 2005.

http://www.eweek.com/c/a/Linux-and-Open-Source/Fortinet-Under-Fire-for-Allegedly-Violating-GPL-Terms/ (Retrieved on August 11, 2009)

361 Peter Galli. “Fortinet Under Fire for Allegedly Violating GPL Terms” eWeek.com. April 14, 2005.

http://www.eweek.com/c/a/Linux-and-Open-Source/Fortinet-Under-Fire-for-Allegedly-Violating-GPL-Terms/ (Retrieved on August 11, 2009)

362 “Fortinet woes continue” Harald Welteʼs Blog. April 20, 2005.

http://laforge.gnumonks.org/weblog/2005/04/index.html (Retrieved on August 11, 2009)

363 GPL 第 3 条は、3.1.5 Erik Andersen and Rob Landley v. Monsoon Multimedia を参照。

364 Fortinet. “Fortinet (UK) Ltd. Reaches Amicable Settlement Agreement with gpl-violations.org Project”. April 25, 2005. http://www.fortinet.com/press_releases/050425_gpl.html (Retrieved on August 11, 2009)

 Welte ⽒は今後、Fortinet 及び同社と提携する企業に対して訴訟を起こさない365

 Fortinet は、同社のエンドユーザライセンス合意の内容を修正する366

 Fortinet は、GPL を利⽤した同社製品を出荷する際に、同製品の出荷物全てに GPL の 内容を記した⽂書を同封する。

 Fortinet は、同社が利⽤する GPL に基づく OSS について、ソースコードを開⽰する。

具体的には、ソースコードを請求した個⼈・機関に対してソースコードの CD コピー を送付するといった対応をとる(CD への複製及び送付料は請求者の負担)。

なお、和解においては⾦銭的補償の有無は公開されていない。Welte ⽒は⼀般論として、原 則は GPL 違反者に⾦銭的補償を求めないが、GPL に違反した製品が既に製造されていた場合、

それらの製品の販売を認める代わりに、同⽒の活動に対する寄付⾦を要請することはあるとし ている367。また、Welte ⽒は裁判の中で、Fortinet による GPL 違反を検出するためのコスト

(Welte ⽒の⼈件費約 40 時間分)を請求していた。更に、ドイツの法規制では上記の通り、

訴訟に敗訴した側が勝訴した側の訴訟費⽤を負担することが定められている。

ドキュメント内 Microsoft Word - OSS_License_Survey_201102最終.doc (ページ 152-155)