時刻tIに場ψ≡ {ψe, ψµ, ψτ}, A≡ {Aµ}の値がψI, AIとなる始状態|ψI, AI, tI⟩にあった系を,時刻tFに 場の値がψF, AFとなる終状態|ψF, AF, tF⟩に見いだす確率振幅⟨ψF, AF, tF|ψI, AI, tI⟩を考え,これをGreen 関数G[ψF, AF;ψI, AI;tF−tI]と定義する:
G[ψF, AF;ψI, AI;tF−tI]≡ ⟨ψF, AF, tF|ψI, AI, tI⟩. またf(x)を任意の関数として,電磁場Aµ(x)にゲージ条件
∂µAµ−f = 0 を課す.
第1.4節で述べたようにQEDのLagrangian密度は式(89)で与えられ,したがってHamiltonian密度は式 (95)で与えられる.Hamiltonianにおける場を演算子に置き換えたHamilton演算子Hˆ =H[ ˆψl†,ψˆl,Aˆµ,πˆµ] は時間を陽に含まないから,時間的発展の演算子は式(20):U(t) =e−iHtˆ で表される.そしてこれを用いて量 子ダイナミクスが記述される(第1.1.7節参照).このことを原理と見なして出発点にとると,Green関数を経
路積分で表した式
G[ψF, AF;ψI, AI;tF−tI] =
∫
Dψ¯DψDA (∏
x
δ(∂µAµ−f) )
|det(□iδ4(xi−xj))|exp (
i
∫ d4xL
) , (125) L ≡∑
l
ψ¯l(i/∂−ml)ψl+e∑
l
ψ¯lAψ/ l−1
4FµνFµν
が導かれる.ただし格子点 xを中心とする体積要素∆3xに空間を分割し,時間を ∆t = tFN−tI 刻みに t=tn ≡tI+n∆t(n= 0,1,· · ·, N)と離散化すると,時空の体積要素∆Ω≡∆t∆3xを1つの代表点xが 占め,
Dψ¯Dψ≡ lim
N→∞
∆x→0
∫ N∏−1
n=1
∏
x,l
dψl†(x, tn)dψl(x, tn)
exp {∫
d3x′∑
l′
ψl′†(x′, tF)ψl′(x′, tF) }
(126)
= lim
∆Ω→0
∫ ∏
x,l
dψl†(x)dψl(x)
exp {∫
d3x′∑
l′
ψl′†(x′, tF)ψl′(x′, tF) }
( exp
{∫
d3x′∑
l′
ψl′†(x′, tF)ψl′(x′, tF) }
は指定された終状態の場の値で決まる定数 )
, DA≡ lim
∆Ω→0
∏
µ
(∏
x
dAµ(x) C(∆x, ∆t)
)
(127) である.さらにこれを
G[ψF, AF;ψI, AI;tF−tI] =
∫
Dψ¯DψDAexp [
i
∫ d4x
{ L − 1
2ξ(∂µAµ)2 }]
, (128)
DA≡ lim
∆Ω→0
∏
µ
(∏
x
dAµ(x) C′(∆x, ∆t;ξ)
)
(129) と書き直すこともできる.ここにC(∆x, ∆t), C′(∆x, ∆t;ξ)は空間の格子間距離∆x,時間刻み∆t(および定 数ξ)で決まる規格化定数である[7, p.240].
以上の導出過程は第4.6節を見よ(経路積分(125)における行列式det(□iδ4(xi−xj))の解釈もそこで述べ る).導出には次のことを用いている.
• Weyl順序にあるHamiltonianに対する式
(34) :⟨qB|H( ˆq,p, t)ˆ |qA⟩=∫ (∏
i
dpi 2π
)
eip·(qB−qA)H( ¯q,p, t).
• Fermi系のコヒーレント状態に対する式
(86) :⟨ψ|ψ′⟩= exp {∑
l
∫
d3xψl†(x, t)ψl′(x, t) }
,
(87) :
∫ ∏
x,l
dψl†(x, t)dψl(x, t)
|ψ⟩exp {
−
∫
d3x′∑
l′
ψl′†(x′, t)ψl′(x′, t) }
⟨ψ|= 1.
• detγ0= 1となるγ行列の具体的な表示.
– 例えばγ0= (1 0
0 −1 )
となるDirac-Pauli表示(1は2×2の単位行列を表す).
– 第4.6節で指摘するように,式(267):d ¯ψ= dψ†の説明において文献 [7, p.213]ではdetγ0 = 1 を用いているけれども,これはγ行列の具体的な表示を指定して初めて成り立つ式だろう.実際,
Dirac代数(62)から言えるのは
(γ0)2= 1, ∴detγ0=±1 までである.
2 場の量子論から古典物理学への移行
量子電磁力学においてGreen関数G[ψG, AF;ψI, AI;tF−tI]すなわち確率振幅⟨ψF, AF, tF|ψI, AI, tI⟩は経 路積分(125):
G[ψF, AF;ψI, AI;tF−tI] =
∫
Dψ¯DψDA (∏
x
δ(∂µAµ−f) )
|det(□iδ4(xi−xj))|exp (
i
∫ d4xL
)
で与えられる(第1.6節参照).では粒子と場の時間発展を決定する古典物理学の原理はこの中にどのように含 まれているのだろうか.
Dirac場ψlと電磁場Aµをまとめてϕrと書くと作用S=∫
d4xLの値は,場ϕrのtI ≤t≤tFにおける時 間変化の仕方,すなわちϕr(x)の関数形に応じて決まる.そしてゲージ条件∂µAµ−f = 0を満たすあらゆる 関数形のϕr(x)に対するeiSが確率振幅の式(125)に寄与している*11.ここでどのようなϕr(x)に対しても S≫1(=ℏ)となるような古典的極限を考えよう.このとき基本的にはϕr(x)の僅かな変化に伴いeiSの位相 は大きく変化し激しく振動するため,互いに関数形の少しずつ異なるϕr(x)からの確率振幅(125)への寄与は 互いに打ち消し合う.こうして確率振幅(125)への寄与は,ϕr(x)の変分に伴うSの1次の変化がδS= 0と なるϕr(x) =ϕrcl(x)に近い関数形を持つような場の時間発展ϕr(x)によりもたらされる.これは古典的極限 で場の値が確実にϕrclに見いだされることを意味する.
以上より古典的極限で場ϕr(x)の時間発展は,作用 S=
∫
d4xL=
∫ d4x
{∑
l
ψ¯l(iD/ −ml)ψl−1
4FµνFµν }
=
∫ d4x
{∑
l
ψ¯l(i/∂−ml)ψl−sµAµ−1
4FµνFµν }
(130) の停留値を与える条件から定まる.ここに
式(92) :sµ≡ −e∑
l
ψ¯lγµψl
は電流密度である.言い換えるとDirac場と電磁場は Euler-Lagrange方程式(4) : ∂µ
∂L
∂(∂µψ¯l)− ∂L
∂ψ¯l
= 0 (131)
⇒ {
(iD/ −ml)ψl= 0
∂µsµ= 0 (第4.4節参照) ,
Maxwell方程式 ∂νFµν=−sµ (第6.3.2節参照) (132) に従って相互作用し時間発展する.
では以上の場の量子論の帰結から,古典物理学の原理はどのように導かれるのだろうか.古典物理学におい て自然界は物質(粒子)と場から成るから,これは場の一元論から場と粒子の二元論への移行がどのように達 成されるかという問題を含んでいる.これを考えよう.ただし古典物理学は重力場を扱うのに対し,量子電磁 力学は重力場を扱わない.そこで以降も本章では重力場を考えないことにする.
*11ここでGrassmann場であるDirac場の経路積分についても,Dirac場のあらゆる関数形の寄与として解釈した.
物質場に対する作用を
SM=
∫
LMd4x, LM≡∑
l
ψ¯l(iD/ −ml)ψl=∑
l
ψ¯l(i/∂−ml)ψl−sµAµ (133) と書く.今,時空の与えられた点の座標が無限小ξµ(x)だけ変化する受動的な変換を考える.これは計量テン ソルの成分も慣性系での値から変え得るような一般座標変換であるとする(第3.1.2節,第3.1.3節参照).こ れに対する物質場の作用SMの不変性を要求すると,物質場の作るエネルギー・運動量テンソルを
TMµν ≡2 (∂LM
∂gµν −∂λ ∂LM
∂(∂λgµν) )
(134) として*12,保存則
∂νTMνµ=Fµνsν (135)
が導かれる(第5.1節参照) [11, pp.93–94].
文献[11, pp.181–185]の議論を参考にしてここから次のように質点の運動方程式を導ける.物質場を点在
する荷電粒子の集団と考える.このときk番目の粒子の質量をmk,電荷をek,固有時間をτk,座標をzµ(τk) または単にzµ(k),z˙µ(k)≡dzµ(k)/dτkとして
sµ(x) =∑
i
ei
∫
˙
zµ(i)δ4(x−z(i))dτi, (136) TMµν(x) =∑
i
mi
∫
˙
zµ(i) ˙zν(i)δ4(x−z(i))dτi (137) と表されると考える.こうすると場に対する保存則(135)を粒子の運動方程式
m¨zµ=eFµνz˙ν (138)
に書き換えることができる.ここで粒子の番号を省いた(第5.2節参照) [12, pp.106–108].これとMaxwell
方程式(132)を合わせて物質と電磁場の時間発展が決定される.
これらは第3章で見るように作用 S=−∑
m
∫
ds−∑ e
∫
Aµdxµ−1 4
∫
FµνFµνd4x に対する最小作用原理と等価である.そして,これに
• レプトン以外の粒子から成る物質に対しても成り立つものと見なすこと
• 重力場がある場合への一般化
• Gauss単位系の採用(電磁場に対する作用の係数を1/4π倍)
• 自然単位系で1と置いていたcをあからさまに書くこと
を行ったものが第3章の作用(169)であり,これが古典物理学の統一的な記述を試みる第3章の出発点を 成す.
*12これは第3章の式(171)で定義されるエネルギー・運動量テンソルの定義の√
−g倍に当たる.
3 古典物理学
古典物理学において自然界は粒子と場(電磁場と重力場)から成る.その振る舞いを記述する最も広い枠組 みは一般相対性理論である.そこで本章ではまず,一般相対性理論で用いられる概念を中心に必要となる予備 知識を第3.1節で導入する.次に以下にまとめたように,最小作用原理(第3.2節)を出発点としてこれを粒 子と場の運動方程式へと書き換え(第3.3節),さらにいくつかのケースに対して運動方程式から結論される粒 子と場の振る舞いを調べる.
最小作用原理
↓
• 粒子の運動方程式
– 弱い重力場中の粒子の運動方程式(第3.4.1節) – 与えられた電磁場中の粒子の運動
一様で静的な電磁場中を非相対論的な速度で運動する粒子の時間追跡(第3.4.2節)
• 重力場中のMaxwell方程式 → 重力場がないときの電磁気学 – 静電場・静磁場(第3.5.1節)
電荷分布 → 静電場(Coulombの法則) 電流分布 → 静磁場(Biot-Savartの法則) – 電磁波(第3.5.2節)
– 任意に運動する電荷の作る電磁場(第3.5.3節) 遅延ポテンシャル
• Einstein方程式 → 物体の作る重力場
– Newtonの万有引力の法則(第3.6.1節)
– 中心対称な重力場・Schwarzschild時空(第3.6.2節)
∗ 空間の歪み
∗ 時間の遅れ
∗「時空の歪みに沿った」粒子の運動
現実の軌道と仮想的な軌道に対する粒子の固有時間の数値シミュレーション
3.1 一般相対性理論の準備
3.1.1 テンソル物理学の指導原理として,どのような座標系を用いても物理法則は同じ形の方程式で記述されることが要請 される(共変性の要請).そこで物理量が座標変換に対してどのように変化するかを調べることが有用となる.
■テンソルの定義 座標変換に伴い時空に固定した点の座標が
x≡(x0,· · · , x3) → x′ ≡(x′0,· · · , x′3)
と変わるとき,値が
Tµ1···µpν1···νq → T′µ1···µpν1···νq =∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µp
∂xλp
∂xρ1
∂x′ν1 · · · ∂xρq
∂x′νqTλ1···λpρ1···ρq (139) と変化する量Tµ1···µpν1···νqをp階反変q階共変テンソルまたは(p, q)テンソル(の成分)と呼ぶ.特に
(0,0)テンソル = スカラー (1,0)テンソル = 反変ベクトル (0,1)テンソル = 共変ベクトル
である[4, pp.256–257] [12, pp.126–127].以下の量は数学的に変換則が定まっている[13, pp.26–27]. 座標の微分dxµは反変ベクトル: dx′µ=∂x′µ
∂xν dxν ⇐ 全微分 微分演算子∂µ≡ ∂
∂xµは共変ベクトル: ∂µ′= ∂xν
∂x′µ∂ν ⇐ 合成関数の微分
また線形変換x′µ=aµνxνは,係数aµνが座標に依らなければ反変ベクトルの変換則x′µ=∂x∂x′νµxνに他なら ない(実際x′µ=aµνxνを両辺xλで微分すると∂x∂x′λµ =aµνδνλ=aµλとなる).
ここで(反変)ベクトルV⃗ の成分は座標系に依るけれどもV⃗ 自体は座標系に依らない幾何学的な対象であ る.V⃗ の成分Vαに対する上記の変換則V′α= ∂x∂x′βαVβはこのことと整合している.これは次のように理解 できる.各位置での座標系の基底⃗eαは,座標xαが増大する方向のベクトルである.特に(時空の内部に横た わる)位置ベクトル⃗xに対して∂α⃗xを基底⃗eαに用いると,これは共変ベクトルの変換則
⃗e′α=∂α′⃗x= (∂xβ
∂x′α∂β
)
⃗ x= ∂xβ
∂x′α⃗eβ
に従う.よってVαが反変ベクトル成分として変換されれば V′α⃗e′α=
(∂x′α
∂xβVβ
) (∂xγ
∂x′α⃗eγ )
=δγβVβ⃗eγ =Vα⃗eα=V⃗ となり,どのような座標系を用いてもVα⃗eαは同一のベクトルV⃗ を与える [13, pp.25–26].
■Einsteinの規約 テンソルを定義する変換則(139)右辺のλ1,· · ·, ρ1,· · · ように2度以上現れる添字につい ては0から3までの和をとる.例えば
AµνBν ≡
∑3 ν=0
AµνBν =
∑3 λ=0
AµλBλ≡AµλBλ
である.添字µと違って和をとられる添字νは式変形の途中で(µ以外の)別の文字λに置き換えても式の意 味が変わらない.このような添字をダミー添字と呼ぶ.
■物理法則の共変性 両辺が同じ種類のテンソルで書かれた方程式Tµ1···µpν1···νq =Uµ1···µpν1···νq の形に物理 法則を表せば,これは座標変換に対して形を変えず共変性の要請を満たす[12, pp.53–54]:
T′µ1···µpν
1···νq =∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µp
∂xλp
∂xρ1
∂x′ν1 · · · ∂xρq
∂x′νqTλ1···λpρ1···ρq
=∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µp
∂xλp
∂xρ1
∂x′ν1 · · · ∂xρq
∂x′νqUλ1···λpρ1···ρq =U′µ1···µpν1···νq
■テンソルの和,積,縮約から新たなテンソルが作られること テンソルを定義する変換則(139)から,以下 が容易に示される(第6.1.1節参照).
• 同じ種類のテンソルに対しては和が定義される.
(p, q)テンソルTµ1···µpν1···νq, Uµ1···µpν1···νqの和
Aµ1···µpν1···νq ≡Tµ1···µpν1···νq+Uµ1···µpν1···νq (140) は(p, q)テンソルである.
• (p, q)テンソルTµ1···µpν1···νqと(r, s)テンソルUλ1···λrρ1···ρsの積
Bµ1···µpλ1···λrν1···νqρ1···ρs≡Tµ1···µpν1···νqUλ1···λrρ1···ρs (141) は(p+r, q+s)テンソルである.
• (p, q)テンソルTµ1···µpν1···νqの添字µi, νjをダミー添字λにして和をとる操作を縮約という.
これにより(p−1, q−1)テンソル
Cµ1···µi−1µi+1···µpν1···νj−1νj+1···νq ≡Tµ1···µi−1λµi+1···µpν
1···νj−1λνj+1···νq (142) が得られる.
このため以上の方法で新たに作られたテンソルの種類は上下の添字の個数から期待される通りのものとなる.
しかし逆に,複数の添字を持つ量がテンソルであるとは限らない.なお ∂x′µ
∂xν が座標xに依る場合,反変ベク トルVαに対して∂βVαを単に共変ベクトル∂βとの積と見てこれを(1,1)テンソルであると結論することが できなくなる.実際,∂βVαは
∂β′V′α= (∂xµ
∂x′β∂µ
) (∂x′α
∂xν Vν )
= ∂xµ
∂x′β
∂x′α
∂xν ∂µVν+ ∂xµ
∂x′β (
∂µ∂x′α
∂xν )
Vν (143)
と変換する[4, pp.264–265].
3.1.2 世界間隔と計量テンソル
時空には無限に近い2点の世界間隔dsが定義される.dsは値が用いている座標系に依らずに時空の幾何学 だけで決まる量,従ってスカラーである.これは座標系{xµ}で測った2点の座標の差dxµの2次形式
ds2=gµνdxµdxν で表される(ds=√
gµνdxµdxν).座標の微分dxµは反変ベクトルだからdsがスカラーとなるためにはgµν は2階共変テンソルでなければならない(第3.1.1節参照).gµνを計量テンソルと呼ぶ.
反変計量テンソルgµν を計量テンソルgµν の逆テンソルとして定義する(以下,gµνも単に計量テンソルと 呼ぶ):
gµαgαν =δµν. (144)
テンソルの添字を上げ下げした量はAµ=gµνAν, Aµ=gµνAνのように計量テンソルとの縮約で定義する[4,
pp.257–258].このとき計量テンソルとの縮約の結果得られた量も添字の位置から期待される種類のテンソル
となる(第3.1.1節参照).
図5 局所慣性系
3.1.3 局所慣性系
次の局所的平坦性定理によれば,時空の与えられた点Pの近くで計量テンソルの成分が
(ηµν)≡
1 0 0 0
0 −1 0 0
0 0 −1 0
0 0 0 −1
(145)
となる座標系をとることができる(第6.1.2節参照) [14, pp.186–187]. 局所的平坦性定理
適当な座標系{xµ}をとれば,点Pの座標をx0µとして
gαβ(xµ) =ηαβ+O((xµ−x0µ)2) とできる.このような座標系{xµ}を点Pにおける局所慣性系と呼ぶ.
後に第3.1.9節で明らかになるように,これは局所慣性系でChristoffel記号がゼロになることを意味する.
しかるに第3.4.1節で述べるように,Christoffel記号が消えることは重力場が消えることに対応する.よって 局所的平坦性定理は適当に座標系を選び,時空の与えられた点Pの周りの小さな領域に限ってその中の重力 場を消去できることを意味する.具体的にはそのような座標系として,自由落下する小さな箱に固定した座標 系が考えられる.これは箱の部分では図5のように,時計が一定の割合で進むXY Z直交座標系を成す.実 際,箱が占める領域で重力場を一様と見なせるほど箱が十分小さければ,箱の内部は無重力となる.しかし箱 が地球の周りの静的で非一様な重力場中を自由落下する場合,時間が経ち箱が地球に近づくと図5のように,
箱の占める領域での重力場の非一様性が無視できなくなる.こうして箱の中で重力場を消去できるのは短い時 間に限られる[14, p.148].
3.1.4 固有時間と4元速度
空間のある点での現象または時計の進み方は,その点での固有時間と呼ばれる時間τの流れ方で決まる.こ れは固有時間がτ, τ+ dτとなるという2事件に対応する時空の2点間の世界間隔をdsとすると,固有時間
の経過がdτ= ds/cとなるように定義される.ただしcは(局所慣性系で測った)真空中の光速である.考え