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粒子と場の運動方程式 ( 補足 )

第3.3節に挙げた運動方程式を最小作用原理から導く.ここではその際,Euler-Lagrange方程式(2),(4)を 用いるのではなく,作用(169)の変分を直接計算する方法をとることにする.

Sm≡ −mc

∫ ds, Smf ≡ −e

c

Aµdxµ, Sf ≡ − 1

16πc

FµνFµν

−gd4x, Sg≡ − c3

16πk

G√

−gd4x

とおき,作用(169)をS=Sm+Smf+Sf+Sgと書く.Sm≡Sm+Smf+Sfとおく.

6.3.1 粒子の運動方程式

時空における粒子の実際の軌道は作用の停留値(極値)を与えることから,粒子の軌道の変分に伴い 0 =δS =δSm+δSmf.

ここで変分δSmは次のように書き表せる[4, p.276].

2dsδ(ds) =δ(ds2) =δ(gµνdxµdxν) = dxµdxν(∂λgµν)δxλ+ 2gµνdxµδ(dxν)

(∵gµνは時空における粒子の位置で評価している.gµνdxνδ(dxµ) =gνµdxµδ(dxν) =gµνdxµδ(dxν)),

δSm=mc

δ(ds)

=mc

∫ {1 2

dxµ ds

dxν

ds (∂λgµν)δxλ+gµν

dxµ ds δ

(dxν ds

)}

ds

=mc

∫ {1

2uµuν(∂λgµν) d

ds(gµλuµ) }

δxλds (dxµ

ds ≡uµと改め,境界でδxν= 0に注意して部分積分し,第2項のダミー添字をν →λと改めた )

=∑

mc

∫ { gµλ

duµ ds +1

2uµuν(∂νgµλ+µgνλ−∂λgµν) }

δxλds (

uµ d

dsgµλ=uµuννgµλ= 1

2uµuν(∂νgµλ+µgνλ) )

=∑

mc

∫ ( gµλduµ

ds +uµuνΓλ,µν )

δxλdsmc

∫ Duλ

ds δxλds. (∵(153)) ここに

Duλ (

gµλduµ

ds +uαuβΓλ,αβ )

ds

=gµλ(∂βuµ+uαΓµαβ)uβds (

∵Γλ,αβ =gµλΓµαβ, duµ

ds =uββuµ )

=gµλuµdxβ=gµλDuµ

はDuµを共変ベクトルにしたものである.Duµは粒子が世界線に沿ってds変位したときの4元速度⃗uの変 化d⃗uの,変位前の点でのµ番目の成分である(第3.1.8節参照).

また特殊相対性理論における計算[4, pp.67–68]を一般化して,変分δSmfを次のように書き表せる.

δSmf=e c

{Aµδ(dxµ) + (δAµ)dxµ}

=e c

{(dAµ)δxµ+ (δAν)dxν} (境界でδxµ= 0に注意して部分積分した)

=e c

{(−∂νAµ)dxνδxµ+ (∂µAν)δxµdxν} (場Aµは時空における粒子の位置で評価している)

=e c

Fµνuνδxµds.

以上より

∑ ∫ ( mcDuµ

ds −e cFµνuν

)

δxµds= 0 となり,これが任意の変分δxµに対して成り立つことから粒子の運動方程式(174):

mcDuµ ds =e

cFµνuν

を得る.

6.3.2 重力場中のMaxwell方程式 式(176):

jµ(x) =∑

a

eac

−g(x)δ(r−ra)dxaµ dx0 で定義した電流密度の4元ベクトルを用い(aは粒子の番号),Smf

Smf=

a

ea

c

Aµ(xaµ)dxaµ dx0 dx0

= 1 c2

∫ (∑

a

eac

−g(x)δ(r−ra)dxaµ dx0

)

Aµ(x)√

−g(x)d4x

= 1 c2

jµ(x)Aµ(x)√

−g(x)d4x と表される.また場Aµの変分に伴うgµνの変分はδgµν= 0なので

FµνδFµν =Fµνδ(gµλgνρFλρ) = (Fµνgµλgνρ)δFλρ=FλρδFλρ=FµνδFµν となる.

以上のことに注意すると,実際の場Aµの時間変化は作用の停留値(極値)を与えることから,場Aµの変分 に伴う作用の変分は次式で表される.

0 =δS=δ(Smf+Sf) =1 c

∫ (1

cjµδAµ+ 1

FµνδFµν

)

−gd4x

=1 c

∫ {1

cjµδAµ+ 1

Fµν(∂µδAν−∂νδAµ) }

−gd4x

=1 c

∫ {(1 cjµ 1

Fµνν

) δAµ

}

−gd4x (∵FµνµδAν =FνµνδAµ=−FµννδAµ)

=1 c

∫ {1 cjµ

−g+ 1

ν(Fµν

−g) }

δAµd4x (境界でδAµ= 0に注意して部分積分した)

=1 c

∫ (1 cjµ+ 1

Fµν )

δAµ

√−gd4x (∵(159) :ν(Fµν

−g) =√

−gFµν).

ここでの計算は特殊相対性理論における計算[4, p.83]を参考にした.これが任意の変分δAµに対して成り立 つことから,重力場中のMaxwell方程式(175):

Fµν=c jµ を得る.

6.3.3 重力場の方程式すなわちEinstein方程式の導出

実際の場gµνの時間変化は作用の停留値(極値)を与えることから,場gµνの変分に伴い 0 =δS =δ(Sm +Sg), Sm ≡Sm+Smf+Sf.

ここでSg=16πkc3

G√−gd4xの変分をδSg=16πkc3 δ

R√−gd4xと計算できることを示す*27

√−gR=

−ggµν(∂λΓλµν−∂νΓλµλ+ ΓλµνΓρλρΓρµλΓλνρ) (∵定義式(164),(165))

=∂λ(

−ggµνΓλµν)−∂ν(

−ggµνΓλµλ)Γλµνλ(

−ggµν) + Γλµλν(

−ggµν) +

−ggµνλµνΓρλρΓρµλΓλνρ) において

Γλµνλ(

−ggµν) =Γλµν

(−∂λg 2

−ggµµ+

−g∂λgµν )

λµν

−g(ΓρλρgµνΓµρλgρνΓνρλgµρ)

(第1項に対して式(155)を,第2項に対して式(157)を用いた)

=

−ggµνλµνΓρλρρµλΓλρν) (第2項でダミー添字をµ↔ρと入れ換え,

第3項でダミー添字をλ→ρ, ρ→ν, ν→λと巡回置換した), Γλµλν(

−ggµν) =−√

−ggνρΓµνρΓλµλ (∵(156))

=−√

−ggµνΓλµνΓρλρ

(ダミー添字をµ→λ, λ→ρ, ρ→ν, ν→µと巡回置換した) なので,

√−gR=µ(

−gWµ) +

−gG, {

Wµ≡gνλΓµνλ−gλµΓνλν G≡gµνρµλΓλνρΓλµνΓρλρ) を得る.

4元発散µ(

−gWµ)の積分は境界上の積分に置き換わる.最小作用原理において境界での場の値は与え られているため,これは変分をとると落ちる.以上より

δSg= c3 16πkδ

G√

−gd4x= c3 16πkδ

R√

−gd4x が示された.

*27これは重力場の作用をSg=16πkc3

Rgd4xとしても良いことを意味する.ただしRgµν2階導関数を含む.これに 対しSg=16πkc3

G

gd4xとすればGは場gµνとその1階導関数だけを含むことになり,自由電磁場のLagrangian密度

16π1 FµνFµνが場Aµ1階導関数だけを含むこととの類似性が確保される.

そこでδSgを次のように計算する.

δ

R√

−gd4x

=

∫ (Rµν

√−gδgµν+Rµνgµνδ√

−g+gµν

−gδRµν)d4x (∵R≡gµνRµν)

=

∫ (

Rµν1 2gµνR

) δgµν

−gd4x+

gµν(δRµν)

−gd4x (

(154) : dg=−ggµνdgµνよりδ√

−g= δg

2√−g =1 2

√−ggµνδgµν )

.

最右辺第2項を考える.局所慣性系ではΓµνλ= 0, ∂λgµν = 0だから(第3.1.3節,第3.1.9節参照), gµνδRµν=gµν(∂λδΓλµν−∂νδΓλµλ)

=∂λ(gµνδΓλµν−gµλδΓνµν)

(第2項でダミー添字をν ↔λと入れ換えた)

≡∂λwλ.

ここで第3.1.10節で指摘したようにΓλµνはテンソルではないけれども,変分δΓλµν は(1,2)テンソルである ことに注意すると,wλは反変ベクトルとなることが分かる(第3.1.1節参照).局所慣性系でλwλ=wλな のでgµνδRµν =wλとなる.これは両辺がどちらもスカラーだから他の任意の座標系でも成り立つ関係式で ある(第3.1.1節参照).式(158):wµ= 1

gµ(

−gwµ)より

gµν(δRµν)

−gd4x=

µ(

−gwµ)d4x

となり,これは境界上の積分に置き換わる.ここでwµは場の変分を含んでおり,場の変分は境界上でゼロだ から,この境界上の積分は消える.

一方Sm = 1c

Λd4xと書くと,変分gµνに伴うSm の変化は δSm =1

c

∫ { ∂Λ

∂gµνδgµν+ ∂Λ

∂(∂λgµν)δ(∂λgµν) }

d4x

=1 c

∫ { ∂Λ

∂gµν −∂λ

∂Λ

∂(∂λgµν) }

δgµνd4x (境界でδgµν = 0に注意して部分積分した)

1 2c

Tµνδgµν

−gd4x. (∵(171)) 以上より

0 =δSg+δSm = c3 16πk

∫ (

Rµν1

2gµνR−8πk c4 Tµν

) δgµν

−gd4x となり,これが任意の変分δgµν に対して成り立つことからEinstein方程式(177):

Rµν1

2gµνR= 8πk c4 Tµν

を得る.

6.4 粒子の運動 ( 補足 )

6.4.1 重力場の中の粒子(補足) 作用(181):

S=

Ldt, L≡∑ (

−mc2+1

2mv2−mϕ )

は非相対論的な粒子の運動方程式(180): ˙v=−∇ϕを再現する.実際L=∑ (

−mc2+12mv2−mϕ) に対し てLagrange方程式(2)を書き下すと

0 = d dt

∂L

∂v −∂L

∂r =mv˙+mϕ, ∴(180) : ˙v =−∇ϕ となる.

非相対論的極限ϕ/c21, v/c1で作用S =Sm=mc

dsが作用(181)に移行するためには ds=cdt

{ 11

2 (v

c )2

+ ϕ c2

} ,

∴ds2=(cdt)2 {

1(v c

)2

+2ϕ c2 +O

((v c

)4

, (ϕ

c2 )2

, (v

c )2 ϕ

c2 )}

(

1 + 2ϕ c2

)

(cdt)2dr2 であれば良いから式(182):g00= 1 +c2 を得る [4, p.275]. 6.4.2 電磁場の中の粒子(補足)

以下の関係式は式変形の前後でテンソルの種類が変化しているため任意の座標系では成り立たないけれど も,慣性系においては成り立つ.またギリシャ文字µ, ν· · · 0,1,2,3を動くのに対しローマ字i, j,· · · は空間 成分1,2,3を動くものとする.

■慣性系での粒子の非相対論的な運動方程式(補足) 慣性系で電磁テンソルの成分が式(185)で与えられるこ とを確かめる.電場の式(166):Ei=γijF0j

F0i=−Ei,Fi0=Ei: (183)

を意味する.よって磁束密度の式(167):Bi =12εijkFjkが式(184):Fjk=Fjk =−εijkBi と書き換えられ ることを考え合わせると,電磁テンソルの表式(185)を得る.実際,式(184)は次のように確かめられる.

−εijkBi= 1

2εijkεilmFlm =1

2(δjlδkm−δjmδkl)Flm= 1

2(Fjk−Fkj) =Fjk.

■一様で不変な電磁場中の粒子の運動(補足) 運動方程式(186):mv˙ =e(

E+vc ×B)

を解き,磁場に垂直 な面内で粒子が描くトロコイドの式(188)を導く.第3.4.2節で設定した座標系ではE = (0, Ey, Ez),B= (0,0, B)となるから,運動方程式(186)は

m¨x=y˙

cB, (303)

m¨y=eEy−x˙

cB (304)

となる.{(303) +i(304)}/mを作るとV ≡x˙+iy˙に対する式 V˙ +iωV =ieEy

m , ω≡ eB mc

を得る.一般解は特殊解V = eEy =cEByV˙ +iωV = 0の解V =Aeiωtの和V =Aeiωt+cEBy である.

実数α, δを用いて積分定数Aαeと書くと

˙

x+iy˙≡V =αei(ωtδ)+cEy

B であり,δ=πとなるように時間の原点を選ぶと

{

˙

x=−αcosωt+cEBy

˙

y=αsinωt

{

x=ωαsinωt+cEByt+ const y=αωcosωt+ const

となる.よってαω ≡bと改め,座標軸の原点を適当に選べばこれは式(188)になる[4, pp.63–64].

6.5 重力場がないときの電磁気学 ( 補足 )

以下の関係式は式変形の前後でテンソルの種類が変化しているため任意の座標系では成り立たないけれど も,慣性系においては成り立つ.またギリシャ文字µ, ν· · · 0,1,2,3を動くのに対しローマ字i, j,· · · は空間 成分1,2,3を動くものとする.

■慣性系での電流密度jµの意味付け(補足) 電流密度jが名前の通り電荷の流れの密度を表すならば,電荷 密度ρと電流密度jに対して電荷保存則は連続の式(194):∂ρ∂t +·j= 0で表されることを確かめる.電荷 保存則は次のように言い表せる:

空間に固定した領域内部の電荷が増加したならば,それは領域内部で電荷が無から生じたからではなく,

領域の表面を通って電荷が内部に流入したからである. (305) 特に空間の各位置の周りに無限小領域d3xを考えれば,単位時間当たりの内部の電荷ρd3xの増加量は∂ρ∂td3x, 電荷の流入量は−∇·jd3xなので,これらを等置して連続の式(194)を得る.さらに各体積要素d3x

∂ρ

∂td3x=−∇·jd3x

が成り立てば,任意の有限な領域V に対しても保存則の主張(305)が成り立つ.実際,領域V を構成する全 ての体積要素d3xについて電荷の流入量−∇·jd3xを足し合わせると体積要素間の電荷の出入りが相殺され,

表面Sからの流入量

Sj·dSになる*28.こうして領域V 内部の電荷∫

V ρd3xは,単位時間に表面Sから 流入した分だけ増加することになる:

d dt

V

ρd3x=

S

j·dS.

ここで総電荷∫

Vρd3xは時間tだけの関数であることに注意して,常微分の記号d/dtを用いた.dSは表面 Sの外向き法単位ベクトルである[4, pp.80–81].

*28このことは体積要素dV が直方体d3xに限らず無限小の四面体の場合にも成り立ち,数学的には発散定理と呼ばれ,

V·jdV =

Sj·dSと書かれる

電荷密度・電流密度の式(192),(193)が連続の式(194):∂ρ∂t +·j= 0を自動的に満たすことは,

∂tρ(r, t) =

a

ea

∂tδ(r−ra(t)) =∑

a

eava(t)·

∂ra(t)δ(r−ra(t))

=

a

eava(t)·δ(r−ra(t)),

·j(r, t) =∂iji(r, t) =∑

a

eavai(t)∂iδ(r−ra(t))

=∑

a

eava(t)·δ(r−ra(t)) を辺々足して確かめられる[4, pp.81–82] [17, p.195].

■電磁場で書き表したMaxwell方程式(補足) 慣性系で電磁場が式(196),式(197)に従って電磁ポテンシャ ルから導かれることを確かめる.電場の式(166):Ei=γijF0j

Ei=F0i=0Ai−∂iA0=−∂0Ai−∂iA0,E=1 c

∂A

∂t ϕ: (196) となる.また磁束密度の式(167):Bi=12εijkγFjk

Bi=1

2εijkFjk=1

2εijk(∂jAk−∂kAj) =−εijkjAk=εijkjAk,B=×A: (197) となる.

式(198):×E=1c∂B∂t,·B= 0が恒等的に成り立つことは,式(195)により [×ϕ]i=εijkjkϕ= 0, ·(×A) =εijkijAk = 0 となることから分かる.

最後に電磁場を用いてMaxwell方程式(189):∂νFµν =c jµを具体的に書き下すと

4πρ=

c j0=µF=iF0i=−∂iEi ·E= 4πρ: (199),

c ji=µF =0Fi0+jFij=0Ei−εijkjBk (∵(184)) ×B= 4π c j+1

c

∂E

∂t : (200) となる.

6.5.1 静電場・静磁場(補足)

第6.5.1節で述べたように,電磁ポテンシャル(201)がPoisson方程式の特殊解になっていることを確か

める.

■文献[17, pp.57–60]における証明 位置xを中心とする半径εの球状の無限小領域をVεVεの表面をSVεの外部領域をV −Vεと書くと,スカラーポテンシャル(201):ϕ(x) =∫

d3x|xρ(xx)|に対し

∆ϕ(x) = (∫

VVε

+

Vε

)

ρ(x)∆ 1

|xx|d3x.

ここで領域V −Vεでは|xx| ̸= 0であり,距離|xx|(xによる)微分はxx方向の単位ベクトル になること

i|xx|=i

(x1−x1)2+· · ·= xi−xi

|xx|,i 1

|xx| =−xi−xi

|xx|3 (306)

に注意すると

∆ 1

|xx| =i (

−xi−xi

|xx|3 )

=−∂i(xi−xi)

|xx|3 (xi−xi) (

3|xx|2

|xx|6 )

i|xx|

= 3

|xx|3 + 3

|xx|3 = 0 となる.よって

∆ϕ(x) =

Vε

ρ(x)∆ 1

|xx|d3x≃ρ(x)

Vε

∆ 1

|xx|d3x

=ρ(x)

Vε

· (

1

|xx| )

d3x (xによる微分)

=ρ(x)

S

(

1

|xx| )

·ndS

(n,dSはそれぞれ表面S上の外向き単位法線ベクトルと面積要素)

=ρ(x) (n

ε2

)·n×4πε2 (∵(306))

=4πρ(x) となり,スカラーポテンシャル(201):

ϕ(x) =

ρ(x)d3x

|xx| はPoisson方程式∆ϕ=4πρを満たす.

以上の証明ではϕ, ρの物理的な意味を用いなかったから,置き換えϕ→A, ρj/cによりベクトルポテ ンシャル(201):

A(x) =1 c

j(x)d3x

|xx| がPoisson方程式∆A=c jを満たすことが分かる.

■Green関数法による証明 Poisson方程式∆ψ(x) = σ(x)の解は∆G(x) = δ(x)を満たすGreen関数 G(x)を用いてψ(x) =

d3xσ(x)G(xx)と書ける.実際,このとき

∆ψ(x) =

d3xσ(x)∆G(xx) =

d3xσ(x)δ(xx) =σ(x) となる.そこでG(x) =− 1

|x| であることを示せば良い.

G(x) =

∫ d3k

(2π)3G(k)eik·x とFourier展開すると

∆G(x) =δ(x) ⇒ −k2G(k) = 1 G(k) =−1 k2 なので

G(x) =−

∫ d3k (2π)3

eik·x k2

図26 複素z平面上の積分路C1, C2, C

となる.ここでxを極軸とするkの極座標(k, θ, ϕ)を積分変数に選ぶとk空間の体積要素はk2sinθdkdθdϕ であり,この積分を実行する上で被積分関数がk→0のとき発散することは次のように問題にならない:

G(x) =− 1 (2π)2

0

dk

1

1

d(cosθ)k2eikxcosθ

k2 (x≡ |x|)

= 1 (2π)2

0

dkeikx−eikx ikx

= 2

(2π)2x

0

dξsinξ

ξ .≡kx)

最右辺の積分を評価しよう.図26に示した複素z平面上の半径rの半円C1,半径Rの半円C2,閉曲線C に対して

0 = I

C

eiz z dz=

r

R

e ξ dξ+

C1

eiz z dz+

R

r

e ξ dξ+

C2

eiz z dz であり,この式の最右辺において

r

R

e ξ dξ=

R

r

e

ξ, ≡ −ξ)

C1

eiz z dz=i

0

π

exp(re)dθ (z≡re)

→ −iπ, (r0)

C2

eiz

z dz0 (R→ ∞,Jordanの補助定理) なので

0 = 2i

0

sinξ

ξ−iπ,

0

sinξ ξ dξ= π

2 を得る.よってGreen関数が

G(x) =− 1

4πx (x≡ |x|) と求まる.

■Coulombの法則,Biot-Savartの法則 Coulombの法則(202)とBiot-Savartの法則(203)を電磁ポテン シャル(201)から導くには,式(306)を用い

Ei=

d3xρ(x)∂i

1

|xx| =

d3xρ(x)xi−xi

|xx|3 : (202), Bi=1

c

d3xεijk (

j 1

|xx| )

jk(x) =1 c

d3xεikjjk(x)(xj−xj)

|xx|3 : (203) とすれば良い.

6.5.2 電磁波(補足)

■平面波の式の微分 第3.5.2節の計算の補足として平面波の式f ≡aeikµxµ,f aei(k·rωt)を微分した 結果を調べておく:

µ(−ikνxν) =−ikνδνµ=−kµ,µf =−ikµf,µf =−ikµf.

i(aiei(k·rωt)) =ikiaiei(k·rωt)), ∴·f =ik·f. εijkj(akei(k·rωt)) =εijk(ikj)(akei(k·rωt)), ∴×f =ik×f.

■Fourier展開 電磁場のFourier展開(205)を得るには任意の場E(r, t)E(r, t) =d3k

(2π)3E(k, t)eik·rと Fourier展開し,展開係数E(k, t)の時間依存性を波動方程式から

(1 c2

2

∂t2∆ )

E(r, t) = 0 {1

c2

2

∂t2 (ik)2 }

E(k, t) = 0 E(k, t) =E+(k)ekt+E(k)ekt と定めれば良い.

Fourier展開の積分への移行(206)は展開係数を求める式 E(k, t) = 1

L3

V

E(r, t)eik·rd3x, k=2π Ln, E(k, t) = lim

L→∞

V

E(r, t)eik·rd3x≡ lim

L→∞EV(k, t) を比較すると

E (

k= 2π Ln, t

)

= 1 L3EV

( k=2π

Ln, t )

d3k

(2π)3E(k, t) となることから分かる.

6.5.3 任意に運動する電荷の作る電磁場(補足)

第3.5.3節で述べたように,遅延ポテンシャル(207)が場の方程式(191):∂ννAµ = c jµの特殊解になっ ていることを確かめる.

■文献[17, pp.288–291]における証明 位置xを中心とする半径εの球状の無限小領域をVεVεの外部領域 をV −Vεと書くと,遅延ポテンシャル(207):ϕ(x, t) =ϕVVε(x, t) +ϕVε(x, t),

ϕVε(x, t)

Vε

ρ(x, t− |xx|/c)d3x

|xx|

Vε

ρ(x, t)d3x

|xx| , ϕVVε(x, t)

VVε

ρ(x, t− |xx|/c)d3x

|xx|

に対して

∆ϕVε(x, t) =4πρ(x, t),

∆ϕVVε(x, t) =

VVε

1 R

2

∂R2 (

R×ρ(x, t−R/c) R

)

d3x (R≡ |xx|)

=1 c2

2

∂t2

VVε

ρ(x, t−R/c)d3x

R 1

c2

2

∂t2ϕ(x, t),

∴∆ϕ=∆(ϕVε+ϕVVε) =4πρ+ 1 c2

2

∂t2ϕ となるので,遅延ポテンシャル(207):

ϕ(x, t) =

ρ(x, t− |xx|/c)d3x

|xx| は場の方程式(191):

(1 c2

2

∂t2 ∆ )

ϕ= 4πρを満たす.

以上の証明ではϕ, ρの物理的な意味を用いなかったから,置き換えϕ→A, ρj/cによりベクトルポテ ンシャル(207):

A(x) =1 c

j(x, t− |xx|/c)d3x

|xx| が場の方程式(191):

(1 c2

2

∂t2 ∆ )

A=c jを満たすことが分かる.

■Green関数法による証明 場の方程式

ψ(x) =σ(x), x≡(ct,x), 1 c2

2

∂t2 ∆ の解は□G(x) =δ4(x)を満たすGreen関数G(x)を用いて

ψ(x) =

d4xσ(x)G(x−x) と書ける.実際,このとき

ψ(x) =

d4xσ(x)□G(x−x) =

d4xσ(x4(x−x) =σ(x) となる.そこでG(x) = c

|x|δ(|x| −ct)であることを示せば良い.

G(x) =

∫ d4k

(2π)4G(k)eik·x, k≡(ω/c,k) (307) とFourier展開すると

eik·x= (1

c2

2

∂t2 ∆ )

ei(k·xωt)= (

−ω2 c2 +k2

)

ei(k·xωt)=−k2eik·x により

G(x) =δ4(x)

∫ d4k

(2π)4(−k2)G(k)eik·x=

∫ d4k

(2π)4eik·x (308) を得る.ここでA, Bを任意定数として

G(k) =−P 1

k2 +Aδ(k0− |k|) +Bδ(k0+|k|)

ととれば,右辺第2項,第3項は式(308)左辺の積分に寄与しないので式(308)が満たされる.右辺第1項の PはFourier展開(307):

G(x) =

∫ d3k (2π)3

{∫ dk0

G(k)eik0x0 }

eik·x におけるk0の積分を実行する際,

∫ dk0

G(k)eik0x0

=P

∫ dk0

1

(k0)2k2eik0x0+

∫ dk0

{Aδ(k0− |k|) +Bδ(k0+|k|)}eik0x0

=c [

P

∫ dω 2π

1

ω2−ωk2eiωt+

∫ dω

{Aδ(ω−ωk) +Bδ(ω−ωk)}eiωt ]

, ωk≡c|k| (309)

のようにCauchyの主値をとることを意味する.ここで図27のように,実軸上の極ω=±ωkを無限小の半

εの半円に沿って迂回する複素ω平面上の経路R±をとると,Cauchyの主値はR±に沿う積分の平均 P

∫ dω 2π

eiωt ω2−ωk2 1

2 (∫

R+

+

R

) dω 2π

eiωt ω2−ωk2 である.

次に文献[21]を参考にして,ωによる積分(309)はA= πik

, B= πik

ととると

−c

R+

dω 2π

eiωt ω2−ωk2

となることを確かめる.まず図27のように,極ω=±ωkを中心とする半径εの円を反時計回りに回る経路 をそれぞれC±とすると

R±

dω 2π

eiωt ω2−ωk2 =1

2 (∫

R+

+

R

)

1 2

(

R+

+

R

)

=P

∫ dω 2π

eiωt ω2−ωk2 1

2 (I

C+

+ I

C

) dω 2π

eiωt ω2−ωk2 である.ここで

I

C±

dω 2π

eiωt ω2−ωk2 = 1

· ei(±ωk)t

2(±ωk) ·2πi=±πi ωk

∫ dω

δ(ω∓ωk)eiωt なので

R±

dω 2π

eiωt ω2−ωk2 = P

∫ dω 2π

eiωt

ω2−ωk2 πik

∫ dω

δ(ω−ωk)eiωt± πik

∫ dω

δ(ω+ωk)eiωt を得る.よってωによる積分(309)はA= πi

k

, B= πik

ととると

−c

R+

dω 2π

eiωt ω2−ωk2 となる.

これを計算しよう.t <0のとき図27に示した原点の無限遠にある半円Γ+に沿う積分

−c

Γ+

dω 2π

eiωt ω2−ωk2 はゼロになるから,

−c

R+

dω 2π

eiωt

ω2−ωk2 =−c I

R++

dω 2π

eiωt ω2−ωk2 = 0

を得る.よってt < tのときG(x−x) = 0となる.これは時刻tでの源σ(x)の状態が過去の時刻t(< t) における場の値ψ(x) =

d4xσ(x)G(x−x)に影響しないことを意味する.一方,t >0のとき図27に示 した原点の無限遠にある半円Γに沿う積分

−c

Γ

dω 2π

eiωt ω2−ωk2 はゼロになるから,

−c

R+

dω 2π

eiωt

ω2−ωk2 =−c I

R+

dω 2π

eiωt ω2−ωk2

=(−c)(−2πi)(Res[−ωk] + Res[ωk])

(ここで周回積分が時計回りであることに注意した)

=(−c)(−2πi) ( 1

ekt

k 1 2π

ektk

)

= c ωk

sin(ωkt)

を得る.よって,x≡ |x|, k≡ |k|と書くことにすると(以降ではx, kは4元ベクトルではない),Green関数 (307)が

G(x, t) =

∫ d3k (2π)3

{ θ(t) c

ωksin(ωkt) }

eik·x

= θ(t) (2π)3 ·

0

dk

1

1

d(cosθ)k2sin(ckt)

k eikxcosθ (θはkxとなす角)

= θ(t) (2π)2ix

0

dksin(ckt)(eikx−eikx)

= θ(t) (2π)2ix

−∞

dksin(ckt)eikx

= θ(t) 2(2π)2x

−∞

dk(eickt−eickt)eikx

=−θ(t)

4πx{δ(x+ct)−δ(x−ct)}

= 1

4πxδ(x−ct) (x≡ |x|) と求まる.

6.6 物体の作る重力場 ( 補足 )

6.6.1 Newtonの万有引力の法則(補足)

Einstein方程式が重力場の弱い極限でNewtonの万有引力の法則(208)を再現することは次のように確か

められる[4, pp.329–330] [12, pp.174–175].Einstein方程式(177):Rµν12gµνR= 8πkc4 Tµνは両辺にgµν

図27 複素ω平面上の積分路R±, C±,Γ±

かけてµ, νについて和をとるとR=8πkc4 T, T ≡gµνTµνとなるので(gµνgµν =δµµ= 4だから), Rµν =8πk

c4 (

Tµν1 2gµνT

)

(310) と書き換えられる.この式の(0,0)成分を考えよう.Rµνの定義式(164)より

R00=αΓα00−∂0Γα+ Γα00ΓβαβΓαΓβ. 重力場が弱い場合を考えて時空の各点で計量テンソルが

gµν =ηµν+εφµν, 0≤ε≪1

となる座標系を用いるとgµν =ηµν−εφµν+O(ε2), φµν ≡ηµαηνβφαβとなる.実際gµν =ηµν−εφµνと おくと

gµλgλν = (ηµλ−εφµλ)(ηλν+εφλν) =δµν+ε(ηµλφλν−ηλνφµλ) +O(ε2) においてεの1次の項が消えるのでgµλgλν =δµνεの1次の範囲で満たされる.よって

Γλµν =1

2gλρ(∂νgρµ+µgρν−∂ρgµν) (∵(153))

=1

2εηλρ(∂νφρµ+µφρν−∂ρφµν) +O(ε2) となり,これはεの1次の量だから

R00=αΓα00−∂0Γα+O(ε2)

と書ける.さらに重力場が不変である,すなわち0gµν = 0, ∂0φµν= 0とすると Γα00=1

2εηαβ(∂0φβ0+0φβ0−∂βφ00) +O(ε2) =1

2εηαiiφ00+O(ε2),

0Γα=1

2εηαβ0(∂αφβ0+0φβα−∂βφ) +O(ε2) =O(ε2)