3.5.3 任意に運動する電荷の作る電磁場
最後に,任意に運動する電荷の作る時間変化する場Aµに触れておく.定常的な電荷分布・電流分布が電磁 ポテンシャル(201):
ϕ(x) =
∫ ρ(x′)d3x′
|x−x′| , A(x) = 1 c
∫ j(x′)d3x′
|x−x′|
を作ったのに対し,電荷分布・電流分布が時間変化するときの電磁ポテンシャルAµはある意味で第3.5.2節 の波動的な性格を兼ね備えたものとなる.すなわち場の方程式(191):∂ν∂νAµ=4πc jµは
ϕ(x, t) =
∫ ρ(x′, t− |x−x′|/c)d3x′
|x−x′| , A(x, t) = 1 c
∫ j(x′, t− |x−x′|/c)d3x′
|x−x′| (207) を特殊解に持つ(第6.5.3節参照).これは遅延ポテンシャルと呼ばれ,電荷分布・電流分布の時間変化に伴っ て時刻t′ ≡t− |x−x′|/cに位置x′ の電荷素片ρ(x′, t′)d3x′, 電流素片 j(x′, t′)d3x′ から発生した電磁 波が光速cで伝わり,時刻tで位置xに電磁ポテンシャルρ(x|x′,t−′x)d′3|x′,1cj(x|x′,t−′x)d′3|x′ を作ることを示唆してい る[4, pp.178–180] [17, pp.287–288].
3.6 物体の作る重力場
図15 Schwarzschild時空における空間の歪みの視覚化
■空間の歪み 場の中心を含む赤道面θ=π/2上の,座標r, ϕがそれぞれdr,dϕだけ異なる2点間の空間的 な距離dlは式(147),Schwarzschild解(209)より
dl2= (rdϕ)2+ dr2 1−rrg
で与えられる.よってここで用いた球座標rは,r= constの円周の長さが2πrとなるようなものである.
一方,動径ϕ = const上のr =r1, r2(> r1)となる2点間の距離は∫r2 r1
√dr
1−rgr であり,これは座標の読み r2−r1より大きい.こうして場の中心を中心とした円周2πr1,2πr2の同心円に挟まれた円環の幅はr2−r1
よりも長くなるという幾何学的な性質が見いだされる[4, p.336].
このような空間の歪みを次のように視覚化できる[4, p.339].図15では 座標がdrだけ異なる動径上の2点A,B間の距離がdr, 座標がdϕだけ異なる円周上の2点A,C間の距離がrdϕ
となるように場の中心を含む赤道面上の点がxy平面に描かれている.すなわちxy平面は球座標r, ϕの読み を表示している.一方,線分AB,ACの真上にある曲面上の線分A′B′,A′C′の長さがそれぞれAB間,AC間 の真の距離√dr
1−rgr , rdϕを与える.このような性質を持つ曲面の方程式はz=±2√
rg(r−rg) + constであ る(第6.6.2節参照).
■時間の遅れ Schwarzschild解(209)において計量テンソルは座標時間tに依らない.このような座標時間 tとしては,光の振動の回数で測った時間を考えれば良い[16, p.253].実際,計量テンソルが座標時間tに依 らないとき,tで測った光の振動数は光線上で一定となる(第6.6.2節参照).これは図16のように空間の任意 の2点A,B間を光が伝わるとき,座標tで測った光(電場または磁場)の振動に要する時間T が2点A,Bで 等しくなることを意味する.
一方,空間の各点に置かれた造りの全く同じ時計の示す固有時間τはSchwarzschild解(209)より座標時間 がdt経過する内に
dτ=
√ 1−rg
rdt (210)
だけ進む.よって重力源の星の近くほどrは小さくなり図16のように時計は遅れることになる(図16はA
図16 座標時間と固有時間
の方がBよりも星に近いものとして描いている) [4, pp.277–278]*20.
■「時空の歪みに沿った」粒子の運動 太陽の作る重力場中を惑星(以下,粒子)は「時空の歪みに沿って」運 動し,軌道を「曲げられる」ことを考察する.粒子は世界間隔が式(209)でθ=π/2とおいた
ds2= (
1−rg r
)
(cdt)2−(rdϕ)2− dr2 1−rrg
で与えられるSchwarzschild時空の赤道面を運動し,近似的に粒子は与えられえた重力場をかき乱さないもの とする.時刻t=t1, t2での粒子の位置が与えられたとき,粒子の軌道は作用Sm=−mc∫
dsが極小になる こと,すなわち粒子の固有時間
τ =
∫ ds c = 1
c
∫ √(
1−rg
r )
(cdt)2−(rdϕ)2− dr2 1−rrg
が極大になることから定まる.ここで微小時間dt中の粒子の空間座標の変化をdr,dϕと書いている.定性的 にはrの大きい太陽の遠方ほど最右辺において
dt中の真の時間の進みdτ =
√ 1−rg
rdtの項は大きくなり,
drに対応する動径方向の真の距離dl= dr
√
1−rrgの項は小さくなって,
粒子の固有時間を増大させる.しかし粒子が太陽から離れすぎると角度変化dϕの項が大きくなるので固有時 間が減少する.以上を踏まえると,粒子の空間的な軌道は太陽から見てある程度外側に膨らんだ曲線になると 想像される.
*20座標時間tを示す光の振動を利用した時計と固有時間τ を示す時計で用いている時間の単位の関係は,式(210)より無限遠 r→ ∞でtとτが一致することから決まる.
以上の議論を裏付けるため重力半径rgの太陽が作るSchwarzschild時空の中を運動する粒子を考え,粒子 の時空における実際の軌道と仮想的な軌道の固有時間を比較する数値シミュレーションを次の手順で行う*21. まず実際の軌道を求めるため,以下の時間発展方程式を用いる(ドットはtによる微分).
˙
r=f(r)≡c×1 a
( 1−rg
r )√
a2−( 1−rg
r ) (
1 + b2 c2r2
)
, (211)
ϕ˙=g(r)≡ b r2 ×1
a (
1−rg r )
. (212)
これは粒子の固有時間が極大となる条件として導かれる(第6.6.2節参照).ここに a≡(
1−rg
r ) dt
dτ(>0), (213)
b≡r2dϕ
dτ (214)
は初期条件から定まる保存量である.t= 0での初期条件を
r(0) =r0(> rg), ϕ(0) = 0, r(0) = ˙˙ r0= 0, ϕ(0) = ˙˙ ϕ0(>0) と与える.このときこれらを時間発展方程式(211),(212)に代入してa, bについて解くと
a=
1 1−rrg0
1− r˙02 c2
(
1−rrg0)2
− 1 (
1−rrg0)2
r02ϕ˙02 c2
−1/2
, (215)
b=a×ϕ˙0 r02 1−rrg0
a=(215)
となる.座標時間をt=i∆t(i= 0,1,· · · , N)と離散化し(T ≡N ∆t),上記の初期条件とa, bに対して時間 発展方程式(211),(212)を修正Euler法にて
˜
r=t(t) +f(r(t))∆t, r(t+∆t) =r(t) +f(˜r) +f(r(t))
2 ∆t,
ϕ(t+∆t) =ϕ(t) +g(˜r) +g(r(t))
2 ∆t
と数値的に解き時空における粒子の実際の軌道を求める.また軌道の端点(ct, x, y) = (0, x(0), y(0)),(T, x(T), y(T)) を固定して,各時刻t=i∆t≡tiでの動径座標rを
r(ti) → r(ti) + A
(N/2)2i(N−i) と増加させた軌道,および座標系に対して等速直線運動をする軌道
x(ti) =x(0) + (x(T)−x(0))ti
T, y(ti) =y(0) + (y(T)−y(0))ti
T
*21正確にはこの数値シミュレーションで裏付けられるのは,最小作用原理と運動方程式の同等性である.
図17 Schwarzschild時空中の粒子の軌道と固有時間
を仮想的に考える.ただしxy座標はSchwarzschild解(209)の球座標とr=√
x2+y2, ϕ= arctan(y/x)の 関係にある.そしてそれぞれの軌道について粒子の固有時間を
τ =
∫ ds c =
∫ vuut(1−rg
r )−
(r c
dϕ dt
)2
− (1
c dr dt
)2
1−rrg dt
≃
N∑−1 i=0
Fi+Fi+1
2 ∆t,
Fi≡ vu uu t(
1− rg
r(ti) )
− (r(ti)
c
ϕ(ti+1)−ϕ(ti)
∆t
)2
−
(r(ti+1)−r(ti) c∆t
)2
1−r(trgi) ,
Fi+1≡ vu uu t(
1− rg r(ti+1)
)
−
(r(ti+1) c
ϕ(ti+1)−ϕ(ti)
∆t
)2
−
(r(ti+1)−r(ti) c∆t
)2
1−r(tri+1g ) と求める.長さと時間を適当に無次元化した上で
rg= 1, c= 1, ∆t= 10−3, N = 2×104, r0= 5rg, ϕ˙0= 0.1, A= 2 として以上の数値シミュレーションを行うと結果は図17のようになった.実際の軌道(actual path)では他 の2つの軌道と比べて固有時間が大きくなっているのが分かる.また実際の軌道に対する固有時間は確かに座 標時間T = 20よりも遅れていることになる.
なお,ステップ数をN = 105に増やしたときの実際のxy面内の軌道は図18のようになった.
図18 Schwarzschild時空中の粒子の長時間挙動
第 II 部
導出編
4 量子電磁力学 (QED)( 補足 )
4.1 量子力学の準備 ( 補足 )
4.1.1 最小作用原理と運動方程式(補足)
第1.1.2節で述べたように,最小作用原理からEuler-Lagrange方程式(2),(4)が導かれることを示す.まず 粒子の軌道qi(t)の変分に対して作用(1):S =∫t2
t1 Ldtが停留値をとる条件は 0 =δS=
∫ t2
t1
∑
i
(∂L
∂qi
δqi+∂L
∂q˙i
δq˙i
) dt=
∫ t2
t1
∑
i
(∂L
∂qi − d dt
∂L
∂q˙i
) δqidt
と書ける.ただし最後の等号では δq˙i = dtdδqi に注意して被積分関数の第2 項を部分積分し,境界条件 δqi(t1) =δqi(t2) = 0を用いた.上式最右辺において変分{δqi}を独立にとれることからEuler-Lagrange方 程式(2):
d dt
∂L
∂q˙i −∂L
∂qi
= 0 を得る[3, pp.2–4].
同様に空間の各位置での場の値ϕr(x, t)の変分に対して作用(3):S=∫
LdVdtが停留値をとる条件は 0 =δS=
∫ {∂L
∂ϕr
δϕr+ ∂L
∂(∂µϕr)δ(∂µϕr) }
dVdt=
∫ {∂L
∂ϕr −∂µ
∂L
∂(∂µϕr) }
δϕrdVdt
と書ける(ただしµ, rについて和をとる).ただし最後の等号ではδ(∂µϕr) =∂µ(δϕr)に注意して被積分関 数の第2項を部分積分した.その際,作用の積分が行われる時空領域の境界は場の値が指定された 平面 t = t1, t2 と場の値がゼロになる空間の無限遠の 側面 から成り(第3.2節の図8参照),ここでは変分 δϕrがゼロになることを用いた.上式最右辺において場の種類ごとに変分{δϕr}を独立にとれることから Euler-Lagrange方程式(4):
∂µ
∂L
∂(∂µϕr)− ∂L
∂ϕr
= 0 を得る[3, pp.2–4].
4.1.2 正準方程式(補則)
第1.1.3節における正準方程式(5)を導く.
一般運動量の定義式 pi≡ ∂L
∂q˙i
, Lagrange方程式(2) : p˙i= d
dt (∂L
∂q˙i )
= ∂L
∂qi
よりq,q, t˙ の関数であるLagrangianの全微分は dL=∑
i
(∂L
∂qi
dqi+ ∂L
∂q˙i
d ˙qi
) +∂L
∂tdt
=∑
i
( ˙pidqi+pid ˙qi) +∂L
∂tdt
=d (∑
i
piq˙i )
+∑
i
( ˙pidqi−q˙idpi) +∂L
∂tdt となる.よってq, p, tの関数であるHamiltonianの全微分は
dH= d (∑
i
piq˙i
)
−dL=∑
i
(−p˙idqi+ ˙qidpi)−∂L
∂tdt となり,ここから正準方程式(5):
∂H
∂qi
=−p˙i, ∂H
∂pi
= ˙qi
および ∂H∂t =−∂L∂t が得られる[3, pp.166–168].
4.1.3 ケット,ブラおよび演算子(補足)
■Hermite演算子の性質 第1.1.4節で述べたように,Hermite演算子Aの固有値a′, a′′,· · · は実数であり,
異なる固有値a′, a′′に属するAの固有ケット|a′⟩,|a′′⟩は直交すること,すなわち⟨a′|a′′⟩= 0を示す.固有 方程式(9):
A|a′⟩=a′|a′⟩
の両辺Hermite共役をとり,AがHermiteであることA†=Aを用いると
⟨a′′|A=a′′∗⟨a′| (216)
となる.ここで
⟨a′′|(9) : ⟨a′′|A|a′⟩=a′⟨a′′|a′⟩ (216)|a′⟩: ⟨a′′|A|a′⟩=a′′∗⟨a′′|a′⟩ を辺々引いて
(a′−a′′∗)⟨a′′|a′⟩= 0
を得る.今,a′とa′′を等しくとると(a′−a′∗)⟨a′|a′⟩= 0であり,固有ケット|a′⟩ ̸= 0より⟨a′|a′⟩>0であ ることからa′ =a′∗が結論される.これは固有値a′が実数であることを意味する.次に相異なるa′, a′′をと ると上式においてa′−a′′∗=a′−a′′̸= 0なので,直交性⟨a′′|a′⟩= 0が示される[5, pp.22–23].
■完全性条件(12),(15) 第1.1.4節で述べたように完全性条件が式(12),式(15)で与えられることを確か める.任意のケット|α⟩が固有ケット{|a′⟩},{|ξ′⟩}を用いて
式(11) :|α⟩=∑
a′′
ca′′|a′′⟩, 式(14) :|α⟩=
∫
dξ′′cξ′′|ξ′′⟩
と展開できるとする.このとき展開係数は
⟨a′|α⟩=∑
a′′
ca′′δa′a′′ (∵規格直交性(10) :⟨a′|a′′⟩=δa′a′′)
=ca′,
⟨ξ′|α⟩=
∫
dξ′′cξ′′δ(ξ′−ξ′′) (∵規格直交性(13) :⟨ξ′|ξ′′⟩=δ(ξ′−ξ′′))
=cξ′
と定まる.これを上式に戻すと
|α⟩=∑
a′
|a′⟩ ⟨a′|α⟩, |α⟩=
∫
dξ′|ξ′⟩ ⟨ξ′|α⟩ (217) であり,これが任意のケット|α⟩に対して成り立つことから完全性条件
式(12) :∑
a′
|a′⟩ ⟨a′|= 1, 式(15) :
∫
dξ′|ξ′⟩ ⟨ξ′|= 1
を得る.逆に完全性条件が成り立てば任意のケット|α⟩を式(217)のように展開することができる[5, p.24].
■期待値⟨α|A|α⟩ 第1.1.4節で述べたように,系の状態が|α⟩にあるとき観測量Aの期待値は⟨α|A|α⟩で与 えられる.実際,観測量Aを離散的な固有値a′に見いだす確率は| ⟨a′|α⟩ |2,連続的な固有値ξ′に見いだす 確率密度は| ⟨ξ′|α⟩ |2なので,Aの期待値は
⟨A⟩=
∑
a′
a′| ⟨a′|α⟩ |2
∫
dξ′| ⟨ξ′|α⟩ |2
=
∑
a′,a′′
⟨a′|α⟩∗a′′δa′a′′⟨a′′|α⟩
∫
dξ′dξ′′⟨ξ′|α⟩∗ξ′′δ(ξ′−ξ′′)⟨ξ′′|α⟩
=
∑
a′,a′′
⟨α|a′⟩ ⟨a′|A|a′′⟩ ⟨a′′|α⟩
∫
dξ′dξ′′⟨α|ξ′⟩ ⟨ξ′|A|ξ′′⟩ ⟨ξ′′|α⟩
=⟨α|A|α⟩ (∵完全性条件(12),(15)) となる[5, p.32].
4.1.4 可換な量A, Bに対する指数法則eAeB =eA+B(補足)
第1.1.5節で述べたように,可換な量A, B に対しては指数法則eAeB =eA+B が成り立つことを示す.
まず,
eAeB= (∞
∑
n=0
1 n!An
) ( ∞
∑
m=0
1 m!Bm
)
=
∑∞ n=0
∑∞ m=0
1 n!
1 m!AnBm
の最右辺において和をとられる項 n!1 m!1 AnBmをいくつか書き出すと以下のようになる.
1 B 12B2 3!1B3 N1!BN
1 1 B 12B2 3!1B3 N1!BN
A A AB 12AB2 (N−11)!ABN−1
1
2A2 12A2 12A2B . ..
1
3!A3 3!1A3 (N−11)!AN−1B
1
N!AN N!1 AN n+m=N となる項の和
∑N n=0
1
n!(N−n)!AnBN−nは上の図式で1列に並ぶ青い字で示した項の和であるこ とに注意すると,
eAeB =
∑∞
N=0
∑N n=0
1
n!(N−n)!AnBN−n =
∑∞
N=0
1 N!
∑N n=0
N!
n!(N−n)!AnBN−n
となることが分かる(ただし上の図式はN = 4として書いている).上式の最右辺はA, Bが交換すれば
∑∞ N=0
1
N!(A+B)N =eA+B に等しいから指数法則eAeB =eA+Bが成り立つ.
4.1.5 位置,運動量および平行移動(補足)
第1.1.6節で述べたように,運動量pˆの定義として平行移動演算子の表式T(a) =e−ipˆ·aと正準交換関係 [ˆxi,pˆj] =iδijが等価であることを示す.T(a)が平行移動演算子であることから
ˆ
xiT(a)|x⟩=ˆxi|x+a⟩= (xi+ai)|x+a⟩, T(a)ˆxi|x⟩=xiT(a)|x⟩=xi|x+a⟩ であり,これらを辺々引くと
[ˆxi,T(a)]|x⟩=ai|x+a⟩
となる.ここで平行移動演算子がT(a) =e−ipˆ·a= 1−ipˆ·a+O(a2)と表されるとして両辺aの1次の項 を取り出すと
−iaj[ˆxi,pˆj]|x⟩=ai|x⟩ となるので正準交換関係[ˆxi,pˆj] =iδijを得る[5, pp.61–63].
次に平行移動演算子の表式T(a) =e−iˆp·aから式(16):⟨x|pˆ|α⟩=−i∇⟨x|α⟩を導こう.
e−ipˆ·a|α⟩=T(a)|α⟩
=
∫
d3xT(a)|x⟩ ⟨x|α⟩
=
∫
d3x|x+a⟩ ⟨x|α⟩
=
∫
d3x′|x′⟩ ⟨x′−a|α⟩ (x′ ≡x+a)
であり,最左辺と最右辺についてaの1次の項を取り出すと
−ipˆ·a|α⟩=
∫
d3x′|x′⟩(−a·∇′)⟨x′|α⟩,
∴pˆ|α⟩=
∫
d3x′|x′⟩(−i∇′)⟨x′|α⟩ となるので,式(16):
⟨x|pˆ|α⟩=
∫
d3x′⟨x|x′⟩(−i∇′)⟨x′|α⟩
=−i∇⟨x|α⟩ (∵規格直交性⟨x|x′⟩=δ(x−x′)) を得る[5, p.72].
さらにこれを用いてpˆi|p⟩=pi|p⟩となる運動量固有状態|p⟩の波動関数⟨x|p⟩に対する微分方程式を作 ると
pi⟨x|p⟩=⟨x|pˆi|p⟩=−i∂i⟨x|p⟩
となる.これは⟨x|p⟩=N eip·xとすると満たされ,さらに式(16)の導出で用いた規格直交条件 δ(x−x′) =⟨x|x′⟩
=
∫
d3p⟨x|p⟩ ⟨p|x′⟩
=
∫
d3p(N eip·x)(N∗e−ip·x′)
=|N|2
∫
d3peip·(x−x′)
=|N|2(2π)3δ(x−x′) から規格化定数N を定めると
N = 1
(2π)3/2, ∴(16) :⟨x|p⟩= 1
(2π)3/2eip·x
を得る.ただし波動関数⟨x|p⟩の位相は確率密度| ⟨x|p⟩ |2に影響しないため任意にとって良いことに注意し てN >0とした [5, pp,74–75].
4.1.6 Schr¨odinger描像,Heisenberg描像,相互作用描像(補足) ここでは第1.1.7節の内容を補足する.
■時間的発展の演算子の表式(20) 第1.1.7節においてHamilton演算子H が時間に陽に依らない場合の時 間的発展の演算子は式(20):
U(t) =e−iHt ≡
∑∞ n=0
1
n!(−iHt)n と書けることを述べた.確かにこれは
id dtU =i
∑∞ n=1
1
(n−1)!(−iHt)n−1(−iH) =i(−iH)
∑∞ n=0
1
n!(−iHt)n=HU よりSchr¨odinger方程式(18)を満たし,またU(0) = 1を満足する.
■Heisenberg方程式(22) Heisenberg方程式(22)は次のように導かれる.
dAH dt =dU†
dt AU+U†AdU
dt (∵式(21) :AH(t) =U†(t)AU(t))
= (
−1 iU†H
)
AU +U†A (1
iHU
) (
∵式(18) :idU
dt =HU, −idU†
dt =U†H )
=−1
i(U†HU)(U†AU) +1
i(U†AU)(U†HU) (∵U U†= 1)
=1
i[AH, HH]. (∵式(21) :AH(t) =U†(t)AU(t))
ここで最右辺においてHH≡U†HUはHeisenberg描像のHamilton演算子であり,HとU(t) =e−iHt:(20) は交換するから,これはSchr¨odinger描像のHamilton演算子H に等しい:
HH≡U†HU=U†U H =H. (∵U†U = 1) よって上式はHeisenberg方程式(22):
dAH dt =1
i[AH, H]
に他ならない[5, pp.111-112].
■Heisenberg描像の観測量AH(t)に対する固有方程式(23) Heisenberg描像の観測量AH(t)に対する固有 方程式(23)は,Schr¨odinger描像の観測量Aに対する固有方程式(9):
A|a′⟩=a′|a′⟩ に両辺左からU†(t)をかけ,U U† = 1に注意すると
{U†(t)AU(t)}{U†(t)|a′⟩}=a′{U†(t)|a′⟩}, ∴AH(t)|a′, t⟩H=a′|a′, t⟩H: (23), AH(t)≡U†(t)AU(t) : (21), |a′, t⟩H≡U†(t)|a′⟩: (24) と得られる[5, pp.116–117].
■相互作用描像の状態ケットに対する時間発展方程式(26) 相互作用描像の状態ケット|α, t⟩Iに対する時間 発展方程式(26)は次のように確かめられる.
id
dt|α, t⟩I=id
dt(eiH0t|α, t⟩)
=−H0eiH0t|α, t⟩+eiH0tid dt|α, t⟩
=eiH0t(−H0)|α, t⟩+eiH0tH|α, t⟩ (∵Schr¨odinger方程式(19))
=eiH0tHI|α, t⟩
=(eiH0tHIe−iH0t)(eiH0t|α, t⟩)
=HII|α, t⟩I.
■Heisenberg描像と相互作用描像の観測量の関係(28) Heisenberg描像と相互作用描像の観測量の関係(28) は次のように確かめられる.
AI(t) =U0†(t)AU0(t) (∵式(25))
=U0†(t)U(t)AH(t)U†(t)U0(t) (∵式(21))
=U†(t)AH(t)U(t) : (28), U(t)≡U†(t)U0(t) =eiHte−iH0t.
4.1.7 生成・消滅演算子(補足)
■交換子,反交換子に関する恒等式 まず交換子,反交換子に関して次の恒等式が成り立つことに注意する[2, pp.65–66] [5, p.68].
[AB, C] =A[B, C] + [A, C]B, (218)
[AB, C] =A{B, C} − {A, C}B. (219)
実際,これらは次のように確かめられる.
[AB, C] =ABC−CAB= {
A(BC−CB) + (AC−CA)B=A[B, C] + [A, C]B A(BC+CB)−(AC+CA)B=A{B, C} − {C, A}B .
■交換関係(29):[a, a†] = 1を課した場合 第1.1.8節で述べたように,a, a†は交換関係(29):[a, a†] = 1を課 すと式(30):
a|n⟩ ∝ |n−1⟩, a†|n⟩ ∝ |n+ 1⟩
を満たす消滅,生成演算子となることを示す.交換関係(29)および恒等式(218)を用いると
[N, a] =[a†a, a] =a†[a, a] + [a†, a]a=−a (220) [N, a†] =[a†a, a†] =a†[a, a†] + [a†, a†]a=a† (221) が導かれる.ここから
N(a|n⟩) =(aN+ [N, a])|n⟩=a(N−1)|n⟩= (n−1)(a|n⟩), N(a†|n⟩) =(a†N+ [N, a†])|n⟩=a†(N+ 1)|n⟩= (n+ 1)(a†|n⟩)
を得る.これらはa|n⟩, a†|n⟩がそれぞれ固有値n−1, n+ 1に属するNの固有ケットであることを意味す る.よってc±を数定数として
a|n⟩=c−|n−1⟩, a†|n⟩=c+|n+ 1⟩ と書ける.これは式(30)に他ならない.
次に固有値nがゼロ以上の整数に限られることを示す.まず上式の係数c±を定めるに当たり,各固有値n に対する固有ケット|n⟩が⟨n|n⟩= 1と規格化されていることを要求しよう.すると
|c−|2=(⟨n−1|c−∗)·(c−|n−1⟩) = (⟨n|a†)·(a|n⟩)
=n⟨n|n⟩=n,
|c+|2=(⟨n+ 1|c+∗)·(c+|n+ 1⟩) = (⟨n|a)·(a†|n⟩) =⟨n|a†a+ [a, a†]|n⟩
=⟨n|N+ 1|n⟩= (n+ 1)⟨n|n⟩=n+ 1