場のエネルギー・運動量保存則(135)が粒子の運動方程式(138)に読み替えられることを確かめる.物質場 が粒子の集団を成す場合を考え,電流密度を式(136):
sµ(x) =∑
i
ei
∫
dτiz˙µ(i)δ4(x−z(i))
=∑
i
ei
∫
dz0(i)z˙µ(i)
˙
z0(i)δ4(x−z(i))
=∑
i
eidzµ(i)
dt δ(x−z(i)) (
∵ z˙µ(i)
˙
z0(i) = dzµ(i)/dτi
dz0(i)/dτi =dzµ(i) dt
)
と書く.ただしあからさまには示していないけれど,最右辺においてzµ(i) =zµ(τi)の引数τiはx0=z0(τi) を満たす値をとるものとする.すなわちzµ(i)は座標時間x0でのi番目の粒子の座標となる.第3.5節で述
べるように,最右辺の表式は確かに荷電粒子系の電流密度と見なせる.また,粒子の系のエネルギー・運動量 テンソルは式(137):
TMµν(x) =∑
i
mi
∫
˙
zµ(i) ˙zν(i)δ4(x−z(i))dτi
で与えられる.これは第3.5節におけるエネルギー・運動量テンソル式(172)の,粒子に対する項に他なら ない.
このとき場のエネルギー・運動量保存則(135):
∂νTMνµ=Fµνsν において
∂νTMνµ=∂ν
{∑
i
mi
∫
˙
zν(i) ˙zµ(i)δ4(x−z(i))dτi
}
=∑
i
mi
∫
˙
zν(i) ˙zµ(i){∂νδ4(x−z(i))}dτi
=−∑
i
mi
∫
˙
zν(i) ˙zµ(i) ∂
∂zν(i)δ4(x−z(i))dτi
=−∑
i
mi
∫ d
dτiz˙µ(i)δ4(x−z(i))dτi
=∑
i
mi
∫
¨
zµ(i)δ4(x−z(i))dτi, Fµνsν=∑
i
ei
∫
Fµν(z(i)) ˙zν(i)δ4(x−z(i))dτi
なので,これらを等置して粒子の運動方程式(138):
miz¨µ(i) =eiFµν(z(i)) ˙zν(i), ∴mz¨µ=eFµνz˙ν
を得る.
6 古典物理学 ( 補足 )
6.1 一般相対性理論の準備 ( 補足 )
6.1.1 テンソル(補足)
第3.1.1節で述べたように,テンソルの和Aµ1···µpν1···νq(式(140)),積Bµ1···µpλ1···λrν1···νqρ1···ρs(式(141)),縮 約Cµ1···µi−1µi+1···µpν1···νj−1νj+1···νq(式(142))がそれぞれ(p, q)テンソル,(p+r, q+s)テンソル,(p−1, q−1) テンソルであることが,テンソルを定義する変換則(139)から示される.実際これらの新しい座標系での成分 をそれぞれA′µ1···µpν
1···νq, B′µ1···µpλ1···λrν
1···νqρ1···ρs, C′µ1···µi−1µi+1···µpν
1···νj−1νj+1···νqと書くと,
A′µ1···µpν1···νq
=∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µp
∂xλp
∂xρ1
∂x′ν1· · · ∂xρq
∂x′νqTλ1···λpρ1···ρq+∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µp
∂xλp
∂xρ1
∂x′ν1 · · · ∂xρq
∂x′νqUλ1···λpρ1···ρq
=∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µp
∂xλp
∂xρ1
∂x′ν1· · · ∂xρq
∂x′νqAλ1···λpρ1···ρq, B′µ1···µpλ1···λrν1···νqρ1···ρs
= (∂x′µ1
∂xσ1 · · ·∂x′µp
∂xσp
∂xτ1
∂x′ν1 · · · ∂xτq
∂x′νqTσ1···σpτ1···τq
) (∂x′λ1
∂xα1 · · ·∂x′λr
∂xαr
∂xβ1
∂x′ρ1 · · · ∂xβs
∂x′ρsUα1···αrβ
1···βs
)
=∂x′µ1
∂xσ1 · · ·∂x′µp
∂xσp
∂xτ1
∂x′ν1· · · ∂xτq
∂x′νq
∂x′λ1
∂xα1 · · ·∂x′λr
∂xαr
∂xβ1
∂x′ρ1 · · · ∂xβs
∂x′ρsBσ1···σpα1···αrτ
1···τqβ1···βs, C′µ1···µi−1µi+1···µpν1···νj−1νj+1···νq
=∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µi−1
∂xλi−1
∂x′λ
∂xα
∂x′µi+1
∂xλi+1 · · ·∂x′µp
∂xλp
×∂xρ1
∂x′ν1 · · · ∂xρj−1
∂x′νj−1
∂xβ
∂x′λ
∂xρj+1
∂x′νj+1 · · · ∂xρq
∂x′νqTλ1···λi−1αλi+1···λpρ
1···ρj−1βρj+1···ρq
=∂x′µ1
∂xλ1 · · ·∂x′µi−1
∂xλi−1
∂x′µi+1
∂xλi+1 · · ·∂x′µp
∂xλp
∂xρ1
∂x′ν1· · · ∂xρj−1
∂x′νj−1
∂xρj+1
∂x′νj+1 · · · ∂xρq
∂x′νqCλ1···λi−1λi+1···λpρ1···ρj−1ρj+1···ρq
(
∵ ∂x′λ
∂xα
∂xβ
∂x′λ =δβα, δβαTλ1···λi−1αλi+1···λpρ
1···ρj−1βρj+1···ρq =Cλ1···λi−1λi+1···λpρ1···ρj−1ρj+1···ρq
)
となる.これらはそれぞれ(p, q)テンソル,(p+r, q+s)テンソル,(p−1, q−1)テンソルの変換則である.
6.1.2 局所慣性系(補足)
第3.1.3節で局所的平坦性定理として述べたように,任意の座標系{xµ}から座標系x′≡ {x′µ}に移り,時 空の与えられた点Pの座標をx′0≡ {x′0µ}として計量テンソルを
gαβ(x′) =ηαβ+O((x′µ−x′0µ)2)
とできることを示す[14, pp.190–192].座標系xµ, x′µでの任意の点の計量テンソルをそれぞれ座標x′の関数 としてfαβ(x′), gαβ(x′)と書く.Λγα ≡ ∂xγ
∂x′α, ∂µ ≡ ∂
∂x′µ と略記しgαβ(x′)を点Pの周りにTaylor展開す
ると,
gαβ(x′) =Λγα(x′)Λδβ(x′)fγδ(x′)
= [
Λγα(x′0) + (∂µΛγα)0(x′µ−x′0µ) +1
2(∂µ∂νΛγα)0(x′µ−x′0µ)(x′ν−x′0ν) +· · · ]
× [
Λδβ(x′0) + (∂λΛδβ)0(x′λ−x′0λ) +1
2(∂λ∂ρΛδβ)0(x′λ−x′0λ)(x′ρ−x′0ρ) +· · · ]
× [
fγδ(x′0) + (∂σfγδ)0(x′σ−x′0σ) +1
2(∂σ∂τfγδ)0(x′σ−x′0σ)(x′τ−x′0τ) +· · · ]
なのでgαβ(x′) =gαβ(x′0) + (∂µgαβ)0(x′µ−x′µ0) +1
2(∂µ∂νgαβ)0(x′µ−x′0µ)(x′ν−x′0ν) +· · · において
gαβ(x′) =(ΛγαΛδβfγδ)0, (296)
(∂µgαβ)0=[
(∂µfγδ)ΛγαΛδβ+ (∂µΛγα)Λδβfγδ+ (∂µΛδβ)Λγαfγδ
]
0, (297)
1
2(∂µ∂νgαβ)0= [
(∂µΛγα)(∂νΛδβ)fγδ+ (∂µΛδβ)(∂νfγδ)Λγα+ (∂µfγδ)(∂νΛγα)Λδβ +1
2(∂µ∂νΛγα)Λδβfγδ+1
2(∂µ∂νΛδβ)Λγαfγδ+1
2(∂µ∂νfγδ)ΛγαΛδβ ]
0
(298) となる.ただし添字のゼロは点Pでの値を意味する.さて座標系{x′µ}を適当に選び
gαβ(x′0) =ηαβ, (∂µgαβ)0= 0, (∂µ∂νgαβ)0= 0 とできるか考えよう.座標系{x′µ}を選ぶことはΛγα= ∂xγ
∂x′αを,従って(Λγα)0,(∂µΛγα)0,(∂µ∂νΛγα)0,· · · を選ぶことに対応する.それぞれについて独立にとれるものの個数は以下のようになる.
• (Λγα)0= (∂xγ
∂x′α )
0
· · · ·16個
• (∂µΛγα)0=
( ∂2xγ
∂x′µ∂x′α )
0
· · · ·40個 – 対称な添字µ, αの選び方が10通りだから
• (∂µ∂νΛγα)0=
( ∂3xγ
∂x′µ∂x′ν∂x′α )
0
· · · ·80個
– 対称な添字µ, ν, αの選び方は以下の合計20通りのだから
µ, ν, αが相異なるもの 4×3×2
3! = 4通り ちょうど2つの添字が等しいもの 4×3 = 12通り 全ての添字が等しいもの 4通り
よって次のように局所的平坦性定理が示される.
• gαβ(x′0) =ηαβは10個の独立な条件式 (対称な添字α, βの選び方が10通りだから).
⇐ gαβ(x′0)の式(296)において16個の独立な(Λγα)0を適当に選べば満たされる.
• (∂µgαβ)0= 0は40個の独立な条件式
(対称な添字α, βの選び方が10通りだから).
⇐ (∂µgαβ)0の式(297)において40個の独立な(∂µΛγα)0を適当に選べば満たされる.
• (∂µ∂νgαβ)0= 0は100個の独立な条件式
(対称な添字α, βおよびµ, νの選び方がそれぞれ10通りだから).
⇐ (∂µ∂νgαβ)0の式(298)における(∂µ∂νΛγα)0の内,独立に選べるものは80個だから 一般には満たされない.
6.1.3 空間距離(補足)
第3.1.5節に示した順序に従って空間距離を求める式(147)を導こう[4, pp.260–262].まず2点A,B間を 光が往復するのにかかる座標時間を2点の空間座標の差dxiで表すために,時空における光の軌道に沿う線要 素の世界間隔がds= 0となることに注目する.実際,局所慣性系(cT, X, Y, Z)で測った光速はcだから時空 における光の軌道に沿ってds2=c2dT2−dX2−dY2−dZ2= 0である.dsはスカラーだから光の軌道に 沿って任意の座標系で
0 = ds2=gµνdxµdxν =gijdxidxj+ 2g0idx0dxi+g00(dx0)2
となる(ただしギリシャ文字µ, ν,· · · が0,1,2,3を動くのに対し,ローマ字i, j,· · · は空間成分1,2,3を動く ものとする).これを光がAからBまたはBからAに伝わる光に沿う世界間隔dsに適用する.dxiを2点 A,Bの与えられた空間座標の差と見なしdx0について解くと
dx0= dx0(±)≡ 1 g00
{
−g0idxi±√
(g0ig0j−gijg00)dxidxj }
を得る.ここでAで起きた事件の座標をxµ,Bで起きた事件の座標をxµ+ dxµと書いていることに注意す ると,2解はそれぞれ
dx0(−)=(光がBを出発した時刻)−(光がAに到着した時刻), dx0(+)=(光がBに到着した時刻)−(光がAを出発した時刻)
を意味する.よってBを出発した光がAに達し,次いでBに戻るのに要する時間は座標x0で測ると dx0(+)−dx0(−)= 2
g00
√
(g0ig0j−gijg00)dxidxj≡dx0 となる.
次に座標時間がdx0変化する間にAで経過する真の時間(固有時間)dτを求めよう.これは空間の同一点 Aで起きる2事件(x0, x1, x2, x3),(x0+ dx0, x1, x2, x3)の世界間隔dsをcで割った値に他ならないから
c2dτ2= ds2=gµνdxµdxν=g00(dx0)2, ∴dτ= 1 c
√g00dx0.
最後にAB間を光が往復するのに要する固有時間dτにc/2をかけて,AB間の空間距離dlの式(147):
dl2= (c
2 ×
√g00 c dx0
)2
=g0ig0j−gijg00
g00 dxidxj≡γijdxidxj を得る.
図24 極座標がdr,dθ,dϕだけ変化して作られる体積要素
6.1.4 固有体積要素(補足)
■極座標における体積要素の表式とのアナロジー 第3.1.6節における固有体積要素の議論は,極座標を用い た空間の体積要素の表式のことを考えると分かりやすい.極座標r, θ, ϕの増大する3方向は直交するから,極 座標がdr,dθ,dϕだけ変化して作られる領域は図24のように3辺がdr, rdθ, rsinθdϕの直方体となる.よっ てこの要素の体積はr2sinθdrdθdϕである.(体積要素はdrdθdϕではない.drdθdϕは体積の次元を持たな い.) drdθdϕの前の係数r2sinθはDescartes座標から極座標への変数変換におけるJacobianとして得られ ることから,以上の直観的な議論が正当化される.
■g=−J2<0, J =√−gの証明 第3.1.6節で述べたようにJacobianをJ =√−gと書けることが以下の ように示される[14, pp.188–189].共変ベクトルの変換則は行列の形を借りて
(gµν) = (∂Xα
∂xµ )T
(ηαβ) (∂Xβ
∂xν )
と書ける(例えば (∂Xα
∂xµ )
は ∂Xα
∂xµ を(α, µ)成分に持つ行列であり,その転置行列 (∂Xα
∂xµ )T
は ∂Xα
∂xµ を (µ, α)成分に持つ).両辺の行列式をとり|ηαβ|= 1×(−1)3=−1を用いると
g=−J2, J =√
−g を得る.ここで
(∂Xα
∂xµ )
は逆行列を持つからその行列式はJ ̸= 0である.こうして時空の任意の点で局所慣 性系がとれることからg <0が要請されることが分かる.
6.1.5 完全反対称テンソルEµνλρ,完全反対称テンソル密度Eµνλρ(補足) 第3.1.7節のEµνλρ,Eµνλρの表式を確認する.∂xµ
∂Xν ≡Λµνと略記すると4階反変テンソルの変換則は
Eµνλρ= ΛµαΛνβΛλγΛρδεαβγδ =
Λµ0 · · · Λµ3 Λν0 · · · Λν3 Λλ0 · · · Λλ3 Λρ0 · · · Λρ3 と書ける.最右辺は行列式|Λµν|= ∂(x)
∂(X)の行を入れ換えたものである.行列式は行を入れ換えると符号が変 わるから
Eµνλρ=εµνλρ∂(x)
∂(X) =εµνλρ
√−g, ∴Eµνλρ=∂(X)
∂(x)Eµνλρ=εµνλρ を得る(∂(X)
∂(x) =√
−gを用いた(第3.1.6節参照)).
6.1.6 共変微分(補足)
(p, q)テンソルの共変微分の式(150)と,これが(p, q+ 1)テンソルであることを示す.
準備として共変ベクトルBµの共変微分の式を調べる.Aµを反変ベクトルとするとAµBµはスカラーだか ら(第3.1.1節参照),規則(151),(152)より
∂ν(AµBµ) = (AµBµ);ν =Aµ;νBµ+AµBµ;ν.
Aµ;νは(1,1)テンソルであることを考えると最右辺のAµ;νBµおよび最左辺は共変ベクトルだから,Bµ;νは (0,2)テンソルでなければならない(第3.1.1節参照).反変ベクトルの共変微分の式(149)を用い最右辺にお いて
Aµ;νBµ= (∂νAµ+AλΓµλν)Bµ=Bµ∂νAµ+AµBλΓλµν (第2項でダミー添字をµ↔λと入れ換えた)と書き換えて最左辺と比較すると
Aµ{Bµ;ν−(∂νBµ−BλΓλµν)}= 0 となるからBµの共変微分の式
Bµ;ν =∂νBµ−BλΓλµν (299)
を得る.
Aν1,· · · , Aνq を反変ベクトル,Bµ1,· · ·, Bµpを共変ベクトルとすると,(p, q)テンソルTµ1···µpν1···νqに対 しても規則(151),(152)から同様に
∂λ(Aν1· · ·AνqBµ1· · ·BµpTµ1···µpν1···νq) = (Aν1· · ·AνqBµ1· · ·BµpTµ1···µpν1···νq);λ
=Aν1· · ·AνqBµ1· · ·BµpTµ1···µpν
1···νq;λ
+
∑q k=1
Aν1· · ·Aνk−1Aνk+1· · ·AνqBµ1· · ·BµpTµ1···µpν1···νqAνk;λ
+
∑p k=1
Aν1· · ·AνqBµ1· · ·Bµk−1Bµk+1· · ·BµpTµ1···µpν1···νqBµk;λ
となる.これまでにAνk;λ, Bµk;λはそれぞれ(1,1)テンソル,(0,2)テンソルであることが分かっているから,
最右辺の第2項,第3項および最左辺は共変ベクトルである.よってTµ1···µpν
1···νq;λは(p, q+ 1)テンソルで なければならない(第3.1.1節参照).ベクトルの共変微分の式(149),(299)を用い最右辺を
Tµ1···µpν1···νqAνk;λ=Tµ1···µpν1···νq(∂λAνk+AρΓνkρλ)
=Tµ1···µpν1···νq∂λAνk+Tµ1···µpν1···νk−1ρνk+1···νqAνkΓρν
kλ
(第2項でダミー添字をρ↔νkと入れ換えた), Tµ1···µpν1···νqBµk;λ=Tµ1···µpν1···νq(∂λBµk−BρΓρν
kλ)
=Tµ1···µpν1···νq∂λBµk−Tµ1···µk−1ρµk+1···µpν1···νqBµkΓµkρλ (第2項でダミー添字をρ↔νkと入れ換えた)
と書き換えて最左辺と比較すると
Aν1· · ·AνqBµ1· · ·Bµp
{
Tµ1···µpν
1···νq;λ− (
∂λTµ1···µpν1···νq+
∑p k=1
Tµ1···µk−1ρµk+1···µpν1···νqΓµkρλ
−
∑q k=1
Tµ1···µpν1···νk−1ρνk+1···νqΓρν
kλ
)}
= 0 となるから(p, q)テンソルTµ1···µpν1···νqの共変微分の式(150)を得る.
6.1.7 Christoffel記号と計量テンソルの関係(導出)
第3.1.9節で列挙した公式を導出する.
■Christoffel記号の下付き添字の対称性の導出 時空の内部に横たわる位置ベクトル⃗xに対して座標基底
⃗eα=∂α⃗xをとるとChristoffel記号の定義式(148)は
Γµαβ⃗eµ=∂β⃗eα=∂β(∂α⃗x) =∂α(∂β⃗x) =∂α⃗eβ = Γµβα⃗eµ
となるから対称性Γµαβ= Γµβαが示された[13, p.9].
ただし非座標基底を用いた場合にはChristoffel記号の対称性Γµαβ= Γµβαを証明できない[14, p.175].
■Christoffel記号を計量テンソルで表した式(153)の導出 各点で任意のベクトルV⃗ は基底⃗eα を用いて V⃗ =Vα⃗eαと展開されるから,特にV⃗ として基底⃗eµを考えれば(⃗eµ)α=δαµ となることが分かる.よって ベクトルA, ⃗⃗ Bに対してA⃗·B⃗ ≡gµνAµBνという記法を導入すると
⃗
eµ·⃗eν=gαβ(⃗eµ)α(⃗eν)β=gαβδαµδβν=gµν となり,Christoffel記号の定義式(148):∂β⃗eα= Γµαβ⃗eµから
⃗eγ·(∂β⃗eα) = (⃗eγ·⃗eµ)Γµαβ=gγµΓµαβ≡Γγ,αβ
を得る.ここで第3.1.8節で指摘したようにChristoffel記号はテンソルではないけれども,テンソルに対する 添字の上げ下げと同様にΓγ,αβ≡gγµΓµαβと定義した.上式より
∂λgµν=∂λ(⃗eµ·⃗eν) =⃗eν·(∂λ⃗eµ) +⃗eµ·(∂λ⃗eν) = Γν,µλ+ Γµ,νλ,
∴∂νgλµ=Γµ,λν+ Γλ,µν,
∴−∂µgνλ=−Γλ,νµ−Γν,λµ
となり,これらを辺々足して対称性Γγ,αβ =gγµΓµαβ=gγµΓµβα= Γγ,βα を用いると式(153):
Γµ,νλ= 1
2(∂λgµν+∂νgλµ−∂µgνλ) を得る[13, p.9].
■行列式g≡ |gµν|に対する恒等式(154)の導出 導出過程[4, p.270]を補足しつつまとめる.
第3.1.7節で定義した任意の座標系でE0123= 1となる完全反対称テンソル密度Eµνλρを用いて行列(gµν) の行列式gと余因子∆µνの定義は
g≡Eµνλρg0µg1νg2λg3ρ, ∆0µ=Eµνλρg1νg2λg3ρ, ∆1ν=Eµνλρg0µg2λg3ρ,
∆2λ=Eµνλρg0µg1νg3ρ, ∆3ρ=Eµνλρg0µg1νg2λ と書き表されるから,
dg=∆0µdg0µ+∆1νdg1ν+∆2λdg2λ+∆3ρdg3ρ=∆µνdgµν と書ける.ここで(gµν)の逆行列は(gµν) = (∆µν)T
g なので∆µν =ggνµ=ggµν となる.これを上式に代入 してdg=ggµνdgµνを得る.
さらに
gµνgµν=δµµ= 4, ∴gµνdgµν =−gµνdgµν を用いると式(154):
dg=ggµνdgµν =−ggµνdgµν を得る.
■式(155):Γµνµ= ∂2gνg の導出 Christoffel記号を計量テンソルで表した式(153)より Γµνµ=gµρΓρ,νµ= 1
2gµρ{∂νgµρ+ (∂µgρν−∂ρgνµ)}= 1
2gµρ∂νgµρ.
ここで添字µ, ρについてgµρは対称,∂µgρν−∂ρgνµは反対称なので,式(195)によりgµρ(∂µgρν−∂ρgνµ) = 0 となることを用いた.さらに座標xν の変化dxν に伴う g, gµρ の変化dg,dgµρ に対して式 (154):dg = ggµρdgµρを適用して最右辺を書き換えると,式(155):Γµνµ= ∂νg
2g を得る [4, p.271].
■式(156):gνλΓµνλ=−√1−g∂ν(√−ggµν)の導出 式(156)左辺は gνλΓµνλ=gνλgµρΓρ,νλ
=1
2gνλgµρ(∂νgλρ+∂λgρν−∂ρgνλ)
(∵式(153). 括弧内第1項はダミー添字をν ↔λと入れ換えると第2項に等しいことが分かる.)
=gνλgµρ (
∂λgρν−1 2∂ρgνλ
)
(300) と変形できる.
一方,式(156)右辺は
− 1
√−g∂ν(√
−ggµν) =− 1
√−g∂ν
(−∂λg
2√−ggµλ+√
−g∂λgµλ )
=−∂νg
2g gµν−∂νgµν (301)
となる.ここで座標xνの変化dxνに伴うg, gλρの変化dg,dgλρに対して式(154):dg=ggλρdgλρを適用し て上式(301)最右辺第1項を書き換えると,
−∂νg
2g gµν =−1
2gµνgλρ∂νgλρ=−1
2gµρgνλ∂ρgνλ
と な る (ダ ミ ー 添 字 を ν ↔ ρ と 入 れ 換 え た).ま た gµνgνλ = δµλ の 両 辺 を xρ で 微 分 し て 得 ら れ る
−(∂ρgµν)gνλ=gµν∂ρgνλの両辺にさらにgλρをかけてλで和をとると,上式(301)第2項は
−∂νgµν =gµνgλρ∂ρgνλ=gµρgλν∂λgρν
となる(ダミー添字をν →ρ, ρ→λ, λ→νと巡回置換した).以上より式(301)は式(300)に一致するから,
式(156)が示された.
■式(157):∂λgµν =−Γµρλgρν−Γνρλgµρの導出 gµν;λは(2,1)テンソルであり局所慣性系でgµν;λ= 0と なるから(第3.1.8節参照),変換則(3.1.1)より任意の座標系で
0 =gµν;λ=∂λgµν+gρνΓµρλ+gµρΓνρλ が成り立つ.よって式(157):∂λgµν =−Γµρλgρν−Γνρλgµρが示された.
■反変ベクトルAµ,反対称テンソルAµν の発散の式(158),(159)の導出 共変微分の式Aµ;µ =∂µAµ+ AνΓµνµの右辺第2項に式(155):Γµνµ=∂νg
2g を代入すると式(158):
Aµ;µ=∂µAµ+Aν∂νg 2g = 1
√−g∂µ(√
−gAµ) を得る.
共変微分の式Aµν;ν =∂νAµν+AρνΓµρν +AµρΓνρν の右辺第2項は添字ρ, νについて反対称なAρν と 対称なΓµρν から成るので,式(195)により消える.また右辺第3項に式(155):Γνρν = ∂ρg
2g を代入すると式 (159):
Aµν;ν=∂νAµν +Aµρ∂ρg 2g = 1
√−g∂ν(√
−gAµν) を得る.
6.1.8 Christoffel記号の変換則(補足)
第3.1.10節におけるChristoffel記号の変換則(160)を導こう.式(153):
Γ′λ,µν =1
2(∂µ′g′νλ+∂ν′g′λµ−∂λ′g′µν) において
∂λ′g′µν =∂λ′(
∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′νgβγ
)
=∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′ν (∂xα
∂x′λ∂αgβγ
) (
∵∂λ′= ∂xα
∂x′λ∂α
)
+gβγ
( ∂2xβ
∂x′λ∂x′µ
∂xγ
∂x′ν + ∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′λ∂x′ν )
=Aλµν+Bλµ,ν+Bλν,µ
である.ここに
Aλµν ≡∂xα
∂x′λ
∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′ν∂αgβγ,
∴Aµνλ=∂xγ
∂x′λ
∂xα
∂x′µ
∂xβ
∂x′ν∂αgβγ= ∂xα
∂x′λ
∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′ν∂βgγα
(第2の等号でダミー添字をα→β, β→γ, γ→αと巡回置換した), Aνλµ=∂xβ
∂x′λ
∂xγ
∂x′µ
∂xα
∂x′ν∂αgβγ= ∂xα
∂x′λ
∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′ν∂γgαβ
(第2の等号でダミー添字をα→γ, β→α, γ→βと巡回置換した), Bλµ,ν ≡gβγ ∂2xβ
∂x′λ∂x′µ
∂xγ
∂x′ν =Bµλ,ν, ∴gβγ∂xβ
∂x′µ
∂2xγ
∂x′λ∂x′ν =Bλν,µ であり,これらを用いると上記のChristoffel記号は
Γ′λ,µν=1
2(Aµνλ+Aνλµ−Aλµν) +1
2{(Bµν,λ+Bµλ,ν) + (Bνλ,µ+Bνµ,λ)−(Bλµ,ν+Bλν,µ)}
=∂xα
∂x′λ
∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′ν ·1
2(∂βgγα+∂γgαβ−∂αgβγ) +Bµν,λ
=∂xα
∂x′λ
∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′νΓα,βγ+gβγ ∂2xβ
∂x′µ∂x′ν
∂xγ
∂x′λ,
∴Γ′λµν =g′λρΓ′ρ,µν = (
gστ∂x′λ
∂xσ
∂x′ρ
∂xτ )
Γ′ρ,µν= ∂x′λ
∂xσ
∂xβ
∂x′µ
∂xγ
∂x′νΓσβγ+∂x′λ
∂xβ
∂2xβ
∂x′µ∂x′ν : (160) (
∵gστ∂x′ρ
∂xτ
∂xα
∂x′ρΓα,βγ =gστδατΓα,βγ= Γσβγ, gστ∂x′ρ
∂xτ
∂xγ
∂x′ρgβγ=gστδγτgβγ=δσβ )
となる[13, p.29].
6.1.9 曲率テンソル(補足)
■測地線 測地線を2点間の局所的最短曲線と定義する.このとき第3.1.11節で述べたように,測地線の接 ベクトルを測地線に沿って平行移動すると移動先の点での接ベクトルに一致することを示す.測地線を弧長s でパラメトライズし接ベクトル⃗u≡d⃗x/dsをとる.測地線を2点間の局所的最短曲線とすると,測地線に対 して弧長∫
dsは停留値をとる.その条件は,変分原理から粒子の運動方程式を導く第6.3.1節の途中計算より 0 =δ
∫
ds=−
∫ ( gµλduµ
ds +uµuνΓλ,µν )
δxλds,
∴0 =duµ
ds + Γµαβuαuβ= d2xµ
ds2 + Γµαβdxα ds
dxβ ds
と書ける.これはa, bを定数として弧長sの代わりに新しいパラメーターλ=as+bを用いたときの接ベク トルU⃗ ≡d⃗x/dλに対する方程式
0 =a2 (d2xµ
dλ2 + Γµαβdxα dλ
dxβ dλ
)
=a2 (dUµ
dλ + ΓµαβUαUβ )
になる(d ds =a d
dλ).これは測地線上のある点での接ベクトルU⃗ が別の点での接ベクトルを測地線,従って その接ベクトルU⃗ に沿って平行移動したものであることを表す式
0 =UαUµ;α=Uα(∂αUµ+UβΓµαβ) = dUµ
dλ + ΓµαβUαUβ に他ならない[14, pp.199–200].
図25 ベクトルを平行移動させる微小な閉曲線(図7の再掲)
■ベクトルの閉曲線に沿う平行移動に伴う成分変化 ベクトルV⃗ を平行移動させる閉曲線の図7(第3.1.11 節)を図25として再掲する.これに沿ってベクトルV⃗ を1周だけ平行移動したときの成分変化の式(162) を,曲線a, b= constが座標曲線x1, x2= constの場合の計算[14, pp.201–202]を参考にして導く.
ベクトル成分Vµの変化率は式(161)より
経路AB上の点で経路に沿って aν∂νVµ=−aνVλΓµλν, 経路BC上の点で経路に沿って bν∂νVµ=−bνVλΓµλν, 経路DC上の点で経路に沿って aν∂νVµ=−aνVλΓµλν, 経路AD上の点で経路に沿って bν∂νVµ=−bνVλΓµλν
だから(ただし各量は経路上の考えている点での値をとる),V⃗ の1周したときの成分変化は δVµ=−
∫
AB
aνVλΓµλνda−
∫
BC
bνVλΓµλνdb−
∫
CD
aνVλΓµλνda−
∫
DA
bνVλΓµλνdb
=− (∫
BC
−
∫
AD
)
bνVλΓµλνdb+ (∫
DC
−
∫
AB
)
aνVλΓµλνda
≃ −
∫
AD
δa ∂
∂a(bνVλΓµλν)db+
∫
AB
δb∂
∂b(aνVλΓµλν)da
≃δaδb {
− ∂
∂a(bνVλΓµλν) + ∂
∂b(aνVλΓµλν) }
と書ける.ここで再びベクトル成分の変化率の式(161):
∂bν
∂a =aρ∂ρbν =−aρbσΓνσρ, ∂Vλ
∂a =aρ∂ρVλ=−aρVσΓλσρ,
∂aν
∂b =bρ∂ρaν =−bρaσΓνσρ, ∂Vλ
∂b =bρ∂ρVλ=−bρVσΓλσρ を用いると
δVµ=δaδbVλΓµλνΓνσρ(aρbσ−aσbρ) +δaδbaρbνVσ(ΓλσρΓµλν−ΓλσνΓµλρ−∂ρΓµσν+∂νΓµσρ)
=Vσ(aρδa)(bνδb)Rµσνρ
となる(添字σ, ρに関してaρbσ−aσbρは反対称,Γνσρは対称なので式(195)よりΓνσρ(aρbσ−aσbρ) = 0). これはV⃗ の1周したときの成分変化の式(162)である.
6.1.10 Lorenzゲージ
第3.5節で述べたように同一の電磁場を,従って同一の電磁テンソルを与える電磁ポテンシャルは無数に存 在する.実際ある電磁ポテンシャルAµから作られる電磁テンソルFµνと,f を時空座標の任意の関数として 電磁ポテンシャルA′µ≡Aµ+∂µfから作られる電磁テンソルF′µνは同じ値を持つ:
F′µν ≡∂µA′ν−∂νA′µ=∂µ(Aν+∂νf)−∂ν(Aµ+∂µf) =∂µAν−∂νAµ=Fµν.
仮に正しい電磁場を与える電磁ポテンシャルAµがLorenz条件(168):Aµ;µ= 0を満たさなくても,関数fを 適当に選べば同じ電磁場を与える電磁ポテンシャルA′µ =Aµ+∂µf がLorenz条件を満たすようにできる.
実際そのためには0 =A′µ;µ=Aµ;µ+ (∂µf);µよりfを(∂µf);µ =−Aµ;µの解にとれば良い.