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GIS を用いた砂浜海岸と海岸保安林の隣接箇所の把握

ドキュメント内 平成26年1月 (ページ 67-79)

4-1 本章の目的

海岸と海岸保安林の 2 つの管理者(指定者)間にまたがる課題を議論する上 で必要となる、砂浜海岸と海岸保安林の隣接箇所の情報は、国の海岸統計に都 道府県ごとの合計延長として記載があるものの、その位置情報は把握されてい ない。このため、これらの境界における問題に対して都道府県における行政と しての連携確保の実態や潜在的な地域課題を探るため、砂浜海岸と海岸保安林 の隣接箇所を位置情報として把握する必要がある。

そこで本章では、1)海岸保安林と隣接する砂浜海岸の所在や個別の延長を、

環境省や国土地理院が公開する既存の数値情報を利用して、GIS(地理情報シス テム)を用いて推定する。その推定結果を基に、道県庁の担当部局への電話に よる聞き取り調査を行い、推定結果の再現性を検証するとともに、2)隣接箇 所に関する森林部局との管理上の情報共有や連携の実態などを把握することを 目的とする。

4-2 研究の方法

全国で砂浜を有する海岸線が、どこでどの程度の延長で海岸保安林と隣接す るのかを把握するために、GIS(地理情報システム )を用いて環境省や国土地 理院がインターネット上で公開する既存の数値情報を利用し、これらを重ね合 わせることでその所在や延長を推定した。使用する GIS ソフトの選定にあたっ ては、地域政策の立案過程へ地域住民の参加機会が今後増えることを想定し、

住民自らが操作し分析できるよう、市販の GIS と同程度の機能が備わった無料 のオープンソフト(QuantumGIS-ver.1.7.3)を用いた。また、本研究で使用した GISソフトや数値データ、その他GIS設定座標系の情報を一覧として表4-2-1に 示す。

なお、これらの数値データを選定する上では、全国を網羅したもので一般に 公開された最新の情報を利用することとした。しかし、入手可能なデータは情 報年度が限られ、比較検討を行う上ではやむを得ず情報年度が大きく違うデー タを利用する必要がある。このことから、これらの数値データを利用する上で の妥当性を示す必要があり、GISによるデータの重ね合わせを行う上での考え方 と併せて次にそれぞれを示す。

(1)利用データについて

砂浜海岸の位置情報として利用できるデータは、表4-2-1中の「1.2) ①」

に示す環境省(旧環境省)が1993年度(平成5年度)に取りまとめた調査結果 に附属するものである。このデータは既に約20年が経過しているが、わが国の 著しい海岸侵食の下での砂浜海岸の延長は、1993 年当時より減少していると想 定され、このことが隣接延長の減少要因ともなることから、次章で示す隣接延 長の推定結果を過大に評価することにはならないと考え、利用することとした。

なお、現地が砂浜海岸であるにも関わらず、砂浜として記録されていなかった 箇所もいくつか見受けられたが、特に規模の大きかった徳島県阿南市那珂川地 先の海岸については、データ修正を要すると考えた。このため本研究では、当 該海岸を管理する徳島県庁の担当部局にあらかじめ状況を確認し、GIS上で該当

する6.4 kmの海岸線の属性を砂浜海岸に修正したこと付記しておく。

海岸保安林の位置情報として利用できるデータは、表4-2-1中の「1.1) ②」

に示す国土地理院が提供する森林地域2011年度(H23年度)データである。た だし本研究では、海岸保安林の大部分が「飛砂防備保安林」又は、「潮害防備保 安林」であると想定したことから、砂浜海岸の位置情報と比較する上での不確 定要素を減らすために、国の森林・林業統計要覧(旧林業統計要覧)の1994年

(H4 年度末数値)版 103と 2011 年(H21年度末数値)版 104の該当する統計

4-2-1 GIS構築条件一覧

GISソフト

ZONE54N

ZONE53N ZONE52N 1. 使用ソフトウェア・データ等

QuantumGIS ver1.7.3 for Windows

(The Open Source Geospatial Foundationが 支援・公開するオープンソフト)

1) 国土数値情報(国土地理院)

 ①九州・沖縄地方 数値地図・

空間情報データ (沿岸39都道府県)

 ①静岡県から山口県  ②石川県から山口県  ③四国地方

 ①第4回海岸調査報告書(H5年度)データ 2. 自治体沿岸ごとのGIS適用座標系 (JGD2000-UTM-)

 ①北海道から新潟県  ②北海道から神奈川県

 ①海岸線 (H18年度)データ  ②森林地域(H23年度)データ 2) 自然環境保全基礎調査(環境省)

103 林野庁『林業統計要覧』1994年。

104 林野庁『森林・林業統計要覧』2011年。

値を比較し実態を確認した。その結果、飛砂防備と潮害防備の全国それぞれの 保安林面積の増減率は数%以内であり、その合計面積の増加率は1 %未満であっ た

その一方で、海岸保安林のうち、魚つき保安林は、この17年間で約 2.1倍に 増加していることが確認され、この増加要因の 9 割以上が北海道におけるもの であることも分かった。このことから北海道については、前段落で示した「砂 浜海岸の延長は現在の方が減少している」という想定に加え、魚つき保安林指 定区域が内陸に向けて増加した可能性も否定できず、次章に示す隣接延長の推

処理過程や外郭図作成のために利用したものであり、詳細な説明は省略する。

したもので、図中の黒

色に塗られた箇所が保安林の所在を示したものである。

定において、大きな差異を生じる可能性があることを併せて記載しておく。

このほか、表4-2-1中の「1.1) ①」に示す海岸線データは、次節で述べる 前

(2)GISデータを重ね合わせる上での考え方について

表4-2-1に示した条件に従いGIS上に関係データを統合した。データ容量縮減

のため前処理として、GISのバッファー機能と森林地域データに含まれる保安林 属性情報を用いて、海岸線から500m以内の保安林のみを抽出し基礎データを作 成した。図 4-2-1、4-2-2 は、基礎データを用いて描画した、神奈川県の湘南海 岸(江ノ島)周辺の縮尺の違う 2 つのイメージ図を例示

0 30km

Sagami Bay

Tokyo Bay

Shonan C.R.Forest

Heisaura C. R.Forest

Kanagawa

Pref.

Chiba Pref.

図 4-2-1 海岸保安林箇所の抽出イメージ(1)

図 4-2-2 海岸保安林箇所の抽出イメージ(2)

4-2-3 保安林抽出イメージと推定のための仮定条件

次に、図 4-2-1、4-2-2 に示す黒枠部分を拡大した図 4-2-3により、基礎デー タと砂浜海岸の位置情報を重ね合わせ、砂浜海岸の周辺に存在する保安林の所 在を抽出し、隣接する砂浜海岸の延長を推定する方法を説明する。まず、図4-2-3 の保安林区域を示すデータから抽出計算用バッファーを半径 300mで生成させ、

砂浜海岸を示すデータと抽出計算用バッファーが重なる砂浜海岸の海岸線を抽 出した。

抽出した連続する砂浜海岸の海岸線ごとに、バッファー端部において過剰に 抽出されたと考えられる延長を控除する必要があるため、控除延長(LR)を 250m と仮定して、図4-2-3に示すとおり計算上で端部個数に応じて控除を行い、この 結果を「海岸保安林と隣接する砂浜海岸の推定延長(LCRF)」とした。

この抽出計算用バッファー半径の大きさを300mと設定するにあたっては、抽 出対象として保安林の規模や汀線までの距離が比較的大きく、保安林前縁から

汀線までの距離が200m以上ある箇所においても、実態に則して前縁部分が確実 に抽出ができるように考慮し決定したものである。なお、このように汀線まで の距離が比較的大きい保安林に着目した背景には、前述の4-1「本章の目的」

に示したとおり、「潜在的な課題や制度上の問題を全国的視点の議論へと展開さ せる必要性」を反映した結果であることを付記しておく。また、保安林の規模 や汀線までの距離が大きい箇所の実態を把握する上では、文献 105を参照し、

GIS地図上で実際に、えりも海岸林(北海道)のほか、背後地が農地や市街地と して利用されている遠州灘海岸林(静岡県)、伊良湖海岸林(愛知県)など、大 規模でかつ汀線までの距離が大きい保安林に着目し、これらが GIS 上で的確に 補足できるか否かの確認をおこなった。また、抽出計算用バッファー半径をよ り大きな値に設定した場合、大きく湾曲した湾内に点在する砂浜海岸やポケッ トビーチなどにおいて、対岸やビーチ端部の崖上の保安林、その他、海岸線か ら遠く離れた市街地の保安林から生成された抽出計算用バッファーが、無関係 に砂浜海岸を抽出するなどの不整合を生じる結果となったことを付記しておく。

控除延長の値は、海岸保全区域の幅や一般的な汀線まで距離を考慮して、保 安林前縁から汀線までの距離を 50m から 200m と仮定し、バッファ-の端部形 状を円弧と仮定して幾何学的に算定すると、295.8mから223.6mの範囲の値をと る。そこで、上述した汀線までの距離が150mから200mと比較的大きい部類の 保安林に関する推定延長を精度よく再現させ、かつ、汀線までの距離がそれよ り小さな保安林についての推定精度の確保にも配慮し、本研究では控除延長を 一律で250mと設定することとした。

4-3 砂浜海岸と海岸保安林の隣接箇所

前節4-2に示した方法により得た推定延長(LCRF)を、都道府県ごとに表4-3-1

【C】欄に示す。また、比較対象として【A】、【B】欄に、2010年度(H22年度)

版海岸統計 106の「1-1-イ(2)、(3)」に示された「海岸線延長のうち砂浜のある 海岸線の延長」、「砂浜のある海岸線延長のうち背後に保安林のある海岸線の延 長」を記載した。

本研究では、まず規模が大きく汀線までの距離が大きい保安林に特に着目し ていることを踏まえ、表中の【D】欄を一つの判断目安として、「5km 以上連続 して保安林と隣接する砂浜」を有する 19 自治体を表中で白抜きとして示した。

また備考欄には、19自治体のうち、延長差【E】や延長比【F】を参照し、海岸

105 村井ほか編著、前掲書、508頁。

106 国土交通省水管理・国土保全局編、前掲書、2011年。

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