• 検索結果がありません。

結論

ドキュメント内 平成26年1月 (ページ 107-167)

7-1 本研究のまとめ

本研究では、砂浜海岸と海岸保安林を合わせてこれを「海浜」と定義し、「海 浜の一体的な管理を行うための横断連携のあり方」を見いだす。

第 1 章では、海岸と海岸保安林の境界で生じる問題を把握するなど研究背景 を確認し、用語の定義や研究対象範囲の位置づけを行った。用語の定義では、

文献を参照し、海岸林を砂浜海岸特有の環境に育つ森林群落と定義した。また、

海岸林のうち森林法に示される「飛砂防備保安林」、又は「潮害防備保安林」に 指定されたものを海岸保安林と定義した。このほか関連する既往研究を概観し、

その研究報告等を内容ごとに整理し本研究の位置づけを明らかにした。

第2章では、「海浜」がこれまでどのような変遷を経て現在の管理形態に至っ たのか、必要となる基本的な事柄を項目ごとに整理した。整理にあたっては、

制度上、海浜の砂地が単なる自然の森林原野であった明治時代まで遡り、その 後に、国有財産法や森林法、海岸法の下で管理されるまでの変遷を整理し理解 するため、文献を引用しながら、明治時代の地租改正後の土地制度、森林制度 の成り立ち、海岸管理制度の成り立ち、戦前戦後の海岸林造成の社会背景など について整理し、年表や模式図にとりまとめた。また、国と地方の関係におけ る戦後の中央集権型行政システムを支えてきた機関委任事務の廃止など、地方 分権の背景についても確認した。2000(平成 12)年の改正地方自治法施行から 10年以上が経過した現在、地方自治体における海岸や海岸林の管理の現場では、

地域性を捉えた海岸法や森林法の一体的な運用の事例があるのではないかと考 えた。このことから、研究を進めるにあたり地方分権化による変化にも着目し、

海浜管理に関する法制度について概観した。

第 3 章では、既往研究において、これまで海浜管理における縦割り行政の問 題が指摘されていた一方、海浜管理に関する法や制度、およびその運用につい ての具体的な調査や分析、検討には至っていない状況があることに着目した。

そこで、国、省庁から地方という縦割りの制度構造の下で、海岸法、森林法、

地方自治法を中心に、法や制度の面から見た海浜管理に関する社会システムの

実態把握を行い、海岸法と森林法で国と地方に義務付けられた法定計画に定め るべき事項などの比較分析を行い、法の横断連携による海浜の一体的管理の可 能性を探った。その結果、大臣(省庁)レベルの法定計画では、海岸法と森林 法の間で連携すべき具体的取り組みの記載はなく、むしろ海岸法制定時点で、

森林法との区分けを明確にして、その後の調整を要しない体系をとっているこ とが確認できた。また、海岸法制定時に「防護」を行うために設定された陸の 50m の海浜幅の中で、新たな社会ニーズである「環境」や「利用」も併せて確 保することが改正海岸法に規定されたことは大きな変化であったといえる。し かし、森林法には、国土保全のための海岸法のようなアプローチ(環境や利用 の確保)は記されておらず、このことが、侵食などの海浜の管理上の問題を放 置している要因の一つとなっているのではないかと気づかされた。このほかに 海岸保安林造成において参考とすべき海岸の技術基準について、海岸法ではす でに廃止された基準が参照されており、事業の調和連携を図る上での根本的な 不備も確認された。地方分権化による変化もあり海岸法と森林法の境界におけ る問題に対処する上では、両者の法定計画の整合性が自治体内部において確保 される必要性も推察され、海岸侵食や砂浜保全、保安林保全の問題が地域事情 として自治体総合計画などに位置づけられることが、整合性確保の上で重要な のではないかという考えに至った。

第 4 章では、海岸と海岸保安林の 2 つの管理者間にまたがる課題を考えるに あたり、全国の砂浜海岸と海岸保安林の隣接箇所や規模などを把握するため、

GIS(地理情報システム)を用いてその位置や規模を推定した。次に、その推定 結果を基に、道県庁の海岸担当部局への電話による聞き取り調査を行い、推定 結果の再現性を検証するとともに、隣接箇所に関する都道府県の森林部局との 管理上の情報共有や連携事例の把握などを行った。その結果、海岸や海岸保安 林の管理者が多くの場合知事であるにも関わらず、自治体内部で管理者間相互 の情報共有がなされていない状況が聞き取り調査から把握できた。また、1999 年の海岸法改正以降、新たに海岸法の対象となった一般公共海岸区域を、隣接 箇所として計上していないなどの状況が推察される事例も確認できた。これら のことから民有林については、都道府県(知事)を中心に砂浜海岸と海岸保安 林の連携施策を実施する有効性と、地方自治体が策定する法定計画(海岸保全 基本計画、地域森林計画)や、自治体が任意に策定する自治体総合計画(総合 計画・マスタープラン、自治体環境基本計画)の担う役割の重要性を知るに至 った。

第5章は「新聞記事データベースを用いた侵食に対する関心の把握」と題し、

全国の地方新聞から海岸侵食に関する記事を取得し、記事の内容を防護、環境、

利用などの視点で分類することにより、侵食が顕在化している砂浜海岸につい ての各地域や行政での関心を把握した。その結果、砂浜海岸とその背後にある 海岸保安林は、侵食という共通した危機に直面しているにも関わらず、砂浜海

岸と海岸保安林を一体的に捉えて保全することへの地域や行政の関心が低いこ とが、記事件数の少なさから確認できた。また、一部の自治体では、市民や地 方自治体の首長の意志決定、地方議員などの働きの存在が確認され、広域的な 利害調整や侵食に対する市民の理解向上に有益な情報を行政だけに頼るのでは ない実態も明らかになった。

第 6 章は「地方自治体における横断連携の実態」と題し、第4章で抽出した 調査対象地域18沿岸道県について、制度の縦糸である海岸法や森林法、及びこ れに付随する法定計画(海岸保全基本計画と地域森林計画)と、横糸である道 県の自治体総合計画(総合計画と環境基本計画)について、その連携実態の比 較分析を実施した。その結果、千葉県は法定計画により、神奈川県は自治体総 合計画により、それぞれ連携を図っている実態が確認できた。また、4章の聞き 取り調査により、静岡県では既存の計画に反映させるのではなく、特定の課題 に対処するための個別の計画を新たに策定し連携に着手された事例も確認され ており、これら3県における取組みを把握し分析した。

7-2 海浜の一体的管理を行うための横断連携のあり方

管理区域が隣り合う海岸と海岸保安林の管理者は、ぞれぞれが海岸法と森林 法に基づいて業務を進めている。実務上はお互いの業務内容について理解して いるが、行政はそれぞれの業務を法律に基づき独立して進める体系をとってお り、各管理者は、互いの業務について何かの決定を下す立場にはない。このた め、たとえ区域を越えて考えるべき問題があったとしても、海岸管理者と海岸 保安林の管理者は従来通りに区域内でその責任を果たそうとする。知事はこれ らの調整を行う立場にありその権限を有するが、一般的にはより重要な行政課 題が優先され、細かな事柄まで踏み込んだ調整を行うことは困難である。

一方、地域住民は管理者間の業務上の議論を聞く機会がないため問題の所在 を知ることはできず、現地で公共事業が始められる段階になって初めてその事 業内容に気づくということになる。このため管理者間における議論を公開で行 い、それぞれの利害得失が地域住民の目線で多面的に理解される必要がある。

行政担当者の仕事は、地域住民の合意を得て初めて意味を持つものであり、管 理者間の都合による局所最適化した調整にならないためにも、相互の議論が公 開でなされる必要がある。

地方分権一括法の施行後は自治体(知事)の裁量が拡大した。環境面では、

砂浜保全と海岸保安林の保全の両者に関心を持つ自治体も多く、知事にはこれ らの調整を行う権限が付託されている。

これらのことから、第一に、知事においては、自らが有する権能を発揮し行 政組織を越えた海浜の一体的管理を方向付け、自治体総合計画の持つ政策調整

ドキュメント内 平成26年1月 (ページ 107-167)