3.4 結果
3.4.2 Fast Shaper 測定 ( デジタル部 )
Fast ShaperはASICのトリガーとなる部分である。ここでは、入力として10 kHz、duty cycle 50%、大きさ1∼10 MIPsの矩形波を2秒間、SKIROC2に入れた。そして、閾値を変
えながらSKIROC2がデジタルデータとして返すカウント数を元に検出効率を見積もった。
その検出効率を元にS-curveを描きFast Shaperの線形性、ノイズ、S/Nを見積もった。検 出効率は、以下のように定義する。
検出効率= 2秒間に実際にカウントされた数 2秒間に入れた矩形波の数
(3.1)
44 第3章 テストボードを用いたSKIROC2の性能評価
図 3.13 200MIP 相 当 の 波 形 を 入 れ た パ ル ス (緑)とそのSlow Shaper1の応答(青)。
500 1000 1500 2000 2500
pulse height[mV]
0 100 200 300 400 500 600
y=0.33x + 4.74
Q_inj[MIP]
500 1000 1500 2000 2500
Deviation
−0.1
−0.050 0.05 0.1
図3.14 横軸:入れた電荷量、縦軸:オシロ スコープに出力された波高。
S-curveについて
S-curveと は 、横 軸 に 閾 値 、縦 軸 に 検 出 効 率 を と っ た 時 に 描 か れ る グ ラ フ の こ と で あ る 。 ノイズがトリガーに乗っていない場合、入力電荷を上げていくとある閾値を境に100%から 0%に階段状に落ちるはずである。しかし、閾値付近で入力信号にノイズが乗ることでふらつ き、検出効率は緩やかなカーブを描きながら0%に落ちる。この曲線のことをS-curve呼ぶ
(図3.15)。この曲線に対し、相補誤差関数と呼ばれる関数をフィットすることでトリガーに
乗っているノイズ幅を評価することができる。
トリガーに乗るノイズg(x)は、正規分布に従うとすると g(x) = 1
√2πσ exp
((x−µ)2 2σ2
)
(3.2)
と書くことができる。ここでµは中心値、σ は、ノイズの幅である。また、電荷Qin を入射 した場合、閾値 Qthを付近で電荷が上下して観測される。ある電荷Qin が検出器で観測され る確率P(Qin)は、
P(Qin) =
∫ ∞
Qth
√1
2πσ exp (
(Qin−x
√2σ )2)
dx (3.3)
と書ける。ここでノイズ効果は、σに依ることがわかる。上記の式(3.3)を積分することで、
P(Qin) = 1 2erfc
(Qth−Qin
√2σ )
(3.4)
を得られる。ここでerfc(x)は相補誤差関数と呼ばれる関数であり、
erfc(x) = 2
√π
∫ ∞
x
exp(−t2)dt (3.5)
3.4 結果 45
と書ける。今回の測定では、ある電荷を入れて、閾値を変えながら測定をおこなっている。
描かれるS-curveは、横軸にトリガー閾値(DAC) 、縦軸に検出効率(%)をとっているため
フィッティングに用いる関数を以下のように書き換える。
f(x) = 50erfc
(x−µ
√2σ )
(3.6)
ここで、µは検出効率が50%時の値、σ はノイズ幅である。
図3.15 ある閾値を設定し電荷を入力して行った時のS-curveの例。σはノイズ幅、µは 50%時の閾値である。
46 第3章 テストボードを用いたSKIROC2の性能評価
検出効率
Fast Shaperについてチャンネル毎にS-curveを描いてノイズを評価した。5 MIPsの例図 3.16に載せる。これをもとに、0, 0.5, 1, 2, 5, 10 MIPsでのS-curveに対し中央値の線形性
図3.16 5MIP 相 当 の 電 荷 を 入 れ た 時 のScurve。64チ ャ ン ネ ル 個 別 に 測 定 を 行 っ て い る。エラーバーは、2項分布で見積もった。
を測定した。図3.17は、S-curveの50%位置での値をプロットしている。SKIROC2では、
Q[MIP]
0 2 4 6 8 10
noise width[DACU]
200 250 300 350 400
図3.17 Fast Shaperの線形性。0.5-10MIPsを フ ィ ッ ト 範 囲 、エ ラ ー は S-curve の フ ィ ッ ト エ ラー、0.5MIPに線を引いている。
channel
0 10 20 30 40 50 60
gain
10 15 20 25 30
図3.18 各チャンネルのgain。
0.5 MIP 相当の電荷が入力された時、ペデスタルから5σ でトリガーをかけられるように設
計されている。Fast Shaperの線形性における傾きは1MIP時のゲイン、切片は、ペデスタ ルの位置を表す。図3.18は、各チャンネルでの 1MIP時のゲインを表している。各チャン ネルのゲインは揃っていることがわかり、24 DAC(DAC:閾値の単位)である。トリガーの
3.4 結果 47 S/Nを以下のように定義する
S/N = Scurveから得られた1MIP相当のゲイン[DAC]
Scurveから得られた1 MIP時のノイズ幅(σ)[DAC] (3.7) 各チャンネル毎のS/Nを算出した結果が図3.19となる。誤差には、統計誤差をつけている。
各チャンネル8以上と高いS/Nを示したが、目標値の10には達していない結果であった。
channel
0 10 20 30 40 50 60
)σS/N(
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
図3.19 各チャンネルのS/N。目標のS/N=10に赤線を引いている。