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ERISA 制定後の諸判例

ドキュメント内 退職後所得保護の法理 : ERISA研究 (ページ 131-146)

第 4 章 ERISA 制定後の諸判例

(1)  Donovan v.  Mazzola判決 (716F.2d 1226  (9th Cir. 1983)) 

専門家に、年金制度保有の資産の利用に関するフィージビリティの研究依頼を したものの、その専門家の適性に関しては調査しなかった受託者に信認義務違反 を認めた判決である。また、専門家に対する高額報酬支払いも問題となった事件 である凶

本判決は、その後の信認義務者の行動基準を画するリーデRイングケースとなっ た。

(2)  Katsaros v.  Cody 判決 (568F. Supp. 360 (E. D. N. Y. 1983)) 

Teamsters Local 282 Pension Trust Fundの受託者(以下、受託者という。) は、ある銀行持株会社(以下、 D会社という。)に対し、資金貸付を承認し、実行 した。貸金は、銀行持株会社の完全子会社である銀行全株式で担保されていた。

その後まもなく、連邦および州当局による銀行を閉鎖した。ERISAの信認義務違 反を理由とする二つの訴訟が、受託者に対して起こきれた。TeamstersLoca1282  Pension Trust Fund (以下、基金という。)は、この訴訟に被告として参加した。

当裁判所は、次のように事実認定した。

一、銀行持株会社に対する貸付

Codyは、 1965年頃から基金の受託者であり、WelfareFund and Annuity Fund  of Local 282 of the International Brotherhood of Teamstersの受託者でもあっ た。本件に関するすべての期間中、 Codyは、年金、福利、年金支給それぞれの基 金の管理者であった。貸付のため銀行の財務諸表と資産比較表を配布したのは委 員会開催前日ないし当日になってからであった。出席した (Cody以外の)受託者 は、借入の申し込みを会議ではじめて知った。 1950年代初めから基金によって雇 われていた公認会計士 Coltonは、この会議に列席していた。彼は、この貸付の 健全性に関する意見表明をするに足る検討を行うことを拒否し、基金の要員のだ れも貸付に関する意見表明をするに足る訓練を受けていなかったと証言した。

借り手の代理人は、受託者に上記文書を配布した後、 2時間説明した。そこで、

出席の受託者は、全員一致で貸付を一部修正して承認した。

出席した受託者は、全員一致で、被告 Codyと被告 Guerciaに貸付権限を授 権した。

二人は、基金の顧問弁護士Ballinを伴って翌日シカゴへ向かった。貸付の最終 取り決めと当地の法律に関する助言を得るために当地の弁護士 Carmellという 人を雇った。

受託者は、同地の権利報告書を受け取ることはなかった。意見書は、銀行持株 会杜及ぴ銀行に不利となる訴訟や非訟事件などは現在のところ存在しないと記さ れてあった。

銀行持株会社は、借主すなわち同会社の財政状況を逐次報告する義務を負うと 約束していた。しかし、報告された内容は、不完全であった。受託者たちの間で 回覧されたけれども文書には、いかなる報告や分析も添えられていなかった。た とえおおぎっぱにでも文書の検討を加えておけば、銀行がその財政の健全性に関 する連邦預金保険公社 (FederalDeposit Insurance Corporation (FDIC") )の 指摘に対する矯正的な手段を論じていたかを発見できたであろうに。被告は、 2 月27日の委員会で、 AngelosとHoweの説明に善意で依拠したものであって、

信認義務違反を認めるに足る証拠はないと主張した。

被告は、さらに、経営者側受託者である Schneiderが強調するものであるが、

前述担保のためのAngelosの個人保証が、貸付を検討する際の経営判断の範囲内 であり、慎重きを示すと主張する。

受託者の義務は「法の最もよく知るところ」であり (Donovanv. Bierwirth, 680  F.2d 263,272 n.  8 (2d Cir.), cert. denied, 

‑ u .  

S.‑, 103 S. Ct. 488, 74 L. Ed. 2d  631 (1982))、Restatement(Second) of Trusts 92 comment b (1959) 

( r

受託者

の義務は、その他の信認義務者より強化されている。J)参照。慎重原則は、通常 人が自己の財産を扱う際の慎重きの客観的な基準である。(以下、 Restatement

(Second)  of Trusts 9174 comment a (1959)ヲ│用)また、 Bogert,Trusts & 

Trustees 9541 at 164 (rev. 2d ed.  1978)参照

受託者が、年金資産投資に関する判断をするための教育、経験、そして技能を

4 ERISA制定後の諸判例 133 

持たない場合は、判断するための独立した助言を求める積極的義務を負う。

(Donovan v.  Bierwirth, 680 F.2d 263, 272‑73, Donovan v.  Bierwirth, 538 F.  Supp. 463, 470 (E. D. N. Y. 1981), aff'd as modified, 680 F.2d 263 (2d Cir.) , cert.  denied, ‑U. S.‑, 103 S.  Ct. 488, 74 L. Ed.2d 631 (1982)  etc.) 

「同様の能力を有し、同様の事柄に精通する慎重な人がj外部の助言を得る という「行動をとるのが常である状況で」外部の助言を求めないことは、慎重き を欠き、 ERISA違反である。 (ERISA9404(aXl)但))受託者の独立した調査行動 は、投資判断に達するための注意力と注意義務の要件達成の状況証拠である。通 常でない、困難な投資判断に習熟していない受託者は、「他人の助言に全面的に依 存するのではなく、特定の投資内容に独立した検討を加えるよう」求められる。

Withers v.  Teachers' Rtirement System, 447 F. Supp. 1248, 1254  (S.  D. N. Y.  1978), aff'd mem., 595 F.2d 1210  (2d Cir. 1979);  Bogert, ~541 , at 164‑65参照 独立した検討を加えるという受託者の義務は、借主の表現、断定、そして期待に 依拠しないという消極的義務を含むと解する。

仲間の受託者の助言や情報にのみ依拠すると、受託者が責任を負うことがある。

もし、受託者が、仲間の受託者の信認義務違反を確信すれば、「違反を救済すべき 状況では適切な努力を」しなければならない。 ERISA~405 (a) (3), Morrissey v.  Curran, 567 F.2d 546, 549‑51  (2d Cir. 1977) (Lumberd判事結論賛成)参照 し かしながら本件では、緊急性と速度が、慎重な調査と議論の必要性に優先した。

弁護士が議事録の他の項目に関して委員会の構成員に助言を与えるために列席し ていたことは明らかである。受託者は誰も、当該貸付が当を得たものであるか否 かについて彼に意見を求めなかった。とにかく彼は、自分が銀行持株会社および 銀行の財務諸表に関して意見を表明する資格があるとは考えなかった。

独立した調査があれば、銀行持株会社および銀行の財務諸表に基づく貸付が慎 重きを欠くものであると判明したであろう。すなわち資本の適切性を欠き、貸倒 引当金の貸付金に対する割合が低〈、収益性にも問題があった。また弁済の可能 性および資金の流動性が低かったし担保は価値の低いもので、シカゴで消費貸借 契約を締結した1979年3月1日、まさにその当日、担保の土地は、 1977年度税金 の未納によって Cook郡当局によって公売にかけられた。

Des Plaines銀行の資金提供者の調査

受託者は、ごく僅かの努力をすれば CentralN ational銀行に資金貸付の経緯 についてDesPlaines銀行に問い質すことができたはずで、ある。当時の借金の額 は、約1百万

s

であり、 CentralN ational銀行は、貸金の更新を拒否していた。

そうすれば、たぶん、 CentralN ational銀行の1979年3月1日期限の借金の借り 換えを、シカゴの少なくとも 5銀行が拒否していた事実も知ることができたであ ろう。その調査をすれば、同銀行の資金不足、預貸率、不良貸付およびレストラ ンに対する貸付の全体の貸付に対する高い割合を強調する FDICの報告も知り 得たであろう。

結 論

受託者は、銀行持株会社に2百万

s

の貸付を承認する際、当時一般的に認めら れた慎重人の行動基準としての注意力、技能、慎重さ、を発揮することを怠った ため、 ERISA~404(l )(B)に定める基金加入者および受益者に対する信認義務に違 反した。被告Nappiは、 1979年3月20日に追認のための議決権行使をしたため、

承認すべきでないという彼の義務に反したことになり、他の受託者と連帯して基 金の損失に責任を負う。原告は、貸付契約の要件にある銀行持株会社の支払不能 の結果生じたいかなる損失に対しでも被告受託者達に連帯責任を追求する権利が ある。

Katsaros v.  Cody事件の原告は、 (Guerciaを除く)被告受託者達に23,473. 57 $およびそれが支払われるまでの利息を要求する権利がある。

以上のように判示する。

本判決は、受託者委員会に当初欠席していたものの後で決議を追認した受託者 にも、いわゆるワンマン経営者兼受託者の暴走を止めなかったことで受託者責任 を認めた判決といえる。受託者の信頼の抗弁が、認められなかった例である。金 融機関の経営状況を調査せず資金を貸し付けた者の責任が問われた事件としても 今日的な意義がある判例である。

(3)  Dimond v.  Retirement Plan for Employees of Michael Baker Corp.判決

(582 F. Supp. 892  (W. D. Penn 1983)) 

【事実の概要]

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原告Dimondは、 MB社の株主、取締役、そして年金制度の加入者であった。

被告は、年金制度、同社、および会社の議長であり CEOである Bakerであっ たが、 Bakerのほかに Reese,Shaw, Wilsonが、会社の取締役であり年金の受 託者を兼ねていた。

原告は、被告達のMB社株式取得禁止を求めて一方的緊急、差止命令に続いて暫 定的差止命令を申し立てた。前者が、会社の現状維持の合意によって取り下げら れ、後者の申立が本件である。

総数25万株の株式取得は、まず三被告合わせてその約半分弱を現金で、取得し、

残りを Bakerだけが、売主との買付売付選択権とした。この契約の特徴は、Baker が、取得した株式の議決権を有することに加え、選択権を有する取得予定の株式 にも前もって撤回不能の委任状が与えられる点にあった。その目的は、原告によ ればBakerが同社の議長と CEOを解任きれないためであり、被告Bakerによ れば売主による乗っ取りの脅威を懸念し、自ら支配権を確保し、さらに同社株取 得が有利な投資と考えたからであった。

年金基金も、同社株式を取得したが、受託者でもある Baker以外の三人の受託 者は契約が成立するまで Bakerの委任状取得のことを知らなかった。

[判旨】(主題に関係する部分)

1.会社、年金制度、 Bakerの三者が共同で株式を取得し、 Bakerの選択権対 象の株式の委任状を得るのは、 Bakerの支配権確保のためであり、会社と年金制 度の参加によって彼が利益を得ているo これは、取締役会と年金受託者委員会に 契約全体の意義を検討する機会を与えなかったためである。

2.民事訴訟法によって被告とすることが認められる Reeseほか二名が、株式 取得する際、 Bakerの言葉を信じること以外の独自の調査または独立した助言を 求めなかったため、加入者と受益者に対する専心義務および慎重原則に反する。

3.年金基金が1に述べた支配価値を含む株価で株式取得することは、そのこ とを株式取得の交渉理由としながら三受託者に開示されなかったため取引禁止行 為にも相当する。

ドキュメント内 退職後所得保護の法理 : ERISA研究 (ページ 131-146)

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