年金保証公社のかさむ赤字を削減する解決方法のひとつは、比例填補 (co Insurance)すなわち損失の分担である。年金保証公社の破産法上の債権に優先権 を与え、他の債権者が、損失を分担する。こうすれば、年金積立に役立ち、現実 的でない年金約束や、年金制度終了を減少させると年金保証公社は、主張する。
年金保証公社の債権に優先権を付与することは、一解決方法として考えられ、確 かに他の債権者に損失を分担させることになるだろう。しかし、これは、債権者 にとっては次の理由で厄介であろう。(1)償権者が、債務者の年金制度を調査する ことを期待することは、ひいき目にみても、力に余ることであり、ましてやそれ を理解することは、期待できない。 (2)時として、多くの拠出事業主は、最低積立 基準を満たしていても(たとえば現従業員に対する退職者率が高くなるため)資 金的にトラブルに会うことがある。(3)債権者が、債務者に物やサービスを提供す るずっと以前のあるいはずっと後に起こった事業主の年金拠出滞納によって債権 者がひどいめにあわきれるのは明らかに不公正で・ある。さらに、年金保証公社の いう債権者に年金拠出事業主の当該年金制度の積立状況を調査させるという目標 および比例填補の概念は、事業主が、すでに破産を申し立てた後では機能しない
し適切で、はない。
破産申立した事業主に対する年金保証公社の債権に優先権を認める立法を制定 する場合、制定後一定の日を効力発生日とするのがよいだろう。これは、{責務者 の年金制度を監視し始めるよう債権者に求めるうえで公正を期す為である。年金 保証公社の既存の債権の優先権は、現行法によるべきである。
年金保証公社の要請でBush政権によって提案きれた法案は、つぎの六点であ る。
(1)、破産法は、未払いの拠出額と被支配集団の純資産の30%まで積立未済総額 に対し年金保証公社の債権の優先権を明確にするよう改正されるべきである。ま た、年金制度拠出は、破産法の管理費用として支払われるべきことを規定すべき で、ある。
第6章 モラルハザード問題 77
(2)、年金保証公社は、被支配集団の純資産を計算するといった時聞のかかる方 法に換えて、自己の優先債権とあいまって、積立不足額の一定割合に純資産に対 する優先債権を改善することを求める。
(3)、操業停止に伴い発生した約10億ドルの損失を減らすため、この債権に徴税 債権と同等の優先権が与えられるよう要求する。
(4)、年金保証公社は、破産手続きのすべての段階で情報が得られるよう、債権 者集会の構成員になる機会を求める。
(5)、年金保証公社は、取り損ねた拠出金に関しリーエンを有するよう改正を求 める。特に、 60日の待機期間と100万ドルの控除の廃止を希望する。
(6)、たとえ年金制度が、別の被支配集団によって引き受けられても年金制度を 清算した事業主は、債務を免れるべきではない。
年金保証公社に関する道徳的危険
年金保証公社保険制度固有の道徳的危険の問題は、少なくともふたつの要素に よって複雑になっている。第一に年金保証公社保険契約は、二者でなく三当事者 すなわち年金保証公社、事業主そして従業員に関わるものである。第二に他の多 くの保険契約と異なり年金保証公社との約定は、保険者たる年金保証公社に事業 主の為に負った年金制度債務全額の償還請求権を認めている。年金保証公社制度 の三当事者的性格は、誰が道徳的危険を犯すかの問題に関わっている。道徳的危 険を持った当事者は、保険担保から生じる利益と付保された反作用的危険に対す るコントロールを合わせ持つものである。年金保証制度の場合、異論があるが、
事業主と従業員の両者が、年金保証公社の役割から生ずる道徳的危険を持ってい る。
厳密、にいうと、会社の年金制度参加の退職者と現従業員は年金保証公社の保険 の受益者である。すなわちもし積立未済の年金制度が終了すると年金保証公社は、
年金制度を引継ぎ退職者と従業員に終了時点までに得ていた年金を支払う。事業 主は、年金保証公社から直接支払を受けることはないが、彼らも年金保証公社保 険の受益者である。従業員に保証付きの年金権を提供することによって事業主は、
賃金を低〈抑えることができるからである。たとえばある勤労者がA杜とB社を 選択する際A社はB社より高給を支払うが年金制度がないと仮定しよう。もしB
社が相当な退職年金フ。ログラムを提供するなら、 A杜より低い賃金にもかかわら ず勤労者がB社を選択することはあり得る。ある研究は、会社が資金不足に陥る と従業員に約束する年金レベルが高くなると報告している。これはおそらく賃金 を上昇きせる資金に不足する会社が労働者確保の手段として年金制度を用いるか らであろう。事業主は、年金保証公社に保証きれない年金制度を創ることも可能 であるが、保証のない年金制度は年金保証公社に支援される年金制度ほど従業員 にとっては魅力的ではない。そこで年金保証公社の保険機能は、事業主が年金保 証公社保険制度適用資格を得るよう努めることによって年金約束に価値を付与す
ることである。
事業主と従業員の両者が年金保証公社保険から利益を得ることができるとなる と両者は、そこに含まれる反作用的危険もある程度支配しているといえる。この 反作用的危険とは、積立未済の年金制度終了であり年金保証公社による債務の引 き受けである。事業主は、これを回避し得る立場にある。なぜなら彼らは会社の 資産のうち、どの程度を年金基金に振り向けるかを決定することができるからで ある。保証付き年金制度には最低積立基準があるが、事業主は各年度における積 立レベル決定のための広範な自由裁量権を持っている。たとえば事業主が最低積 立基準に適合するか否かを決定するために必要な数理上の仮定がたくさんある。
これらの仮定は「合理的」でなければならないが、それで9も事業主が積立を自分 の好みに合わせる分野が相当ある。
数理上の仮定の柔軟性に加えて、 IRSの承認を得た上である年の最低積立額免 除の方法もある。また最低積立基準自体が年金制度創設時に未払いの過去勤務債 務の存在を許している。事業主は、積立不足の年金の不足額を削減することを要 するだけである。要するに現行の積立に関する規則は個々の年金拠出者に多くの 裁量権を与えている。
LTV社判決で年金保証公社は、従業員がどのように自己の年金積立レベルの 約束に影響を及ぼすことができるかを強調している。年金保証公社が年金権のす べてを引き受けない理由の一つは従業員が事業玉に対し年金の妥当な積立を要求 する意欲を持たせるためである。これを年金制度の「共同保険的性質
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(co‑insur‑ ance feature)と呼んでいる。第6章 モラルハザード問題 79
ひとたび、従業員の年金基金積立への影響力が認識されると連邦の保険プログラ ムが事業主に与えた誤ったインセンティブよりも従業員に付与される道徳的危険 の可能性の方が大きくなるだろう。年金保証公社がなければ従業員は、年金制度 の積立未済を防ぐためにあらゆる努力を惜しまないだろう。連邦の年金保険のた め、従業員は年金制度の積立未済を監視しようとする意欲に欠けている。なぜな ら監視しないことから生ずるコストをすべては負担する必要がないからである。
逆に、このコストは、連邦保険によって最初にまかなわれ、たいていの場合最終 的にも負担される。年金保証公社が積立未済の事業主に不足額をすべて請求でき
ることから、年金保証公社保険は、事業主の年金積立への意欲をかりたたせるの に十分ではないかとの疑問が生じるかもしれない。しかし年金保険の制度がなく
とも年金保証公社ではなくて従業員が、自分に約束された年金積立の請求を事業 主に対してするであろう。したがって年金保証公社があろうとなかろうと積立不 足を来した事業主は不足額を誰かに負わせようとするはずで戸ある。しかし年金保 証公社の存在が事業主の年金債務積立意欲に水を指すには理由がある。それは、
事業主が従業員に対して負担するのと同じ債務を年金保証公社に対して負う方が 有利でbあるからである。年金保証公社に対して負うと、やがて破産となると幾ら かでも連邦行政府たる年金保証公社が支払ってくれる可能性がある。いわんや会 社が、従業員に対して約定の年金拠出の相当部分を支払うことなく事業を継続す
る場合においてはなおきらである。
LTV社組合が、破産法11章による年金制度終了の後もし年金を支払わない場 合はストライキをすると主張したとき、 LTV社はこの教訓を思い知ったのであ る。会社が年金債務を完済しないときに、従業員が自社を11章適用会社にしない よう努めるように、年金保証公社がテコ入れすることは、少なくとも現行法では できない。そこで積立未済のまま終了する事業主に若干のコスト削減を期待させ ることにより積立に努めさせようと仕向けている。
連邦最高裁判所は follow‑onplanに対抗する年金保証公社の合法性を承認し た。年金保証公社は、もし従業員が事業主の follow‑onplan創設不能を知って いたなら年金制度終了に強く反対したであろうという確信を前提としてその反 follow‑on plan方針を展開してきた。その確信を『著しく合理的』と性格づける