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CQ 4-9

GERD 治療薬の長期維持療法は安全か?

ステートメント 推奨の強さ

(合意率) エビデンス レベル

● PPI による維持療法の安全性は高いが,長期投与に際しては注意深 い観察が必要である.適切な適応症例においては,投与期間につい て明確な制限は存在しないが,必要に応じた最小限の用量で使用す ることを提案する.

2

(84.6%) C

4.内科的治療

点では,H. pylori感染の有無によらず,PPIの継続投与が胃癌の発生を促進することを示唆する 報告はなく14, 15),PPI長期投与に際して全例にH. pylori感染診断を行うべきとまではいえない.

3)大腸癌

ガストリンは大腸粘膜に対して

trophic effect

を持つことから,長期にわたる高ガストリン血症 が大腸癌の発生を促進する可能性が考えられてきた.この問題に対する症例対照研究の結果16〜18)

からは,PPI使用による大腸癌発生のリスクの増加は否定的である.

4)消化管感染症

細菌に対する予防的作用のある胃酸分泌の抑制により,消化管感染症が増加する可能性が考 えられる.PPI投与と腸管感染症についての 6 編の疫学的研究のシステマティックレビュー19)

によると,細菌性胃腸炎の発症に関する

PPI

投与のオッズ比(OR)は 3.33,95%CIは 1.84〜

6.02,また

H

2

RA

では

OR

2.03(95%CI1.05〜3.92)となった.PPI投与とClostridium difficile腸 炎についての 30 の疫学的研究のシステマティックレビュー20)によると,Clostridium difficile腸炎 の発症に関して,PPI投与は

OR

2.15(95%CI1.81〜2.55)であった.PPIの用量や使用期間と感 染のリスクについての分析はないものの,PPIの使用により,腸管感染症のリスクがわずかに 増大する可能性が示唆されている.

5)市中肺炎

低酸環境による胃内細菌の増殖とその逆流物の吸引により,市中肺炎が増加する可能性が考 えられる.PPI投与と市中肺炎の発症に関する 9 編の疫学的研究のシステマティックレビュー21)

によると,市中肺炎の発症に関して,PPI使用中の患者では

OR

1.39(95%CI1.09〜1.76),PPI の 30 日以下の使用は

OR

1.65(95%CI1.25〜2.19)と有意であったが,PPIの 180 日以上の使用 では

OR

1.10(95%CI1.00〜1.21)と有意な関連を認めなかった.数字のうえでは,PPIの使用に より,市中肺炎のリスクがわずかに増大する可能性が示唆されるが,PPI投与の適応の多くを 占めると考えられる

GERD

自体が肺炎の危険因子であり,方法論からも

GERD

の影響をまった く排除して解釈することは困難と思われる.

6)カルシウム・骨折

低酸環境によるカルシウムの吸収障害や

PPI

自体が骨代謝へ直接影響を及ぼす可能性が想定 されている.PPI投与と主に高齢者の骨折に関する 11 編の疫学的研究のシステマティックレ ビュー22)によると,PPIの使用は大腿骨頸部骨折に関して

OR

1.25(95%CI1.14〜1.72),脊椎骨 折に関して

OR

1.50(95%CI1.32〜1.72)と有意な関連を認めた.大腿骨頸部骨折について,PPI の 1 年以下の使用は

OR

1.24(95%CI1.19〜1.28)と有意であったが,PPIの 3〜10 年の使用では

OR

1.30(95%CI0.98〜1.70)と有意な関連を認めなかった.以上より

PPI

の使用時に骨折のリス クがわずかに増大する可能性が示唆されるが,高齢者では,PPI服用の有無にかかわらず,骨 折のリスクが高く,必要に応じて骨量の測定や骨粗鬆症に対する加療が考慮されるべきである.

7)microscopic colitis(collageneous colitis/lymphocytic colitis)

microscopic colitis

(MC)は,臨床的に水様性下痢を主徴とし,組織学的には粘膜固有層内にリ ンパ球を主体とする炎症性細胞浸潤を特徴とする疾患で,粘膜上皮直下の

collagen band

の肥厚

②治療手段

を伴う

collageneous colitis

(CC)と

collagen band

の肥厚を認めない

lymphocytic colitis

(LC)が 含まれ,薬剤は重要な原因のひとつと考えられている.2000 年の

Ghilain

らの報告23)以来,ラ ンソプラゾール投与開始後に発症し,中止により改善をみた

MC

の症例が散見される.近年,

日本からランソプラゾール服用と関連があると考えられる

CC

例が多数報告されている.CCの 日本での報告例の集計の検討では,51.1〜69.8%がランソプラゾール服用中に発症し24〜27),うち 90.4%が同剤の中止により軽快したと報告されている26).慢性下痢患者に一定の方法で大腸内視 鏡・生検を行った検討では,82 例中

MC

を 24 例に認め,CCが 15 例,LCが 9 例であった.

CC

15 例中で

PPI

の内服は 9 例で,うち 8 例がランソプラゾールであったとされる28).また,

136 例の症例対照研究でも

PPI

内服と

MC

の有意の関連

OR

4.5(95%CI2.0〜9.5)が報告されて いる29).PPIが発症に関連する機序や,PPIのうちランソプラゾールに関連した報告が圧倒的に 多い理由など不明な点も多いが,ほとんどの場合,薬剤の中止により速やかに改善するため,

PPI

投与中の難治性の下痢に際しては本疾患の存在を念頭に置くべきである.

8)クロピドグレルとの併用

クロピドグレルは

CYP2C19 を含むチトクローム P450 で代謝を受け,活性型に変換され,血

小板凝集抑制作用を示す.したがって,同じく

CYP2C19 の代謝を受ける PPI

の併用により,ク ロピドグレルの効果が減弱し,心血管イベントの増加につながる懸念があり,当初,これを支 持する複数の症例対照研究が報告されてきたが,その後,両者の関連について否定的な結果を 示す観察研究のみならず,複数の前向き研究30〜34)および

RCT

35〜37)が集積しつつある.クロピド グレルと

PPI

の併用についての 23 編の疫学的研究のシステマティックレビューによると,

CYP2C19 の代謝の関与が異なる個々の PPI

別に検討してもすべて心血管イベント増加の傾向が みられたこと,PPIの使用が単独で(クロピドグレルの併用なしに)心血管イベント増加と関連 を示していたこと,2 件の

RCT

のメタアナリシスでは,PPIの併用で心血管イベントの増加は 認めなかったことから,観察研究における

PPI

の併用と心血管イベント増加の関連については,

交絡因子の関与が強く示唆されている(Int J Cardiol2013; 167: 965-974b)[検索期間外文献]).

9)その他

低酸環境によるビタミン

B

12や鉄の吸収障害,低マグネシウム血症との関連を示唆する症例報 告などが散見されるが,頻度や機序は不明で,通常の食事が可能な栄養状態では,臨床的な問 題とはならないと思われる.ただし,高齢者,栄養不良の場合には注意が必要と考えられる38). また,近年,胃ポリープ,特に胃底腺ポリープの発生と

PPI

の長期投与との関係が注目され,

報告されているが,悪性例の報告はない39〜41)

以上の安全性に関するいずれの懸念も

PPI

投与との直接的な因果関係が明らかとはいいがた いが,前向きの検討が困難なものも多い.なかには,QOLに直接影響を及ぼす事象もあり,高 齢者,栄養不良,重篤な合併疾患の存在する場合をはじめ,PPIの長期投与に際しては,今後 とも一定の注意が必要と思われる.GERD治療において,PPIを適切に使用することで得られ るベネフィットは大きく,臨床における薬剤の使用は,ベネフィットとリスクのバランスのう えで決定されるべきである.適切な適応症例においては,投与期間について明確な制限は存在 しないが,上記の点も考慮し,必要に応じた最小限の用量を心がけるべきであろう.

4.内科的治療

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