第3章 虐待の世代間伝達の鎖を断ち切るには
第1節 Cの事例における世代間伝達の解決過程
行かないの』とプレッシャーをかけてしまう。M子の前で大きな夫婦喧嘩をし てしまった。その時M子が『お母さん別れないでね』と心配そうに言いに来た」
と語った。
M子のいいところ(前回のカウンセリングの宿題)
1,弟の面倒を良くみてくれる。
2.妹が泣いていると抱いて慰めている。(Cはあんなふうに、抱っ こして慰めていないと反省する。)
3.他の人に得意になっていろんな芸を見せてあげる。
4.友達が一人でいると仲間に入れてあげる優しいところがある。
第2期 #4〜#12M子の退行と夫婦の努力,そして再登校
#4で,前回の面接後にM子は学校へ行かなくなった。そのことでCはさら に落ち込んでしまった。M子は泊まりに来たおばあちゃんと寝ることができる ようになった。Cは「M子が不登校になってからはできなかったことだ」と語 った。M子は少しずつCと離れてもいいようになってきた。 Cは「M子となん だかギクシャクするところがある。ギクシャクするのは,M子と妹とCとで遊 んでいる時で,妹が泣くとCは妹の方をかばってしまう」と言う。そうすると M子がパニックを起こす。Coがく両方を怒るとどうですか〉と言うと, Cは
「そうでもない。しかし、M子はわがままなのでつい叱ってしまうのだ」と言 う。「食べ物の時M子は,欲しい物はどんな手を使っても自分の物にしてしま う。妹をいいようにだまして自分の物にしてしまう。そんなM子にすごく腹が たつ」と語った。「父親が食事の時『お父さんのはとつちゃだめ』と叱ったと き,私はすっきりした」と語った。このことでCは「やっと父親と子育てで意 見が合ったような気がした」と語った。「M子は私には合わない子だとずっと 思っていた」と本音を語った。
#5でCは「夫婦揃って子育てに対して同じ意見で行こうと一致した。最初 夫は,M子に対してすごく厳しくなったので少しびっくりした」と言う。 Cは
「M子はそれほどでもないらしいと思えて安心した」と言う。「デパートへ行 った時M子が『お母さんと妹はエレベーターでね。M子は階段で行くから』と 言って離れるようになってきた」と喜びを語った。Cは「M子が学校へ本当に 行かなくたっていいんだ」と心から思えるようになってきたと語った。
#6で父親は「M子と一緒に朝散歩をしている。もうすぐで学校の所まで行 けそうな所まで散歩している。その時M子が『もうすぐ学校だね、M子も学校 へ行けるかもしれない』言った」と語った。Coが父親の両親について質問す
ると父親は「仲が悪く大変に厳しい人であった。小学校4年の時から風呂掃除 と米とぎをしていた。遊びたいと思っても遊べなかった。欲しい物を買っても らったことがあまりない。中学の時,両親から自転車の好きなのを買ってあげ ると言われた時も,自分でお小遣いを貯めて,欲しかった切り替えのある自転 車をあきらめて安いのを買ったことがある」と辛かった子供時代を語った。父 親は「M子には辛い思いをさせたくなかった。M子が何でも欲しいと思う物は
買ってあげたかった。M子をあまやかせてしまったと反省している」と語った。
Coは父親への宿題として〈一緒に家族で食事に行くこと〉を提案した。 Cは
「昨日M子が,使い古して壊れてしまった人形を出してきた。M子は『お母さ んが貫目,子どもを生んだの。抱っこして』と言う。Cが人形を置いておくと M子は『ダメじゃない抱っこしなくちゃ』とCを叱った。M子が自分に甘える のが上手になってきた」と語ったCoはCへの宿題としてく人形をかわいがる
〉ことを提案した。
#7で父親は,「4年ぶりにレストランに行くことができた。行くのにはと っても勇気がいった。子どもがとっても喜んでくれた」と語った。レストラン に行った次の日からM子が学校へ行けるようになった。Cは「人形の赤ちゃん は,5日ぐらいで何の興味も示さなくなった。その後M子はどろんこ遊びに夢 中になっている。妹の保育園の遠足のことで,M子がだだをこねることがあっ た」と語った。M子が初めてCの膝でおもっきり泣くことができるようになっ た。Cは「今までにない行為であった」と語った。今日M子が友達と一緒に歩 いて帰ってくることができた。1年と2ヶ月ぶりのことである。Cはとても感 動した。Cは「帰って来たM子が『お母さんが家にいることが信じられるよう になってきた』という言葉を言った」と語った。Coが動的家族画の説明をす るとCは「前の絵はとっても寂しそうである。今回の絵はみんな明るい感じが する」と語った。
#8で父親は「今目車で来る時に夫婦喧嘩をした。その時M子に『子どもは 親の姿を見て育つのだからね』と言われて喧嘩できなくなった」と語った。C は「先週はM子は3日ぐらいしか学校へ行っていない。妹が風疹にかかってし まい,一緒についていくことができなかった。10時頃M子と歩いて学校へ行 った」と言う。CはM子とお花を摘んだりしながら登校した。学校ではCと離 れても大丈夫になってきた。M子は友達の方へ自分から接近するようになって
きた。Cは「今までは登校できなくてもいいんだという気持ちで安定していた
が,M子がいざ行き始めると,『今日は行けない』と言われると,とっても落 ち込んでしまう。不安な気持ちで接しているのを,M子に見すかされているよ うに感じる」と語った。「M子が私に対してとっても気を使っているのがよく わかる」と語った。
#9で父親は「M子が月曜日から朝から行けるようになった。休みだったの でM子にせがまれてステーキ屋に行った。そこでは子どもが4憎いる家族が二 家族いた。子ども3人よりももっと大変な人がいるんだなあと感心してしまっ た」と語った。M子はパフェを食べて大喜びしていた。父親は「家族みんなで 食事に行くことに不安を感じなくなってきた」と言う。Cは「M子は金型と10 時頃学校に行った。次週の月曜日からは朝から行くようになった。私がM子に 7時45分に行こうと言うと、M子は『いやだ』言った。ちょっとがっかりし たがM子はすぐに『7時46分だったら行く』と言う。何だか少し反発してみ たいらしい」と語った。M子は登校班とは行けないが,違う道を通ってCと花 を摘んだりしながら登校した。M子は自分からドアを開けて教室に入って行っ た。M子は教室で手を挙げることもある。 M子は家に帰ると疲れたのか, Cの おっぱいを欲しがったりした。CはM子におっぱいを与えると, M子は「元気 になった」と言ってすぐに離れた。
#10でCは「M子が風疹になり出席停止になった。M子はイライラしてい
て妹にあたった。M子は赤ん坊人形で私を試すようなことをする。私が人形を ほっておくとM子は『かまってあげてよ』と言う。私が人形を一生懸命にあや すとM子はいい笑顔になる」と語った。#11でCは「先週の木曜目からM子は1週間登校することができた」疲れ
たように語った。CはM子を登校班に入れて途中で帰ろうと試みたができなか った。下校の時M子は,友達と帰ることができた。Cは「以前教室で, M子は 私とぜんぜん離れることができなかったけれども,今は私が教室にいさえすれ ばどこにでも行けるようになってきた」 と語った。#12でCは,カラオケへ行った次の日から40度近くの熱が出て,学校へM
子と一緒に行くことができなくなった。M子はCの看病をよくやってくれた。M子がCoに「報告したい楽しいことをもってきた」と言う。一学期の終業式 にM子は,Cと一緒ではなく登校班に参加して学校へ行き,通信簿をもらって 登校班で帰ってくることができた。担任にシールを2枚もらって喜んで帰って
きた。M子はCに対して「次の5つを夏休みやってくれたら2学期から一人で 学校へ行けそう」と話した。
※M子からC(母親)への5つのお願い
①甘えたいときに甘えさせて
②おこらないで
③「疲れた」と言わないで
④なんでもM子を先にして
⑤いっぱい遊んで
第3期 #13〜#15 Cの振り返り
#13でCは「保育園勤務の時,1才児を保育していた。その時から自分の
子育てについてああしたいこうしたいといろいろ考えていた。その時の思いと M子の現実の子育てのギャップに悩んでしまった。私はM子の顔を見ながらの 子育てというよりも,本に頼っての子育てだったように思う」と語った。#14でCは「2学期になって2日目にM子が行くのを嫌がって休んでしまっ
た」と語った。「その日私は,M子の『水遊びをしたい』との誘いに本気にな って遊んであげた」と言う。家族でカラオケに行って食事へ行った。Cは「そ の日休んだことが,M子にとって3日目からの登校の栄養剤になっているよう である」と語った。Coは登校時のM子の様子を親子逆転のロールプレイを行 って,CにM子の気持ちを分かってもらえるようにした。#15Cは「M子は風邪を引きながらも何とか一週間登校することができた」
と言う。Cは家族で食事へ行った時に「こうやって家族で食事ができるのも,
M子が登校拒否をしてくれたおかげなんだなあとしみじみ考えてた。これが普 通の家庭なんだなあと思った」と語った。CはM子も一生懸命行っているんだ から,何とか元気づけてあげたいと思うようになった。Cは「M子とままごと
ごっこをやった時,M子が赤ちゃんになった。 M子は,私の膝の上に乗ってう れしそうに甘えていた。その姿を見ながら、ふとM子の赤ちゃんの頃を思いだ
した」と語った。
2 Cの事例の考察
(1)母親Cの心理力動性
第1期でCが「M子をどうしても受け入れることができない気持ちがあった