気体冷凍技術では、気体を圧縮・膨張する際、理想冷凍サイクルからのずれが大きく効率が低い。一 方、磁気冷凍技術は、固体である磁性体に磁界変化を与えることで、一様かつ瞬時に温度変化が得ら れるため、理想的な冷凍サイクルに近づけることが可能となる。コンプレッサは不要であり、動力は 熱交換媒体の循環と磁性体の移動に必要なだけであり、省エネを図ることができる。
・静かな運転。
コンプレッサを必要としないため、振動・騒音を低減できる。
イ) 室温磁気冷凍技術開発の変遷と開発課題
磁気冷凍技術は、当初より気体冷凍機では到達困難な極低温を作る方法として用いられてきた。一方、
高い温度での磁気冷凍は磁気熱量効果による温度変化が小さいため研究開発が行われていなかったが、
1976 年にブラウン Brown がガドリニウム Gd の薄板を磁気作業物質として用いた磁気冷凍機を試作し、室 温での磁気作業物質の冷却を達成したことにより極低温以外での磁気冷凍の可能性が注目された。その後、
室温よりも実現性の高い、ヘリウム液化(4K)、超流動発生(2K)への磁気冷凍の応用が盛んに研究さ れたものの、1980 年代後半に発見された磁性蓄冷材を用いることで気体冷凍機で簡単に 4K まで冷却出来 るようになると、極低温を生成するための磁気冷凍技術の開発は急速に衰退した。
この状況下において、1983 年にバークレーBarclay により磁気作業物質を蓄冷材として用いる冷却方法
(Active Magnetic Regenerator : AMR)が提案されたことで、20K や室温での磁気冷凍機の可能性が高ま り、近年、MIT(2)、アストロノーティクス社(Astronautics 社)などで研究開発が進められた。
極低温を作り出す特殊な技術として研究開発が進められてきた磁気冷凍技術を、室温付近の温度領域で 利用するためには、以下に挙げる技術課題がある。
a) 室温では磁気熱量効果による温度変化が小さい
20K 以上では磁気比熱に比べ格子比熱が大きいため磁気熱量効果による熱の出入が格子系に吸収されて しまい、得られる温度変化幅が数℃程度と小さくなってしまう。
b) 磁気作業物質が固体のため熱交換が困難
磁気冷凍機一般に言えることであるが、磁気作業物質当りの吸発熱量が大
きいためにコンパクトに出来るメリットがある反面、伝熱面積を十分に取れないことから熱交換効率を 高めることが困難である。
また、室温での冷凍機は、その必要性から研究開発の歴史は古く、気体冷凍機が安価に入手できる状 況では、性能が飛躍的に向上しないと魅力がない。このため、極低温での磁気冷凍に比べ室温での磁気 冷凍は実現性が乏しいと考えられ、材料面での研究開発が十分に行われていなかったことも、室温での 磁気冷凍利用が実現していない理由であると言える。
ウ) 国内外の開発状況
地球環境問題への関心の高まりと、室温磁気冷凍に関する研究開発の進展により、国内外での取り組む が、最近活発になってきている。2005 年 9 月には、室温磁気冷凍に関する第 1 回目の国際会議が、国際冷 凍学会(International Institute of Refrigeration (IIR))の主催でスイスのモントルーにおいて開催 された。発表は、材料関係(30件)と冷凍システム関係(16件)であり、磁気作業物質の最近の開発動 向や磁気冷凍システムのコスト見込みなどの基調講演も6件行われた。なかでも、Astronautics 社の同研 究グループが開発した磁気冷凍システムを運転した結果に関する発表では、La 系の磁性材料を用いて室温 で最大約 50W の冷凍能力が得られたとのことであった。この値は我々がすでに開発している磁気冷凍シス テムの最大冷凍能力(60W)に比べて若干小さいものの、使用している磁性材料の重量が我々のそれに比 べて約 1/20 であり、システム全体が非常にコンパクトであるという特徴があり、着実に技術開発が進展 していることが伺える。
国内においては、磁気作業物質開発を東北大学のグループと九州大学のグループがそれぞれ問い組んで おり、先の国際会議でも高い関心を集めた。システム開発については、永久磁石を回転されるタイプの冷 凍機の開発が、国家プロジェクトにおいて現在進められている状況である。
2007 年 4 月の 2nd International Conference on Magnetic Refrigeration at Room Temperature では、
日本と米国に加えて、中国、カナダ、スロベニア、ロシアが磁気冷凍システムを製作し、性能実験を始め ていることが発表された。フランス、スイス、イタリアも基礎実験や性能解析及び設計が行なわれている。
中でも米国アストロノーテック社は、DOE から 148 万ドル(約 1.8 億円)の資金協力を得て、磁気冷凍空 調システムの開発を進めており、昨年、新しい磁気冷凍機を作製したが、熱交換器の不具合から設計性能 が出ず、最大冷凍能力(温度差 0 度)220W、最大温度差 11.5 度に留まっている。中国では磁石回転型の 磁気冷凍機を製作し、温度差 6.7 度において冷凍能力 40W、最大温度差 11.5 度を得ている。ロシアはサイ
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ズが 15cm×20cm×20cm の小型の冷凍機を作成し 25W の冷凍能力を得ている。カナダでは、往復型の磁気 冷凍機を製作して無負荷実験を行い、温度差 13 度を得ている。
我々が開発した磁気冷凍機の最大温度差は 8 度であるものの、最大冷凍能力(温度差 0.2 度)は 540W で、
現在のところ他の国のそれに比べてはるかに高い値となっている。しかし、これから各国とも、冷凍機の 運転条件の最適化や改良を行い、性能を向上させることは間違いない。すなわち、地球環境保全の推進を 謳うわが国としては、室温磁気冷凍機の開発は諸外国と同様にあるいはそれ以上に積極的に取り組む必要 がある。
④ CO2 二次冷媒式ヒートポンプ空調機の開発【三菱重工業株式会社】
現在空調機に冷媒として主に使用されている代替フロン(HFC 系)類は、温室効果が高く、空調機廃棄時 の回収義務付けなど、環境保護の観点から様々な規制が設けられている。しかしながら、廃棄時に全ての 冷媒を回収することは困難であるため、温室効果の低いノンフロン冷媒(自然冷媒)化が望まれている。
自然冷媒には、CO2 やアンモニア、プロパンなどが挙げられる。しかしながら、CO2 は空調用途では低 COP、
アンモニアは毒性と可燃性、プロパンは可燃性といった問題がある。これらを解決する空調システムとし て「超臨界 CO2 熱搬送二次冷媒式ヒートポンプ空調機」が提案されている。
(助成)
⑤プロパン/炭酸ガス・ノンフロンカスケード式省エネ冷凍・冷蔵・低温空調システム開発
【三菱重工空調システム株式会社、アイ・ケー・イー冷凍技研株式会社、株式会社三冷社】
オゾン層保護等に始まる特定フロン類の規制(モントリオール議定書)により、CFC・HCFC等の 冷媒は、生産・使用の段階的削減が義務付けられた。このような中で、オゾン層破壊冷媒に替わる代替フ ロンが開発され、冷凍空調業界はこれらの転換にいち早く取組み、現在主力機種は殆どがこれらの代替フ ロンに切り替わった。しかし代替フロンガスは温暖化効果ガスとして排出抑制(京都議定書)が求められ ている。
現状市販品システムは冷凍、冷蔵、低温空調はそれぞれ独立したユニットで構成されており、冷媒は R404A が主流となってきているが、ノンフロンタイプは現状製品化されていない。またインバータを使用 した高効率タイプの製品も市販されているが、まだ主流には至っていない。
⑥炭化水素冷媒を使用した高効率ヒートポンプチラーの開発【ゼネラルヒートポンプ工業株式会社】
プロパン等の炭化水素は可燃性の問題はあるが、動作圧力が従来冷媒よりも同じか、それより低いため 既存機器に適応することも可能であり、毒性もほとんどない。家庭用エアコンのような直膨システムにお いて可燃性冷媒を使用した場合、室内への可燃冷媒の漏洩の恐れがあるため使用が難しいが、業務用のチ ラーによる間接冷媒方式においては、ヒートポンプを屋外設置すれば屋内に直接炭化水素冷媒が循環しな いため、室内への可燃冷媒漏洩の恐れが無く使用可能であると考えられる。
業務用チラーの利用形態としては、熱源方式に空冷式(空気を熱源)と水冷式(クーリングタワー、地 下水等を熱源)があり、空調はセントラル方式(中央熱源方式)で非蓄熱、水蓄熱、氷蓄熱がある。ヒー トポンプ給湯機としても利用可能で、冷房排熱を利用した給湯(排熱回収運転)も可能である。
炭化水素冷媒を使用した空冷式ヒートポンプチラーは、助成事業者であるゼネラルヒートポンプ工業が 既に 1999 年に販売を行っている。容量は 5~80 馬力に対応しており、用途としては給湯、空調、蓄熱、
床暖房、融雪などに対応している多機能型である。冷媒はプロパン冷媒と、プロパン&イソブタン混合冷 媒(高温型)の 2 種類である。四方弁内蔵により冷媒側で冷却・加熱の切り替えが出来、また、ヒートポ ンプのモジュール化により最適な容量の選定が可能という特長がある。しかしながら、COP は当時のもの で、高効率化が進む現在の危機と比較すると低く、更に効率を向上させる必要がある。
⑦CO2、プロパンガスの混合冷媒使用の圧縮蒸発式冷凍機サイクルにて、低温ブラインを循環させるノン フロン型冷凍装置の開発【株式会社マック】