1.1. NEDOの関与の必要性・制度への適合性 1.1.1. NEDOが関与することの意義
1.1.1.1. 社会的な背景
フッ素を含有する化合物は、その優れた特性から他の化合物を淘汰し、冷凍機の主流である蒸気圧縮式冷 凍機の冷媒として広く用いられるに至った。現在、開発当初の冷凍機適用製品である製氷機は言うに及ばず、
冷凍・冷蔵庫、空調機、産業用冷熱源など民生品から産業分野までに幅広く利用されている。このため、国 民生活・各種産業界に使用され重要かつ必須の化合物である。
しかし、1989年
7
月より、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書に基づき、その生産 等に係わる規制が開始された。その後、1990年6
月に開催された第2
回モントリオール締約国会合におい て、特定フロン(CFC)等を2000
年までに全廃すること等を内容とする議定書の改定が決定された。その後 も予想以上のオゾン層の破壊が進んでいることなどを踏まえて1992
年11
月に開催された第4
回モントリ オール議定書締約国会合において、その全廃時期を1995
年末とし、4年間前倒しすることが決定された。さらに代替フロンの一種であるハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が規制対象に追加され、
2020
年に 実質全廃とすることが決定された。モントリオール議定書に関連して、先進各国での
CFC
の回収分解、発展途上国における今後に向けた生産 抑制、HCFCについては使用量抑制、HFCについては温暖化対策と関連して有効的かつ抑制的な使用シス テムの確立などが広く検討され、環境対策として、あらゆる分野における炭化水素系化合物の再評価、炭酸 ガス冷媒等の研究開発などが一層進められている。また、1992年のリオ・デ・ジャネイロ地球サミット、1994年の気候変動枠組条約発効、1997年
12
月の 京都における第3
回気候変動枠組み条約締結国会議((The 3rd Conference of the Parties, the FrameworkConvention on Climate Change
:COP3)、そして2002
年のヨハネスブルグ地球サミットというように、地球温暖化抑制に向けた全世界的対応が進展した。
COP3
において採択された京都議定書の約束事項に対し て、我が国では地球温暖化対策推進法(1998年4
月28
日閣議決定)が定められ、さらに具体策が地球温暖 化対策推進大綱(地球温暖化対策推進本部決定1998
年6
月19
日)として示された。このなかで、地球温 暖化対策の一つとして、代替フロン等3
ガス(HFC、PFC、SF6)の排出抑制推進がかかげられ、数値目標 にむけた産業界の計画的な取り組みの促進と、国による代替物質の開発計画が示された。1998 年には、ア ルゼンチンのブエノスアイレスで開催された気象変動枠組条約第4回締約国会議(COP4)において、温暖化 ガスの排出抑制の進め方が具体的に検討された。その後、1999年には、ドイツのボンで気象変動枠組条約第
5
回締約国会議(COP5)、2000年11
月には、オランダのハーグで気象変動枠組条約第6回締約国会議(COP6 )、ドイツのボンにて(2001年
7
月)COP6.5、
2001年 10
月から11
月までモロッコのマラケシュで気象変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)が開催さ れ炭酸ガス排出量取引システムの構築、発展途上国の参加促進、技術支援、森林による炭酸ガスの吸収につ いての取り扱い、温暖化対策を実際に進める場合の国際的な協力システム等の様々な分野について協議が行 われた。2001
年3
月には、米国のブッシュ新大統領が、京都議定書からの離脱を一方的に宣言しているが、米国 抜きで開催されたCOP7
において、各国における森林による吸収見込み量見直しの他、国際運用ルールも 含めて最終的に合意が形成された。日本では、2001年 (平成
13
年) 6月には、フロン回収に関する法律が施行になり、平成14
年(2002)4 月には、業務用空調機からのフッ素系冷媒の回収に関する法律が施行に、2002年10
月には、カーエアコン からのフッ素系冷媒の回収に関する法律が施行となった。平成14
年(2002)度以降、京都議定書の内容(COP 7で合意された内容)を担保する国内法が議論され、2002年3
月29
日には、政府が「京都議定書」の批准 案を閣議決定し、2005年2
月16
日に発効した。これを受けて温室効果ガス排出量を2012
年までに1990
年比-6%にまで削減すべく、京都議定書目標達成計画が2005
年4
月28
日閣議決定された。以上のようにオゾン層破壊防止や地球温暖化抑制に対しては、国内外を問わずに、改善に向けた産業界の 取り組みや技術開発が促進されている。
2
1.1.1.2. 自然冷媒機器開発の必要性前述したように日本は「モントリオール議定書」と「京都議定書」を批准している。
このため国内におけるフロンおよび代替フロン等の削減が必要となっている。
産業界による温室効果ガス排出削減の努力により、これまでの
3
ガス使用量は減少する傾向にある。しかしながら、モントリオール議定書により特定フロン類(CFC、
HCFC)の製造、使用が禁止されるため、
それらの代替である
3
ガスの使用が増えることが懸念される。図
1.1.1
に特定フロン類と3
ガスの排出量の推移と今後の予想値を示す。2003
年以降にモントリオール議定書に従い具体的な使用制限が開始されるため、何の対策も打たないと2010
年には、CFCやHCFC
の代替ガスとして3
ガスは著しく増加することが予想される。図
1.1.2
に温室効果ガス削減の流れと研究開発目標の関係を示す。京都議定書で規制されるガスとし
CO2、N2O、CH4
のグループは1990
年ベースでCO2
換算で1184.8
百万ton
である。HFC、PFC、SF6
のグループの排出量は1995
年ベースでは48.2
百万ton
であり、この排出量そのもの は回収や破壊などによる産業界などの努力により減少する傾向になるものと推定される。しかし、モントリオール議定書で規定される特定フロン類(CFC、HCFC)の
160
百万ton
のニーズが、これらの代替ガスである
HFC、PFC、SF6
に移行する可能性がある。現状ほとんどの新規の冷凍・空調機 器は代替フロンに転換されている。このことは、京都議定書をベースとして
HFC、PFC、SF6
の排出量を削減する一方でモントリオール議 定書で規定される特定フロン、CFC
、HCFC
を削減すると言う名目の元にHFC、PFC、SF6
の使用量を増 加させると言うジレンマを意味している。図
1.1.3
に3ガス排出量の推移とその排出源ごとの内訳を示す。上述の通り
3
ガスのうちHFC
等代替フロンの使用量は増加に転じる傾向を示し、特に冷媒に係る事項に おいて顕著である。このことは冷凍機冷媒の場合、使用中・廃棄時の漏れを完全にゼロにすることが極めて 困難であることに起因するものであり、それゆえこの分野での対策が急務であるとして、漏洩時における地 球温暖化影響が極めて少ない自然冷媒の機器の開発が社会的に求められている。オゾン層破壊防止と地球温暖化防止という
2
つの環境特性を兼ね備えた新規代替物資を開発・商品化につ いては既にNEDO
事業として実施されている。しかし代替物質の新規開発に伴い、採算性はもとより安全性・回収再利用・フッ素の再利用やライフサイ クルの検証などハードルは高い。
この様な状況を受け、
NEDO
では京都議定書による目標達成へ貢献すべく、3
ガス排出量の増加を押さえ 環境にやさしい自然冷媒を適用した冷凍・空調機器の開発に取り組んでいる。3
図
1.1.1
特定フロン類(CFC,HCFC)および3ガスの排出量推移図
1.1.2
温室効果ガス削減の流れと研究開発成果の関係4
図
1.1.3
特定フロン類(CFC,HCFC)および3ガスの排出量推移5
1.1.1.3. 産業界での対応状況現在、新規機械、装置、設備に使用されている冷媒は、過去から一部の分野で用いられているアンモニア を除けば、大勢は
HCFC
、HFC
である。近年、一部の領域で新しく炭化水素などの自然冷媒が用いられ始 めている。HCFC
はモントリオール議定書に定められた削減スケジュールに基づき、2010
年までに新規利用が中止 され、2020
年までに補充用の使用も中止される。使用ガスとしてHCFC
からHFC(HFC-134a、 407C、 410A
等)への転換あるいはHCF
から自然冷媒への転換が進行すると推定される。次に各研究開発項目別でのフロン類の転換の状況について簡単に述べる。
(住宅分野)
居住空間への自然冷媒の適用は、漏洩時の安全性が十分に確保されないとして永らく行われてこなかっ た。しかし世界的な環境保護運動の後押しを受け、製品普及を図る動きが活発となっている。具体的には 欧州(ドイツを中心としたゲルマン圏)ですでに市販されているプロパンを用いたエアコンの拡販等が進 んでいる。国内の場合二酸化炭素および炭化水素を用いたエアコン製品は、安全性を重視し室内冷暖房ユ ニットを熱交換器を介して室外冷凍機に接続する二元式もしくはセントラル式と称されるシステムが一 般的である。
製品化開発については、冷媒漏洩時の急性毒性の観点からアンモニアは適用し難く、二酸化炭素・炭化 水素について危急時に冷媒を安全に外部放出させる、炭化水素の場合爆発限界以下への拡散を行う方向で 製品化が模索されている。
① 住宅用マルチ空調機の研究開発【株式会社ダイキン空調技術研究所】
現在、一般家庭において、全部屋に空調機を設置することが多くなり、一台の室外機で複数の室内機を 個別制御できるマルチ空調機のニーズが高まってきている。住宅分野においてマルチ空調機を採用するメ リットとしては、室外機の複数設置がなくなり外観がすっきりする、各部屋の負荷に合わせた最適な室内 機の選定が可能なこと、また、最適に選定した室内機を全館レベルの空調状態を監視しながら管理するこ とで、住宅トータルとして空調の省エネが実現できることなどが考えられる。一方で、マルチ空調機は冷 媒充填量が多くなるため、GWP の高い HFC 冷媒の漏洩による地球温暖化影響が大きくなるデメリットがあ る。そこで、マルチ空調機のメリットを最大限に生かし、かつ、デメリットである冷媒による地球温暖化 影響の無い空調機を実現するために、ノンフロンのマルチ空調機の実用化が必要と考える。
②住宅用コンパクト再生方式省エネ型換気空調システムの開発【新日本空調株式会社】
地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(6ガス)のうち、最大排出量を示すエネルギー起源の二酸化 炭素は全体の 88%を占める。内訳は約 15%が家庭関連、約 20%が業務部門、約 20%が運輸部門、約 40%
が工場等の産業部門、残り約 5%が発電所などのエネルギー転換部門である。
この内、基準年(1990 年)対比で家庭部門は 37%強、業務部門は 42%強の伸びを示しており最重要対 策分野と言える。
また二酸化炭素以外の温室効果ガスのうち、いわゆる代替フロン系 3 ガス(HFCs,PFCs,SF 6)の排出抑制は今後の中国、インド、ブラジルなど新興国における関連製品の普及を考えると、極めて 重要な課題であり、家庭・業務部門での省エネルギー性を確保したノンフロン化技術の市場投入が不可欠 な状況といえる。
このような背景において、省エネルギー対策として普及した住宅やビルの高気密化はシックハウス問題 を誘発しており、対処療法ではない抜本的な換気空調技術の導入が切望されている。
具体的には、換気に伴い発生する空調負荷の根源である「湿気」対策をエアコンに頼らない技術が不可 欠な状況となっている。即ち、住宅、病院、オフィスビル、商業施設などでの換気運転に伴う外気中の湿 気処理(潜熱処理)に対し、多大なエネルギー消費を伴わない換気空調システム技術の開発が緊急課題で ある。
空気中の湿気処理技術として、古くから吸湿材(吸着剤)を用いた調湿システム(いわゆるデシカント 調湿装置・システム)が考案されている。
これは大気と吸湿材との間で水蒸気を高効率に交換するものであり、相対湿度の高い空気を、吸湿材を