あり,しかもその黒字額は1960年代後半に入りますます増大した。1973年度に は実質収支の黒字は,9億6,000万円余りとなったが,これは「県税が予想以上 の収入増となった一男で,公共事業の繰延べ措置により歳出の伸びが鈍化した ため」195)であった。第2に,単年度収支で赤字を出している年度が6カ年度あ
り,当時の財政当局にとってはそれは深刻な問題であった。たとえば,1962年 195)『財政事情』第54回,1974年11月,4ページ。
ーー・J、こ)l一 香川大学経済学部 研究年報 29 ノーS暢9
第76表 実質収支比率の推移
年 度 実質収支(1,000円)(心 ボ準財政規模(1,000円)但 溜−(%)
1966 292,933 12,716,632 2.3 1967 373,663 15,373,146 2…4 1968 519,401 18,214,792 2.9 1969 494,103 22,681,217 22 1970 487,843 27,140,661 18 1971 467,114 31,378,832 1小5 1972 495,211 35,649,858 1日4 1973 963,519 44,394,281 2..2
〔出所〕香川県財政課資料。
度と1963年度には連続して単年度収支において赤字を出したが,それは「昭和 29〔1954〕年度以来のことであり,困難化する地方財政運営を示す」196)と認識
された。しかし,そのような単年度収支の赤字も実質収支の赤字にまではおよ ばなかったのである。
1966年度以降の実質収支比率を示せば,第76表の通りである。それはやや低
目であるとはいえ,ほぼ安定した水準を示している。そして,1960年度から開 始された香川県財政調整積立金(基金)は,当初1億800万円であったが,その 後漸増して1973年度には25億2,000万円余りになったのである。
以上を総括すれば,香川県の財政は,若干の問題点を内蔵しつつも高度成長 下においてはそれ以前に比較して格段に順調な推移を示したといえるであろ
う。
ⅤⅠⅠⅠ
この節では1960年度から1973年までの,いわゆる高度成長下の市町村財政を 概観する。ただし,すでにみたように1970年2月に財田村が村を廃して町にな
り,香川県は5市38町からなる村のない県となったため,以下においては「市 196)同上,第34回,1964年11月,L7ページ。
戦後の香川県の地方財政 −J33−
第7丁表 市町村歳出決算額の推移(普通会計)
香 川 県 全国市町村
年 度 県 市 町 (村)
金 金 額
(億円)
1959−61平均
10,862 100 7,387 100 8,068 100
1965
25,588 236 14,979 203 18,277 227
1970
50,014 460 35,455 480 43,850 544
1973
84,331 776 70,131 949
84,775 1,051〔出所〕『財政事情』;香川県『市町(村)財政要覧』;『地方財政統計年報』。
町」と「市町村」を適宜使いわけることになるであろう。
さて,まず最初にこの期間における普通会計歳出決算額の推移を見れば,第
77表の通りである。県下の市町村の歳出額は1960年度以降増大に転じそのスピ
ードは,県財政を上回り,全国の市町村のそれをやや下回る状態であった。た だし,全国の市町村は大都市を含んでおり,それを考慮すれば県下の市町村の 歳出の膨張はほぼ全国並であろう。それにしても,それ以前の時期と比較すれ
ば,歳出の増大は様変わりとも言うべきものであった。
では,このように急激に膨張していった市町村財政の歳出の構造はどの様に 推移したであろうか。第78表と第79表をみよ。市町村の主要な歳出は,目的別 区分の変更がおこなわれたため表現がややこしくなるが,役所・役場費(ほぼ 総務費に匹敵),土木費,教育費,社会及び労働施設費(民生費と労働費の合計 にほぼ匹敵),産業経済費(農林水産業費と商工費の合計にほぼ匹敵)であろう。
すなわち,1963年度にはこれら5つの経費の合計額は歳出の83..7%に達し,1970 年度では7つの経費の合計額が歳出の83..1%に達する。なお,この期において
は,前の時期に比較して公債費が歳出の6%から3%に半減しているのが注目 される。
歳出の構造の推移をもう少し立ち入ってみるため,1964年度以降の市と町村 の主要な歳出の構成比と指数の推移をみれば,第80表と第81表の通りである。
香川大学経済学部 研究年報 29
−ヱ34− エ9β9
第78表 市町村歳出の推移(普通会計)(その1)
(単位1,000円)
1961年度
区 1963年度
分 金 額 百分比 金 額 百分比 役 所 ・ 役 場 費 1,997,416 23.1 2,779,762 23.0 議 会 費 191,740 2.2 272,118 2.2 消 防 費 183,782 21 236,444 1 9
土 木 費 1,029,936 11.9 1,431,554 11.8 教 費 2,014,801 23.3 2,445,830 20‖1
社会及び労働施設費 1,019,149 11..7 1,605,947 13.2
保 健 衛 生 費
149,115 1..7 282,909 2.3産 業 経 済 費
887,072 10.2 1,902,064 15け6公 債 費 533,013 61 535,434 44
諸 支 出 金
434,204 5.0 551,641 4 5 前年度繰上充用金 234,669 2.7 125,702 1.0計 8,674,897 100.0 12,169,405 100.0
〔注〕金額は決算額である。
〔出所〕『香川県統計年鑑』1963年刊,1965年刊。
(単位1,000円) 第79表 市町村歳出の推移(普通会計)(その2)
1964年度
分 1967年度
区
1970年度
1973年度金 額 百分比 金 額 百分比 金 額 百分比 金 額 百分比 諦 会 費 331,175 26 463,840 24 735,024 21 1,353,721 19 総 務 費 2,281=136 177 3,353,240 1−72 6,176,455 17 4 9,495,062 135 民 生 費 1,460,895 113 2,536,245 130 4,198,360 118 10,944,921 156 衛 生 費 625,197 4 9 1,404,671 72 2,433,850 69 4,947,150 71 労 働 費 656/746 51 827,762 42 1,175,997 33 1,181,656 17 農林水産業費 1,333,021 104 1,700,640 87 3,083,155 87 5,444,232 78 商 工 費 396,9L73 31 452,322 23 681,784 19 1,277,481 18 土 木 費 1,880,994 146 3,217,602 165 7L214,721 204 12,942,8L7、7 185 消 防 費 316,466 25 459,572 24 997,307 28 2,275,059 32 教 育 費 2r584,319 201 3,604,673 184 6=930,450 196 15,790:838 224 災 専 復 旧 費 238,239 18 398,864 20 256,937 07 1,301,109 19 公 債 費 605=889 47 1,013,931 52 1,505L712 43 2,427,921 35 諸 支 出 金 49,346 04 44,416 02 48,940 01 749,414 皿 前年度繰上充用金 106,494 08 51/77L7 03 16,875 00
合 計 12,866,890 1000 19,529,555 1000 35,455,567 1000 −70,131,441 1000
〔注〕金額は決算額である。
(出所〕香川照一市町(村)財政要覧』各年度版。
−J35−
戦後の香川県の地力財政
第80表 市主要歳出の推移(普通会計)
(単位100万円)
1964年度 1969年度 1974年度
区 分 金 額 百分比 指 数 金 額 百分比 指 数 金 額 ■百分比 指 数 歳 出 総 額 6,510 1000 100 15,993 1000 246 49,992 1000 768
総 務 費 1,081 166 100 2,658 166 246 6,983 140 646 民 生 費 995 153 100 2,101 131 211 9,176 184 922 土 木 費 1,118 172 100 3,3、72 211 302 11,412 28 1,021 教 育 費 1,024 15 7 100 2,912 181 284 9,524 191 930
〔注〕金額は決算額である。
(出所二)香川県『市町(村)財政要覧』各年度版。
第81表 町村主要歳出の推移(普通会計)
(単位100万円)
1964年度 1969年度 1974年度
区 分 金 額 百分比 指 数 金 額 百分比 指 数 金 額 百分比 指 数 歳 出 総 額 6,357 1000 100 12,008 1000 189 40,174 1000 632
総 務 費 1,200 189 100 2。264 189 189 6,168 154 514 民 生 費 466 73 100 940 78 202 5r822 14 5 1249 農林水産業費 872 137 100 1,801 150 207 4,892 122 561 土 木 費 763 120 100 1,737 14 5 228 5,061 126 663
教 育 費 1,560 245 100 2,812 234 180 8,444 210 541
〔注〕金額は決算額である。
〔出所j 香川県F市町(村)財政要覧』各年度版。
先ず市の歳出についてみれば,この10年間においては土木費の伸びが顕著であ ることに気が付く。土木費は1968年度以降金額,構成比ともに教育費を上回っ ているが,これはすでに見たように高度成長下の市における公共投費の盛行を 反映したものである。つぎに,町村との対比においてみれば,市においては教 育費の割合が低く,また,これは当然であるが農林水産業費の割合が小さい。
町村の主要な歳出についてみれば,まず第1に,民生費の歳出にしめる割合の 増加と伸びが著しいことである。これは,1973年度以降における老人医療費の 無料化,生活保護基準などの改訂,県単乳児医療の無料化などの社会福祉の拡 充に原因がある。197)市の民生費の1974年度における増加も,もちろん同様の原
197)香川県『市町財政要覧』1973年度,10ペ・−ジ。
一J36− 香川大学経済学部 研究年報 29
エ≦暢9
第82表 市歳出性質別構成比の推移
(単位 %)
年 度 1960 1963 1966 1969 1972 義 務 的 経 費 46‖1 46.4 42.5 37.5 370
人 件 費 26.6 28 2 29.3 264 25り4
扶 助 費 a)12.5 a)14.2 8.8 7小3 83
公 債 費 7小0 4小0 4.4 3.8 3一3
投 資 的 経 費 33.1 33.3 343 39.3 39.8 普通建設事業費 25.2 26.3 28 5 349 36.8
災害復旧事業費 10 0,8 0.5 07
失業対策事業費 6小9 6‖2 5..3 4.3 2 3
そ の 他 20.8 20.3 23.2 232 23.2 計 100.0 100山0 1000 100い0 100..0
〔注〕普通会計決算である。a)補助費等を含む。
〔出所〕香川県『市町(村)財政要覧』各年度版。
第83表 町村歳出性質別構成比の推移
(単位 %)
年 度 1960 1963 1966 1969 1972 義 務 的 経 費 38.3 40..8 34.9 35..9 32.6
人 件 費 241 25.3 27.6 27.9 24.1 扶 助 費 a)80 a)10.7 20 2小3 3..9 公 債 費 6 2 4..8 5‖3 57 4.6 投 資 的 経 費 36。5 41.2 37.7 38 7 45.6
普通建設事業費 28.6 32.4 29.8 35.8 39..1 災害復旧事業費 4.4 6.0 6.0 1.2 6け4 失業対策事業費 35 2.8 19 17 0‥1
そ の 他 25.2 18.0 27 4 254 21.8 合 計 1000 100.0 100.0 100小0 100小0
〔注〕普通会計決算である。a)補助費等を含む。
〔出所〕香川県『市町(村)財政要覧』各年度版。
−J37−
戦後の香川県の地方財政
因による。第2に,町村における土木費は歳出総額の伸びとほぼ同様であり,
高度成長下の地方自治体における公共投資偏重の影響はあらわれていない。第 3に,町村の歳出の中心は依然として教育費であり,第4に,市との比較にお
いては農林水産業費の比率が高いことである。次に性質別経費の構造を見る。第82表と第83表を見よ。1963年度以前の扶助 費には「補助費など」を含み,正確な傾向はつかみがたいが,人件費は市,町 村ともに1965年度頃をピークとしてゆるやかな漸増と漸減を描いている。公債 費は,市,町村共にこの期間には漸減している。そして,これら2つの経費の 漸減により,1970年度前後においては義務的経費が漸減している。他方,投資 的経費は,市,町村ともに1970年度前後にかなり増大したが,この傾向は町村
において特に顕著であった。それは,普通建設事業費が膨張したことに原因が第9図 義務的経費と投資的経費の比率の推移
1966 1967 1968 1969 1970 19711972 1973(年度)
〔出所〕香川県『市町財政要覧』1973年度,10ペ・−ジ ,第4図。
香川大学経済学部 研究年報 29
−J3β− J9β9
あるが,特に町においては1970年度と1971年優において普通建設事業費が歳出 の40%をこえた。
1966年度から1973年優における県下の市と町村を合計した義務的経費と投資 的経費の割合の推移は,第9図の通りである。それによれば1968年度に投資的 経費と義務的経費の逆転が生じたことがわかるが,その原因は普通計設事業費 の増大と人件費の漸減であった。ここに高度成長時代の歳出の特徴が現れてい ると言えるであろう。
つぎは歳入である。第84表を見よ。市町村の歳入の中心は市町村税であるが,
歳入にしめる割合は1961年度以降漸減し,1970年度以降は30%を切り,28%前 後となった。そのため,市町村税の負担率は,すでに県財政のところでみたよ うにこの期間においてはほとんど上昇していない。市町村税につぐ歳入は地方 交付税と国県支出金で,これらはそれぞれ歳入の20%前後をしめる。市町村債 の歳入にしめる割合は小さいとは言えないが,10%を越える年度はない。なお,
第84表 市町村歳入の推移(普通会計)
(単位1′000円)
1960年度 1965年度 1970年度 1973年度
区 分
金 額 百分比 金 額 百分比 金 額 百分比 金 額 百分比
市 町 村 税 2671,156 371 4694こ154 304 10.790543 293 20∩925927 282
地 方 課 与 税 2935 00
娯楽施設利用税交付金 11488 00 65169 01
自 動串取得税交付金 360082 10 554205 07 198
交通安全対環特別交付金 19465 01 116093 02 89621 12 200233 13 分 担 金 及 び 負 担 金 766′132 21 1L445,827 19 使 用 料 及 び 手 数 料 291,394 40 661780 43 1259 786 34 1837033 25 国 県 支 出 金 1147628 159 3084′661 200 5.756456 156 13176320 17 7 財 産 収 入 223,831 31 425こ662 27 585154 16 1′362′915 18
寄 附 金 135342 19 159353 10 173,507 0 5 353854 05
繰 入 金 281LlOl 39 212038 14 460230 四 982,926 13
繰 越 金 311592 43 521,375 34 1177175 32 2J743968 37
諸 収 入 342 832 47 1165902 75 4′420709 120 9,362,291 126 市 町 村 債 293.300 41 1,417,230 92 3,081,346 84 7,107,500 96 A 計 7,218,201 1000 15,453,682 1000 36,831,909 1000 74.261,115 1000
(注〕金額は決算額である。a)国有提供施設等所在市町村助成交付金を含む。
(出所〕香川県ー市町(村)財政要覧」各年度版。