つぎに歳出の構造をみる。まず目的別歳出決算額であるが,それは,第97表 のようである。そこで,その構成比を図示すれば,第24図のようになる。香川 県の2大経費は教育費と土木費であるが,それは25%の横線を中心にほぼ対照 的に推移している。すなわち,教育費は1975年度に30,.6%に達したが,それ以
209)『財政事情』第58回,1976年11月,11ペ・−ジ。
210)『財政事情』第62臥1978年11月,11ページ。1976年度の災害復旧費は146億円に達し,
普通会計歳出決算額の91%をしめた。また,翌年度の災害復旧費も144億円で,歳出の 80%に達した。そして,このようなことは1964年度から1986年度までにおいてはなかった。
−J6ロー 香川大学経済学部 研究年報 29 エ9β9
第9丁表 香川県目的別歳出決算額の推移(普通会計)
(単位100フヨ閏)
年 度 総務費 民生費 衛生費 農林水 産業費 商工費 土木費 警察費 教育費 公債費 その他 合 計 1972 4,630 4.344 3,144 9,898 5,460 19,626 3,903 18,411 1,263 3,831 74,510 1973 6,148 5,208 4,311 10,223 5,483 19,883 4,913 22,975 1,353 3,834 84,331 1974 7,496 8,296 6,152 13,105 7,837 25,951 7,299 33,115 1,675 5,771 116,697 1975 7,366 9,784 7,7L77 14,035 8,284 25,289 8,169 40,037 2,167 7,780 130,688 1976 7,627 12,198 8,166 15,990 9,290 32,378 8,997 45,321 3,008 17,501 160,476 1977 8,682 13,018 8,097 18,471 11,032 39,993 10,193 49,416 4,147 17,541 180,590
1978 11,622 15,054 8,740 23,399 14,841 49,611 10,811 52,991 6,477 8,771 202,317 1979 14,989 15,854 10,483 25,495 14,390 47,426 11,842 56,823 8,098 7,130 212,530 1980 15,029 15,482 12,802 28,109 15,788 48,595 12,223 60,169 10,848 8,095 227,140 1981 16,139 16,411 11,896 29,727 16,660 51,339 13,710 65,343 13,177 、7,313 241,715 1982 16,796 16,657 10,987 28,781 1、7,311 57,519 15,223 72,026 16,270 6,485 258,055 1983 17,903 18,950 12,334 29,382 19,860 54,254 14,562 66,277 17,364 8,602 259,488 1984 1、7,555 20,244 11,649 29,086 21,218 56,366 14,192 67,930 19,454 6,267 263,961 1985 16,275 22,657 12,075 29,495 21,086 65,028 15,013 74,646 21,875 6,010 284,160 1986 16,985 21,173 14,820 28,、767 25,883 74,284 15,839 72,033 23,574 7,425 300,783
r出所〕『財政事情J。
第24図 香川県目的別歳出決算額の構成比の推移
(%)
35 30 25 20 15 10
5
0 19731974197519761977197819791980198119821983198419851986(年度)
−J6J−
戦後の香川県の地方財政
第25図 香川県目的別歳出決算額の指数の推移
(単位・千)
:
1.8 16 14 12
1
0.8 0.6 04
210
0
降1982年度と85年度のピークをもちながらも歳出にしめる割合は漸減し1986年 度にはついに首位を土木費にゆずってしまった。したがって,この時期の香川 県の歳出の第1の特徴は教育費の相対的な地位の低下である。
第2の特徴は,これは全国的傾向でもあるが,公債費の急激な膨張である。
すなわち,公債費は1973年度には普通会計歳出のわずか1…6%であったのが,
1986年度には7.8%に達し,6…2ポイントも上昇した。このことは目的別歳出の 指数の推移を示す第25図に明瞭に示されている。すなわち,この期間に民生費,
農林水産業費,土木費,教育費は3倍からせいぜい4倍になったのにたいして 公債費のみは実に17倍も膨張したのであった。
香川県財政の場合,目的別歳出の構成比をみるかぎり農林水産業費と民生費 はほぼ模造いであり,前川県政(1974年−85年)の下で民生費が特別に増大し たということはない。
性質別歳出決算額の推移は,第98表の通りであるが,そのうちの主要な項目 の推移を図示すれば,第26図のようである。この時期の特徴の第1は,人件費
と普通建設事業費が30%をすこし上回るところを中心にほぼ対照的な動きを示 していることである。そして,両者の格差は段々に縮小してきており,1986年
−ヱ62− 香川大学経済学部 研究年報 29 エ≦暢9
第98表 香川県性質別歳出決算額の推移(普通会計)
(単位100フラ円)
年 度 人件費 扶助費 公債費 普通建設 事業費 災響復旧 事業費 失業対策 事業費 そ の他 合 計 1972 24,859 4,047 1,261 25,420 2,186 315 16,422 74,510
19、73 31,122 4,698 1,350 23,976 1,797 357 21,031 84,331 1974 44,180 5,697 1,6L72 34,573 3,094 437 2、7,044 116,697 1975 52=871 6,325 2,166 35,529 4,768 498 28,531 130,688 1976 57,856 7,737 3,005 44,146 14,598 510 32,624 160,4L76 1977 64,416 8,281 4,143 52,430 14,403 557 36,360 180,590 1978 68,569 9,320 6,473 63,321 5,312 570 48,752 202,317 1979 74,130 9,653 8,094 64,498 3,142 577 52,427 212,521 1980 78,538 10,014 10,844 67,888 4,079 594 55,183 227,140 1981 83,826 10,385 13,173 70,649 2,812 587 60,283 241,715 1982 94,474 10,914 16,266 69,057 2,398 566 64,380 258,055 1983 86,713 11,195 17,360 71,231 4,352 539 68,098 259,488 1984 87,855 11,548 19,450 75,417 1,830 506 67,355 263,961 1985 96,324 12,033 21,871 86,785 868 504 65,775 284,160 1986 96,773 12,276 23,571 90,898 163 811 76,291 300,783
〔出所〕第97表に同じ。
(%)
第26図 性質別歳出決算額の構成比の推移 50
40 30 20 10
0
19731974197519761977197819791980198119821983198419851986(年度)
度においては人件費が歳出の32..2%であったのにたいして,普通建設事業費は 30..3%であった。第2の特徴は,性質別歳出においても公債費の割合が急速に
戦後の香川県の地方財政 一J63−
第門図 性質別歳出決算額の指数の推移
(単位・千)
第28図 義務的経費と投資的経費の構成比の推移
増大していることである。これは,第27図に示された指数の推移にも明瞭に表 わされている。香川県の場合も,人件費,扶助費,普通建設事業費がこの期間 に3倍の伸びであるのにたいして,公債費のみは17倍も膨張したのである。
義務的経費と投資的経費の割合の推移は,第28図のようである。注目すべき
香川大学経済学部 研究年報 29
−−J〔;−トー J≦暢9
第99表 香川県歳入決算額の推移(普通会計)
(単位100方円)
年 度 県 税 繰入金 繰越金 諸収入 その他の 自主財源 地 方 交付税 国 庫 支出金 県 債 その他の 依存財源 合 計
1972 19,105 560 1,219 5,742 3,995 18,283 22,440 4,585 1,352 54,841 1973 26,693 755 2,771 6,387 4,256 21,450 23,154 3,0、70 1,521 90,057 1974 33,512 3,420 5/726 8,776 5,085 28,291 32,695 3,516 1,677 122,698 19L75 29,281 3,753 6,001 9,592 5,393 30,217 37,585 10,646 1,922 134,390 1976 35,198 2,011 3,701 12,084 6,313 37,011 51,414 15,609 1,862 165,203 1977 39,658 1,747 4,712 13,940 7,150 40,319 59,339 15,589 2,167 184,621 1978 43,521 2,748 4,009 17,190 8,063 51,410 58,127 18,770 2,366 206,204 1979 49,085 2,176 3,888 19,456 9,084 55,685 57,459 17,168 2,299 216,300 1980 52,907 4,614 3,780 21,806 10,318 59,346 61,147 14,618 2,039 230,575 1981 57,177 8,865 3,435 20,638 11,725 64,260 61,728 14,819 1,981 244,628 1982 59,705 7,608 2,913 23,411 12,424 69,742 64,617 20,320 2,164 262,904 1983 63,522 5,135 4,849 25,064 12,082 66,579 62,988 20,659 2,297 263,175 1984 66,787 8,313 3,687 25,998 13,083 62,142 61,064 23,673 2,118 266,865 1985 69/740 10,486 2,904 28,684 15,125 72,415 63,258 23,306 2,202 288,120 1986 75,804 11,131 3,960 31,207 15,911 78,995 61,474 24,459 2,251 305,192
〔出所〕第97表に同じ。
第29図 香川県歳入の構成比の推移
(%)
35 30 25 20 15 10
5
0
19731974197519761977197819791980198119821983198419851986(年度)
ーJ65−
戦後の香川県の地方財政
ことは,1978年度以降義務的経費が漸増していることである。これは,言うま でもなく,公債費の膨張が原因である。そして,義務的経費の漸増と対照的に 投資的経費は1977年度の37..3%をピ1−クに漸減している。したがって,県財政 の歳出構造は,公債費の増大によって硬直の度合いを漸次強めてきていると言 えるであろう。
つぎは歳入の構造である。第99表を使って,まず歳入項目の構成比をみれば 第29図のようである。まず県税であるが,1975年度には前年度に比較して5い5ポ
イントもその構成比を低下させ,それ以降20%台の前半で推移し,再び1973年 度の水準に回復することはなかった。県税収入の内訳は第100表の通りである が,その中心は県民税,事業税,自動車税であり,これら3税で税収入全体の 4分の3をしめる。これら3税の構成比の推移は,第30図のようである。まず 事業税は,第1次のオイル・ショックが原因と思われるが,1975年度には前年 度に比較して8い3ポイントも構成比を低下させ,40.6%になった。1975年度の事
第川0表 県税収入の推移
(単位100万円)
年 度 県民税 事業税 料理飲食 等消費税 自動車税 自助茸 取得税 軽 油 引取税 その他 の 税 合 計 1972 4,033 7,922 1,145 1,762 686 1,498 2,059 19,105
1973 5,677 12,653 1,371 2,162 784 1,769 2,277 26,693 1974 7,663 16,403 1,580 2,521 1,098 1,630 2,617 33,512 1975 7,087 11,882 1,53L7 2,877 1,215 1,528 3,155 29,281 19、76 8,887 13,449 1,660 4,108 1,389 2,687 3,018 35,198 1977 10,195 14,854 1/780 4,461 1,581 2,799 3,988 39,658 1978 11,677 15,427 2,056 5,101 1,844 3,145 4,2−71 43,521 1979 13,225 17,296 2,116 6,000 1,925 4,0、74 4,449 49,085 1980 14,395 19,155 2,225 6,325 1,871 4,092 4,844 52,907 1981 16,524 20,358 2,280 6,580 1,949 4,069 5,417 5−7,177 1982 1L7,622 21,163 2,365 6,786 2,059 4,221 5,489 59,705 1983 19,014 22,246 2,220 6,940 2,178 4,942 5,982 63,522 1984 19,868 23,293 2,320 8,085 2,292 4,685 6,244 66,、78、7 1985 21,010 23,594 2,58L7 8,205 2,442 5,484 6,418 69,740 1986 22,458 26,732 2,660 8,411 2,603 5,993 6,947 75,804
〔注〕金額は決算額である。
〔出所〕第99表に同じ。
香川大学経済学部 研究年報 29
ーヱ66−一 J9&9
(%) 第3咽 県税収入の構成比の推移
50
40 30
20
10
0 19731974197519761977197819791980198119821983198419851986(年度)
第31凰 県税収入の増減率の推移
0 0 0 0
5 4 3 2
19731974197519761977197819791980198119821983198419851986(年度)
団県民税 冒事業税 巨ヨ自動車税
戦後の香川県の地方財政 ーJ67−
業税の減少率の大きさは,第31図にもはっきりと示されている。事業税は,そ れ以降35%前後の水準で推移し,もはや40%をこえることはなかった。そして,
歳入にしめる県税の割合の低下の大きな原因は,事業税収入の地位の縮小であ った。
他方,県民税は,1975年度に対前年度伸び率がマイナスになったものの,オ イル・ショックの影響もほとんどみられず,近年は県税収入全体の30%をしめ るに至っている。自動車税も1976年度以降11%台を常に維持してきた。そして,
自動車税に自動車取得税と軽油引き取り税を加えた自動車関係3税は,1976年 度以降,県税収入の22%−24%をしめている。
つぎは,地方交付税である。県の歳入にしめる地方交付税の割合は,1973年 慶一77年度までは25%以下で低迷したが,その後は1984年度を除き25%以上の 安定した割合を維持している。それは,県の歳入の30%以上をしめた1960年代
はじめにはおよぶべくもないが,−・般財源の下支えに重要な貢献をしているの である。しかし,1973年度以降において地方交付税制度が大きな問題をかかえ ていることも事実である。それは,国税3税の自然増収に依存してきた地方交 付税が低成長経済の下でその総額を確保できなくなり,1975年度以降連年大幅 な財源不足額が発生していることである。そのため,第1に,交付税特別会計 は,1975年度−83年度において累計で11兆7,000億円の借入れをおこなうととも に,毎年度220億円から1,800億円の臨時地方特例交付金の繰入れによって交付 税総額の辻ツマをあわせなければならなかったのである。第2には,交付税の 投資的経費の基準財政需要額の大きな部分がしばしば地方の財源対策債に振り 替えられ,交付税と地方債との混清が発生したことである。そして,第3に,
1985年度の高率補助金の−・律カットなどによる地方自治体の負担の増大を補填 するために地方交付税が利用され,国庫補助金の交付税への肩代りがおこなわ れてきたということである。211)
県財政における財源対策債については,のちに県債を論じるさいにのべる 211)藤田『現代日本地方財政史』下巻,444ペ・−ジ;藤田『月本地方財政の歴史と課題』,219
ページ
香川大学経済学部 研究年報 29
−J6β一 J9β9
が,地方交付税の対前年度増減率でみると,1983年度,84年度にはこの期間 においてはじめて2年連続してマイナスの伸び率(−4り5%,−6..7%)を記録し たのである。
つぎは国庫支出金である。国庫支出金は,この期間にかなり変動した。すな
わち,老人保護医療費補助金やオイル・ショック後の経済の立て直しのための公共事業にたいする補助金の増大を中心に,1974年度以降におむナる県の国庫支 出金は,対前年度比15%−41%の割合で増大し,歳入にしめる割合が1977年度 には32‖1%に達した。しかし,1978年度には−・転して対前年度比で12.2%の減
となり,構成比も6..1ポイント減の26..0%に低下し,それ以降は財政再建下の地 方財政の引き締めにより漸減していった。そして,1983年度(−2…5%),84年 度(−3..1%),86年度(−2,.8%)はマイナスの伸び率となり,1986年度の構成 比は20..1%にまで低下し,国庫支出金の歳入にしめる地位は,地方交付税,県 税につぐ第3位に転落したのであった。ところで,財政再建を理由とする補助 金の削減は,1985年度から開始されたが,それが香川県の場合どのように実施
され,またそれがどのような影響を県財政にあたえたかの究明は今後の課題の 一つとしたい。
最後は県債である。まず歳入にしめる県債の割合であるが,それは,1973年 度,74年度は3%前後で推移したが,1975年度になると・一挙に7..9%に上昇し,
1976年度には更に上昇し9‖4%に達した。それは,県財政が赤字団体転落寸前に なった1953年度−55年度以来の高い比率であった。県の財政当局は,「〔1975年 度普通会計決算の〕対前年度増加率をみますと,県税が12..6%の減収,県債が 102い8%の大幅な増加となっており,県税のウエイトが低下し特別地方債(減収 補てん債)の発行等により県債のウエイトが高まったといえます。」212)とのべて いる。1975年度の県債の伸びがいかに大きかったかは,第32図の歳入の増減率 の推移をみれば明瞭である。そして,これ以降,歳入にしめる県債の比率は1980 年度,81年度において6%台に低下したもののその他の年度は7..7%以上の高水
212)『財政事情』第58回,1976年11月,12ページ。なお,1975年度の県債入が106億4,648億 円であるのにたいして,1974年度のそれが35億1,647万円であるから,対前年度伸び率は
2028%になるであろう。