パターンとはあらかじめ与えられた,あるいは決められた文字列のこととする.待ち時間 とはパターンが最初に現れるまでに要する時間のことである.ABCというパターンに対し,
DWABCという列のとき,待ち時間は5である. ABCというパターンが現れるまでの待ち
時間は3以上である.
放字のパターンであれば,どのパターンでも待ち時間Tの平均E(T)=ΣnP(T=n)
n=1
は同じだろうか.次のことをマルチンゲールの理論を応用して示してみよう.
A,B,C,...,X,Y,Zの26文字がランダムに現れるとき,パターンABRACADABRAが 現れるまでの待ち時間の平均は
E(T) = 26ii 十 264 十 26
となる.
(2しn,乱,fPn)を
S2tn = {A, B, C, … , X, Y, Z}) 3n = ?(utn), EISn({A}) = 9Pn({B}) = == S)3n({Z}) = Slt7
の確率空間とする.そして,
(Ω,∫,P)一H(Ut・ふ調 nEN
と定義する.Ωの要素ωは各CViを鶏の要素としてω=(ω1,ω2,_)と書ける.確率変数
XnをXn(ω)=Wnと定義し
ゐ={の,Ω}, ろ=σ(x、,x2,_,一x。),
T= inf{n : Xn−lo =: A 7 Xn−g = B, Xn−s = R, Xn−7 = A,… , Xn−2 = B, Xn−1 = R, Xn = A}
と定義するとTは{鑑}一停止時間で,ABRACADABRAが最初に現れるまでの待ち時間で
ある.時間の単位は特になんでもよいので,1日を単位時間としてこの問題を考えてみる.今,あるカジノに大文字のアルファベット26文字が並んだ公平な,すなわち各アルファ
ベットの所に球が止る確率端のルーレットがあるとする・そこ一駅・人ず噺しレ・
ギャンブラーが現れ,
文字Aの所に球が止るという事象
に1$賭け,負ければ去る.勝てば26$受け取り,次の日に 文字Bの所に球が止るという事象
に26$賭け,負ければ去る.勝てば262$受け取り,次の日に 文字Rの所に球が止るという事象
に262$賭け,負ければ去る.勝てば263$受け取る.以下同じように,文字A,C,A,D,A,B,R の所に球が止るという事象に賭ける.そして,10回連続で勝つと11回目に
文字Aの所に球が止るという事象
に2610$賭け,負ければ去りゲームは続く.勝てば2611$受け取り,ABRACADABRAが現
れたことになり,その時点ですべてのゲームは終了するものとする.n日目のカジノの儲けをYnとすると,次のようになる.{ω:Xl(ω)=A}などωを省略して簡単に{x1=A}と
書く.
Y, = II{x,1.} 一 (26 一 1)1{x,=A}
Y2 = 261{x,=A,x,IB} + II{x,IA} 一 (262 一 26)1{x,=A,x,=B} 一 (26 一 1)1{x,=A}
5.マルチンゲールの応用
80
Y3 =: 2621{x,=A,x,=B,x,tR} + 26J{x,=A,x,IB} + II{x,IA}
一 (263 一 262)1{x, .,,A,x,=B,x,=R} 一 (262 一 26)」{x,=A,x, ..B} 一 (26 一 1)1{x, .,A}
Y4 = 263J{x, ..A,x,=B,x,.R,x,:A} + 262」{x,=A,x,=B,x,tR} + 261{x,=A,x,IB} + II{x,tA}
一 (264 一 263)1{x,=A,x,.B,x,=R,x,.A} 一 (263 一 262>1{x,=A,x, ,.B,x,=R}
一 (262 一 26)J{x,=A,x, ..B} 一 (26 一 1)1{x, =A}
Ys == 2641{x,,.A,x,..B,x,= R,X,=A,Xsla}
十 263J{x,..A,x,=B,x, :R,XsIA}
十 2621{x, .,A,x,=B,XsIR}
十 26J{x, ..A,XsIB}
+ II{x,IA}
一 (265 一 264)1{x,.A,x,=B,x,=R,X4=A,Xs=C}
. (264 一 263)1{x,=A,x, ,=B,x,=R,Xs=A}
一 (263 一 262)1{x,=A,x,=B,Xs==R}
一 (262 一 26)」{x,=A,X,=B}
一 (26 一 1)1{x,=A}
以下同じようにY6,Y7,Y8,Yg,YIOをXl,X2,...,XIOを用いて表わすことがで.きる.さら
に,n≧11のとき
Yn = 26101{X.一lo==A,Xn−g=B,Xn−s=R,Xn−7=A,Xn−6 =C,Xn−s=A,Xn−4=D,Xn−3=A,Xn−2=B,Xn−1=R,XntA}
+ 2691{Xn−g=A,Xn−s=B,Xnm7=R,Xn−6=A,Xn−s=C,Xn−4 =A,Xn−3=D,Xn−2=A,Xn−1 ==B,XnlR}
+268」{X.一s=A,Xn−7=B,Xn−6=R,Xn−s=A,Xn−4=C,Xn−3=A,Xn−2=D,Xn−1=A,XnlB}
+ 2671{X.一7 =A,Xn−6=B,Xn−s=R,Xn−4=A,Xn−3= C,Xn−2=A,Xn−1=D,XntA}
十 2661{X.一6=A,Xn−s= B,Xn−4=R,Xn−3 ==A,Xn−2=C,Xn−1= A,XnlD}
+ 2651{X.一s=A,Xn−4= B,Xn−3 =R,Xn−2=A,Xn−i =C,XnlA}
+ 264J{x.一4==A,Xnin3=B,Xn−2=R,Xn−1=A,Xn4C}
+ 2631{x.一3==A,Xnm2=B,Xn−1=R,XnlA}
十 2621{x.一2=A,Xn−1 =B,Xn:R}
十 261{Xn−i= A:XnlB}
+ II{xnXA}
一 (2611−2610)1{x.一lo=A,x.一g =B,X.一s :R,X.一7=A,Xn−6=a,Xn−s ==A,Xn−4=D,Xn−3= A,Xn−2 ==B,Xn−1=R,X 一 (2610 一 269)1{x.一g=A,X.一s=B,X.m7=R,Xn−6=A,Xn−s==C,Xn−4=A,Xn−3=D,Xn−2=A,Xn−1=B,Xn=R}
一 (2610 一 268)1{x.一s=A,X.一7=B,X.一6=R,Xn−s=A,Xn−4=C,Xn−3=A,Xn−2=D,Xnml =A,Xn=B}
一 (268 一 267)1{.x.一7=A,X.一6=B,Xn−s=R,Xn−4 :A,Xn−3=C,Xn−2=A,Xn−1 =D,Xn=A}
一 (267 一 266)1{x.一6=A,X.一s=B,Xn−4= R,Xn 3 =A,Xn−2=C,Xn−1=A,Xn=D}
m (266 一 265)1{x.一s=A,X.一4 =B,Xn−3==R,Xn−2=A,Xn一=C,Xn =A}
一 (265 一 264)1{x..4=A,X. 3=B,Xn−2=R,Xn−i=A,Xn=C}
一 (264 h 263)J{x.一3=A,Xn−2=B,Xn−1=R,Xn=A}
一 (263 一 262)1{x.一2=A,Xn−i= B,Xn=R}
一 (262 一 26)1{xn−i=A,Xn=B}
一 (26 一 1)1{Xn=A}
と書ける.第η日目までのカジノの儲けの合計は れ
M・一ΣYk kニ1
と書ける.ただし,M・=0とする・このとき,M=(Mn:n≧0)が{ろ}一マルチンゲールに なることを以下に示す.Mn−1は鑑一1一可測だから,
E[Mn 1 ■n_i]= E[Mn_i十Yn 1 J ln_1]
= E[Mn_ilfn_1]十珂y弛1フ㌦_1]
= Mn_1十 E[Yn I JFn_1]
となる.従って,E[Y。 lf。一i]=0となることを示せばよい.
」{X。.、。=・A,X。一,一B,…,Xn.、=・R,Xn≠A}=1{X。一,。=A}1{Xn.,ニB}…1{Xn.、一R}1{Xn≠A}
1{X。一、。一A,X。一,一B,…,X。.、=R,X。=A}=1{X。一、。一A}1{X。.,ニB}…1{X。一、一R}1{Xn=A}
であり,・{Xn.、。.A}1{Xn.、.・}…」{X。一、.R}ほ鑑.、一可測,・{Xn≠A},・{Xn一。}は」PTn.、とち蚊
であることに注意すると,
E[26101{x。一、。.A,x。一,.B,.,xn≠A}一(261L 2610)1{x。一、。.A,x。一、一B,。..,x。=A}1.7 1。一、]=0
となることが分かる.
同様に,
E[26gl{x。一、.A,x。.,.B,…,xn≠R}一(2610 一・269)」{x。.,.A,x。一,.B,…,xn−R}1鑑.、]=O
E[261{xn_1ニA,xn≠B}一(262−26)1{xn_1=A,xn=B}lfn_i]=O E[II{Xn≠A}一(26−1)1{Xn=A}1JPTn_il=0
となり,E[Yn 1.」「n_1]=0となる.ゆえに,
E[Mn l■n_1]=Mn_1, a.s。
となる.
n>11のとき
ユ
IMp 一一 M・一・1一臥1≦Σ 26k kニ0
ユ
だから,Σ26k 〈 krであるK>・をとると,任意のnとωに対し h=O
IM.一Mn_11≦K が成り立つ.よって,任意のηに対し
E(IM・1)≦E(Σ臥1)<n一κ<・・
h=1
5.マルチンゲールの応用
82
となる.定義よりMは.71nに適合している.ゆえに, Mは{鑑}一マルチンゲールである.次に,1>=11,εを26−11>ε>0となるようにとると,
{T g n+ 11} D {X.+i = A, Xn+2 = B, … ) Xn+ii = A}
なので,任意のnに対し
P(T S n+ 111」1 ln) ) P({Xn+i = A, Xn+2 = B) … ) Xn+ii == A}I」1 n)
=珂1{Xn+、.A}1{Xn+,.B}…」{Xn+、、。A}1鑑]
= E(1{xn+i=A})E(」{xn+2=B}) E](1{Xn+ii=A})
1 : T. >e 2611
となり,補題2.6より一E(T)<○○となる.よって,定理2.4Doobの任意停止定理より,
E(MT) == E(Mo) =O
が成り立つ.そして,MTは
MT==T一(2611一ト264十26)
と書けるので,
E(T) = 26ii 十 264 十 26
となる.
同様に,11文字のパター一一ンMATHEMATICS,GAUSSGAUSSGが現れるまでの待ち時
間の平均は,それぞれE(T)=2611,E(T)=2611+266+26であることが分かる.11文字のパターンでは,AAAAAAAAAAAなど同じ文字を打つのにかかる平均待ち時間が最大で,
E(T)=2611十2610十…十262十26となる.