• 検索結果がありません。

3 次元の渦無し運動

ドキュメント内 【PDF】今井功『流体力学』 (ページ 69-75)

§ 24 3 次元の渦無し運動

a)静止流体中を動く球

静止流体中をx軸に沿って速度Uで運動している,半径aの球を考えよう.球の中心が原点を通過した瞬 間に球の周りに作られる流れの速度ポテンシャルΦは,Laplace方程式∆Φ = 0を変数分離して(適切な境界 条件の下で)解くことにより,

Φ =−U a3 2

cosθ r2

と求まる.これはモーメントU a3/2の二重わき出しを表す.この結果は,静止流体中を動く円柱の作る2次 元流が複素速度ポテンシャルf =−U a2/zの二重わき出しであったここと比較される(§ 20).

b)一様流中に静止する球

x軸負の方向に速さUで運動する球の作る流れ(Φ = U a23cosr2θ)

x軸方向の速度U の一様流(Φ =U x=U rcosθ)

を重ね合せた流れは,一様流の中に半径aの球を静止させたときの流れを表し,速度ポテンシャル Φ =U

( r+ a3

2a2 )

cosθ を持つ.球の表面の流れは

vθ= (1

r

∂Φ

∂θ )

r=a

=3 2Usinθ であり,これはθ=π/2において最大値|vθ|= 32Uをとる.

§ 24 について

■速度ポテンシャル(24.3)の導出 球面調和関数Ylmを用いて速度ポテンシャルを Φ(r) =

l=0

l m=l

aml (r)Ylm(θ, ϕ)

と展開する.軸対称な解を考えると,解は対称軸周りの方位角ϕに依らない.そこでYlmϕ依存性eimϕを 消すためにm= 0とおき,

Φ(r, θ) =

l=0

al(r)Pl(cosθ) と書いて良い.さらに展開係数al(r)を

al(r) =

n=−∞

alnrnrについて展開する.これをLaplace方程式

[1 r2

∂r (

r2

∂r )

+ 1 r2

{ 1 sin2θ

∂θ (

sinθ

∂θ )

+ 1 sin2θ

2

∂ϕ2 }]

Φ = 0

に代入し,Plが球面調和関数の固有方程式 { 1

sin2θ

∂θ (

sinθ

∂θ )

+ 1

sin2θ

2

∂ϕ2 }

Pl=−l(l+ 1)Pl

を満たすことを用いると,

0 =1 r2

n=−∞

{n(n+ 1)−l(l+ 1)}rnalnPl(cosθ)

=1 r2

n=−∞

(n−l)(n+l−1)rnalnPl(cosθ)

を得る.よってal(r)の展開において許されるのはn=lの項とn=(l+ 1)の項だけなので,軸対称な解は Φ(r, θ) =

l=0

(

Alrr+ Bl rl+1

)

Pl(cosθ) という形を持つ.

次に境界条件を考える.まず無限遠r→ ∞で流体が静止することを要求すると,vr=∂Φ/∂r→0でなけ ればならず,ここから

A1=A2=· · ·= 0

が分かる.またP0= 1よりA0の項は定数項となるので,あらかじめ省いて良い.さらに球の表面での境界 条件は

Ucosθ= (∂Φ

∂r )

r=a

=

l=0

(l+ 1)Bl

al+2 Pl(cosθ) であり,Pl(cosθ) = cosθに注意すると

B0= 0, B1=−U a3

2 , B2=B3=· · ·= 0 と定まる.以上より速度ポテンシャルの式(24.3):

Φ =−U a3 2

cosθ r2 を得る.

■球を過ぎる一様流(24.4)のx軸上の流れ 速度ポテンシャル(24.4):Φ =U x(1 +a3/2r3)よりx軸上で v=yΦ|y,z=0= 3

2 U a3xy

r5

y,z=0

= 0(=w), u=xΦ|y,z=0=U (

1 a3

|x|3 )

なので(r=|x|の絶対値を忘れないように注意),x軸上の流れは原点対称ある.またx=±aはよどみ点と なり,境界条件を満たしている*8

*8なお2次元流(20.6)に対しては,x軸上の速度は u=U

{

1(x2y2)a2 (x2+y2)2

}

y=0

=U (

1x2 a2 )

, v= 2U xya2 (x2+y2)2

y=0

= 0 である.

図65 Stokesの流れ関数

§ 25  ストークスの流れの函数

縮まない流体の軸対称な流れに対しては,対称軸をx軸に選ぶと,Stokesの流れ関数 Ψ =

P A

vnyds

を導入できる.これは結局,図65の左端の図において,単位方位角に切り取られる円環部分を単位時間に横 切る流量の,各円環についての和と言える.このとき

vx= 1 y

∂Ψ

∂y, vy =1 y

∂Ψ

∂x

である.[これは通常の流れ関数に対する式(18.5):vx =yΨ, vy =−∂xΨに1/yが付いた形になっている.]

また図65の右側2つの図から,式(22.5):

vr= 1 r2sinθ

∂Ψ

∂θ, vθ= 1 rsinθ

∂Ψ

∂r が分かる.

§ 25 について

■Stokesの流れ関数(25.11)の導出 球を過ぎる一様流について,速度ポテンシャル

Φ =U x−µx r3 =

( U r− µ

r2 )

cosθ からStokesの流れ関数(25.11)を求めよう.

1 y

∂Ψ

∂y = ∂Φ

∂x =U−µ1

r3 x2

r5, 1 y

∂Ψ

∂x =∂Φ

∂y = 3µxy r5.

図66 積分路

そこで図66の積分路を用いてStokesの流れ関数を Ψ = Ψ(0, y0) +

y y0

∂Ψ

∂y

x=0

dy+

x 0

∂Ψ

∂xdx と計算する.ここで

y y0

∂Ψ

∂y

x=0

dy=

y y0

(

U y− µ y2

) dy=1

2U y2+µ1

y + const,

x 0

∂Ψ

∂xdx=

x 0

(

xy2 r5

) dx

=3µ y

cosϕ 1

cos2ϕd(cosϕ) (x≡ytanϕ, ∴cosϕ=y/r)

=µ1 y

(y3 r3 1

)

なので,Stokesの流れ関数(25.11):

Ψ = (U

2 + µ r3

)

y2+ const.

を得る.

なお,積分定数constは落として良い.と言うのも,流れ関数には始点Aの選び方の任意性に対応して,定 数を付け加えるだけの不定性がある.実際,図67のように,x軸上の異なる2点A,A に関して定義された 流れ関数

ΨA(P) = (弧APを貫く流量), ΨA(P) = (弧APを貫く流量)

には,弧ABを貫く流量だけの差がある.領域AABからのわき出しがないから,これは弧AAを貫く流量 に等しく,それは終点Pに依らない定数である.

■Rankineの卵形 一様流の中に球を静止させたときの流れは,一様流と二重わき出しの重ね合せ(24.4)に

よって与えられる.これはRankineの卵形(§ 14)においてわき出しとすいこみを無限に近づけた場合に相当 するため,そのような極限で卵形は球になることを意味している.実際,対応する流れ関数(25.11)はr=a において一定値Ψ = 0をとる.

図67 始点Aの選び方の任意性

■半無限体に対するStokesの流れ関数 速度ポテンシャルが式(14.5):

Φ =U x−m r

で与えられる,半無限体の周りの流れに対して,Stokesの流れ関数は Ψ = 1

2U y2−mx r である[4,演習問題7.1].これも上記と同様に証明できる.

1 y

∂Ψ

∂y =∂Φ

∂x =U+mx

r3, 1 y

∂Ψ

∂x = ∂Φ

∂y =my r3. であり,図66の積分路(ただしy0= 0とする)を用いてStokesの流れ関数を

Ψ = Ψ(0,0) +

y 0

∂Ψ

∂y

x=0

dy+

x 0

∂Ψ

∂xdx と計算する.前述の流れ関数の不定性を利用してΨ(0,0) = 0とおくと,

y 0

∂Ψ

∂y

x=0

dy=

y 0

U ydy=1 2U y2,

x 0

∂Ψ

∂xdx=−m

x 0

y2

r3dx=−m

ϕ 0

cosϕdϕ (x≡ytanϕ)

=−mtanϕcosϕ=−mx r,

∴Ψ =1

2U y2−mx r.

§ 26  ワイスの球定理

原点を中心とする半径aの球の周りの流れを得るのに有用な,球定理を用いる数学的技法を紹介する.

Wiessの球定理

無限に広い領域における渦無し運動の速度ポテンシャルΦ0が与えられたとする.その特異点は原点から距 離a以上離れているとする.このときΦ0の表す流れの中に,原点を中心とする半径aの球を置いた場合に実 現される流れは,速度ポテンシャルΦ = Φ0+ Φ1によって与えられる.ここに

Φ1(r) =a

rΦ0(a2r/r2) 2 ar

a 0

λΦ02r/r2)dλ

である(Wiessの球定理).これは2次元流の場合のMilne-Thomsonの円定理(§ 20)に対応するものであ る.Φ1の式は等価的に

Φ1(r) = r a

(a/r)2 0

ξd[Φ0(ξr)]

と書くこともできる.

Butlerの球定理

軸対称な流れを考える.無限に広い領域における渦無し運動を表すStokesの流れ関数Ψ0(r, θ)が与えられ たとする.このときΨ0の表す流れの中に,原点を中心とする半径aの球を置いた場合に実現される流れは,

Stokesの流れ関数

Ψ(r, θ) = Ψ0(r, θ)−r aΨ0

(a2 r , θ

)

によって与えられる(Butlerの球定理).

ドキュメント内 【PDF】今井功『流体力学』 (ページ 69-75)

関連したドキュメント