–「ベクトルnとの積(……)がまたベクトルpnになっている.
このような性質をもつ量をテンソル(tensor)という」(p.178,l.7〜9) –「sij±tijを成分とするテンソル」(p.181下から4行目)
–「ctijを成分とするテンソル」(p.181最後の行) –「法線応力の平均値 13(pxx+pyy+pzz)を考えると,
テンソルの性質によりこれは不変量」(p.185,l.10,11)
§ 43 について
テンソルTをその成分tijと区別してT≡tijeiejとするとき,Tは不変量となるので(付録B.1参照),「T は座標軸の選び方によらない一定の意味をもつ物理量」(p.181,l.10,11)となることに注目する.
後で見るひずみ応力関係式(44.11):P= (−p+ 2λΘ)I+µEもまた不変量の間の関係と見ることができるの で,「任意の座標軸について成り立つ式」(p.185,l.1,2)である.このことは両辺の成分をとると,両辺が同じ 種類のテンソルであることから分かる(付録B.1参照).
§ 44 変形速度,ナヴィエ - ストークスの方程式
はじめに粘性を考慮した流体の運動方程式の導出について概略を述べ,後から詳細を補足する.運動方程式 Dvi
Dt =Ki+1 ρ∂jpij
における応力pijは一般に,流体の変形によってもたらされる.流体の変形は変形速度テンソル eij=∂jvi+∂ivj(=eji)
によって特徴付けられる(§ 9).ここで応力が変形速度の1次式で表される流体(Newton流体)を考えると,
流体が等方的である場合には,変形速度と応力の関係式は
pij = (−p+ 2λΘ)δij+µeij, Θ≡ 1
2eii =∇·v の形になることが示される.pを圧力と解釈し,
pii
3 =−p ⇔ λ=−1
3µ: Stokesの関係式 を要求する.以上より流体の運動方程式として,Navier-Stokes方程式
Dv
Dt =K−1
ρ∇p+1 3
µ
ρ∇∇·v+µ
ρ∆v, µ:粘性率
を得る.ただし粘性率µの温度[を通した空間]依存性を無視した.[粘性率µをゼロと置けば完全流体に対す る応力pij =−pδijが得られ,Navier-Stokes方程式はEuler方程式になる.]粘性率µは比µ/ρの形でのみ 運動方程式に現れ,これが実際の流れに関係する.そこでν=µ/ρを運動粘性率と名付ける.
Dv
Dt =K−1
ρ∇p+1
3ν∇∇·v+ν∆v, ν:運動粘性率.
密度ρの小さい空気の方が水より,運動粘性率ν =µ/ρは大きい.
* 次に以上の内容に関する補足説明を行う.
■変形速度テンソル 応力は流体の変形に関係するため,流体の運動方程式を得るには変形を特徴付ける量が 必要である.§ 9で見たように,変形速度テンソル
eij=∂jvi+∂ivj(=eji)
がその役割を果たす.このことをややストーリー仕立てにして復習しよう.流体の要素が変形するのは,位置 によって流体の速度が異なることによるものと考えられる.すると素朴には,流体の変形は速度の空間微分
∂jviと関係していると想像される.ところが図9(§ 9の補足)のような,流体の変形を伴わない剛体的な回転 の場合にも速度は位置によって異なる.そこで剛体的な回転に寄与する反対称部分
1
2(∂jvi−∂ivj) を∂jviから取り除いて得られる反対称部分
1
2(∂jvi+∂ivj) が,結果的に流体の変形を特徴付けることになる(図9参照).
■変形速度と応力の関係
• 応力pij が変形速度eij の1次式で表されること(Newton流体)
• 流体の等方性
を仮定する.応力pij と変形速度eij の主軸は一致すると考えられる.それぞれの主値をpi, eiと書くと,
Newton流体の仮定により pi=ai+∑
j
bijej =ai+bii+ ∑
j(̸=i)
bijej (添字iについて和をとらない) と表される.さらに等方性を考えて
ai=−p, bij = {
λ+µ (i=j) λ (i̸=j) と書くと,これは
pi=−p+λ∑
i
ei+µei
=−p+ 2λΘ +µei, Θ≡1
2eii=∇·v となる.よって主軸に関しては
pij= (−p+ 2λΘ)δij+µeij
が成り立ち,これはテンソルの関係式だから任意の座標系で成立する(付録B.1参照).
§ 44 について
■「法線応力の平均値13(pxx+pyy+pzz)を考えると,テンソルの性質によりこれは不変量」(p.185,l.10,11) について 2階テンソルの2つの添字を縮約するとスカラーとなることが付録B.1の議論で保証されている.
■Navier-Stokes方程式(44.17)の導出について Stokesの関係(44.14)の下でひずみ応力関係式(44.11)の ij成分をとると
pij = (
−p−2 3µΘ
)
δij+µeij となるので,
1
ρ∂jpij=−1 ρ∂ip−2
3 µ
ρ∂i(∂kuk) +µ
ρ∂j(∂iuj+∂jui)
=−1 ρ∂ip+1
3 µ
ρ∂i∂juj+µ ρ∂jjui
= (
−1
ρ∇p+1 3
µ
ρ∇Θ +µ ρ∆v
)
i
.
§ 45 レイノルズの相似法則
保存力場ではポテンシャルを圧力に繰り込めるから(p+ρΩ→p),非圧縮性∇·v= 0の下でNavier-Stokes 方程式として
Dv Dt =−1
ρ∇p+µ ρ∆v
を考えれば良い.これは代表的な長さ,速さL, U によって無次元化した物理量(プライムを付けて表す)を 用い,
Dv′
Dt′ =−∇′p′+ 1
R∆′v′, R= U L µ/ρ となる.
ここで幾何学的に共通な境界条件を持つ流れ1,2を考えると 流れ1,2のRが共通
↔ 流れ1のL1, U1を用いて無次元化した物理量と
流れ2のL2, U2を用いて無次元化した物理量が同じ運動方程式に従う
↔ 解v′が共通
↔ 2つの流れv1=U1v′,v2=U2v′は力学的相似(同時に実現できる).