第 9 章 高速気流
A.1 微分形式に対する Stokes の定理
接ベクトル 多様体Mの各点における微分作用素v=vi∂i.
図83の曲線cに沿った方向微分 df(q(t))
dt = ˙qi∂i (∂i ≡∂/∂qi)
→ 方向微分作用素v= ˙qi∂i
図83 合成写像t∈R7→c(t)∈M7→f◦c(t)≡f(c(t))∈R
c(t)に応じて(つまり動点の運動に応じて){∂i}を基底とする様々な速度{q˙i}を持つ作用素vが得られ る.その全体が接空間を張る.
次に多様体の接空間に限らず,抽象的ベクトル空間V を考える.その基底を{ei},元をu(i)=u(i)jejと 書く.
pベクトル p個のベクトルu(1),· · · , u(p)を実数に対応させる写像のうち,引数となるベクトルについて
p重線形: ωp[u(1),· · · , au(i)+bv(i),· · · , u(p)] =aωp[u(1),· · · , u(i),· · ·, u(p)] +bωp[u(1),· · ·, v(i),· · ·, u(p)] 歪対称: ωp[u(1),· · · , u(i),· · ·, u(j),· · ·, u(p)] =−ωp[u(1),· · ·, u(j),· · · , u(i),· · ·, u(p)]
となるωpのこと.
• 例えば1ベクトルωは
ω:V →R:u∈V 7→ω[u]∈R という線形写像.
• 特に1ベクトルEiを,
Ei[ujej] =ui
で定義しておく.これはベクトルu=ujejの第i成分uiを取り出す写像である.
1ベクトルω(1),· · ·, ω(p)からpベクトルを構成することを考える.
テンソル積 ω(1)⊗ · · · ⊗ω(p) テンソル積ω(1)⊗ · · · ⊗ω(p)を
(ω(1)⊗ · · · ⊗ω(p))[u(1),· · · , u(p)] =ω(1)[u(1)]· · ·ω(p)[u(p)] で定義する.
外積 ω(1)∧ · · · ∧ω(p)
テンソル積ω(1)⊗ · · · ⊗ω(p)を用いて外積ω(1)∧ · · · ∧ω(p)を (ω(1)∧ · · · ∧ω(p))[u(1),· · ·, u(p)] =∑
π
sgn(π)(ω(1)⊗ · · · ⊗ω(p))[u(π1),· · ·, u(πp)] で定義する.ここに
置換π=
(1 2 · · · p π1 π2 · · · πp
)
, その符号sgn(π) = {
+1 (偶置換)
−1 (奇置換) である.
これは行列式
ω(1)[u(1)] · · · ω(1)[u(p)] . . . . ω(p)[u(1)] · · · ω(p)[u(p)] であり,u(1),· · ·, u(p)について歪対称だからpベクトルである.
また,外積はω(1),· · ·, ω(p)についても歪対称であることが分かる.
さらにこれは転置行列の行列式にも一致するから
∑
π
sgn(π)(ω(π1)⊗ · · · ⊗ω(πp))[u(1),· · ·, u(p)]
とも書け,
ω(1)∧ · · · ∧ω(p)=∑
π
sgn(π)(ω(π1)⊗ · · · ⊗ω(πp)).
pベクトルωpが
ωp=∑′
ai1···ipEi1∧ · · · ∧ Eip (16) と展開されることを示す(ただし∑′
は1≤i1 <· · ·< ip ≤dimV の和).ai1···ip≡ωp[ei1,· · ·, eip]とおく とこれは添字に関して反対称である.
ωp[u(1),· · · , u(p)] =ωp[ei1,· · · , eip]u(1)i1· · ·u(p)ip (ωpの線形性)
=ai1···ipEi1[u(1)]· · · Eip[u(p)]
=ai1···ipEi1⊗ · · · ⊗ Eip[u(1),· · ·, u(p)] なので,
ωp=ai1···ipEi1⊗ · · · ⊗ Eip と書ける.よって
ωp=∑′∑
π
aπi1···πipEπi1⊗ · · · ⊗ Eπip (ここで∑′
で1≤i1<· · ·< ip≤dimV と大小関係を指定する代わりに,
置換π=
(i1 i2 · · · ip
πi1 πi2 · · · πip
)
で順序を混ぜている)
=∑′∑
π
sgn(π)ai1···ipEπi1⊗ · · · ⊗ Eπip (ai1···ipの反対称性)
=∑′
ai1···ipEi1∧ · · · ∧ Eip.
V として多様体の接空間をとりpベクトルωp=∑′
ai1···ipEi1∧ · · · ∧ Eipを考える.
微分df 接ベクトルv=vi∂iに作用して方向微分vi∂if を与える1ベクトル(従って写像)
df[v] =vi∂if = (∂if)E[v], ∴df = (∂if)Ei (17) を導入する.
qj(q) =qj
で定義される座標関数qjをf にとると,微分df の式(17)に現れる∂if におけるf(q) =qj(q) =qj は座標関数ではなく座標成分となることに注意して
∂if =δij, ∴dqj =Ej を得る.
よってpベクトルは
ωp=∑′
ai1···ipdqi1∧ · · · ∧dqip
と表される.ωpは多様体のある点Qの接ベクトルに作用する(点Qの接ベクトルを引数とする)写像である ことを明記するため,これを(ωp)Qと書く.
p(次微分)形式ωp 多様体の各点でpベクトル(ωp)Qを与える 場 ωp=∑′
ai1···ipdqi1∧ · · · ∧dqip. 全微分df 微分(df)Qの 場 である1形式df = (∂if)dqi.
座標関数の全微分はd¯qi= ∂q∂¯qijdqjより反変ベクトル成分の変換則に従うため,p形式∑′
ai1···ipdqi1∧
· · · ∧dqipが座標系に依らない意味を持つにはai1···ipはp階共変テンソルの変換則に従わなければなら ない.
外微分 p形式
ω=∑′
fi1···ipdqi1∧ · · · ∧dqip
を外微分すると,dfi1···ipをfi1···ipの全微分(従って1形式)としてp+ 1形式 dω=∑′
dfi1···ip∧dqi1∧ · · · ∧dqip を得る.
■微分形式の積分 以下ではωp[u(1),· · ·, u(p)]≡ ⟨ωp|u(1),· · ·, u(p)⟩という記法を用いる.多様体上の積分 領域Aを(ξ1,· · · , ξp)でパラメトライズし,領域Aに対応する(ξ1,· · ·, ξp)の範囲をA¯とする.このときp 形式ωpの積分は ∫
A
ωp≡
∫
A¯
⟨ ωp
∂
∂ξ1,· · ·, ∂
∂ξp
⟩
dξ1· · ·dξp で定義される.ここで
∂
∂ξj = ∂qk
∂ξj
∂
∂qk, ∴dqi [ ∂
∂ξj ]
=Ei [∂qk
∂ξj
∂
∂qk ]
= ∂qi
∂ξj なので
⟨ ωp
∂
∂ξ1,· · ·, ∂
∂ξp
⟩
=∑′ fi1···ip
⟨
dqi1∧ · · · ∧dqip ∂
∂ξ1,· · · , ∂
∂ξp
⟩
=∑′ fi1···ip
dqi1[∂/∂ξ1] · · · dqi1[∂/∂ξp] . . . . dqip[∂/∂ξ1] · · · dqip[∂/∂ξp]
=∑′
fi1···ip
∂(qi1,· · · , qip)
∂(ξ1,· · · , ξp) ,
∴
∫
A
ωp=
∫
A¯
∑′
fi1···ip∂(qi1,· · · , qip)
∂(ξ1,· · · , ξp) dξ1· · ·dξp (18) と書き換えられる.なお
∂(qi1,· · ·, qip)
∂(ξ1,· · ·, ξp) dξ1· · ·dξp≡ ∂(q)
∂(ξ)dpξ=∂(q)
∂(ξ)
∂(ξ)
∂( ¯ξ)dpξ¯=∂(q)
∂( ¯ξ)dpξ¯ より,この積分はパラメータ(ξ1,· · ·, ξp)の取り方に依らない.
■Stokesの定理 n次元の領域Dと境界∂Dに向きのつけられるとき,任意のp≡(n−1)形式ωに対して
∫
D
dω=
∫
∂D
ω (19)
が成り立つ.
■面積要素を構成する 領域Dの境界∂Dを(ξ1,· · ·, ξp)でパラメトライズする.1つのパラメータξjが動 いてできる座標曲線上の2点q(ξj), q(ξj+ dξj)を結ぶ∂Dの接ベクトルをd(j)qとすると,その第i成分は d(j)qi= ∂q∂ξijdξj(jについて和をとらない)なので,∂Dにわたるωpの積分から
∂(qi1,· · ·, qip)
∂(ξ1,· · ·, ξp) dξ1· · ·dξp=
∂qi1
∂ξ1dξ1 · · · ∂q∂ξip1dξp . . . .
∂qip
∂ξ1 dξ1 · · · ∂q∂ξippdξp
=
d(1)qi1 · · · d(p)qi1 . . . . d(1)qip · · · d(p)qip が現れる.これは無限小ベクトルd(1)q,· · · ,d(p)qの張る面積要素を与える.