これまで述べてきたように、インターネッ トはいくつかの問題点を有しつつも低コスト
で誰にでも使える便利なツールである。ただ、
誰でも簡単に使えるものを有効に活用するに は、使い方のコツが必要である。逆にいえば、
ポイントを押さえることによって、有効活用 が可能であるともいえる。本章では有効活用 のための利用方法およびポイントについて、具 体例をもとに述べていく。
(1)中小企業のインターネット活用の類型 中小企業のインターネット活用は、大きく4 つに分類できる(図表6)。図中の左上から説 明すると、「コミュニケーションツール」は、
電子メールに代表される通信手段としての活 用である。従来から存在する電話、ファック スなどとの大きな違いは、①電話、ファック ス等の機能を合わせ持つ多機能性、②一度に 不特定多数への情報発信が可能、③音声、画 像などのマルチメディアを扱える、④双方向 のやり取りが可能などがあげられる。これら のもたらす効果は極めて大きく、業務の効率 化に役立つ。
「情報収集」は、ホームページの閲覧が中心 である。閲覧可能なホームページはネット上 に無数といっていいほど多く存在しているが、
提供される情報の内容、質などは様々である。
今では探すことができない情報のほうが少な いほど様々な機関から多様な情報が提供され ている。また、最近増加しているのは登録し て自分の好きなジャンルの情報を電子メール で受け取れる「メールマガジン」である(後 述)。収集する側から見れば一回登録すればあ とは自動的に情報が得られるので非常に使い 勝手のいいサービスである。
「情報発信」は、インターネットによる情報 の提供であり、多くの企業が自社のホームペ ージにより情報提供を行っている(商工組合 中央金庫調査部の2002年8月の調査では、中小 企業の約7割が自社のホームページを開設済 み)。また、他サイトの掲示板やマッチングサ ービスへの参加、メールマガジンの配信など もこの情報発信の一形態といえよう。
「取引情報の授受」は、取引データや電子商 取引市場への参加などが該当する。
これまで、専用回線を利用してやり 取りされてきた業界VAN(付加価値 通信網)やEDI(電子データ交換)な どを、インターネットを使って展開 しようとするものである。これによ り、それぞれのシステム固有の端末 やソフトウエアを取り揃えることな しに電子データのやり取りが可能と なった。また、ショッピングモール なども形成されてきており、これら 図表6 中小企業のインターネット活用の分類
(備考)信金中金総合研究所作成
・Webサイト閲覧(検索サイト、一 般ニュース、個別企業等のサイト、
各種機関のサイトなど)
・メールマガジン購読
・自社サイト(ホームページ)の構築
・他サイトへの参加
(掲示板への書き込み、マッチング サイトへの登録など)
・メールマガジンの配信
・取引データの送受信
・電子商取引(購買および販売)
・ショッピングモール、e -マーケット プレースなどへの参加
中小企業のインターネット活用 コミュニケーションツール 情報収集
・電子メール
・電話(IP電話)
など既存のコミュニケーション ツールの代替
情報発信 取引情報の授受
は、インターネット技術を基盤とした新たな 取引の場として、今後増加が見込まれている 分野である。
以上4つの活用方法の効果を、前述の①業務 効率化、②ネットワーク形成、③ECの実現の 3類型にあてはめて考えてみる。
第1に「コミュニケーションツール」は業務 効率化が主な効果である。これは、従来型の 情報化の延長線上にある。
第2に「情報収集」の効果は多岐にわたるが、
大きく分けると業務効率化とネットワーク形 成であると考えられる。ここでの業務効率化 とは、従来でも収集可能であった情報やデー タをこれまでよりも効率的(スピードやコス トなど)に収集するための活用であり、「コミ ュニケーションツール」同様、従来の情報化 の延長である。一方、ネットワーク形成は、こ れまで収集することができなかった、もしく は入手が困難であった情報(たとえば同業他 社の保有設備や保有技術、業績などの個別性 の高い情報)を収集することにより、自社に 不足する経営資源を補うことを可能とする相 手先を探すための活用である。この場合の経 営資源とは、自社内部のヒト・モノ・カネに 加え、取引先や仕入先、アウトソーシング先 などの自社を取り巻くすべての関係者を含む 広い概念である。
第3に「情報発信」の効果は上記のネットワ ーク形成とECの実現の2つである。この2つの 違いは、ネットワーク形成が必ずしもすぐ取 引に結びつくことを目的としていないのに対 し、ECは取引そのものが目的である点である。
言い換えると、前者が出会いを求めているの に対し、後者はすでに存在する関係に立脚す るか、第3者として市場を仲介することで効率 化を目指しているということである。
第4に「取引情報の授受」は当然のことなが らECの実現ということになるが、業務効率化 やネットワーク形成にも通じるものがあり、①
〜③のすべてであるといえよう。
(2)効果的なインターネット活用の具体例 前節の4つの類型について具体的活用方法を 紹介する(図表6の小項目参照)。ここでは、
効果的活用が可能な6つの方法について詳しく 説明する。6つとは、①情報検索(ホームペー ジ閲覧)、②メールマガジン購読、③掲示板へ の書き込み、④他(自社以外)のホームペー ジへの自社情報の掲載(無料)、⑤他のホーム ページへの自社情報の掲載(有料)、⑥自社ホ ームページである。ここで取りあげた活用方 法以外にも多くの効果的な方法が存在しよう が、実際に中小企業が活用しやすい方法とい うことで6つに絞って取り上げた。これらは、
比較的低コストで、しかも簡単に取り組むこ とができる順に並べてある。なお、図表7には いくつかの切り口からみた特徴をまとめた。
①ホームページ閲覧(個別企業のホームページ)
これは個別のホームページの閲覧である。た とえば企業情報を閲覧する場合、閲覧対象企 業が明確である場合を除いて、多くはヤフー などの検索サイトを利用することになろう。得 られる情報としては、当該企業の名称、連絡
先、業種、主要製品等の基本的な情報もしく は広告・宣伝的な内容が一般的には多い。
この活用方法の特徴は非常に低コストで利 用が可能な点である。通信費およびインター ネット接続費用を除けばほぼゼロということ になる。また、特別なITの知識は不要で、利 用に際しての手間もそれほどかからない。費 用対効果を考えると、工夫次第では非常に大き な効果が期待できる(P. 37の事例企業「OEL」
参照)。
②メールマガジン購読
メールマガジンとは、電子メールによる情 報提供の一種で、雑誌の購読同様、申し込ん だ人に対して情報を提供してくれるサービス のことである。自分の関心ある分野、たとえ ば業界動向、技術・製品情報、企業情報、趣 味の情報等、様々なジャンルの情報を電子メ ールで受けとるサービスであり、こちらから その都度情報を取りにいくことなく、待って
いれば向こうから該当する情報が随時送信さ れる。個別企業の情報や取引に直接つながる 情報というのは多くはないが、業界情報や技 術情報など専門的かつタイムリーな情報の入 手には適している。もちろん、受身の情報収 集であることからこちらのニーズに100%合致 する内容が必ずしも配信されるとは限らない が、時間や費用面で効率的な情報収集が可能 である。
この利用方法の最大の利点は、初期の登録 以外利用者が情報収集を自発的に行う必要が ない点である。手間と時間があまりかからな い利用方法といえる。ただし、毎日配信され るものが多く、また、普通のメールとは区別 できないことから、つい見逃してしまったり、
面倒で見なくなるといったことも起こる。ま た、購読メール数も徐々に多くなってくるケ ースが多いため、定期的なメンテナンスで取 捨選択することも必要となる。
図表7 中小企業におけるインターネット活用方法とその特徴
(備考)財団法人中小企業総合研究機構、信金中金総合研究所『中小企業のWebサイト活用と情報提供機関に関する調査研究』より作成 項目
方法
ホームページ閲覧(個別企業)
メールマガジン購読
掲示板への書き込み
他(自社以外)のホームペー ジへの自社情報の掲載(無料)
他(自社以外)のホームペー ジへの自社情報の掲載(有料)
自社ホームページの運営
収集・発信情報の内容
企業の基本情報 業界動向、新製品・新技 術情報など多様 情報提供の結果として、
技術情報や受発注情報 を得る(かなり専門的 な情報が得られるケー スも多い)
受発注情報中心(発信 者指向強い)信用補完 の機能あり 受発注情報中心(利用 者指向、顧客指向強い)
信用補完の機能あり
受発注情報を中心とし つつも、市場ニーズや 顧客動向の把握にも役 立てている
自社情報提供の特徴
自社情報提供なし 自社情報提供なし
インフォーマルかつ断 片的な提供。匿名での 書き込みも多い
定型的・形式的な情報 提供(無料の場合、情報 量少ないケースが多い)
定型的・形式的な情報 提供(相対的に情報量 は多いが、自由度は少 ない)
自由度・オリジナリテ ィ高い情報提供が可能
必要とされ るIT関連知 識のレベル
低 低 中
低〜中
中
高
利用する ための
費用 低 低 低〜中
低
低〜高 まで様々
中〜高
利用に際 して費や す時間
低 極めて
低い 中〜高
低
低〜中
高
利用を継続する ための手間
なし ほとんどなし
問い合わせへの対 応等の手間がかか る
ほとんどないか、
あっても軽い
様々
効果を高めようと すれば非常に手間 がかかる