た。全国的には、菜の花は外国産に押され、作 付面積は激減しているが、横浜町では半農半 漁という就労形態が多く農業に時間をかけら れないため、手間のかからない菜の花栽培は維 持されてきた。その結果、1989年には作付面 積は約83haと日本一の面積となった(現在で は約140haまで増えており依然として日本一)。
一方、89年頃にふるさと創生1億円の使途を 町長を中心に検討していたところ、転入者か ら地域資源として菜の花の利用の可能性を指 摘された。菜の花は5月に一斉に開花し黄色い 花が一面に咲き誇るが、この景観は壮観であ り見る者を引付ける魅力があること、寒くて 厳しい長い冬を越えて春の到来を告げる象徴 と位置づけられることを再認識し、町は「日 本一の作付面積のある菜の花」を活用したイ ベント(フェスティバル)を開催することを 決定した。
このイベントを契機に、横浜町では町長を 中心に、菜の花に徹底的にこだわったまちづ くりに熱心に取り組み始め、関連の施策を展 開してきている。以下ではフェスティバルの 概要のほか、行政、企業、町民の取り組みに ついて紹介する。
①菜の花フェスティバル
町役場、観光協会、農協、漁協、商工会、森 林組合、文化協会、老人クラブ、婦人会、町 内会などで構成される実行委員会でイベント 内容の検討を行い、1991年5月に「第1回菜の 花フェスティバルinよこはま」が開催され、
2002年5月には第12回を数えるまでになった
(毎年5月の第三日曜日に開催)。第1回では入 込客数が4,500人であったが、01年の第11回で は53,000人にまで増大し、町の人口の9倍もの 入込客数があった(02年は天候に恵まれず 13,800人であった)。
1回当たりのフェスティバルの事業費は約 1,300万円〜1,900万円であるが、第10回までは 通商産業省(現経済産業省)の電源地域産業 育成支援事業の補助を得られたため、町の負 担は相当軽減されていた。01年からは青森県 からの補助金250万円以外は町負担となったた め、イベント参加料を参加者から徴収するな どで財源を確保している。
第1回から実行委員会に町内の主要な産業団 体、住民組織を加えていたため、フェスティ バル開催日および前後の期間には、さまざま なイベントが行われている。菜の花マラソン 大会(約1,000人参加)を中心に、菜の花大迷 路、菜の花モデル撮影会、ヘリコプターの遊 覧飛行(民間航空会社)、菜の花畑散策とバー ベキューツアー(農協)、漁船を利用した海か ら眺める菜の花ツアー(漁協)、菜の花観光馬 車、郷土芸能菜の花野外コンサート、大野点 会・菜の花俳句募集(文化協会)、菜の花押し 花体験会&展示会、吹越烏帽子岳エコトレッ
(備考)民力2002年版(朝日新聞社編)より信金中金総合研究 所作成
図表6 横浜町の概況
①面積:126.5km2
②人口(2001.3):5,686人(前年比1.3%減)
③65歳以上比率(2001.3):23.2%
④産業別就業人口比(%、2000.10)
一次:二次:三次=28:33:39
キング(NHK青森文化センターと共同)、JR菜 の花紀行(JR東日本盛岡支社)、菜の花名所め ぐりと菜の花メッセージ大賞(観光協会)、特 産品の試食即売会、菜の花タイムラリー(商 工会)、菜の花連凧揚げ大会などを行い、菜の 花一色のイベントを展開している。
②その他行政の取り組み
町役場では、フェスティバル以外にも、さ まざまな菜の花関連施策を展開するとともに、
夏期の海水浴関連施策など他の観光設備を含 め、集客促進策に積極的に取り組んでいる。
1995年には町営自然体験ランド(自然苑)開 業、96年からナタネの手蒔きなどの体験交流 イベント「菜の花 Sun Set Story」実施、97年 には砂浜海水浴場へのコテージ5棟建築などが 行われた。
2000年には県事業として砂浜海岸海水浴場 沖に人工島のナタネ島を建設、01年には海水 浴場にセンターハウス(シャワー付)を建築、
横濱よさこい菜の花組結成、02年には第2回全 国菜の花サミットの開催なども行った。03年3 月には菜の花記念館が完成した。
その他、菜の花畑所有者に補助金を出した り、役場で畑を買収し管理を農家に委託する ことで、菜の花畑を保全するケースも増えて いる。
町役場では、こうした取り組みに関してマ スコミからの取材に積極的に対応することで 情報発信を行っている。取材対応によって記 事として取り上げられるケースが増加し、知 名度が向上している。
③企業の取り組み
菜の花フェスティバルを中心とした町の施 策が町内の民間事業者や農業者に波及し始め た。民間事業者は菜の花関連商品(菜の花ド ーナツ、菜の花アイスクリーム、菜の花はち みつ、入浴剤菜の香、ナタネ油「なたねの菜」、 和菓子菜の花乙女、菜の花ラーメン、菜の花 チョコ、菜の花シャンプーなど約100品目)を 開発し販売し始めた。農協では全戸(1,975世 帯)に50gのタネを配布し、ふるさと意識の醸 成などを図ろうとしている。
さらに1999年には道の駅よこはま「菜の花 プラザ」がオープンした。これは町、農協、漁 協、商工会、森林組合で構成される第三セク ターが運営する施設で、土産品販売や観光情 報発信等を行っているが、ここで菜の花関連 商品を100種類以上扱っている。ここには農水 産業者の直売コーナーを設け、地元農家の野 菜や魚介類、地元酪農家の牛乳を使ったソフ トクリーム、菜の花ドーナツなどを販売して おり、立ち寄る観光客に「美味しい、新鮮、安 い」と評判で、農水産業者の増収につながっ ている。
④町民の意識・取り組み
町や企業の取り組みによって、町民の意識 にも変化が生まれ、菜の花日本一の町に住ん でいることに誇りを持ち始めた。また菜の花サ ポーター(ボランティアガイド)、菜の花大使 という制度を利用して情報発信も行っている。
菜の花サポーターは公募で、町民や東北各 地に住んでいる方が、郷土芸能や年中行事、菜
の花、特産物、名所などを近隣居住者に伝え るものである。このサポーターはフェスティ バル開催中には観光客の案内役となっている。
菜の花大使は、町外在住者を横浜町の菜の 花や郷土芸能などを積極的にPRする大使とし て任命するもので、大使は居住地周辺で横浜 町を紹介している。
こうした菜の花関連イベントの充実によっ て、1996年度には菜の花開花中6万人、年間10 万人弱の観光客であったものが、2001年度に は開花中14.5万人、年間68万人もの観光客が訪 れるようになり、地場産業である農水産業の 活性化にも寄与している。
青森県では5月前後に、春もみじ、桜、椿な ど花に関する祭りやイベントが各地で開かれ ており、相当数の観光客が訪問する。この時 期に行っている菜の花関連イベントが、県内 各地のイベントと相乗効果を発揮していると 推察できるが、一方でイベント期間外の観光 客も大幅に増加しており、季節を問わず集客
できる観光地に発展することに成功したとい えよう。
横浜町の観光振興の経済効果を飲食料品小 売業等の人口1人当たり販売額から推計してみ よう。
横浜町の人口1人当たりの飲食料品小売業等 の年間販売額は、91年522.1千円、94年615.9千 円、97年642.9千円、99年535.4千円となってい る。いずれも青森県町村部平均を上回ってい る(図表7)。
これは周辺町村部に比べて、町民以外の消 費者への販売が多いことを意味しており、観 光客による土産品の購入等という経済効果が 得られているといえよう。たとえば観光客1人 が1,000円の土産品を購入したとすれば、68万 人の観光客によって年間680百万円、人口1人 当たり約12万円の経済効果があるといえる。
(2)愛知県甚目寺町
愛知県甚目寺町(図表8)は名古屋市の西隣 にあり、古くは農業が基幹産業であったが、立 地条件から農地の宅地化が進み、現在では名 古屋市のベッドタウン化している。町では都 市近郊農業の活性化が課題となっていた。
観光施設として日本一高い三重の塔を誇る 国の重要文化財「甚目寺観音」、全国唯一の漬 物の神様を祀る「萱津神社」がある。これら の施設への観光客が年間10万人以上いるもの の、特に観光客向けの事業展開、情報発信な どに取り組んでこなかったため、知名度は低 く観光客数は頭打ちとなっていた。
そこで、1993年に町役場が観光協会を設立
(備考)1.商業統計調査(経済産業省)および住民基本台帳 人口要覧(総務省)より信金中金総合研究所作成 2.年間販売額は飲食料品小売業およびその他小売業 3.人口は各年3月末日
図表7 人口1人当たりの年間販売額
642.9
535.4
433.5
485.2
519.7 522.1
615.9
514.7