技やカの伸び(自分)4年HS群
(個)
35 30 25 20
15 105 0
2 3 4 5 6 7 8 91011(時)
図5−25。『技やカの伸びの自覚』項目の記述内容の単元経過に伴う変化(4年)
(飼) 新しい発見(自分) 4年HSR群
+技のポイント ーo一技の関係
噛一美しさ+演技
35 30 25 20 15 10
5 0
234567891011(時)
(個) 新しい発見(自分)4年HS群 35
30 25 20 15 10
5 0
2 3 4 5 6 7 8 9 1011(時)
図5−26.『新しい発見』項目の記述内容の単元経過に伴う変化(4年)
以上のことから,HS群よりHSR群の方が,6年生 においても,4年生においても,「倒立からの前転」
の学習を通して「技」に関する気づきが多くなり,こ のことが「技」を上手にさせることにつながったもの と考えられた.
すなわち,r倒立からの前転」を学習過程に位置 づけることは,「技」のポイントを理解させ,「技」の 習得・習熟に有効に機能することが認められた.
第4節 要 約
本章では,「マット運動の集団的な取り扱いにお ける原理・原則」「技の指導体系」「評価基準表」を 生かして,11時間からなる学習過程を再構築し,4 年生と6年生児童に適用し,その有効性を検討し た.学習成果は,技能的側面,情意的側面から評
価した.
また,r倒立からの前転」を最も基底的なr技」と して位置づけた「技」の指導体系の妥当性につい ても併せて検討した.
1.集団的な取り扱いの有効性
1)6年生では,集団演技づくりを中心に行った単 元後半に,個人の「技jの伸びが認められた.特 に,「前転」「倒立前転」「側方倒立回転」「ロンダー ド」の伸ぴは,有意であった.この傾向は,4年生に おいても同様に認められた.
2)最終の集団演技会で演じた各グループの「技」数
の個人あたりの平均値は,6年生のHSR群7.1種
目,HS群6.2種目で,単元前半における個人の
「技」練習で取り組んだ技数(5つ)よりも多かった.
この傾向は,4年生においても同様に認められ,
集団演技の構成は,4年生においても可能である と考えられた.
3)集団演技におけるr技」の構成の内実は,4年生 と6年生では異なることが認められた.すなわち,個 人差の大きい後転系の「技」は,6年生では敬遠す る傾向がみられたが,4年生では,全員が行う「技」
として積極的に取り上げていた.
4)両学年の「技やカの伸び」「新しい発見」「仲間と の協力」の3項目の好意的反応比率は,単元を通 して80%前後で,また,「楽しさ」は,90%以上で推
移した.
5)態度測定の診断結果は,6年生では,男女,両
群ともに「成功」と評価された。
4年生では,HSR群では男女ともにr成功」と評価
されたが,HS群の女子では「アンバランス」と評価 された.これには,「価値」尺度の得点を向上させ 得なかったことが関係していた.6)マット運動を「大好き・好き」とする児童の割合 は,4年生,6年生ともに増加(6年:HSR群,51.5→
90.9%,HS群,56.2→93。8%)(4年:HSR群,69.4
→97.2%,HS群,50→100%)した.
特に,4年生においては,単元前に12.5%存在
したr嫌い・大嫌い」と答える児童は,単元後には 全くみられなくなった.7)マット運動の集団的な取り扱いに対する反応は,
好意的に捉えるものが,両学年,両群ともに80%
以上の高値を示した.
8)上記1)〜7)の結果は,マット運動を集団的に取り
扱う学習過程は,いずれの学年においても,個人
の「技」の伸びを保障し,マット運動を好きにさせ,体育授業に対する愛好的態度を育てる上で効果
的であることを示唆している.
2,「倒立からの前転』を学習過程に位置づける効 果
1)「倒立からの前転」を学習過程に位置づけたHSR 群の方が,4年生においても,6年生においても,
技能の向上はHS群より優れていた.
すなわち,両群における動作パターンの差は,
より大きな回転力を生みだすための動き(例を挙げ れば「膝を伸ばして前転する」)において多くの
「技」で認められた.
2)集団演技において演じられた「倒立前転」には,
両群で相違が認められた.すなわち,HSR群は,4 年生においても,6年生においてもr評価基準表」
に示した「首倒立からの前転」を含めすべての段 階の「倒立」を,集団演技の構成に位置づけてい
た.
しかし,HS群の4年生においては,「倒立前転」
は,全く行われていなかった.
3)HSR群の『新しい発見』項目の自由記述は,6年
生においてはr技を美しく行うこと」について,4年 生においては,r技」のポイントの気づきに関する 記述について,HS群よりも多く認められた.
すなわち,HSR群の方が,「技」に関する気づき が多かったことが,HS群よりも技能を向上させた要 因として考えられた.
4)上記1)〜3)の結果は,r倒立からの前転」を学習 過程に位置づける指導体系は,児童に受け入れら れ,r技」のポイントを理解させ,r技」の習得・習熟 に有効に機能することが認められた.
文 献
1)深谷健次(2002):歌声マット(集団創作演技).楽し い体育の授業15(5):p23.
2)橋本雅之(2001):マット運動の集団演技.学校体育
54(3):22−25.
3)林 俊雄(1997):個人のカをみんなのカに一小四・
集団マット運動の実践から一.体育科教育45(6):41−
44.
4)金子明友(1988)マット運動。大修館書店:東京.Pp 295
5)北村博司(1998)1創造的活動を取り入れた体育学 習一グループマットの実践一.体育科教育51(12):54
−57,
6)小林篤(1978):体育の授業研究.大修館書店:Pp2 79
7)三好保雄(1994):集団マットで関心・意欲を高める.
楽しい体育の授業7(6)119−21.
8)文部省(1998)小学校学習指導要領解説体育編.
東山書房:京都
9)野田昌宏(1987):小学校体育科における授業分析 に関する研究一態度得点を高める要因についての 事例的研究一.兵庫教育大学修士論文.
10)小倉大二(2000):マット運動の集団化の試み一シ ンクロナイズドマット運動一.学校体育53(11):20−23.
11)岡田和雄,平林宏美(1978):マット運動のおもし ろさを追求する二つの実践・その2.体育科教育26
(1):52−56.
12)岡沢祥訓,徳田直子(1999):運動有能感を高める 集団マットの授業実践・体育科教育47(11):54−56.
13〉奥村基治,梅野圭史,辻野 昭(1989):体育科の 授業に対する態度尺度作成の試み一小学校中学年 児童を対象にして一.体育学研究33(4):309−319.
14)酒井康吉(2000):方形マットを使った集団での演 技づくり.学校体育53(4):38−4L
15)阪下誠(2002):やんちゃ坊主が変わった集団での 取り組み.楽しい体育の授業15(5):p25,
16)迫田一弘(2002):場づくりが集団マットヘの意欲を 生む.楽しい体育の授業15(5〉:p24。
17)四海久富(1999):rみんな」をつなげる集団マット
(小6)。体育科教育47(13):40−42。
18)高橋健夫(2000):仲間とつくる器械運動.学校体
育54(11):6−9.
19)東京教育大学付属小学校体育部(1979):子ども にとって器械運動とは何か.学校体育29(11):31−35.
20)辻野 昭,川島俊明,梅野圭史,ほか(1982):スポ ーツ教育における学力とその形成に関する一考察一 教授活動の相違が児童の授業に対する影響に及ぽ す影響一.スポーツ教育学研究1:13−28.
21)上口さゆみ(1982):達成目標を明確にしたマット 運動の授業.達成目標を明確にした体育科授業改 造入門.明治図書:66−88.
22)梅野圭史,辻野 昭(1984):体育科の授業診断に 関する研究一態度得点と学習形態との関係一.スポー ツ教育学研究3(2):67−78.
23)依田節夫・中森孜郎(1980)マット運動「側転」の授 業(中学一年)子供のからだと心をひらく体育をめざ して.体育科教育28(12):47−52.
第V【章
総 括
器械運動の運動課題は,r身体操作によって空 間表現を創造すること」と考えられる.
しかし,器械運動は,ボール運動などの他の領 域と比較すると,①rできる」rできない」が明確とな り,能力の低い児童にとっては達成感,満足感が 味わいにくい.②痛い,こわい,目が回るなど,技 能が未熟な段階における学習場面で体感したこと が,心理的な面で学習意欲を減退させる要因とな りやすい.③様々な「技」や動きを習得することの 意義を見い出しにくく,能力の高い児童において も学習意欲の停滞が起こりうる.等の理由により,
学年があがるにつれて,児童の関心の低下してい くことが報告されている
こうした問題点を払拭したい,器械運動の楽しさ を味わって欲しいと願い,著者は,その思いの実 現に向けて,マット運動を集団的に取り扱う実践を 行ってきた.
マット運動の「技」には,人の運動の発達におけ る初期の段階に出現するような非常に初歩的な動 きも含まれるため,初めてマットに触れる児童でも,
r技」を行い,十分楽しめる要素をもっていると考え られる.したがって,マット運動は,器械運動の中 でも「技」を習得することによって,その「空間表現 を創造する楽しさ」を,鉄棒運動や跳び箱運動に 比べて比較的容易に味わうことができる素材であ
ると考えられる.
また,r技」が連続して行いやすい点において跳 び箱運動より,器械に対してr堅い,痛い,冷たい」
などのマイナスイメージを想起させやすい鉄棒運 動より,児童にとって親しみやすい素材と考えられ
る.
さらに,マット運動で得られる感覚や技能は,跳 び箱運動や鉄棒運動を行う上での基礎的なものに なると考えられる.
したがって,r空間表現を創造すること」の楽しさ は,他の運動よりも,子どもたちに体感させやすい と考えたからである.
平成5年度から17回実践してきたマット運動を集
団的に取り扱う実践は,器械運動の運動課題の達 成に向けてそれなりの手応えを感じえた。しかし,児童が意欲的に学習に臨む姿が見られ
たことや,個々の技能にも伸びや変容が認められ たことは,著者の主観による感覚的なものにすぎな かった.このことは,児童の伸びを評価する客観的 な方法を持ち合わせていなかったため,特に,個 人の技能の伸びについて顕著であった.したがって,これまでの実践の成果を客観的な
指標を用いて評価し,その有効性について明らか にすることが必要であると考えるに至った.そこで,本研究では,マット運動を集団的に取り 扱う有効性を,客観的に実証しようとした.そのた めに,著者の実践や先行実践を対象に,マット運 動を集団的に取り扱う上での原理・原則を抽出・整
理した.
その結果,マット運動を集団的に取り扱う上での 原理・原則として,
i)r単元の時間配当」は,個人練習と集団演技づ くりの比率を変え,単元の前半は,個人による「技」
練習を中心に,後半は「集団演技づくり」を集中的 に行う,また,単元後半の集団演技づくりには,話 し合いの時間を確保し,自主的な練習時間を保障 するために,授業日に間をあけて設定する.
廿)「児童の創造性を発揮させる手だて」として,① マット枚数や組み方は,グループ内での話し合い に基づいて決定させる.②単元前半に,「合わせ る」rずらす」などの集団演技づくりの基礎を指導し ておく.③音楽は使用する.その際,選曲も児童に まかせる.なお,選曲にあたっては,リズムが明確 で一定であること,クライマックスを感じさせる部分 のあるものがよいことを指導する.
血)「グループ編成」は,集団内異質・集団間等質 の男女混合で,6〜8人とする.
短)rマット枚数」は,「グループの人数÷2+1」枚 が最低必要枚数で,最大においても,「グループ