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第5章 通常の学級におけるかけ算九九学習多層指導

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表5-11 C校の11月から12月の残差分析結果

表5-12 D校の11月から 12月の残差分析結果

5. 第2次支援(C校)の効果

第2次支援を実施したC校の学習方法の効果をみるために,12月と2月の九九81 問(被乗数1から9と乗数1から9までをかけた九九)全問正解者と誤答人数におい てχ2検定を行った。C校のみに有意差が認められた(χ2(1)=39.71,p<.01)。D 校と E 校には有意差が認められなかった(D 校(χ2(1)=0.63, ns),E 校(χ2

(1))=0.79,ns))。C校の残差分析結果を表5-13に示した。

**:p<.01 12月

全問(36問)正解者人数 誤答人数

ー3.732

11月 ** 3.732

**

ー3.732

**

3.732

**

12月 2.382 ー2.382

* *

*:p<.05

11月 ー2.382 2.382

* *

全問(36問)正解者人数 誤答人数

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表5-13 C校の12月から2月の残差分析結果

6. 九九習得多層指導モデルMATH実施の結果

1)前半九九36問の未習得者人数が占める割合の推移

3回の評価時の未習得者人数の推移を表5-15に, 12月と2月評価時の未習得者の 中に 11月評価時の未習得者人数が占める割合を図 5-11 に示した。2月評価時に,E 校は,九九未習得者に占める前半九九未習得者の割合が高くなった。C校は,反対に 占める割合が低くなった。D校は,ほぼ横ばいであった。

2)全問正解者数と割合の推移

12月・2月評価時点の全問正解者数の推移を表6-12に,割合の推移を図5-12に示 した。D校とE校が,緩やかな増加に比べて,C校の増加は顕著であった。

表5-15 前半九九未習得者人数の推移

**:p<.01

2月 6.445 ー6.445

** **

全問(36問)正解者人数 誤答人数

12月 ー6.445 6.445

** **

11月 12月 2月

C校(4学級130人) 85 55 10

D校(2学級60人) 34 21 16

E校(2学級72人) 16 12 7

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図5-11 36問未習得者が占める割合

表5-14 研究実施後の担任の自由記述

7.研究に対する担任への聞き取り

協力校 C 校,D 校の担任から回答が得られた。「誤り分析の方法について,有効と 思うか」という問いに対しては,思う 5 人,やや思う 1人であった。「今回の指導方 法は有効と思うか」という問いに対しては,全員が思うであった。実施後の自由記述 は,上記の表5-14の通りである。

声を出しているから九九練習は大丈夫と思っていたが,九九の唱え方にまで 気を付けて聞くようになった。

九九だけでなく,他の学習でも音韻で苦労していることがわかった。

九九の問題を写すときに形の似た数字を写し間違えていることがわかった。

誤り分析の方法を知って,誤りやすい傾向がわかった。

前半の九九クイズで,引っくり返しても答えが同じに気づいたことで,「九九のき まり」で乗法の交換法則の理解がスムーズになった。

「九九なぞなぞ」は,子どもたちが喜んで考えていた。

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図5-12 12月・2月評価時点の全問正解者率の推移

以上の結果から,今回C校・D校に導入した九九習得多層指導モデルMATHの有 効性について考察する。

第3節 考察

1.誤答分析をもとにした学級毎の誤りの多い九九を減らすための早期介入

全体指導による効果とリハーサル効果に注目すると,誤り人数の多い九九分類Aを 中心とした【九九クイズ】(反復強化法)で行った九九は,C 校,E 校とも習得率が高 く,その効果は学年末まで維持されていた(図5-9-1,図5-9-2)。

この方法は,児童の受け身的な学習態度ではなく自主的な学習態度を引き出したと 考えられる。一方,誤りの多い分類Aの残りと分類Bの【フラッシュカード方式】(記 憶の自動化法)は,習得率の結果にばらつきが見られた。橋本(2013)が指摘したフ ラッシュカード方式が飽きやすいということが影響し,安定した習得率の向上につな がらなかったと考えられる。

2×7を C 校は【九九クイズ】で実施し,D校は【フラッシュカード方式】で実施 している(図5-1 図 5-6参照)。3×7と 3×8を D校は【九九クイズ】で実施し,C 校は【フラッシュカード方式】で実施している(図5-2図5-5参照)。10回練習の【フ ラッシュカード方式】で実施するより,3 回練習の【九九クイズ】実施する方が習得 人数の増加になっている。このことから,練習回数よりも,自主的学習態度を引き出 す授業,友達と一緒に学ぶ活動が,橋本(2013)が指摘した通りの効果につながった

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と考えられる。早期介入で,児童が意欲を継続できるかのポイントである。今回,習 得効果を示すことができなかった【九九なぞなぞ】も,児童の九九学習への意欲づけ に役立ったと考えられる。リハーサル効果としての九九学習は,水野(2002)の反復 学習方式の原理に従って問題を選ぶことである。【九九クイズ】に見られるように, 1 日3回(登校時,途中の休憩時間終了後,お昼休み終了後)の練習時間は,学習間隔 が1時間から2時間後となっている。このことから,登校時に誤学習が修正され,正 しい九九の再学習となった。完全に忘れてしまってから再学習しても効果が少ないが,

覚えているうちに再学習することが重要で効果的とされている(Landauer & Bjork,

1978)。

次に,誤学習の改善及び防止効果に注目すると,介入プログラムを導入しなかった E校では,11月評価から12月評価にかけて前半九九の誤りが改善される人数が少な

く(図5-11,表5-13参照),2月評価時点まで誤想起による誤答が繰り返されている

可能性が示された(図 5-12,表 5-9,表 5-10)。このことから,九九学習の初期で誤 って覚えると, 誤学習が繰り返され強化されやすいと推定される。同様に,C校とD 校でも,想起に誤りのあるS型において,2月評価時点まで誤答が残っている児童も いるため,初期の頃の覚え間違いは,かなり修正しにくいと考えられる。しかし,C 校とD校の場合には,それ以外の型の改善は大きく,今回の介入プログラムは誤学習 の改善及び防ぐ手立てとして効果があったと考えられる。

2.誤り要因に配慮した一斉指導の中での支援

C校やD校の担任は,一斉指導の中で,O型児童の誤りに気を配るようになり,言 語での誤りを防ぐがために「シチはナナ」「シはヨン」と言ってもOKという支援に変化した。

11月評価による九九の誤答分析(誤りのパターンから類型化するアセスメント)を担 任と一緒に行ったことが,担任たちが誤り要因を一斉指導の中で生かそうとする姿勢 につながったと考えられる。

3.要配慮児童への支援

C校の要配慮児童(誤答 7問以上で誤りパターン O型がある児童)11名の内,10 名は九九を完全習得できた。C校の要配慮児童は,担任からの情報によると「何かの 障害名の診断を受けたり,医療機関や相談機関にかかっていたりする児童ではない」

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とのことである。アンケートの自由記述に「九九だけでなく,他の学習でも音韻で苦 労していることがわかった。」「誤り分析の方法を知って,誤りやすい傾向が分かった。」

とある。アセスメントが「できない子」のレッテルの貼り付けなのではなく,個々の つまずきに応じた即時支援のためエビデンスとして担任の先生方に受け入れられ,ア セスメント後,児童理解が,具体的な個に応じた支援を促したと考えられる。

4.第1次支援の有効性(早期介入効果)

11月の評価をもとに第 1次支援を行った C 校と D校に有意差(表 5-11,表 5-12 参照)が見られた。この結果から,C校とD校に行った誤答分析をもとにした早期介 入である第一次支援の有効性が支持される。比較データ協力校であるE校は,先取り 学習や家庭での練習協力など学習環境に恵まれており,11月の段階で 習得率が高い。

C小学校,D小学校は,E校と比べて,学習環境が劣位にある児童が半数を占め,研 究スタート時での等質性が保障されていないとも考えられる。しかし,学習環境が劣 悪であることから,第1次支援がなければ,C小学校とD小学校は,九九実態調査を 行った小学校(2013)と同様に,3年生での習得率は5割程度であったかもしれない し,2月時の評価(表5-16,図12-8参照)の結果までは至らなかったと思われる。

表5-16 12月・2月評価時点の全問正解者数の推移

5.第2次支援の有効性(誤答パターンに特化した学習効果)

誤り要因に配慮した九九指導である第2次支援は,C校にのみ,有意差が認められ たこと(表 5-13 参照)から第 2 次支援が有効であったと言える。特に,練習不足に よる M型が大幅に改善されていること(表 5-9,表 5-10参照)から,効率的な練習 方法として効果があったと考えられる。

C 校の S 型(想起の混乱)も九九完全習得人数が増えた。「どうすれば間違えない ですむか,先生と一緒に作戦を立てよう」と言う風に,担任と児童が知恵を出し合っ たことで,交換法則による被乗数と乗数をひっくり返す『ひっくり返しの術』は,生

12月 2月

C校(4学級130人) 40 110

D校(2学級60人) 29 37

E校(2学級72人) 53 64

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まれた。この方略は,記憶や想起の弱い児童には,大変有効であったと考えられる。

C校において,【九九クイズ】(図5-9-1参照)や【フラッシュカード方式】(図5-10-1)

で習得できていなかった九九の習得率が2月の時点であがった点について,児童自身 が気づき,自己修正したと推測される。

第4節 総合考察

本研究は,誤答分析をもとにした早期介入と九九の誤り要因に配慮したかけ算九九 学習多層指導モデルの改善として,かけ算九九学習多層指導モデル MATH を協力校 において試行的に取り入れてもらい,九九学習前半の習得率や正解者数の向上を図り,

モデルの効果を実証することである。以下に,本研究で得られた知見と研究の限界と 課題を述べる。

2.本研究で得られた知見

1)アセスメント(九九の誤答を分析)の目的と効果

C校やD校の担任は,アスメントによって,レッテルの貼り付けでなく,早期に支 援が必要な児童として捉え,誤り重篤化する前に,O型児童への支援を行なった。そ の結果,九九の習得向上につながった。Fuchs & Deshler(2005)が,「アセスメントは 支援が必要な子どもを見つけるのが目的ではなく,効果的な早期支援を促すこと」と 述べている通り,誤答分析の目的は,誤学習に陥る前に,早期発見・早期支援につな げることであった。九九の習得評価というと,覚えたか覚えていないかのみに注目し がちであるが,誤答分析の類型という視点を加えるアセスメント方法は,通常の学級 担任が児童の誤りを指導の手立てに加える発想の転換につながると考えられるのでは ないか。

2)九九の誤り要因に配慮した多層指導モデルの効果

C校の九九81問全問正解者が12月から2月にかけて,急に増加している(表5-16,

図5-13)。D校,E校も緩やかであるが,増加が見られる。12月から2月の増加は授

業での繰り返し効果が関係していると考えられる。C校,D校,E校の3校ともF社 の教科書を使用している。F社のかけ算指導では,3学期の 1月に「九九のきまり」

という単元が設定されており,3 学期も引き続き九九を学習することにより練習効果