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第 5 章 通常の学級におけるかけ算九九学習多層指導

2. 結果と考察

1.ピックアップした誤りが多かった九九のみの練習効果

登校時から,児童たちは喜んで練習に励んでいた様子が担任から報告された。また, 休み時間が終了して部屋に戻ってくる度に自発的に練習していた様子,誤っていた児 童が自己修正して練習していた様子,被乗数と乗数を入れかえても答えが同じである ことに気づく様子も報告された。練習後の翌週に実施したプリントでは,全く誤答がな かった。2 月実施時は,8×6 と 4×7 の 1 問ずつの誤答があった。3 月実施時は全く誤 答がなかった(図 5-3)。

2.誤答パターンに特化した学習効果

C小学校では,12月の誤りが「O型のみ」は2月にすべて改善し,「S型のみ」は11 人から5人に減少した。12月の混合型は,「O・S混合型」から2名,「O・S・M混合 型」から4名が 2月に「O型のみ」に移行した。3月に「混合型」は「S型のみ」に 移行した(表5-3)。

学習方法 実施時期 時間帯

①九九クイズ 12月上旬(2週間) 月~金の入室前

(登校時・20分休み後・昼休み後)

②九九忍術 12月中旬から翌年1月末 朝の会に個別練習

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図5-3 12月に誤りの多かった九九の誤答人数の推移

3.研究協力校(C校)の学習方法の効果

全問正解者率の推移を図 5-4 に示した。研究協力校(C 校)の 12 月と 2 月と 3 月の 全問正答者と誤答人数においてχ2 検定を用いて検定した結果,有意差が認められた

(χ2(2)=12.90, p<.05)。残差分析を行った結果を表 5-4 に示した。同様に,デ ータ協力校(D 校)の 12 月と 2 月と 3 月の全問正答者と誤答人数においてχ2検定を 用いて検定した結果,有意差は認められなかった(χ2(2)=4.87,NS.)。

表 5-3 誤答パターン別による誤答人数の推移

表 5-4 C 校の残差分析結果 0

2 4 6 8 10 12

12月(評価後) 12月(練習後) 2月 3月 誤

答 人 数

実施月

8×6または6×8 4×7または7×4

8×7または7×8 8×8

6×9または9×6

O型のみ S型のみ O・S混合 O・S・M混合 O型のみ S型のみ O・S混合 O・S・M混合 O型のみ S型のみ O・S混合 O・S・M混合

C校 3 11 6 8 6 5 2 3 3 9

D校 5 15 4 15 10

12月 2月 3月

全問正解者人数 誤答人数

-3.355 3.355

** **

0.746 -0.744

NS NS

2.609 -2.609

** **

**;p<.01 12月

2月 3月

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図5-4 全問正解者率の推移

4.学習方法1(誤りが多かった九九のみの練習)の有効性

1)学習への児童の自発性や動機

「九九クイズ」という名称で練習問題を絞って扉に掲示するという方法は, 担任か らの報告をもとにすると,児童の自発性や学習動機を高めることにつながったと推定 される。練習を「させる」のではなく,児童自らが「やってみよう」と思える意図的設 定が,反復学習を効果的にする重要な要素であろう。

2)学習効果

練習問題の選定に,反復学習方式の原理(水野,2002)に従って問題をピックアップ し,練習順番も決定した。練習直後の1週間後には,誤答がなくなり習得されて,年度末 までその状況が続いていることから,この学習方法は効果的であったといえる。完全に 忘れてしまってから再学習しても効果は少なく,覚えているうちに再学習することが 重要で効果的とされている(Landauer & Bjork,1978)。本研究では,登校時,途中の休 憩時間,お昼休みと学習間隔が 1時間から2時間後となっていた。このことが,誤学習 が修正され,正しい九九の再学習への効果につながったと考えられる。

0 50 100

12月 2月 3月

実施月

C小学校 D小学校

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5.学習方法2(誤答パターンに特化した学習)の有効性

1)単独型と混合型への効果

単独型は,誤答人数が半減もしくは 0 人になっているため,特化した学習方法の効果 があったと考えられる。逆に,単独型に比べて,混合型の誤答人数の減少が緩やかなの は,やはり学習方法に的を絞れていないということが大きな要因と考えられる。

2)「ひっくり返しの術」の効果

学習方法1の九九問題を掲示する時に,意図的に乗数と被乗数を入れ替えた九九を 掲示したのは, 誤答パターンに特化した学習方法の「ひっくり返しの術」(すぐに九九 の答えが出てこないときは被乗数と乗数をひっくり返して想起)につなげるためであ った。担任から,「『ひっくり返しの術』により記憶の弱い児童も覚えることができた。」

との感想が寄せられたことからも,交換法則による被乗数と乗数のひっくり返しは,記 憶に負担のかかる児童には有効と考えられる。交換法則での答えが確実となるために は,九九学習の初期に学習する小さい数から大きい数を唱える九九(これは半九九また は制限九九と呼ばれている)を身につけておくことが重要である。

6.研究協力校における学習方法の有効性

1)学習方法の効果

12 月の評価と 3 月の評価を比べて 3 月の全問正答人数の増加が有意になったことか ら,C 小学校に行った学習方法の有効性が支持される。C 小学校は,比較データ協力校と 比べて学習環境が劣位にある児童が多く,研究スタート時での等質性が保障されてい ないと考えられる。しかし,学習環境が劣悪であることから,算数の授業配当時数の練 習では 3 月の結果にまでは至らなかったのではないだろうか。

2)3 月の評価結果から

研究協力校 C 校の全問正解者率が 3 月の段階で, D 校の 12 月時の全問正解者率とほ ぼ一緒であるということから,習得率が高くなってからの学習方法の工夫がさらに必 要と考えられる。練習環境に恵まれたデータ協力校である D 校でも,3 月の段階で,誤

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答をかかえたままの児童が存在する。つまり,完全に習得できていないまま 3 年生に進 級している児童がいると考えることができる。