2班(対象児所属)25 86% 24 83%
3珂王 24 83% 26 90%
標的行動
④
評価回数 5回
5 100%
5 100%
5 100%
合計 評価回数 88回
70 80%
65 74%
79 90%
※%は、各標的行動の正反応数を評価回数で割った値を示している。
その結果、1班70ポイント(80%)、2班(対象児所属)65ポイント(74%)、
3班79ポイント(90%)と、対象児の所属するグループが最も獲得したポイント数 の合計が少なかったが、他の班と比べても大きな差は見られなかった。しかし、標的
行動③⑤に注目すると、標的行動③は、1班3ポイント(50%)、2班2ポイント(
33%)、3班5ポイント(83%)であり、標的行動⑤は、1班15ポイント(79%)、
2班9ポイント(47%)、3班19ポイント(100%)と他の班と比べると大きな差
が見られた(Ta阯e29の白黒反転箇所参照)。さらに、2班において対象児以外の2人の児童が正反応を示していても、対象児が 謀反応を示したために班ポイントが獲得できなかった回数を調べた結果、標的行動③ においては4回(67%)、標的行動⑤においては、9回(47%)であった。つまり、
2班(対象児所属)の対象児以外の2人の児童が正反応を示したときに、対象児が全 て謀反応ではなく、正反応を示していたとしたら、獲得した班ポイントは、標的行動
③で6ポイント(100%)、標的行動⑤で、18ポイント(95%)に達することにな る。このことは、標的行動③⑤において、2班の対象児以外の2人の児童が正反応を 示しても、対象児が謀反応を示したため、2班の班ポイントが獲得できない状況が多
くあったことを示している。このような状況が続くと、グループ編成に対する児童の 不満が増加することが推測される。
このことについて、Davis&B1ankenship(1996)は、 「相互依存型集団随伴性シ ステムにおいて、平均された遂行成績を強化基準とする場合には、個人の遂行成績を 定期的にチェックしておく必要がある。なぜなら、得点が平均値化されても個人の得
点は測定されない場合、ある個人の成績の低さはグループの高い平均値に隠れてしま うからである」と述べている。本モデルでは、平均された遂行成績ではなく、グルー プ全員の遂行成績を強化基準としていたが、個人の遂行成績を定期的にチェックして おくことは、グループ編成に対する児童の不満を抑制する上で重要と考える。なぜな らば、それによって個人の成績の低さが確認できれば、支援策を検討することができ、
グループ編成に対する児童の不満を抑制することができるからである。
ただ、介入が始まっても2班においては、対象児が標的行動③と⑤に謀反応を示 す状況が続いたが、対象児以外の2人の児童の正反応が下がるということはなかっ た(Tab1e30参照)。
丁汕1830標的行動③と⑤における2班のポイント獲得状況
標的行動3「委員会活動」
セッション 1
2 児童4 0 孤児童5 0 対象児 X
班ポイント
※Oは正反応、xは謀反応を示す。
※◎は、班ポイ:ノドを獲得したことを示す。
※白黒反転箇所は、介入期を示す。
※Fはフォローアップを示す。
このことは、いくら自分たちが頑張っても対象児のために自分たちが班ポイント を獲得できないので、努力することをやめるという状況に陥らなかったことを示して いる。このことから、2班の班ポイントが獲得できない状況は続いたが、対象児以外 の2人の児童は対象児への支援を続け(金曜日の朝、対象児が標的行動③委員会活 動の仕事を行うよう声掛けを行っている様子が学級担任によって観察されている)、
対象児の正反応を誘発したと推測できる。なお、その2人の児童は自由記述におい てグループ編成に対する否定的なコメントを残していたが、反対に「発表は毎日みん なができるのが当たり前になったのでとてもうれしかったです」 「この班での活動は 楽しかった」と肯定的なコメントも残していた。また、対象児が初めて標的行動⑤「
発表」に正反応を示したとき、クラス全員から拍手がわき起こり、その日作文の実施 日であったためほとんどの児童が、 「全員が発表できたこと」を題材としてその感動
が書きつづられていた。そして、その後も全ての標的行動の高い正反応率が維持した これらのことから、相互依存型集団随伴性は効果を発揮することができれば、グルー プ編成の不満も低減され、適応行動も維持できるということが示唆された。
なお、事後面接において学級担任は、 「。今後実施するには、グループ編成がキー になると思う」と、グループ編成の重要性をコメントしていた。集団随伴性の長所と
して、Heron(1987)は、 「集団随伴性手続きは、仲間が行動変容の媒介人として行 動するための機会を設定することができ、仲間の影響や仲間モニタリングを利用する ために使用することができる」と報告している。その利点を生かすためにも、本モデ ルで対象児以外の2人の児童が対象児の行動変容の媒介人としての役割を果たした ように、仲間が行動変容の媒介人やモデルプロンプトの役割を果たすために必要な環 境設定条件の検証が望まれる。
第3の課題は、汎用性の課題である。文部科学省(2009b)は、 「平成21年度学 校基本調査速報」において、1学級当たりの児童数は(平均)25.4人と報告してい
るが、本モデルの対象学級の児童数は9人であった。したがって、汎用性を高める ためには、9人の小規模学級で効果を発揮した本モデルが、中規模学級や、大規模学 級において効果を得ることができるのか検証していくことが必要であろう。今後は、
それらを含め発達障害児が複数在籍する学級や、異学年、異学校種などにおいても本 モデルの有効性を検討していくことが切要である。そして、人数が多く人問関係もよ り配慮が必要となる大規模学級での実践や、発達障害児が複数在籍する学級などにお ける実践からもモデルを作成し、それと本モデルを比較検討できれば、より汎用的な 支援モデルを明らかにすることができるであろう。
ところで、涌井(2006)は、今後も、介入者が犯してはならない集団随伴性の使 用上の留意点を文章化し、より明確にしていくことが肝要であると報告していが、上 記の本研究の課題をふまえて、集団随伴性の使用上の留意点として以下の2つを提
案レたい。
①複数の標的行動を対象とする場合、各標的行動の負荷の強さと、対象者の遂行能力 を事前にアセスメントし、各標的行動間の行動負荷に差が出ないように調整しておく 配慮が必要である。
②グループ全員の遂行成績を強化基準とする場合、個人の遂行成績を定期的にチェッ クしておくことは、グループ編成に対する対象者の不満を低減する上で必要である。
第7節 今後の特別支援教育への示唆
本研究において、発達障害児を含む通常学級集団に相互依存型集団随伴性を適用し た結果、発達障害児を含む通常学級集団の適応行動を増加させることに成功した。こ のことは、通常学級における一つの発達障害児支援方略としての相互依存型集団随伴 性の有効性を示唆するものであった。最後に、今後の特別支援教育への示唆として、
相互依存型集団随伴性のもつ評価すべき実用的価値である以下の3点を述べ本研究の 結びとする。
1点目は、目的とする場面においての直接指導が可能な点である。本研究では、取 り出し指導を行うのではなく、目的とする場面で直接指導を行い対象児を含めた学級 集団の行動変容に成功した。つまりこのことは、目的とする場面以外での指導を行う
ときに必要となる個別支援の時間や、その訓練場面で生起するようになった標的行動 を目的とする場面において生起させるための般化計画などの労力を削減したことにな る。冒頭に述べたように、通常学級における個別支援の実現性は低いこと.からも、集 団に強化随伴関係を構築することによって、目的とする場面において発達障害児を直 接支援することができる相互依存型集団随伴性の実用的価値は高いといえるであろう。
なぜならば、それによって般化促進効果も得られ、自然な強化随伴性へのスムーズな 移行も期待できるからである。
2点目は、日々の授業や、特別活動、行事など、多様な教育場面での適用が可能な 点である。大久保・高橋・井上(2006)は、小学校4年生の宿題提出行動を標的に相 互依存型集団随伴性の適用を試みた結果、宿題提出行動が増加したことを報告してい る。その他にも、単語のつづりの正確さを高め(Lovitt,Guppy,&B1attner,1969)
たり、教室における妨害行動を低減させ(Barrish,Saunders,&Wo1f,1969)たり、
運動場における問題行動の低減させ(Lewin,Powers,Ke1k,&Newc㎝er,2002)たりと、
様々な教育場面での、集団随伴性の適用事例が報告されている。通常学級は一人の学 級担任が40名弱の児童への集団一斉指導・授業を行う場面が多く存在する。したが