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第4章  考察

第1節 標的行動の推移

 本研究では、相互依存型集団随伴性適用モデルを提示し、本モデルが発達障害児 を含む通常学級集団の適応行動に及ぼす効果について検討した。その結果、発達障害 児を含む通常学級集団の適応行動として定めた5つの標的行動の正反応率が上昇し、

本モデルの効果が示された。各標的行動の推移の結果をもとに以下に考察を述べる。

 標的行動①②④は、本モデルを適用した結果、介入直後に正反応率が上昇した。

このことから、本モデルが標的行動①②④における発達障害児を含む通常学級集団の 適応行動増加に効果があることが示唆された。

 標的行動③は、結果的に介入2によって、正反応率の平均が学級全体で92%、対 象で50%に上昇し、本モデルが標中行動③における発達障害児を含む通常学級集団 の適応行動増加に一応の効果があることが示された。しかし、同時期に介入を行った 標的行動①②は介入1によって効果が得られたのに対して、標的行動③は介入1によ

って、学級全体ではべ一スライン期平均60%であった正反応率が、介入期に67%に 上昇したにすぎず、対象児の正反応率はべ一スラインと同じO%と、ほとんど効果を 得られなかったことは課題であった。そこで、その要因を追求するために、同時期に 介入牢開始した標的行動③と、標的行動①②の比較分析を行ったところ、強化を随伴

させた頻度が標的行動③が1週間に1回なのに対して標的行動①②は1週間に5回と、

強化頻度に大きな差があることが分かった。つまり、標的行動③よりも標的行動①② の方がより頻繁に強化されていたことが明らかとなった。さらに、標的行動③と標的 行動②反応努力についても、対象児の場合、標的行動③が「指定時間(AM8;00)まで

に、一人で2つの仕事を行う」に対して、標的行動②は「時間指定もなく、その日の 内に、同じ係に所属するもう一人の児童と協力して配布物を配る」と反応努力に大き な差があった。つまり、標的行動③よりも標的行動②の方が少ない反応努力で強化さ れる行動であることが明らかとなった。Friman&Po1i㎎(1995)によって、人が何

らかの行動をしようとする際には、より頻繁に強化され、より大きな強化子を得、即 時に強化を受け、少ない反応度力で強化される行動を選ぶということが明らかにされ ていることからも、標的行動①②よりも多くの反応努力を必要とし、強化頻度の低い 標的行動③は、介入1によって効果が得られなかったのではないかと推測できる。こ れらのことから、複数の標的行動に同時に相互依存型集団随伴性を適用して支援に当 たる場合、各標的行動間で強化頻度や、反応努力に差が出ないよう配慮することが必 要であるといえよう。

 なお、標的行動③は、対象児のみ1学期から一度も自発したことのない行動であ った。したがって対象児は、仕事遂行行動が生起しておらず、強化を受けていなかっ た。そこで、介入2として視覚・言語プロンプトを提示し、対象児に好子出現による 強化を経験させた結果、対象児の正反応率が上昇した。このことから、対象児に刺激 性制御が成立したと考えられる。同時に「刺激性制御が成立すれば標的行動③の正反 応率は、増加するであろう」という仮説(Tab1e22:P50参照)は支持されたといえ

るであろう。

 最終的に、標的行動③は介入2によって効果を得ることができたが、それは原因 を分析し、仮説を立てて対策を行った結果である。介入の効果が得られない場合でも、

本モデルが示すように、原因としての対策を立案し、原因の可能性が高いものから仮 説を立てて検証を行った手続き(Table22:P50参照)が適切であったといえるであ

ろう。

 標的行動④は、17行の作文用紙に対して、児童の文書量の平均は、介入期のセッ

ション4「7.3行」、5「7.8行」、6「7.9行」、7「9,7行」、8「6.4行」と、平均 が伸びることはなかった。これは、「10分間に作文を5行以上書く」という目標設 定を変更しなかったためであると考えられる。従事行動と課題の遂行レベルに関して、一 Wolf,Heron,and Goddard(2000)は、従事行動に対して強化を随伴させた結果、課 題の遂行レベル(本研究の場合は、文書表現力)にはほとんど影響を及ぼさなかった

ことを報告しているが、本モデルにおいても同様の結果となった。このことは、学級 担任が面接調査で、技術的な指導は行っていないので表現力などの技術的な向上はな かったと思うとコメントしていることからもうかがえる。これらのことから、児童は 5行書けば強化されるため、それ以上書く必要性を感じていなかったのかもしれない。

児童のスキルの有無などの遂行能力を事前にアセスメントし、目標を5行から6行、

7行へと変更していけば文書量の平均を伸ばすことも可能であったと推測できる。さ らに、目標を調整することによって文書量、表現力などの技術的な面での遂行レベル の向上も期待できると考えられる。

 標的行動⑤は、結果的に介入2によって、正反応率が学級全体では平均97%、対 象児は82%に上昇したことから、本モデルが標的行動⑤における発達障害児を含む 通常学級集団の適応行動増加に効果があることが示唆された。また、標的行動⑤は、

標的行動③同様に対象児のみ!学期から一度も自発したことのない行動であったが、

介入3以降正反応率が上昇し維持したことから標的行動③と同様に、ここでも相互依 存型集団随伴性が、発達障害児の極めて生起頻度の低い適応行動増加にも効果がある

ことが示された。

 また、標的行動⑤は、介入1と介入2を行っても対象児のみ効果が得られなかっ たため、標的行動③同様の手続きで仮説を立てて介入3を行った。その結果、1学期 から一度も自発が確認されていなかった「今月のニュースを発表する」という行動が

自発したことから、対象児の行動の負荷軽減とルール理解が成立したことがうかがえ る(Tab1e23:P53参照)。このことは、仮説の肯定を意味し、本モデルの対策が適 切であったことを証明するものである。

 標的行動③⑤のように、たとえ最初の介入で効果が得られなくても、応用行動分 析学にもとづいた原因分析を行い、仮説を立てて対策を行うといった本モデルが示す

方略によって効果を得られたことは、本モデルの有効性を示唆するものである。しか しながら、面接調査で学級担任が多忙極まる教育現場では集団随伴性、応用行動分析 学を学習、理解するという点において、負担が大きくなるとコメントしていたことか ら、応用行動分析学にもとづいた原因分析にはある程度の知識と専門性が必要となる ことが分かる。今回は、学級担任と筆者で原因分析を行ったが、学級担任一人で行う 場合は、専門家のアドバイスが必要となるかもしれない。ただ、本事例で明らかにな

ったように、強化頻度や、反応努力に差が出ないよう配慮すれば、標的行動①②④の ような結果を得られる可能性は高まるであろう。また、極めて生起頻度の低い標的行 動などを対象とする場合には、複数ではなく1つ.の標的行動に対して介入を行うなど 学級担任の実行条件も視野に入れた対応が望まれる。

 本研究の最後に実施した強化操作のないフォローアップ期では、標的行動③以外 で発達障害児を含む全児童が1OO%の正反応率を示した。介入の最終的な目標は、自 然な環境下で介入がなくても適応行動が持続することである。したがって、相互依存 型集団随伴性による強化操作のない状況においても維持がみられるということは、臨 床的に大変意義深いことであろう。特に、本モデルによって行動が初めて自発した標 的行動③については、対象児の所属する委員会を担当する養護教諭から対象児が自主 的に活動できるようになったとのコメントを得ている。それまでは、委員会のメンバ ー全員で作業を行うときでも、一人でポーツとしていることが多かった対象児が、進 んで仕事を手伝うようになり、標的行動③を遂行した後に「できました」と報告する ようになったとのことであった。このことから1班ポイントによっ下強化されていた 強化随伴関係が、養護教諭や保健委員会のメンバーによる賞賛によって強化される強 化随伴関係へと移行し、般化が促進されたと考えられる。

 ただし、フォローアップを行ったのは3週間後の1回だけであった。その理由は、

本研究は3学期に実施したためその後学年が変わり÷係活動や委員会活動などの組み 替えが行われるため、変数の混交が発生し条件統制ができないと判断したからであっ た。今後は実施時期を考慮して、維持についても更に詳しく検討していく必要がある であろう。

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