〔表一3〕教科書掲載の資料の件数と絵画史料の割合(近世)
東京書籍 大阪書籍 教育出版
絵画史料
z像画
ハ 真
│・表・グラフ
以上の分析結果から,教科書に掲載されている各種資料の中に占める 絵画史料の割合は,いずれの時代においても,かなり高いことが明らか になった。特に,近世においては,全資料のうちの半数以上を絵画史料 が占めており,中世においても半数近くを占めるに至っている。また,
原始・古代や近現代では,中世や近世と比較すると,絵画史料の割合が 低くなってはいるが,これは,原始・古代では,現代にまで伝来した絵 画史料の絶対数自体が少ないことや,相対的に考古学による発掘史料の 重要度が高いこと,近現代では,歴史事象に関する記録写真が存在し,
それらが絵画史料に代わって利用されている場合が多いことによるもの であり,必ずしも,それらの時代において,絵画史料が軽視されている ことを示すわけではない。
このように,絵画史料は,歴史的分野の教科書において,中世。近世 の部分を中心に,資料として非常に重用されているのである。
2 絵画史料の内容と扱い
前項で,絵画史料が教科書においてかなり重用されていることを見て きたが,本項では,具体的にはどんな絵画史料が掲載されているのかを 見ていくとともに,掲載のされ方に問題点はないのか,という観点から 若干の分析を行うことにする。
掲載のされ方の問題点については,さまざまな角度(例えば,多様な 解釈を導き出すような問いを添えて提示しているか,読解作業に充分に 耐え得るようなサイズ・色調で印刷されているか,など)からの分析が 可能であろうが,ここでは,各々の絵画史料の史料的価値の相違(絵画 の制作年代と,そこに描かれている歴史事象の生起した年代とが近いか
どうか)を判断する際の重要な材料となると考えられる,その絵画史料 の制作者・(推定)制作年代・原史料名などについての情報を添えての 掲載になっているか否かという点に分析の観点を絞ることにした。絵画 史料の読解をしょうとする際には,まず,対象とする絵画史料の史料的 価値を適確に把握し,その史料から読み取れる情報の性格を正しく認識 しておくことが,意味のある読解作業をするための最低限の前提条件に なると考えたことが,その第一の理由である。さらには,問いの添付の 有無やサイズ・色調の適否についての分析によっても,問題点の抽出は 可能であろうが,本文の記述を内容の中心に位置づけた,現状の教科書 観の下では,むしろ,それらの点をめぐる問題点が抽出されるのは当然 であり,ここで分析する意味は薄いζ考えたことが,その第二の理由で ある。後に示す分析結果一覧表で,○の記号を付された史料は,制作者 や(推定)制作年代,あるいは,それらのことについて知るための参考 になると思われる,原史料名や現在の所蔵書名などについての情報と共 に掲載されていることを示しており,△の記号を付された史料は,掲載 されてはいるが,前記のような情報を伴っていないことを示している。
史料名については,分析結果一覧表では,原則として東京書籍発行の 教科書で使用されているものを記載することにし,東京書籍の教科書に 掲載されていない史料については,その史料を掲載している文献の中で 表の最も左寄りの位置に示されているものにおいて使用されている名称
を記すことにした。
なお,本項では,子どもたちの目に触れる可能性を有する絵画史料の 具体的な事例をより広い視野に立って収集するために,東京書籍および 大阪書籍発行の中学校用の2つの歴史資料集、についても,分析を試みる
ことにした(教育出版からは独自の歴史資料集は発行されていない)。
〔表一5〕主な教科書・資料集に掲載されている絵画史料とその扱われ方 晦1
時 代 絵 画 史 料 名
i )内は,情報が添えられている場合のその内容
教科書 資料集
東1辱 大書 教出 .束書 人}1}
アルタミラ △
ラスコーの洞くつにえがいた壁画(今から2万年ほど前) ○
牛の放牧(アルジェリア タッシリ高原の壁画) ○ ○ ○
タッシリ・ナジエールの収穫のようすをえがいた岸壁両 ○
農耕にはげむエジプト人 △ 9
古代エジプトの農作業 △
収穫物を支配者におさめる人々(紀元前25〜24世紀ごろ) ○
麦の収穫 △
王とほりょ(紀元前2600年ごろ) △ ○
重装歩兵戦士(紀元前7世紀) ○
アレクサンドロスの東方遠征 △
奴隷剣闘士 △
十二架上のイエス. △ i
ローマの役人の乎で処刑されたイエス △
十字架にかけられたイエス △
孔子 △ △
銅鐸(伝香川県出土,弥生時代) ○ △
丁丁にえがかれた住居(奈良県佐味田宝塚古墳出二1:二) ○
唐の都長安をおとずれた諸外国の人々 △
旅姿の玄i隻 △
聖徳太子の画像(宮内庁蔵) ○ △
天寿国繍帳(飛鳥時代) ○
高松塚古墳壁画(飛鳥時代) ○ ○
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○中国の墓の壁画 △ △
遣唐使船 △
遭難する鑑真一行(束毎絵伝) ○
ツルファンの樹下美人図(MOA美術館蔵,8一間) ○ ○
il三倉院の樹下美人図
O
鳥毛立女尿風(正倉院に所蔵) ○
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薬師寺の吉祥天画像(奈良時代)
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荘園の開墾にあたる農民(石山寺縁起絵巻,石lil寺蔵) ○
蝦夷と戦う朝廷軍(清水寺縁起絵巻)
O
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N血2
絵 画 史 料 名
i )内は,情報が添えられている場合のその内容
教科書 資料集
時 代
東書 大書 教出 東山 大書
最澄 △
空海 △
高野山の不動明王 △
宋の町のようす(大和文華館蔵) ○
けまりに打ち興じる貴族たち(年中行事絵巻,田中氏蔵) ○
菅原道真の怨零(北野天神縁起) ○
天皇をもてなす貴族(駒競行幸絵巻,久保惣記念美術館蔵) ○
O
女房装束(大和文華館蔵) ○ △
束帯(五島美術館蔵) ○
絵巻物(源氏物語絵巻) ○ ○
阿弥陀来迎図(知恩院蔵) ○ △
からすきを使った荒らおこし(松崎天神縁起,防府天満宮蔵)
O
国司の行列(因幡堂縁起,東京国立博物館蔵) ○ ○
O
武士の屋敷の門萌の様子(粉河寺縁起絵巻,粉河寺蔵,12世紀) ○ ○ ○ ○
地方豪族の屋敷(粉河寺縁起絵巻) ○
二二門の乱 △
後三年の役 △
僧兵(真如堂縁起絵巻,真正極楽寺蔵) ○ △
僧兵(一遍上人絵伝〉 ○
天皇を讐幽する武士(平治物語絵巻) ○
荘園のようす(紀σ}国舟条田荘,神護寺蔵,12世紀すえ) △ △
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平治の乱(平治物語絵巻,鎌倉時代)
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△O O
平氏の都落ち(春日権現霊験記,宮内庁蔵) ○ △
壇ノ浦の戦い △
源頼朝(伝藤原隆信築,神護寺蔵) ○ ○ ○ △
鎌倉の町なみ(一・遍上人絵伝,歓喜光寺蔵) ○
弓の手入れ(男金三郎絵詞,国立歴史民俗博物館蔵) ○ △ △
弓矢の訓練(男金三郎絵詞,東京国立博物館蔵) ○
O
△都の警備に向かう東国の武士(男金三郎絵詞) ○ △
武士の屋敷(一遍上人絵伝,清浄光寺ほか蔵) ρ ○
武士の屋敷の女性たち △
荘園の分割(伯者国東郷荘の絵図,柳沢氏蔵)
O
△晦3 絵 画 史 料 私
i )内は,情報が添えられている場合のその内容
教科;1} 資料集
上書 大書 教出 回書 大書
琵琶法師(慕帰絵詞,西本願寺蔵) ○ ○ △
念仏をすすめる一遍(一遍上人絵低,東京国立博物館田) ○
踊り念仏(一遍上山絵伝,東京国立博物館蔵) ○ ○ ○
.二二像(西本願寺蔵,二親三生前作) ○ △
二二 △
1二二 △ △,
法然 △
一遍 △
道元 △
鎌倉の出入日←一遍上人絵伝,13世紀末) ○
市の様子(一遍上入絵伝,清浄光寺ほか蔵,鎌倉時代) ○ ○ ○
O
庶民の台所(松崎天神縁起,防府天満宮歴史二二)
O
とうふ売り(七十一番職人歌合,東京国立博物館蔵) ○
そうめん作り(.し一トー番職人歌合,東京国立博物館蔵) ○
おけ作り(三十二番職人歌合,天理大学蔵) ○
建築の作業現場で働く人々 i春日権現験記絵,宮内庁蔵,鎌倉時代) ○ ○
モンゴルの騎兵 △
チンギス=ハン △
北条時宗 △
モンゴル軍との戦い(二二襲来絵詞,宮内庁蔵) ○ ○ ○ ○
石塁を守る武士(蒙古襲来絵詞). ○ 〆
元三へ切りこむ武士(二二襲来絵詞) ○
文永の役の恩賞を求める竹崎季長 △
高利貸から金を借りる御家人の妻(山王霊験記絵巻,和泉市蔵) ○ ○
悪党(春日権現霊験記絵詞,東京国立博物館蔵)
O
後醍醐天皇 △
南北朝時代の騎馬武者の像(守屋氏蔵) ○
O
戦乱のなかをにげまどう人々(秋夜長物話絵巻) ○ ○ △
室町幕府(町田家本洛中洛外図屏風,東京国立博物飴蔵,室町時代) ○ ○
花の御所 △
足利義満像 △
倭憲(倭冠図巻,東京大学史料編纂所蔵)
O
○O
M4
絵 画 史 料 名
i )内は,情報が添えられている場合のその内容
教科婁 資料集
二二 大書 教出 東書 大書
遣明船(真如堂縁起絵巻,真正極楽寺蔵) ○ △ ○
栄えていたころをしのばせる琉球王の首山城(沖縄県立博物館蔵) ○ 首里の王城(琉球国首里廷旧城之図,沖縄県立博物館蔵) ○
牛を使ったしろかき(大山寺縁起絵巻,東京大学史料編纂所蔵) ○ ○ ○
二二(たはらかさね耕作絵巻,東京大学史料編纂所蔵) ○
水車の利用(石由寺縁起絵巻) △ ○
本びき二人(三十二番職人歌合,天理大学蔵)
O
○大原女(七十一番職人歌合,東京国立博物館蔵) ○
桶の使用の始まり △
鍛冶師(職人尽絵) ○
鐙師(職人尽絵) ○
機織師織人尽絵) ○
蒔絵師(職人尽絵) ○
馬借(石山寺縁起絵巻) △ △
O
O
振り売り商人 △
足軽の活躍(真如堂縁起絵巻,真正極楽寺蔵) ○ △
応仁の乱(真如堂縁起絵巻) ○
一向一揆にたちあがる信徒たち(絵本拾遺信長記) ○
雪舟がえがいた二二山水図(東京国立博物館蔵) ○ ○
山水長巻(雪舟筆〉 ○
天橋立図(雪舟華)
O
京都の町並み(洛中洛外図屏風非杉氏蔵,16世紀中ごろ) ○
祇園祭り(狩野永徳築,洛巾洛外図屏風,上杉三蔵) ○
O O
△能を楽しむ人々(洛中洛外図屏風,東京国立博物館蔵,16世紀初め) ○ ○
連歌の会 △
お伽草子(ねずみ草子) ○
川のほとりで紅葉を楽しむ人々(観楓図,東京国立博物館蔵) ○
一服一銭 △
インド洋を行くイスラム商人の貿易船 △
16世紀の天文台
O
領主の城と農民(15世紀) ○ △ △