保険金不払い問題に端を発して、保険契約者の保険全般に対する意識が高まり、保険会社あるいは代理 店に対する疑問が高まり、また評価がより正しく厳格になってきたものと思われる。
苦情・相談の件数は、保険金に関するものが大半を占めるが、契約募集あるいは契約管理保全に関する ものもあり、やはり件数は増加している。
(注)金融庁金融サービス利用者相談室のデータにおいては、約75%が保険金支払いに関するものであ る。また、損保協会そんがい保険相談室のデータでは、86. 7%が保険金に関するものである。
したがって、損害保険代理店は、一層の資質向上を図る必要がある。
2.損害保険代理店に関する主なる苦情
⑴ 損保協会そんがいほけん相談室受付事例
損保協会そんがいほけん相談室で受付けた損害保険代理店に関する主な苦情の項目は以下の通り。損 保各社においても、ほぼ同様の傾向が見られる。
契約者ニーズに反する契約の締結 保険料の計算誤り
説明不足・誤った説明 接客態度・不適切な応対 処理遅延
不十分な顧客管理 不適切な募集
勝手契約・印鑑の不適正使用
⑵ 代理店賠償責任保険の事故原因分析
○ 原因項目別件数割合
重要事項の説明誤り・説明不足が全体の52%と圧倒的に高い。特に自動車保険における被保険者限 定特約、年齢条件設定に係るトラブルと新種保険における保険内容理解不足による特約付保誤り、商 品・補償内容の説明不足を原因とした事故が散見される。
次に、「異動手続き」に係る事故も全体の25%と高い。いずれの要因もお客様の意向を十分に確認 しないままに、保険契約締結手続き・異動手続きを取った、もしくは、手続きを取らずに放置したこ とによりトラブル発生に至ったものである。
(注)重要事項の説明誤り・説明不足140件、異動手続き66件、その他61件、合計267件。
○ 保険種目別件数割合
自動車保険62%、新種保険20%、火災保険10%となっており、自動車保険が圧倒的に多い。
(注)自動車保険165件、新種保険53件、火災保険28件、その他21件、合計267件。
⑶ 銀行窓販における保険契約者等の苦情
本会は、銀行窓販の第3次解禁以降、弊害防止措置等の遵守状況について、モニタリングを行った。
抱き合せ販売65件、圧力募集12件、その他22件と依然として、保険契約者等の利益を侵害するケース が見られた。保険契約者は保険会社および扱い代理店に関して、銀行との融資等の取引関係とは無関係 に自由に選択できることを希望している。
⑷ 代理店チャネル別の苦情
損害保険各社は代理店チャネル別の苦情データを公表していない。ある損害保険会社のコメントによ れば、必ずしもプロ代理店に対する苦情が少ないとはいえない状況である。
(注)A社:プロ代理店に対する苦情件数はチャネル収保ウエイトと同等である。
3.損害保険会社の「お客様の声」への対応
損害保険大手5社は、いわゆる「信頼回復活動」の一環で、「お客様の声」への対応を強化しており、専 門の組織を新設・強化、苦情・相談受付状況の公開、経営品質改善への迅速な連動、などを実施している。
<専門の組織の新設・強化>
あいおい社:平成19年7月 「業務品質管理部」を新設。
損保ジャパン社:平成18年 「お客さま相談室」を設置。
東京海上日動社:平成19年7月 「経営企画部お客様の声室」を「お客様の声部」に昇格。
日本興亜損保社:平成19年6月 「品質管理部」を新設。「お客様相談室」を「お客様サポート室」に改 称。
三井住友海上社:平成18年9月 「お客さまの声担当部」新設。
代理店が保険契約者等から直接受付ける苦情について、損保各社がどのように集約するかは、まだ明 確でなく、今後の課題である。
Ⅱ.損害保険会社の専業代理店政策
損害保険大手5社は、今日の専業代理店の事業環境を、概ね次の通り認識している。
人口減少による経済成長の制約 地域間格差の顕在化
情報化社会の進展
保険契約者の保険に対する信頼の低下 適合性原則対応などの代理店業務の変化
競争環境の激化(銀行窓販全面解禁、郵便局会社の損害保険販売、通販のシェア拡大、来店型代理店の増大)
利用者保護、利用者利便向上の行政政策
以上の事業環境の中で、各社の専業代理店政策の主なものは、以下の通りとなる。
1.品質と契約量をいずれも具備する「中核」代理店育成の推進
各社のいわば「親衛隊」とも言うべき、専属を中心として質量とも兼ね備えた専業代理店群を各社の
「中核」代理店として位置付け、育成を推進している。
⑴ 業務品質の向上
業務品質基準を明確化しており、たとえば、「安心品質」、「保険の基本サイクル」、「IOIプロスタ ンダード」という名称としている。
業務品質基準達成の推進策として、代理店認定制度および代理店手数料体系の中に業務品質基準項 目を連動させる制度としている。
⑵ 代理店の大型化
永続的な経営により、保険契約者等に安定したサービスを提供するために、一定の代理店規模が必 要との判断から、大型化を推進している。
大型化推進策として、やはり、代理店認定制度、代理店手数料体系に収入保険料規模の要素を連動 させている。
(注)大型プロ代理店組織の設置例
「J−SA」、「MSA」、「全国中核代理店連合会」、「全国プロの会」、「ロイヤルステイタスクラブ」
⑶ 経営サポート
損害保険会社の教育関連会社等による経営診断、情報提供サービスを充実させている。
2.業務品質未達成層代理店への対応
全代理店の業務品質向上を図るものの、一定レベルの品質を維持できない代理店層も存在する。この層 への対応は、引き続き代理店教育を行いつつ、代理店支援モデルの活用(契約手続きの支援を受けるモデ ル、自ら契約手続きを行うモデル)と「中核」代理店への集約・解約の対策をとっている。
3.直営代理店の設置
「中核」代理店の一形態として、損害保険会社は直営の代理店を設置し、拡大しつつある。出資はもち ろんであるが、社員を社長等の幹部として出向させて運営している。その目的は、出向社員の育成、代理 店経営ノウハウの吸収、後継者不在の高齢代理店対策、業務品質未達成層代理店の集約化・解約の受け皿 である。「中核」代理店が存在しない地域の補完機能を果たしている。形態としては、各地独立会社型、
全国型(支店展開)のバリエーションがある。
(注)あいおい社・㈱あいおいサポートBOX、損保ジャパン社・㈱ジャパン保険サービス、東京海上日 動社・パートナーズ代理店、三井住友海上社・MS保険サービス○○社。
4.代理店の新設、代理店の乗合方針
研修生採用、有力他社プロ代理店への乗合は積極的に進めている。
一方、自社研修生OB代理店への他社乗合については、原則専属のままとする説得をしているが、個別 問題であり、真摯に相談をすると表明している。
5.専業代理店向け商品・システム
特定の保険会社にて商品または支援システムが開発されているが、一般的な流れにはなっていない。
(注)あいおい社・総合販売を支援できる商品・システム 東海日動社・超保険、超ビジネス保険
三井住友海上・ビジネスピカイチ、プチ取信
Ⅲ.損害保険代理店の現状と問題点(代理店の悩み)
代理店からみた、損害保険代理店の現状と問題点(代理店の悩み)は以下の通りである。
1 . 保険契約者の利益保護の観点…保険契約者の要望と損害保険会社の方針に齟齬があり、代理店が間に入 り、困惑している事項
⑴ 保険契約者の代弁者たる代理店の意見・要望が保険会社の施策に反映されない。
損害保険代理店は、保険契約者と日々接触する中で、ご要望・意見を直接に聞き、自ら、その要望・
意見を満足させるよう努力している。また、保険契約者等の代弁者として、損保会社に伝えている。し かしながら、必ずしも、要望・意見が損害保険会社の施策に反映している状況にはなく、不満を持って
いる代理店が多い。
具体例は次の通り。
○ 商品関連
<矛盾点のある商品内容・料率規定>
・ 自動車保険で、主たる運転手(記名被保険者)と特約上の被保険者が異なることによる分かりにくさ。
・火災保険における家財の一律評価の問題点
<商品の改定、販売中止における混乱>
・急な商品販売停止による混乱
・販売停止通達が遅く、引受後に解約を求められるケース
・自動車保険の等級プロテクト特約、引受禁止後にもホームページに表示
・改定内容のみの説明で、改定の背景・趣旨の説明がないことによる混乱
・改定についての社員の理解不足
<商品改定の要望の未実現>
・家計地震保険の改定要望:現行の半損と一部損の場合の中間の支払いを創設してもらいたい。
○ 契約手続き
・ 意向確認書面・契約確認書面の改定要望の未実現(保険申込書一体型、乗合代理店用の各社共通 フォーム、項目の簡素化等)
・ 保険契約者の意向を無視した保険料払込方法への誘導方針(現金払いから口座振替・クレジットカー ド払い等の「キャッシュレス」への強引な誘導)
・ 保険契約者の意向を無視した早期更改方針(保険契約者は最も適切なタイミング(早すぎもせず、遅 すぎもせず)での更改を要望している)
・ 保険契約者の要望または代理店の独自性を無視した会社からの満期案内送付(保険契約者は扱代理店 に窓口一本化を強く望んでいる。特に複数契約のある契約者は強く望んでいる。)
⑵ 独禁法上の不公正な取引により保険契約者が不利益を受けている。
以下のジャンルは、法令違反であるが、事実が立証困難等の理由により、法令違反にできないケース が多い。そのため、保険契約者の不利益を防止できず、結果として専業代理店の不満がたまり、活力が 削がれている。
○ 銀行窓販における圧力販売・抱き合せ販売
保険契約者は専業代理店との契約を望んでいるにもかかわらず、銀行の有形・無形の圧力により銀行 または銀行の関連代理店を代理店となるケースが散見される。法令違反であるが、保険契約者が銀行 等との取引への影響を畏れ、固有名詞の公開を拒み、法令違反にできないケースが圧倒的に多い。
○ 自動車ディーラー代理店による抱き合せ販売
自動車ディーラーが自動車販売時に自動車保険付保と自動車販売代金の値引きをセットにしている ケースがある。これも法令違反であるが、事実認定時において、自動車保険ディーラーは自動車保険 とは無関係に値引きをしているだけと主張し、水掛け論になるケースがほとんどである。
○ 企業代理店による駐車場代金免除付きの団体扱い自動車保険販売
マイカー通勤をしている従業員が100%子会社代理店扱いで自動車保険に加入した場合に、企業が 駐車場代金を免除するケースがある。専業代理店から見た場合、明らかに、「特別利益の供与」に該 当すると考えているが、企業あるいは保険会社によっては、「特別利益の供与」に該当しないとして、