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<ぴあフィルムフェスティバル>

ドキュメント内 vol4.qxd (ページ 66-69)

赤城聡(あかぎ・さとし)(注-58)

今、なぜ映画を撮るのかを 真摯に考えてほしい

「映画の新しい才能の発掘と育成」をテーマに、インディペンデント映画 のおもしろさを広く伝えるため、1977年にスタートした「ぴあフィルムフ ェスティバル(略称「PFF」)」。同映画祭のメインプログラムとして行って いる自主製作映画のコンペティション「PFFアワード」からは、多くの有能 な映画監督が輩出されており、日本映画の登竜門として確固とした地位を 築いている。このPFFアワードではどのような作品が評価されるのか、PFF プロデューサーである赤城聡氏にお話をうかがった。

PFFアワードの審査過程

PFFアワードは、ジャンル、フォーマット、長さといったことから、応募 者の年齢、性別、国籍、学歴にいたるまで、いっさい制限のないコンペテ ィションです。

審査は、1次審査、2次審査、最終審査という段階を経て行われます。1次 審査から入選作品の決定までは、約5ヶ月間もの期間をかけています。

【1次審査】

1次審査は、例年10〜15名の「予備審査員」によって行われます。予備審 査員は、映画監督、映画ライター、劇場関係者など、様々な形で映画や映 像に関わっていらっしゃる方によって構成されています。

審査にあたっては、1作品あたり、最低3名以上の予備審査員が見るよう にしています。全作品に目を通していただいたうえで「予備審査会」を開 き、そこで議論のうえ、選考していくわけです。

この段階では、何点の作品を残すかといったことは決めていません。「気

2-実例からピッチのポイントを考える

〜実写もの(デジタル含む)作品で応募する

<ぴあフィルムフェスティバル>

(注-58)赤城聡氏プロフィール:1965年、

福島県出身。立教大学卒業後、株式会社ファ ンハウス(現:BMGファンハウス)にて A&R制作、宣伝、販売促進などの業務に従 事。96年、株式会社レントラックジャパン 入社、洋画買付、邦画製作、インディーズ・

ムービー・フェスティバル開催・運営などに たずさわり、00年、有限会社フラミンゴを 設立しプロデューサーとして独立。01年か らはバンタン映画映像学院にて演出、脚本、

制作などの講師を務め、現在、ぴあフィルム フェスティバル プロデューサーとして活動 中。また、05年にはデジタルハリウッド大 学にて教授に就任する。主なプロデュース作 品は、『忘れられぬ人々』(篠崎誠監督)、『空 の穴』(熊切和嘉監督)など

になった作品は残そう」というのが、基本姿勢。多数決ではなく、審査員 の誰か一人でも強く残したいという作品があれば、それを残すようにして います。

事務局から審査員の方に対して、選考基準については何も要求していま せん。自分が良いと思ったものを選んでいただくようにしているだけです。

とは言え、人の感性や方向性、評価の基準はそれぞれ違うもの。全員一致 するなんてことはありえません。そういう意味でも、1作品あたり最低でも 3名の方に見ていただくようにしています。2005年度は、ここで50時間分の 作品が残りました。

【2次審査】

ここでは、1次審査に残った全ての作品を、1次審査の時と同じ「予備審 査員」全員が見ることになります。

全員が全作品を見たうえで、また議論を行います。ここでも合議制はと りません。選考基準を設けることなく、議論で入選作品を決めるので、選 考作品に傾向などはありません。

昨年の2004年は、この段階で、およそ14時間分の作品が「入選作品」と して残りました。

【最終審査】

最終審査員は、毎年5人。これまでの「予備審査員」とは別にお願いしま す。2004年は、若松孝ニ氏(映画監督)、みうらじゅん氏(イラストレータ ー・漫画家)、緒川たまき氏(女優)、犬童一心氏(映画監督)、市山尚三氏

(映画プロデューサー)の5人にお願いしました。

最終審査で、グランプリ1作品、準グランプリ1作品、審査員特別賞3作品 の計5作品が選ばれます。また、それとは別に、PFFパートナーズの各企業 により、企画賞(TBS賞)、音楽賞(TOKYO FM賞)、技術賞(IMAGICA賞)、

ベスト・エンタテインメント賞(HUMAX  CINEMA賞)などが選定され、

PFFの最終日に表彰されます。

選考基準について

「PFFアワードには審査基準はない」と前述しましたが、唯一あるとすれ ば、映画業界において活躍している様々な審査員の方々が、「今後期待した い」と考える人を選んでいる、ということでしょうか。

ただ、それ自体も、時代で変わっていると思います。どういう映画が求 められているのか、どういう才能が必要なのかは、時代によって違うもの。

審査員の方々は、それを自分なりに体感したうえで、自らの基準で授賞作 品を選んでいるのだと思います。実際、審査の講評を読んでも、評価のポ イントや審査に臨む視点がそれぞれ違うことがわかるでしょう。

最近の応募作品の傾向

これは私見ですが、最近、 想像もつかないような作品 ――すなわち、

「何の制約もないところで作れるからこそ、商業映画としては発想できない ような、映画表現に挑戦している作品」というものが少なくなっていると

感じています。

例えば、矢口史靖監督の『雨女』(90年グランプリ受賞)や熊切和嘉監督 の『鬼畜大宴会』(97年準グランプリ受賞)などには驚愕しました。『雨女』

には、観客の期待やストーリーの道順を裏切るような、映画表現やストー リーテリングに対するアバンギャルドさがあったし、『鬼畜大宴会』は、自 分の内的な思いをフィクションとして完璧に演出することに成功していま す。

映画を見れば、監督が何をしたいのかが伝わってくるもの。いろんな意 味で、思いの伝わる映画が、最終的に選考に残る映画だと思います。

「思い」というのは、「映画に対してどう考えているのか」、「人としてどう 生きていきたいのか」、「世界をどう見て、どう関わっていきたいのか」と いったこと。これらの思いにちゃんと取り組んでいるものが、選考に残る 映画だということです。

そして、ここ数年の傾向として、生きるのが困難な時代という背景もあ り、「どう生きるか」、「どう社会とかかわるか」といったことを伝えようと する映画が増えています。自主映画でしかできないような斬新な映画を撮 りたいというよりも、今の多くの若者にとって、映画に求めている出発点 が、世界と自分とのかかわりを伝えたいというところにあるのでしょう。

それは悪いことではないのですが、やはりそれとは別に思いもかけない挑 戦的な映画を期待してしまうことも事実です。

もう一つ、最近の傾向として感じることが、「自主映画と商業映画の境界 線がなくなってきた」ということ。これは、ひとえに撮影機材・技術の進 歩によるものです。映画監督がストーリーテリングや構図などの表現とし ての技術さえ持っていれば、手軽に上手に映画が撮れるようになりました。

感性があれば、後は機材が補ってくれる時代なのです。

これからの作品に求めること

PFF事務局のスタッフが、ある映画祭でゴダールに会った時、彼からいた だいた言葉があるんです。「アマチュアの映画を作っているクリエイター達 に、何か言葉をください」というお願いに、ゴダールは、次のように答え たそうです。

――なぜ自分は 映画 を撮ろうとしているのかを、もう1回考えてほしい

――。

これはたいへん重要な問題です。金持ちになりたいから、目立ちたいか ら、かっこいいからといった理由は、「映画を撮る」理由ではない。なぜな ら、それは映画以外でも実現可能だからです。映画を通して「これを伝え たい」、「観客と共有したい」という思いが強くあるか、映画に可能性を感 じて追求していきたいと思っているか――つまり「映画」という媒体で「表 現したい」という思いがあるかどうかが絶対なのです。

厳しいことを言いますが、若い人が作る映画には、自己発見や自分探し のつまらないものがたくさんあります。ほとんどの人の場合、まだ、探す だけの自分がいないのですから、 自分探しの映画 はやめた方がいい。

とは言っても、伝えたいものは自分の中にしかないのだから、自分の心 の中を表現しなければいけない。その時に、自分にだけわかるような世界 を描くのではなく、観客が共感できるようなフィクションの設定を探さな

ければ、「見せる」ことはできないと思います。自分の心の中を映画に仕立 て上げるには理論が必要なんです。

もう一つ、私が強く感じているのは、映画の中で問題を提起して、後は 観客に考えてほしいという映画は、今の時代には相応しくないということ です。「現代は生きるのがたいへんな時代だ」ということは、観客は皆わか っています。だったらどうやってその困難さに立ち向かうのかということ を映画の中で伝えなければいけないと思います。それを否定する観客や肯 定する観客がいていいんです。その肯定、否定という反応こそが映画と観 客が結び付いた瞬間なのです。

人材育成のためのPFFスカラシップ

その年のPFFアワード受賞監督達から新作の企画・脚本を募り、その中か ら選ばれた作品を、企画、製作、劇場公開、DVD化までトータルにプロデ ュースするシステムが「PFFスカラシップ」です。該当者は、グランプリ作 品受賞者というわけではありません。

受賞者が「作りたい」という企画を提出し、その中から1作品を決めるの ですが、企画については、劇場公開、ビデオグラム化などが前提。すなわ ちここからは、一般劇場公開作品として作ることが求められるわけです。

2004年受賞者を対象にしたスカラシップは、グランプリをとった『ある 朝スウプは』の高橋泉監督と、『さよなら さようなら』で準グランプリをと った廣末哲万監督の共同で取り組むという異例の形になりました。そもそ もこの2人はユニットで作品を作っており、受賞した2作品は兄弟作といっ て良いものでした。

『ある朝スウプは』は、バンクーバー、ロッテルダム、香港などの映画祭 にも出るなど、国際的にも高い評価を得ており、高橋監督については既に スカラシップだけでなく、映画業界の様々な場面で仕事の場が増えていま す。今、映画業界では若い才能が強く求められています。そのため、以前 よりも、若い才能を獲得しようとするスピードが遥かに速くなっているの を実感しますね。

高橋監督は、映画1本を作ることで、人生が変わるということを体現して くれています。

映画祭は、今、過渡期にあります。若い才能の発掘と育成ということを 考えると、まだまだ新しい方法論があるのではないかと考えています。今 後、我々も新たな取り組みをしていきたいと思っています。

東京国際アニメフェア実行委員会事務局 関口龍夫(せきぐち・たつお)

クオリティーやクリエイティビティ、完成度に加え 商業的展開の可能性を持っているかが重要

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