症例は76歳、男性。高血圧・脂質代謝異常・糖尿病・脳梗塞などで定期通院中であったが、
歩行時に冷汗を伴う胸痛が出現したため当科紹介となった。冠動脈造影検査では右冠動脈#
1・#2〜#3・#4PD にそれぞれ75〜90%のびまん性狭窄を認め、左前下行枝および回旋 枝にも狭窄を認める多枝病変であった。胸痛の原因は右冠動脈の狭窄によると思われたため 後日 PCI の方針とした。#4PD へは1.5mm のバルーンを用いて POBA を施行、#2〜#3 は比較的長い病変であったため、SES2.5×23mm,SES2.5×18mm を並べて留置した。さら に#1へは SES3.0×18mm を留置した。抗血小板薬として脳梗塞二次予防のために元々処方 されていたクロピドグレル75mg に加え、アスピリン100mg を投与した。経過は順調であった が術後4日目に突然前胸部痛が出現、心電図・心臓超音波検査より急性心筋梗塞を疑い緊急 冠動脈造影を施行したところ、#2〜#3に留置した SES の近位端で完全閉塞を起こしてい た。引き続き同部に対し PCI を施行、血栓吸引を試みるも有効な吸引ができず、POBA およ び冠拡張薬の冠動脈内投与を繰り返し灌流が改善した。#2に留置した SES の近位端に狭窄 が残存したため BMS2.5×12mm を留置した。後日施行した血小板凝集能検査では ADP4.0µM による刺激で最大83%の凝集を認めたためクロピドグレル不応症と考えられ、有効な血栓吸 引はできなかったものの Stent thrombosis による完全閉塞であったことが示唆された。Stent thrombosis の原因として、ステント径が2.5mm と小さいこと・糖尿病や脂質代謝異常などの multiple coronary risk factor が存在すること・留置後の IVUS が未施行でありステント留置形 状の評価ができなかったことなども挙げられるが、クロピドグレル不応症のため血小板活性 を十分に抑制できなかったことも主因の一つであったことが疑われた。DES を留置した症例 では術後の抗血小板薬の2剤併用がスタンダードになっているが、血小板凝集能を把握し stent thrombosis のリスク評価を行うことで、抗血小板薬の増量や変更など臨床の幅を広げる可能
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性があるものと思われた。
MEMO
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8‐2
○真栄平直也、嘉数 敦、野村 悠、大庭 景介、嘉数 朗、
嘉数 真教、玉城 正弘、新崎 修、新城 哲治 豊見城中央病院 循環器内科
抗血小板薬併用療法にも関わらず、Cypher ステントの亜急性冠閉塞を繰 り返した急性心筋梗塞の1例
症例は66才男性。平成20年1月5日頃より不安定狭心症を発症。胸痛が断続的にみられてい たが、1月7日未明より胸痛が出現した後、持続するため同日朝当院を受診。来院時も胸痛 が持続しており、心電図にて胸部誘導の hyperacute T wave を認たため、アスピリン、チク ロピジン服用下に緊急冠動脈造影を施行。その結果 LADseg.6〜7にかけて大量の血栓を伴う、
75〜90%の long lesion を認めた。同部位を責任病変と判断し、血栓吸引療法を施行後、Cypher 3.5×33mm 及び Cypher3.5×18mm を連続して留置し拡張に成功した。術後暫くは経過良好 であったが、第4病日に心電図変化を来し、冠動脈造影を施行。Seg.8に血栓形成を認めたが、
末梢であるため PCI は困難な部位であり、その時点では経過観察とした。しかし1月17日に 狭心症発作を来し、冠動脈造影を施行。その結果 TIMI3ではあったもののステント内に血栓 形成を認め、seg.7〜8へ distal embolism を来していたため、血栓吸引及び PIT(ウロキナー ゼ24万単位)を施行した結果ステント血栓は消失した。抗凝固療法としてへパリン及びワー ファリン療法も開始したが、1月24日へパリン中止5時間後に AMI を発症し、冠動脈造影の 結果ステント内が血栓で完全に閉塞していた。直ちに血栓吸引及び PIT を施行し、引き続き IVUS で認めたステント proximal edge の限局性の malapposition に対して Sapphire4.0×15mm 及び Magna2.5×15mm にて追加拡張を施行し、ステントの圧着に成功した。術後チクロピジ ンをクロピドグレル150mg へ変更し、なおかつシロスタゾール、サルポグレラートの併用も 開始した。その後はステント血栓の再発なく状態は安定した。ステント血栓の頻発に関し何 らかの血栓性素因を疑って、プロテイン C、プロテイン S、抗リン脂質抗体症候群などの評価 も行ったが、いずれも陰性であった。本人より数か月前からの嚥下困難の訴えがあったため、
上部消化管内視鏡検査を施行した結果、下部食道に adenocarcinoma を認め、ステント血栓を 生じた一因と考えられた。
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MEMO
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8‐3
○菅 竜也、木村 彰男、藪下 博史、辻本 俊和、諸岡 花子、
宮崎 俊一
近畿大学医学部附属病院
BMS 留置2年後にステント内血栓像を認めた1症例
症例
70歳台、男性。平成17年4月28日に不安定狭心症に対して CAG を施行した。Seg1:75%狭 窄、Seg2:75%狭窄、Seg3:99%狭窄、Seg4PL:99%狭窄あり、それぞれ Duraflex4.0×
25mm、Duraflex4.0×25mm、Duraflex3.5×25mm、Duraflex3.0×25mm を留置されていた。
同年8月20日に再び不安定狭心症を発症し、CAG を施行したところ Seg1ステント内に90%
狭窄あり、同部位に Duraflex4.0×14mm 留置されている。
平成18年8月より肝細胞癌に対する TAE 施行のため、抗血小板薬を中止されていた。
平成19年2月に転移性肺癌に対して放射線治療施行後より放射線性肺臓炎に罹患し、その ため労作時の呼吸困難感が出現するようになっていた。
平成19年8月28日、安静時にも呼吸困難感が出現するようになり徐々に増悪を認めたため、
9月3日に救急車を依頼し救急搬送となった。搬送中の救急車内で胸痛が出現したため、来 院時心電図所見でⅢ、aVF での ST 上昇と V3、V4での ST 低下、心エコーで下壁の壁運動 低下を認め急性心筋梗塞の疑いで CCU に入院となった。
緊急 CAG を行ったところ、Seg1のステント内に90%狭窄があり、その distal から Seg 3にかけてびまん性の血栓像を確認した。
以上、BMS 留置後2年後にステント内血栓像を認めた1症例を経験したので報告した。
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8‐4
○林 隆治
1)、市川 稔
1)、岩田 昭夫
1)、南森 秀幸
1)、竹内 元康
1)、 川野 成夫
1)、林 英宰
1)、三嶋 正芳
1)、由谷 親夫
2)、山口 高広
3)、 松田 成人
3)河内総合病院 循環器科
1)、岡山理科大学 臨床生命科学科
2)、河内総合 病院 心臓血管外科
3)真性心室瘤が慢性期に急激に増大し、外科的切除術を要した急性心筋梗 塞の一例
【背景】1983年に EpsteinJI 等によって心外膜下心室瘤(subepicardial aneurysm)の概念が提 唱された。この定義は、瘤の入口部の径が瘤の最大径よりも小さく、頸部で心筋途絶がある が、瘤壁の構成組織は問わない、という三点からなる画像形態による。この概念は従来の真 性及び仮性心室瘤の定義にあった病理学的筋層構造の有無については、必要でないとされて いる。【症例】症例は62歳男性。2006年2月25日労作時に突然の胸痛を自覚したが、安静にて 自宅で経過観察をしていた。2月27日未明に胸痛の増悪を訴え当院へ救急搬送となり、心電 図、心臓超音波検査から急性下壁心筋梗塞の診断に至った。緊急冠動脈造影を施行した結果、
右冠動脈(#3)完全閉塞であった。同部位へステントを留置し血行再建に成功した。術後、
最大 CK4088IU/l であったが、逸脱酵素の再上昇は認める事無く経過し、3月27日退院に至っ た。同年7月、心臓超音波で梗塞部位に瘤の形成を確認した。定期的に心臓超音波検査を繰 り返したが、瘤は次第に増大を呈した。最大で51×45mm まで増大を認めその形態からは仮性 心室瘤が疑われた。また、経食道超音波検査上は僧帽弁後尖の tethering を認め、高度な僧帽 弁逆流を伴っていた。11月20日、放置することで破裂、血栓からの塞栓症、不整脈の合併が 懸念されたため、外科的瘤切除術を行った。病理所見は瘤の筋層構造は保たれており、真性 瘤の診断であった。【考察】 本症例は画像形態からは仮性瘤が疑われたが、病理組織は真性 瘤の診断であった。しかし、瘤の頸部は瘤の最大径よりも小さく心外膜下心室瘤の概念に合 致するものであった。今回我々は、真性心室瘤が慢性期に急激に増大し外科的切除術を要し た一例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
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8‐5
○中川 彰人、濱野 剛、谷口 達典、宇都宮 紫、小出 雅雄、
石津 宜丸、岩破 俊博、山戸 昌樹、佐々木典子、山元 博義、
廣岡 慶治、川口 義廣、是恒 之宏、楠岡 英雄、安村 良男 国立病院機構 大阪医療センター
著明な右室拡大と三尖弁逆流にて治療に難渋した右室梗塞の一例
症例は79才女性。発症後9時間で著しい冷汗と血圧低下を伴い入院となった。入院時 CPK 870IU/L(以後漸減)、II、III、aVF で ST 上昇を認めたが、右側胸部誘導での ST 上昇は認め なかった。著明な右室の拡大と4度の三尖弁逆流(TR)を認めたが、左室収縮能の低下は軽 度であった。冠動脈造影にて右室枝を含む右冠動脈#1の血栓閉塞を認め、血栓吸引にて#
1は TIMI0から TIMI3となった。以後カテコラミン、大量輸液と IABP で循環動態を管理 した。第4病日に血圧の改善と共に急性左心不全を併発し人工呼吸管理を要したが、dobutamine,
milrinone,carperitide を併用し循環動態の改善を認め退院に至った。慢性期 TR は2度まで 改善を認めた。右室梗塞による著明な右室拡大と4度の TR のため循環管理に難渋した症例を 経験したので、文献的考察を加え報告する。
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