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2 障害者虐待の様相

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Ⅳ 考察・まとめ

げることができる。(図20)

 これらはあくまでも参考であり、常に同様の傾向が現われるとは限らないが、関係者はこうし たデータを念頭に置きながら、被虐待者等への支援に当たるべきものと考えられる。

(2)被虐待者のライフ・ステージと虐待者

 ここでは、上記の⑤「虐待者」および⑥「被虐待者の年齢層ごとの虐待者(続柄)」から得られ た結果に基づき、被虐待者のライフ・ステージと虐待者について検討を加えることにする。

 被虐待者の年齢ごとに虐待者(続柄)を分類すると(図34〜40)、10歳代から40歳代までの広範 囲における虐待者は、父母、兄弟姉妹が多く、30歳代に入ると夫婦間での虐待が出現する。その後、

40歳代から50歳代へと移行するに伴い、父母による虐待が減少し、代わって息子・娘による虐待 が夫婦間虐待や兄弟姉妹と並んで出現している。

 このようにみると、障害者虐待ケースでは、そのライフ・ステージの各段階で必然的にかかわ る家族構成員(父母、兄弟姉妹、配偶者、子等)から何らかの背景によって虐待を受けているこ とがわかる。その虐待とは、特定のライフ・ステージのみで受ける場合もあれば、時期が異なる 複数のステージで受ける場合も想定される。つまり、児童虐待は未成年期において、また、高齢 者虐待は、高齢期において、ある程度限定された続柄の虐待者から受けるのに対して、障害者虐 待の場合はライフ・ステージの各段階で起りうるものであることから、必然的に虐待者の範囲は 大きく広がっている。このため、障害者虐待の実態把握や支援の面では、この「ライフ・ステー ジと家族とのかかわり」という視点が不可欠であると考えられる。 

 

(3)虐待の内容に見る特徴的傾向

① 「経済的虐待」の多さ

ア.経済的虐待の発生状況

 図15のとおり、障害者虐待における5つの虐待分類、すなわち、「身体的虐待」、「介護・世話 の放棄、放任」、「心理的虐待」、「経済的虐待」、「性的虐待」のうち、最も多いのが「経済的虐 待」である。3障害を通じた全虐待ケースのうち、実に59.1%=約60%がこの虐待を受けている ことがわかる。因みに、高齢者虐待の場合、「経済的虐待」の割合はむしろ低く、先述の『家庭 内における高齢者虐待に関する調査』では「心理的虐待」(63.6%)、「介護・世話の放棄、放任」

(52.4%)、「身体的虐待」(50.0%)に次いで、「経済的虐待」が22.4%で分類別の第4位に、また、

『在宅高齢者への虐待に関する状況調査』においても、「世話の放棄、放棄、拒否、怠慢」(59.6%)、

「身体的虐待」(47.5%)、「心理的虐待」(36.2%)に次いで、「経済的虐待」が17.0%で、同じく 第4位になっている。

イ.経済的虐待が多い原因についての考察

 なぜ、障害者虐待の場合、これほど経済的虐待が多いのか。

 その原因として推測されることは、障害者の場合、金銭や財産を家族等に管理される機会そ のものが多く、そうした日常的な生活環境にあって、虐待者による「障害に対する無理解・無 関心」「失業・借金等の生活上の問題」等の虐待要因が結びついた時、「経済的虐待」となって 容易に出現するためではないかということである。

 そう考えられる理由として、まず、家族等からの日常的支援状況と「経済的虐待」との関連 を見ると、図54のとおり、家族等から「日常的金銭管理」の支援を受けているケースの61.8%が、

また、「財産管理」の支援を受けているケースの74.3%が「経済的虐待」を受けているという実 態が見られることである。

 また、虐待者が経済的虐待を行う主観的理由の側面から見ると、P17に記載のとおり、「共同 生活だから使って当然」、「本人が管理できないので家族が管理している」、「本人の承諾をとっ ている」などを挙げており、その表現の中に、虐待者が日常的に金銭等を直接的または実質的 に管理している状況がうかがえる。

 さらに、「経済的虐待」の発生状況を被虐待者の障害別で見ると、図29のとおり、知的障害と 精神障害が65%程度と比較的高いほか、身体障害についても50%弱と少なくなく、障害を有し 家族等からの何らかの支援を必要とする状況がある中で、「経済的虐待」を受けている状況がう かがえる。 

 一方、虐待が起こる原因の面から見ると、図21のとおり、「障害に対する無理解・無関心」

(37.3%)が最多であり、次いで「虐待者の性格等精神的問題」(36.4%)、「失業・借金等の生活 上の問題」(29.1%)等となっており、障害に対する理解のなさや権利擁護意識の低さ、虐待者 の性格や家計状態などが、虐待行為の発生に大きく影響していることがわかる。

ウ.別居の虐待者による経済的虐待

 別居している親族等が虐待を行っているケースは15件と比較的少ない。しかしながら、そこ には特異な傾向が見られ、図73のとおり、「経済的虐待」の発生率が86.7%と突出して高くなっ ている。そして、これには、同居、別居に関係なく、被虐待者の判断能力の不十分さなどにつ け込み、「経済的虐待」を行おうとする虐待者の意思がうかがえる。

 ともあれ、このことから、別居の虐待者がいる場合には、その90%近くが「経済的虐待」を行っ ていることを疑うべきであること、また、逆に言えば、障害者が虐待を受けている場合は、別 居による親族等からも特に「経済的虐待」を受けているかもしれないことに留意して、支援に 当たるべきものと考えられる。

② 「障害に対する無理解・無関心」による虐待の多さ

 先に見たとおり、虐待の起こる原因の中で最も多いのが「障害に対する無理解・無関心」

(37.3%)である。

 このことと、虐待者が虐待を行う主観的理由とを重ね合わせて見てみると、P16に記載のと おり、特に、知的障害の場合は、「(身体的虐待や心理的虐待について)しつけや教育のために

体的虐待について)見ていてイライラする」といった考え方・感じ方となって現われている。

また、先に見たように、権利擁護意識の低さなどから、各障害を通じ、「(経済的虐待について)

共同生活だから使って当然」といった考え方などが現われている。

 こうしたことから、支援者は、「障害に対する無理解・無関心」に起因する虐待が比較的多い ことを認識するととともに、単に虐待者の虐待行為を問題にするだけではなく、虐待者に対し、

障害に対する正しい知識や支援の仕方などについて、きちんと指導しうる力量が必要である。

(4)重複虐待

 図41のとおり、回答のあった虐待事例を「単独虐待」と「重複虐待」に分類したところ、単独 虐待は全体の35%前後、残りの60%以上は重複虐待であり、重複虐待については1事例あたり概 ね2.5件以上の虐待が重複して起こっていることがわかった。

 また、ある種の虐待(例えば身体的虐待)が生じれば、他の特定の虐待が併発しやすくなると いう可能性について検討したところ、表1(58ページ)に示したように併発しやすい組み合わせ を見い出すことができた。これは、実際面では、虐待が行われているケースにおいて、未確認の 併発(重複)虐待を事前に予測することで、その重複虐待の早期発見と対応に役立てることがで きるものであり、今後、より一層体系たっだ調査研究が望まれるところである。

(5)被虐待者の虐待に対する受け止め方、心理状況

 次に、「被虐待者が周囲に示す反応」および「その原因」から得られた結果に基づき、被虐待者 の虐待に対する受け止め方、心理状況について考察することとする。

 被虐待者が周囲に示す反応については、図19のとおり、「相談等の助けを求めている」、「特に反 応なし」、「あきらめている」、「虐待事実を否定・隠す」等が多くなっている。

 特に、注目すべき点は、「相談等の助けを求めている」が23.6%で最多であるということである。

つまり、支援に当たる関係者は、1/4近い障害者が、自ら周囲に助けを求めている実態を認識する とともに、図63で見るとおり、その背後に「我慢しづらくなっている」などの差し迫った状況が あることを理解し、迅速な対応を図るべきものと考えられる。次に、「特に反応なし」が20.9%で 第2位となっている(図19)。これは、図64で見るとおり、その多くが「虐待されていることが十 分理解できない」ことに起因している。したがって、支援者は、被虐待者を閉塞的な状況から救 い出すために、「反応がない」ということも一つのサインであることを十分認識し、虐待を見逃さ ない努力が必要である。

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