そのようなまちづくりを進めるうえで、どう いうやり方があり、どういうところに手法論と してのポイントがあるのでしょうか。時間軸で は2段階論で仕分けをして考えた方がわかりや すいのではないかと思います。第1段階として は、住民主体で話を行うというレベルの問題で す。第2段階は、その住民の意見を受けて素案 を検討する段階です。
先程の話で置き忘れてきた問題をこの話につ なげたいと思います。先程、「目的」というと ころを置いてきました。第1段階と第2段階を 分けるという話と、この目的は密接に関係して います。何のために住民参加をするのかという 目的を大ざっぱに整理すると、次のようになる と思います。
1つ目は、広く意見を聞くという目的で、市 民の声をできるだけたくさん聞きたいというこ とです。新しいワークショップのような対話型 のやり方ではなくても、従来型の意見聴取シス テムも含めて、住民参加のやり方はあります。
アンケートも広く意見を聞くという意味では、
2つ目に、行政の仕事を住民の目で評価、あ るいは監査(チェック)をしてもらうために、
市民の参画を得るという方法があります。ここ では、監査というのを少し広めの意味で使って います。従来の狭い意味での監査だけではなく て、行政素案を住民の目でチェックをしていた だいていろいろなご意見をお伺いするのも、こ の監査(チェック)の中に含めてお話ししてい ます。このタイプは広く意見を聞くというタイ プとは若干異なっているとすると、評価・監査 をしてもらうというものは、その前に内容が行 政から提示されます。それに対して、住民の意 見を伺うということになってくると思います。
3つ目には、住民の総意を生み出すというこ とがあります。広く意見を聞く方法と行政の仕 事をチェックしてもらう方法の2つが従来型か ら使われている方法ですが、この2つに限界が あるとすれば、それは情報のやりとりが一方通 行だということです。それも住民側から見ます と、一人一人が個別に話をしていることが、あ る意味での限界ではないかと思います。行政職 員としては、この辺が非常に取り扱いを難しく しています。AさんとBさんでは話の方向が 180度違うとしても、これは両方とも住民の意 見というかたちで、差別化や優先順位をつけに くくなります。それを防ぐためには、Aさんと Bさんが直接対話をして自分たちで調整をする という作業をしていただかないと問題は解決し ません。従来は一方的に話をお伺いするという 参加方式がほとんどでしたが、本来は住民意見 として総意を生み出していただくというプロセ スが必要ではないでしょうか。これが新しいタ
のように2段階に分けて考えることができます。
第1段階は住民としての総意を生み出すレベ ルです。ここは住民が主体的に話し合っていた だく段階であり、行政職員や専門家は少し引き 下がって、いわゆるファシリテーター(対話が スムーズに進むためにお手伝いをする)という 立場で参画していくことになると思います。
第2段階は素案を検討する段階ですが、第1 段階から第2段階への時間の移り変わりの中で、
行政としては第1段階で出された意見を踏まえ て、第2段階へのスタートを切るための素案を 作っていかなければいけません。そしてこの素 案を検討するというプロセスが繰り返され、次 のステップへ続くわけですが、この第2段階は 従来からやっていた方法でいいのではないかと 思います。素案を提示し、住民意見を踏まえて、
成案に持っていくという作業は従来からやって きました。このもう1つ前段階で必要になって くるのが、第1段階の住民主体で話し合いを行 うことだと思います。それをもう少し別の角度 から整理をすると、第1段階の成果としては住 民提案が出てきます。それを受けて第2段階で、
行政計画に仕立てていきます。こういうことが 2段階として位置付けられるのではないかと思 います。
この仕分けがポイントです。住民参加の難し さを語る中で、住民は勝手な話をするから、そ れを直接行政案にできるわけがないという話が あります。しかし、それは第2段階ではじめて 住民の方々の参画を得ることからスタートをす るから起こってくる問題です。第1段階で行政 は少し身を引いて、住民同士で議論をしていた
りますが、住民がお互いの対話を通じて意見を 調整していただいて、その中から総意に近いか たちでの住民提案をいただきます。それを受け て行政が行政計画素案として仕立てていきます。
こういう2段階にしていくことによって、むち ゃを言われて困るという話がさばけるのではな いかと思います。
住民はある意味で実行可能性は横に置いて、
何十年かかってもこれが必要なのだ、あるいは こういうことをやってみたい、こういうことが あったらいいということをどんどん自由に発言 されます。しかし、行政計画は年限を決められ た中での実行可能性を担保しなければ描けない わけですから、たしかに、10年ぐらいのスパン でみればむちゃを言っているかもしれませんが、
50年ぐらいかけたら何かものが動いてくるかも しれません。あるいは難しいけれどもやらなけ ればならないとか、やってみたいという話もあ ります。そういうものが今まではどこにも描け ていなかったわけです。行政計画は実行可能性 という担保がありますから、できにくい、ある いはできそうもないことは、必要性があっても、
あるいは何十年かかってもやりたいという気が あっても、なかなか描けません。ですからそう いう本当の長期ビジョンのようなものはどこに も存在しなかったのですが、それが住民提案と いうかたちになると、かなり自由に描けるので はないかと思います。
行政側の立場からしても、住民提案と行政計 画に一線を画すことによって、住民提案のすべ てを受け取る必要がなくなってきます。住民提 案の中で行政としてやらなければならないこと、
て仕立てていけます。住民提案の中で行政計画 に盛り込めなかったものに対しては、なぜ盛り 込めなかったのかという返答はしないといけま せんが、そのすべてを取り上げる必要があると いう呪縛からは解放されるのではないかと思い ます。こういうことをすることによって、住民 の満足度も高まってきます。
私もいろいろな住民参画をお手伝いしている なかで、住民から「住民参加でやっているが、
最終計画を見れば私の意見が全然反映されてい ないのではないか」という声が聞こえてきます。
そういう人にとっては、形式上の参加ではない のか、ガス抜きに使われているのではないかと いう疑念につながる危険性があります。ある意 味で、個人の方々がお話をしている内容が、ス トレートに行政計画として取り入れられること は確率としては少ないかもしれません。こうい う疑念や不満をどういうかたちで解消できるか というと、行政計画に直接反映をしようとする と住民が語った意見としてはどこにも残りませ んが、いったん住民提案として残すことをすれ ば、どういうことを語ってきたのか、住民とし ての総意は何なのかが、住民提案として整理さ れたかたちできちんと残ります。それが行政計 画に反映ができなかっただけの話で、そこには なぜ反映できなかったのかという理由もついて、
きちんと記録に残るわけです。こういう2段階 整理があれば、従来型を乗り越える可能性が高 まってくるのではないでしょうか。
この仕分けを不十分にすると、なかなか動き がとれなくなってくるという気がします。しか し、うまく整理をして2つをつなげられている
必要ではないかと思います。特に第1段階がこ れから重要になってきますが、この第1段階の 住民提案にまとめていくためには何が必要かと いう観点では、生活像を明らかにすることでは ないかと思います。住民の意見の多くは個別具 体の要求が出てきますが、その背景には必ずそ の方々が実現したい生活像があります。例えば、
「図書館が欲しい」ということを少し深く突っ 込んで考えますと、「たくさんの本が読みたい」
という生活像があり、それを実現するための手 段として図書館が欲しいという話につながって いるはずです。しかし、声を上げる住民もすぐ にこの個別具体の話が表に立ち、その背景にあ る本当の要望、大切にしなければいけない自分 の生活像が、なかなか見えづらくなっています。
第1段階ではこの生活像を明らかにしていく作 業が必要ではないかと思います。最初は個別具 体の話がたくさん出てくるかもしれませんが、
その話はどういうことから出ているのかを時間 をかけて整理をしていただきますと、おのずと 実現したい生活像が見えてきます。そういう作 業が必要なのです。
図書館が欲しいと言われますと、受ける行政 側としてはそれができるかできないかという択 一的になってしまいます。しかし、身近にたく さんの本が読みたいから図書館が欲しいという 言い方をしていただければ、図書館はできない かもしれないが、別の方策で身近にたくさんの 本が読める方法があるのではないかという知恵 が働き始めます。例えば身近な公民館やコミュ ニティセンターに図書館の本館と連携した端末 を置き、その端末から自由に図書館の内容が検