5.官僚型パラダイムからネットワーク 社会のパラダイムへ
第2部 シンポジウム
コーディネーター 久 隆浩 氏 (近畿大学理工学部土木工学科助教授)
シンポジスト 中道 俊之 氏 (岩手県滝沢村政策情報室長)
吉村 慎一 氏 (福岡市市長室行政経営推進担当 フォア・ザ・九州等担当課長)
片山 健也 氏 (ニセコ町企画環境課長)
芦田 英機 氏 (豊中市政策推進部長)
できないでしょう。それから補助金も廃止に限 りなく近くなるでしょう。そして地方債は2006 年から完全自由化です。かくしてランキング時 代に入っていくことになります。これから税配 分がどんどん変わり、一方では東京が一人勝ち になるといわれていますが、そうなっては日本 の地方自治体が全部つぶれてしまいます。それ は何とかしなくてはいけません。税体系を全部 見直していかなくてはいけません。そうなった ときに、各自治体ではどんな有効な価値の高い サービスを、住民とともに考えてつくり上げて いくのかという時代になっていくでしょう。
それでどうするかですが、行政も経営の時代 ですから、できるだけマネジメントとして行政 を考えていきましょう。私どもで考えているの は、まず1つは仕事の仕組み、もう1つは仕事 の中身の問題です。
仕事の仕組みは今までは官僚制でヒエラルキ ー、ピラミッドの中で情報が操作されて、上か ら下に伝達があるという、先程の先生のお話の とおりです。住民の意見を聞くふりをして、自 分たちが思うようにどんどん事を運んでいった かもしれない、それに違いないというような話 があります。しかし、実はそうではなくてでき るだけ住民の意見を聞きながら、事実を客観的 に調べ上げて、何が今、問題なのかという問題 を定義して、何が有効な策なのかをみんなで考 えます。もちろん、先程のお話のように住民提 言も聞かなくてはいけませんし、行政がどこま で関与できるか、関与すべきなのかというかた ちをどんどんつくり上げていかなければいけま せん。とりわけ、その前段で出てくる行政のビ
番確実にみんなで共有しなければいけないよう なものをきちんと形式知にしていこう。暗黙の 知識としてわかっていたものを紙に書いて、み んなが共有できるかたちにしていく、そういう 仕組みをつくっていこう。これを行政経営の仕 組みの構築改善と私どもではよんでいます。
この仕組みづくりのために、行政経営品質向 上活動を展開しています。これをなぜやってい るのだと言われたときには、「仕事の仕組みが あるようでなかったので、21世紀にふさわしい 行政(自治体)の仕事の仕組みをこれでつくって、
継続的に改善をします」と私どもは説明をして います。
かたや仕事の中身の問題で、頑張っていても 成果が出ないと具合が悪いので、成果をきちん と評価する仕組みが必要になり、これは成果志 向で政策評価をしていくべきでしょう。この仕 組みを導入構築するべきです。
この2つのことを進めていこうという考えで、
今、取り組んでいます。総じていえば、質的転 換ということだと思います。これは自治体の規 模の大小ではありません。広域合併、広域連合 などといろいろいわれていますが、行政体制が どんなかたちになったとしても、質的な転換を しないと住民には支持されない自治体、行政に なるのではないでしょうか。
滝沢村が目指す方向性としては、成果志向の 地方政府の樹立です。今まではパブリックの仕 事は全部官がやっていたというイメージですが、
それをできるだけみんながいろいろなかたちで、
ネットワーク社会の利点、パートナーシップを どんどん活用して、いろいろなセクターがこれ
かというドメイン(領域)を見直していこうと 考えています。できるだけ協働しながら、効果 は大きくしなければいけないのでしょうが、小 さな政府、経費のかからない政府を実現してい きたいということです。
改革のコンセプトですが、ニュー・パブリッ ク・マネジメント(NPM)の考え方をそのま ま引用しています。市場志向から始まって、特 に大きなものが成果志向ということになるでし ょうが、それから派生してきた市場志向などの 民間の考え方や競争の原理を入れようとしてい ます。私たちは組織として最終的には住民の満 足を向上するのだという話をしていますので、
「満足の源泉」は観念論ではなくて、実際にい ろいろな場所で実現していかなくてはいけませ ん。その源泉というのは、まず情報公開して、
住民に参画をしていただきます。しかも、それ はスピードです。クイックアクションでやって いかなければいけません。住民に対するレスポ ンスもできるだけ早くしなければいけません。
そのようにしていかないと住民本位の行政はで きないのではないかということです。
2大戦略として仕組みづくりを行いますが、
まず、仕事の仕組みづくりは行政経営品質向上 活動です。この活動は経営改革のOSといわれ ている経営品質向上プログラムを行政版で導入 しています。シックスシグマ、TQM、IT、
ISO、ナレッジマネジメント、そのほかにた くさん改革のプログラムがあると思います。そ ういったものを何も問わず、何をやってもかま わないから、とにかくいろいろな使い方を駆使 して全体最適のために英知を結集しようとして
例えば私どもではISO9001と14001を取り ましたが、それはあくまでも手段で、ISO 14001の場合はPDCAサイクルを早く導入し て実体験をしてもらいたかったのです。とっつ きやすい「環境」というキーワードで、紙を減 らそうとか、何々をしようというのをチェック して、「取り組みましたか、さらに改善はどう しますか」というのを、実際の現場の中で体験 してもらうために入れました。
9001は、自分たちのサービスは住民に対して どの程度の品質レベルで届けるべきか、それを 届けられなかったときは、どこによくない齟齬 があったのかを、自分たちで見つめ直してみよ うということで入れました。それは一つのツー ルであり、そのツールが実際に機能しているか どうか、住民からきちんと満足度調査をしたか、
サイクルタイムを考えて、来てから30分以内に 住民票をきちんと出しているのか、きちんと経 過を見ているか、その経過を見て住民にフィー ドバックしているか。それらを問うてくるのが 経営品質です。
いろいろな改革ツールを導入して、ISOを 入れたからそれでおしまいではなくて、ISO を入れた結果、何がよくなって、何が問題で、
次はどのような展開が継続的に進めばいいのか を、全体的に聞いてくるのが経営品質だと思え ばいいのです。TQMのお化けみたいな考え方 だと私は理解をしています。そこにプラスして、
民間企業の考えから出ているので競争性が出て きています。
政策評価はまだしていません。事務事業評価 があちこちで一生懸命にやられていますが、我
着手できていません。今年度が明けて4月から 着手する予定ですが、この2つを大きな柱にし て編み上げていく作戦です。
イメージとしては、従来の改革活動は首長が 上にいて住民が下にいるというものでしたが、
それを経営品質は逆さまのピラミッドにしてい ます。住民が一番の中心で、この人たちの生活 がどういう状態になればいいかを考えてから、
一番フロントにいる職員が政策やサービスを考 えて、それを支援するための責任者がミドル、
そして最後のトップが何を決断すればいいのか ということをイメージしています。この仕組み がセルフアセスメントで、内部で自己評価をし ながら改善をしていきます。経営品質ではそう いう自己評価が中心です。ただ、自己評価をし ますと自分たちで酔ってしまい、どうしても
「たぶんいいだろう」と物差しが揺らいでくる 場合があります。そこで第三者の外部評価を、
例えば2〜3年に一度入れて、滝沢村が持って いた自分の物差しは本当に住民にとって正しか ったのかどうかを、外部評価(アセスメント)
しています。
「めざすべき仮想住民満足度」のグラフです が、下が従来の官僚制でやっていたときの住民 満足度で、大して上がらないだろうという予想
画していただいて、仕組みを見直していけば、
こんなに激烈に上がってくるはずだ、上げたい ということです。ランキング時代にその辺の銀 行から滝沢村の村債を買ってもらいたいという ことが、今の当面の課題です。私どもの村債が どの程度にランキングされるのか、いい状態に 買ってもらえるようにして資金調達をしたいと いうことです。
滝沢村NPMと合併の関係です。上が「従来 型行政」で、下が「21世紀型行政」です。その 中でも「大きな政府」「小さな政府」とあり、
どちらかを選んで、さらに小さな政府でいった ときに「合併推進」するか、「現状維持」なの かという住民判断を、どこかの時点でしなけれ ばいけない、それに向けて滝沢村役場は一生懸 命に情報を公開していかなければいけないとい うことです。
めざすべき仮想住民満足度
従来型モデルによる住民満足度 新しい行政モデルによる住民満足度
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
滝沢村NPMと合併の関係
情報公開 住民参加
住民満足
スピード
従来型行政 合併推進 現状維持 合併推進 現状維持 合併推進 現状維持 合併推進 現状維持 大きな政府 小さな政府 大きな政府 小さな政府
・中央集権型
・国県依存
・行政本位
・請求型公開
21世紀型行政
・分権型
・自立競争
・住民本位
・日常公開
住民判断 改革の方向
現在地
滝沢村NPMと合併の効果
村がめざす行政モデルと合併の関係 住民満足
効 果 効率性 現在
住民満足
効 果 効率性 改革
住民満足
効 果 効率性 合併
住民満足
効 果 効率性
改革合併 単独
改革
合 併 後 に 改 革 このまま合併
改革後に合併