いくつかの整理の軸を設定したいと思います。
最初は「時間」の軸です。初動期、ビジョン 策定期、基本計画策定、実施計画策定、最終的 には事業の実施というプロセスで、具体化が図 られます。それぞれの時期によって参加の仕組 みは違いますし、まちづくりの内容も微妙に異 なってくるのではないかと思います。皆さんが 今、あるいは将来取り組まれるまちづくりが、
この時間軸の中でどの位置付けになるのかを、
まずは整理していただきたい。このように時間 軸の整理をして見えてくるのは、皆さんの関心 が後ろの方にあることです。後ろの方になれば なるほど、ものが動き出したり、具体的な絵が 見えてくるからでしょう。しかし、住民参加や 住民主体のまちづくりを円滑に進めるためには、
できるだけ早い段階で、住民の皆さんと話を始 めることが必要だと思います。
そういう意味で初動期がきわめて重要ですが、
この初動期のまちづくりが、今の、あるいは従 来型の仕組みの中では、なかなか難しかったと 思います。基本計画や内容が明確になれば担当 部署が決まってきます。しかし、内容を総合的 に考えなければならない、それも現場で住民の 皆さんと一緒に動きながら、地域の課題を整理 していかなければならない、そういう課題すら まだ曖昧模糊とした状態で動く場合に、どの部 署がどういうお金を使ってやるのかが、なかな か見えません。あるいはこれまでの仕組みの中 ではなかったという状況ではないでしょうか。
署ができつつありますが、きちんと動かしてい く仕組みづくりが不十分ではないかと思います。
ですから、どうしても具体的な個別のテーマ、
個別の分野で基本計画ぐらいからスタートする 場合が多いのではないでしょうか。
最近はいろいろな基本計画として何々ビジョ ン、あるいはマスタープランというかたちで、
ビジョンレベルの話が策定されるようになりま した。しかし、まだ十分とはいえない状況では ないか、そのビジョンができたとしても、次の ステップの基本計画にきちんとつながっていく のか、さらにはその次の実施計画にうまく連動 していくのかという点も、行政の仕組みの中で は、まだまだ考えなければいけない部分がある と思います。このように時間軸の中で整理をす ることが第1点だと思います。
第2点目の整理の軸は、取り扱う「空間」の スケールの問題です。全市町村レベルの空間で 考えるのか、あるいは狭い地域のレベルで物事 を考えていくのか。もっと細かく地区レベルか、
施設レベルか、それぞれ個々の単体でものを考 えていくのか。それらによって、考え方やとら え方が違います。のちほどいくつかの軸を重ね 合わせて話をしますが、時間軸の一方で、こう いう空間軸の話があるのではないかと思います。
第3点目は、取り扱う「分野」の広がりの問 題です。大きくは分野を超えて総合的に取り扱 うものと、教育や環境、都市計画など、ある個 別分野を取り上げて扱うものの2つに分けられ ると思います。
この3つの軸が基本的な軸として設定できる のではないかと思いますので、これらを念頭に
市町村の根幹を担う総合計画、あるいは総合 基本計画があります。これを、今の3つの軸に おける位置付けで考えますと、時間軸ではビジ ョン策定期、空間軸としては全市町村レベルを 取り扱う計画、分野は総合的なものになってき ます。このようにそれぞれの計画、あるいはま ちづくりが、この中できちんと整理できると思 います。
例えばもう1つの事例で豊中方式とよばれて いる地区レベルのまちづくりは、時間軸では初 動期からスタートし、空間では地区レベルの話 をすることになり、分野では総合計画と同じよ うに総合的に取り扱います。ですから、総合計 画と地区まちづくりでは、空間レベルで全市町 村レベルを取り扱っているのか、地区レベルを 取り扱っているのかという違いになってきます。
さらに、土地区画整理事業があり、どちらかと いうと実施計画の方が強いと思いますが、基本 計画と実施計画の間ぐらいに位置付けられるで しょう。空間の広がりは地区と施設の間ぐらい、
あるいは大きな土地区画整理事業では地区レベ ルの話になってきます。分野はどちらかという と個別分野を取り扱います。あるいは環境基本 計画は、時間軸としてはビジョンから基本計画 あたりになり、空間レベルとしては全市町村的 なもの、分野としては環境という個別分野を取 り扱います。
全国でさまざまな参加型や住民主体のまちづ くりが行われていますが、このように整理をし てみると、今、自らが担当されている仕事と参 考にしようとしているまちづくりの内容が符合 しているのかどうかが、より明確になってくる
ると、参考にする内容が明らかになってきます が、逆にこれが不明確のまま参考事例と思って しまうと、内容が違うのに参考にしてしまいま す。そうすると微妙にやり方が違うわけで、そ のあたりのずれが何らかの段階で出てくる危険 性があります。まず基本的に取り扱う内容がど ういうものであるのか、一定の整理をしておい て取り扱う方がいいでしょう。
私もさまざまなレベル、さまざまな内容の計 画づくりやまちづくりをお手伝いさせていただ いております。総合計画や環境の基本計画、ま た、具体的に土地区画整理事業のような事業レ ベルのお話をお手伝いすることもあります。も っと小さな話では公園づくりのワークショップ など、いろいろな時期、あるいはいろいろな内 容をお手伝いしております。必ずしもこのまち づくりで成功したからといって、ほかのレベル やほかの内容のまちづくりでそれがそのままう まくいくとは限らないという経験を何度かして います。ですから、このような整理がまず必要 ではないでしょうか。
こういう整理の中で、住民参加型あるいは住 民主体のまちづくりをうまく進めるためにどう いうポイントがあるのかお話しすることができ るとすれば、1つは時間軸の問題です。時間軸 ではまちづくりはできるだけ早くスタートをす べきであると思います。計画や事業内容が具体 的になればなるほど、個別利害が表に立ってき ます。例えば土地区画整理事業や市街地再開発 事業のように土地の権利が絡む事業になります と、その事業によって自分の土地や自分の権利 がどうなるのかに住民の関心が向かってきて、
います。これができるだけ早く始める必要があ るのではないかという理由です。
もう1つの理由は、どうしても事業レベルに 入れば入るほど、時間的制約が出てくることで す。これは特に地方分権の中で変えていかなけ ればいけないと思っていますが、補助金に頼る 事業は年次計画がかなり大きな制約条件となり ます。1年間でここまで進まなければならない という条件付きで補助金をいただくので、自分 の事業のペースの中でもう少し時間をかけてや りたいというときに、なかなかできにくいこと になります。これは精神的なゆとりのなさにつ ながり、どうしても行政の担当者も住民も、時 間的な制約の中で焦りが出てきてしまいます。
このあたりの難しさが、事業に近づけば近づく ほど出てくるのではないかと思います。
このように端的に2つの点を申し上げておき ますが、そういう観点からできるだけ早く住民 主体のまちづくりは始めるべきです。私の経験 では、全く白紙の状態で入れれば一番いいと思 います。行政案を持たずに皆さんと一緒に考え ていこうではないかというレベルで入っていく と、行政職員としても自由に動けます。何か下 案があれば、どうしてもそれが気になってしま います。
分野はより総合的に取り扱うことができれば いいのではないでしょうか。これにもいくつか の観点がありますが、私はもともと都市計画分 野で仕事をしており、これは住民主体のまちづ くり、あるいは住民参加型のまちづくりで非常 にやりにくい部分があります。都市計画の範ち ゅうでは大きなものを動かすことが多く、住民
です。道路整備でも、建築物の建設でも、個人 のちょっとした努力でできるものはきわめて少 ないのです。そういう内容であるほど、どうし ても要求型・要望型になってしまうという欠点 があります。
一方、例えば環境や福祉、教育の問題などソ フト系のものは、住民自らが取り扱える内容も かなりあり、行政が頑張れと言われても「皆さ んもやることがあるのではないですか」という 言い方ができます。そういう意味ではいろいろ な分野がありますが、どうしても行政が先導し てやらないといけない分野と、住民が取り扱え る分野があります。そうするとそれを総合的に 取り扱った方がお互いの関係がスムーズにいく のではないかというのが、より総合的に分野を 扱うポイントだろうと思います。
もう一方は、住民サイドから見た問題です。
住民の生活は総合的に成り立っています。行政 は縦割りで、どうしてもその専門性の中で分野 ごとに取り扱わざるをえないことが多いのです が、住民の生活はそういうものが渾然一体とな って動いています。それを住民にあえて整理し てほしいという方が、実は難しいわけです。生 活が総合的なものであるならば、それを受ける 立場やその支援をする立場も総合的であるべき でしょう。
まちづくりの現場に出かけていって、例えば
「都市計画のマスタープランをつくりたい」と 市民と対話を始めても、住民の頭の中からは
「都市計画」という4文字は飛んでいて、今の 生活レベル、あるいは地域や地区でどういう問 題が起こっているのかが、総合的に取り扱われ