6 21世紀の金沢大学
金沢大学は1999(平成11)年5月に創立50周年を迎えた。大学を取り巻く情勢は 1990年代から急速に変化し、大学ではこれに対応する改革が行われたが、21世紀初頭に はさらに社会のグローバル化や大学のユニバーサル化が進行することが予想され、これら に対応した新しい大学の在り方が求められている。その意味で、50周年はそれまでの金沢 大学の在り方を総括し、新たな金沢大学像を構築する節目といえる。
この節では、金沢大学の21世紀における発展への足がかりとして創立50周年をとらえ、
それをめぐる事業と、それを踏まえた21世紀への中長期的展望を取り上げる。
金沢大学が、これまでの50年の歴史を踏まえ、総合移転、組織改革などの経験・趣旨等を 十分に生かしつつ、その社会的使命を果たしていくためには、部局の自主性を尊重しながら も各部局がより一層緊密に連携を深め、総合大学としての新しい金沢大学の在り方を探求す る必要がある。その意味で、創立50周年は全学を挙げて金沢大学を考える絶好の機会となる。
第三は、地域社会への貢献である。
地域が大学を育み、大学は地域を豊かにする。金沢大学は、蓄積された知的財産とともに、
学問を大切にする豊かな環境に恵まれている。地域交流を一層進め、様々な面で地域社会に 貢献するためにも、情報発信、共同研究等の推進など真の意味での開かれた大学への発展の 契機とすべきである。
第四は、国際社会への貢献である。
激動の20世紀から、21世紀の国際社会を展望するとき、金沢大学は、歴史的にも地勢的 にも、教育・研究の両面から国際交流の中心となり得る条件を備えている。金沢、北陸地域、日 本から国際社会を展望し、その発展に貢献するための方向性を探求する事業とすべきである。
記念事業計画の決定
事業委員会では記念事業の趣旨および企画委員会からの報告等に基づき、事業計画を順 次決定した。
○50年史の刊行(1996年7月19日、第2回事業委員)
○50周年記念式典・50周年記念展示(1996年10月18日、第4回事業委員会)
○国際シンポジウム・地域交流に関する企画・若手研究者シンポジウム・特別講演
(1997年3月21日、第6回事業委員会)
○50周年記念エリアの整備(1997年4月18日、第8回事業委員会)
なお、この他検討された地域交流推進事業(地域交流推進拠点施設の設置等)・出版会 の設置・若手研究者への助成・大学院学生への補助および記念館の建設の5事業計画につ いては、最終的に除外された。
50年史編纂室の設置と専任スタッフの配置
50年史の刊行事業は、記念事業計画の全体が決定される1年以上も前に決定していた。
50年史の編纂作業を進めるために、橋本哲哉附属図書館長を委員長とする50年史編纂委 員会および編纂室の設置、並びに全学的教官定員流用により専任スタッフの採用が認めら れ、1996年12月16日、事務局6階の第1会議室(当時、現在は附属中央図書館2階)に 50年史編纂室がオープンした。また、専任スタッフとして、97年1月に谷本宗生助手、
同年4月に酒井誠一講師が着任し、本格的な編纂作業がスタートすることとなった。
シンボルマークの決定
1997(平成9)年5月、企画委員会は「本学の創立50周年記念事業のテーマを簡潔に
表現し、教職員・学生が心をひとつにして新しい課題 に挑戦する象徴となるシンボルマーク」の公募を開始 し、同年9月、応募のあった8点のうち4点を候補作 品として岡田晃学長に最終決定を委ねた。その結果、
50 年の 5 を180度回転させて英語の go を表現して金沢大学の今後の躍進を象徴した池端良伸 氏(庶務部庶務課)の応募作品が最優秀作品に選ばれ、
学長から記念品(図書券)が贈られた。
同年10月17日から使用が開始されたシンボルマー クは、封筒・ポスターなど各種宣伝物等の印刷物に使 用され、記念事業の盛り上げに一役を担うこととなっ た。
記念事業実施(実行)委員会の設置
記念事業内容を検討し実施していくため、企画(調整)委員会の下に設置された実施委 員会および実行委員会を図に表すと次のようになる。
募金目標額3億円、基金設置推進委員会の設置
第8回事業委員会では、記念事業計画の決定と併せて記念事業の実施に見合う経費に充 当するため、おおむね3億円の募金目標額を決定した。また、その推進組識として創立50 周年記念事業基金設置推進委員会(以下、基金設置推進委員会と略す)の設置が決定され、
委員長には中西功夫医学部長が選出された(第9回および第10回事業委員会)。
1997年7月に発足した基金設置推進委員会は、企画委員会が策定した事業計画を実施 するための募金目標額3億円を確認し、募金を推進する後援会組織の結成を目指して、役 員構成・各事業計画の優先順位・後援会の会則・趣意書・募金要綱などの検討を重ねた。
図9ー5 金沢大学創立50周年記念 シンボルマーク
図9−6 創立50周年記念事業委員会
記念展示実行委員会 創立50周年記念事業委員会
創立50周年記念事業企画(調整)委員会
創立50周年記念事業基金設置推進委員会
50年史編纂委員会
地域交流事業推進委員会 記念行事実施委員会
記念式典実行委員会
国際シンポジウム実行委員会 若手研究者シンポジウム実行委員会 特別講演実行委員会
創立50周年記念事業後援会の発足
金沢国税局から寄附金(募金)の免税取扱いの承認を得て、1998(平成10)年2月9 日、金沢全日空ホテルに関係者が集い、金沢大学創立50周年記念事業後援会設立総会が盛 大に執り行われ、株式会社福光屋会長の福光博氏を会長とする役員など、次の議案が承認 された。募金期間は、98年3月15日から2年間とされた。
1号議案 金沢大学創立50周年記念事業後援会会則(案)
2号議案 金沢大学創立50周年記念事業募金趣意書(案)
3号議案 金沢大学創立50周年記念事業後援会の事業概要 4号議案 募金要綱(案)
5号議案 金沢大学創立50周年記念事業後援会役員(案)
募金額は1口5,000円とし、各部局・元教職員・学部別同窓会および企業ごとに目標額 を設定して、学長をはじめ部局長・基金設置推進委員会委員・記念事業関係委員会の委員 等が一丸となって取り組んだ結果、最終的に目標額の約74%、2億2,300万円を超える募 金を集めることができ、2000年4月、各募金者に対して募金事業の終了を報告した。
募金活動の期間は、わが国が未曾有の経済不況下にあり、また1993〜95年にかけて行 われた金沢大学国際交流基金募金が学内に否定的雰囲気を残していた時期でもあり、こう した中で2億2,300万円超の募金額を集めた関係者の努力は、目標額に到達しなかったと はいえ特筆すべきものであった。
記念式典・祝賀会(5月29日)
1999(平成11)年5月29日(土)10時30分、金沢大学合唱団による校歌斉唱で始ま った記念式典の式辞で岡田晃学長は、その冒頭で、金沢が生んだ室生犀星の作詞による金 沢大学校歌について触れ、「50年の星霜を経て、21世紀を目前にした今日この日、この時、
―中略―金沢大学長として式辞を述べているという筆舌に尽くしがたい大きな感動に、全 身が打ち震えるばかりであります。」と声を震わせた。そして創立以後の歩みを1期から5 期に分けて概観した後、最後に「半世紀にわたる過去を厳しい目で振り返ると同時に角間 から世界へ羽ばたく金沢大学。先人たちの築いた文化を受け継ぎながら、常に『今』とい う時代に向かい合って高い文化の創造に寄与する金沢大学」の実現に期待を表明して式辞 を結んだ。
式辞に続き、佐藤禎一文部事務次官から文部大臣祝辞の代読があり、また、蓮實重彦国 立大学協会会長・東京大学総長、ナイール・ザモフ カザン大学第一副学長、金子曽政元 金沢大学長および福光博金沢大学創立50周年記念事業後援会会長からそれぞれ祝辞が寄せ られた。
図9ー7 募金要綱
式典では、「キャンパス2050」検討グループによる50年後の金沢大学を描いた「金沢大 学の過去―現在―未来」のビデオが上映され、話題を呼んだ。また、配付された校歌の歌 詞は、50年史の史料収集の過程で再発見された室生犀星の直筆原本を印刷した貴重なもの であった。
式典に引き続き開催された祝賀会では、多くの第四高等学校同窓生が当時の服装で寮歌 を歌い、学生のジャズバンドクラブの演奏などが祝宴を盛り上げた。
《式典・祝賀会で配付された資料等》
○金沢大学創立50周年記念式典・祝賀会次第(B6判)
○記念式典出席者芳名録(B6判16頁)
○記念展示図録(小写真集、B6判56頁)
○記念事業ごあんない(A4判)
○創設資料(A4判18頁)
○校歌の歌詞・楽譜直筆原本(A5判8頁)
○北國新聞金沢大学創立50周年特集(8頁立て)
○記念品(オリジナルしおり)
50周年記念展示(5月29日〜6月11日)
3月下旬に開催の評議会終了後、学長をはじめ部局長等が角間キャンパスの大学会館前 広場に設置した「50周年記念モニュメント」の渡り初めを行い、記念行事は事実上幕を開 けた。
主要な展示品に、3年にわたる全学的な財政支援と地元の美術表具師により見事に修復 を完了した―虫食いのため閲覧できない状態にあった貴重図書―加賀藩士成瀬正居の日記 全57巻が含まれている。幕末の金沢城下の出来事が詳しく記述された日記は、加賀藩史研 究の貴重な資料として活用が期待される。
また、特設会場では、21世紀のキャンパスを構想したコンピュータグラフィックス、新 制大学発足前の古い写真等が紹介された。
国際シンポジウム(5月30日〜6月1日)
国際市民シンポジウム、国際学術シンポジウムおよび国際学術交流会議が開催された。
○国際市民シンポジウム(5月30日(日)9時〜12時30分)
《テーマ》「北陸の水辺」
《講 演》 碇山 洋(金沢大学経済学部助教授)
「日本における湿地開発政策」
W.S.Fyfe(カナダ、ウエスタン・オンタリオ大学名誉教授)
「生命を支える水」
《ポスターセッション》発表者60名