Ⅰ.食材の仕入れ方法
日系の外食企業が現地で食材を仕入れるには、主に①台湾現地から仕入れる、②日本を含む 海外から仕入れるという2つの方法がある。
①台湾現地から仕入れる場合は、現地の卸売市場、現地の卸売業者、現地の台湾食品企業、
現地の日系食品企業に仕様を伝え注文する。または自社工場を設置し社内加工・調理・調達す ることもある。一般に日系企業は、食材ごとに各種調査先から様々な食材を調達している。
②日本を含む海外から仕入れる食材は、主に現地で入手困難なもの、企業秘密に関わり簡単 にレシピを公開できないものなどである。
(図4−1)台湾日系外食企業の主要食材調達ルート
出所:企業へのヒアリングによる
外食企業
海外サプライヤー 現地の卸売市場
現地の卸売業者
(輸入業も営む)
現地の 食品メーカー
現地の 日系食品メーカー
自社 食品メーカー
食 材 調 達
日本 中国 アメリカ オストラ リア 台湾 海外
海外調達
海外調達
その他
1.台湾現地の調達ルートと特徴
台湾に進出している日系外食企業は、コストの面から食材は極力現地で調達している。現地調 達の方法としては一般的に以下のルートがある。
1)現地の卸売市場
主に生鮮食料品は現地の卸売市場から調達している。
台湾では、現在、台北市をはじめとする主要都市や主要な産地において約 145 の卸売市場が 設置され、各地の生鮮食品流通の中で重要な位置を占めている。このうち、青果物市場は 61 市 場、畜産物市場は 23 市場、水産物市場は 58 市場、そして花卉市場は 3 市場がある。これらの 市場は日本の卸売市場に似ている。
特に台北市では膨大な数量の生鮮食品が集散し、出荷者ごと、品目ごとに価格を決め、迅 速・確実な代金決済を可能にする場として、卸売市場が高く評価されている。
ただし、全ての市場は青果物専門あるいは畜産物専門といった専門卸売市場であり、すべて の品目が揃う総合卸売市場ではない。そのため、必要な食材を一括で調達することはできない。
また、食材の品質、鮮度、価格にばらつきがあり、仕入れの際には注意を要する。
(図4−2)台湾卸売市場経由青果物流通チャネル
青果物輸入業者 青果物生産者
産地仲介業者 農会、農業生産合作社、
青果運销合作社等
卸売業者
中卸業者 小売業者
小売業者、外食企業
卸売市場
2)現地の卸売業者
長期的な調達を考える場合、現地の卸売業者を活用することも検討すべきであろう。ただし、
台湾の卸売業者は、カテゴリーごとに細分化された零細専門業者(従業員5〜6人体制)が多い という特徴から、店舗で使用する食材を全て揃えるには多くの卸売業者と取引する必要がある。
このため管理の手間と費用がかかる。一方で、多数の業者を利用することは一極集中のリスク を回避できるメリットがあるとも言われている。
また、長期的な取引により、地元の卸売業者は依頼業者のニーズ(たとえば食材のサイズな ど)を把握し、安定した品質の商品の提供が可能となるというメリットもある。
さらに、飲食店の品質管理に応じて「製造販売履歴管理」(トレーサビリティー)の取り組みを始 めた卸売業者も現れている。
現地の卸売業者を見つける方法は、さまざまあるが、卸売市場で直接交渉するのもひとつの 手法である。
3)現地の食品加工企業
日本ではうなぎのタレと一緒にパックされたうなぎを入手できるが、こうした加工済み食材は台 湾ではまだ少ない。このため外食企業は自ら調理する必要があり、それだけ手間がかかること になる。セントラルキッチンのような自社工場をつくるという方法もあるが、規模のメリットからセン トラルキッチンを設置する日系外食企業はまだ少ないのが現状である。
現地の食品加工企業に加工を依頼する場合は、詳細な仕様を説明し、引き渡す必要がある。
4)現地日系食品企業
日本向けの食材を生産・加工している現地日系食品企業から台湾内で食材を調達する場合、
もともと日本向け仕様なので、品質面の管理は容易というメリットがある。ただし、日本向けの食 材を生産している現地日系食品企業は、近年は生産工場を中国にシフトしているため、少なくな っているのが現状である。
5)自社工場(セントラルキッチン)をつくる
自社工場をつくれば品質的には問題はないが、一定の店舗展開が行われていないとスケール メリットが働かず、採算にあわない。なお、すでに多店舗展開を行っている企業等では自社工場 を導入している事例もある。
2.海外からの調達状況と品目
海外からの調達品目は、①企業秘密に関わり、簡単にレシピを公開できず、台湾で生産できな い品目、②台湾では調達が困難な品目、③季節または気候の影響により、台湾市場からでは調 達コストが高くなる品目などがある。
セントラルキッチン(モスバーガーの事例)
モスバーカーは台湾進出の第1号店を設立したと同時に、セントラルキッチンシス テムを導入した。セントラルキッチンは台北市から約1時間離れた樹林市に設置され ている。
この工場では、モスバーガーの店舗供給以外に、他の外食産業への供給拡大も視野 に入れている。
現在、モスバーガーの急速な店舗展開により工場生産能力が追いつかなくなり、第 2工場を新設し、生産を開始した。
食材はセントラルキッチンが一括で調達する。サラダのように一部の食材は店舗で 直接加工されるものもあるが、セントラルキッチンで一時加工を行われる食材の方が 圧倒的に多い。
従来、食材は各サプライヤーにより店舗に直接配達する体制であったが、今では、
台北地域の店舗への納品はセントラルキッチン経由で一括納品されている。各サプラ イヤーはセントラルキッチンに一括納品し、セントラルキッチンからは低温車に混載 して、各店舗へ配達している。
これによって店舗の荷受の手間は省けるが、生鮮野菜の店舗納品リードタイムは1 日長くなるという課題もある。
◆ 生産品目
ソース・たれ類、スープ類、ライスプレート、有機米大ライスプレート
パティ、チキンナゲット、チキンパティ、牛肉スライス、豚肉スライス、和風チキ ン、テリヤキチキンなど
◆ 施設規模
敷地面積2211㎡、建物1525㎡、冷蔵庫50㎡、冷凍庫482㎡
たとえば、野菜のレタスは、台湾では通年生産できない。調達価格を安く抑えるためには、夏場 はアメリカから輸入する方が安価となる。
ただし、日本の味を現地で完全に再現させるため、食材をすべて日本から調達している企業も ある。これらは主に高級寿司店である。台北に何軒かある高級寿司店は、米も日本から輸入し ている。これは台湾の米には水分が多い上に、精米技術が低く、米粒の割れが多く、粘りも異な るためである。米以外にも、魚介類と刺身醤油、味噌汁を含めすべての素材を日本から調達して いる。魚介等のネタについては毎日、日本から空輸している店舗もある。しかし、日本から輸入 すると関税、国際輸送運賃なども入れて調達コストが高くなる。
その他、日本から輸入している主要食材として、柿、葱、ゴボウ、大根、山芋、カボチャ、メロン、
リンゴなどがある。
また、日本以外の海外からの輸入先として、中国を検討する企業も多い。中国には多くの日系 食品メーカーが日本輸出向けの生産を行っており、商品も日本仕様である。ただし、現段階では 台湾は中国からの輸入品をより厳しく制限しており、調達できるものは限られている。
日本を含む海外からの輸入調達業務は一般的に輸入業者に依頼するが、外食企業が自ら行 うことも可能である。ただし、輸入ライセンスを台湾経済部国際貿易局に登録し、取得しなければ ならない。
(表4−1)輸入ライセンス管轄部局
管理部局 住所 電話番号
台湾経済部国際貿易局 台北市湖口街1号 886‐2-23510271
Ⅱ.食器、調理設備など資材の調達
厨房設備や備品は、日本国内でチェーン展開する店舗では一般的に自社専用の調理設備を 使用しているが、台湾においては同様の設備が必要でないことが多いため、台湾現地で調達す るケースが多い。
日本で厨房を発注すれば、厨房設備メーカーが厨房の仕様などを決めるが、台湾メーカーで はこうしたサービスがないところが多い。その場合は、外食企業は店舗で必要な設備を考えなが ら現地で調達できる厨房設備を当てはめていくことになる。また、日系の現地メーカーから調達 する方法もある。
ただし台湾製品がクオリティの面で劣ると判断されれば、日本から取り寄せて対応する。たと えば焼き物の調理器具や炊飯器などである。
食器に自社店舗のロゴや模様を印刷する必要があれば、その仕様で発注して仕入れることも できる。その発注先は中国になる場合が多い。
Ⅲ.日本産品の輸入規制
日本からの食材の輸入は基本的には可能である。ただし家きん肉と牛肉は輸入禁止である。
河豚加工製品も輸入禁止である。輸入禁止品目を輸入しようとすれば、その必要性を説明し、輸 入業者は、事前に台湾経済部国際貿易局から輸入許可証を取得しなければならない。また、河 豚加工製品を輸入する際に、日本側の河豚処理師免許証明書類を添付して通関することが必 要となる。
食品の輸入に際しては、中国語による食品ラベルの表示が必要となる。表示ラベルがないと 輸入が認められないともあるので、十分に留意すること。以下、輸入規制を表の形で紹介する。